無翼の天使32 | 恋愛小説 くもりのちはれ

ダイニングに顔を出した夏樹は、そこに居るはずの無い慶人の姿に一瞬だけ


驚いた後、何事も無いかのようにママに挨拶をする。


『奈緒さん、おはようございます。今日は、真菜『よぉ、ご近所さん!』


からかう様に、夏樹に声を掛けるお兄ちゃん。


『ご近所さん?!』


『そっ、ご近所さん!』


『何だよ、それ?』


『ご近所さんは、ご近所さんだろ!なぁ、真菜・・・夏樹は、ご近所さんだよな?』


『えっ?あっ・・・う・・・ん。えっと、あっ!!私、ちょっと今日は、急がなきゃ!!』


この際、どうにでもなれって感じ。慌ててダイニングを出て、部屋に戻り鞄を持つと


何も言わずに、家を出る。家の前に止まる夏樹が乗ってきた車の横を、全速力で


走り抜けて、駅まで振り返らずに走り続ける。


だって、だって・・・無理だよ。あの場に居たら何が起こるか解らない雰囲気だったし


アレはどう考えても・・・私には、修羅場だもん。


でもお兄ちゃんって一体、何考えてるのかな?・・・波風立てないで欲しいよ。


「あっ、ごめんなさい!」


色々考えながら歩く私は、改札の近くで、横から歩いてきた人に気がつかずに


衝突してしまう。


「えっ?えっ?・・・あっ、えっ?!」


何故か軽くぶつかっただけなのに、倒れこんでしまった相手の男の人。


「えっ・・・あっ、大丈夫ですか?ごめんなさい・・・もしかして、どこか打ちました?」


俯いていた顔をあげた男の人は、私の顔を見てフリーズ状態。


「あのぉー、ホント大丈夫ですか?」


『わっ、わっ、わっ・・・近寄らないで・・・もう、かんべんして・・・』


腕に包帯と絆創膏だらけの顔・・・大きな身体の男の人。


「えっ?私?」


まさか私に怯えてるの?周囲を見回しても私達に視線を向けながらも、誰も立ち


止まる人はいなくて、男の人の言葉は、確かに私に向けられてるみたいだけど・・・


「あっ、私・・・何かしました?」


『あっ、わっ・・・スミマセン!!スミマセン!!許してください!!』


落とした鞄を拾い上げて、何度も頭を下げた後、震えながら私に背を向けると


一目散に逃げていく。


何?何?何なのよぉ・・・私、何か凄く恐れられてるんだけど・・・どういう事?


でも見覚えあるんだよな・・・あの人・・・えっーと・・・そうだ、あぁ・・・思い出した。


あの赤鼻ピアスに絡まれた電車の中で隣の席に座ってた、私を見捨てて逃げた


腰抜けの強面・・・あの時のオジサンじゃん。


でも何?ホント意味分からない。ていうか・・・私、昨日から今日にかけてずっと


何かの罰があったてるに違いない。


まだ一日の始まりなのに、この疲れ具合は何?


はぁ・・・私には、やっぱり・・・平凡って日々は、訪れないのかな。



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