オレオレ作戦3 | 恋愛小説 くもりのちはれ

『ユイカワっ!まずい事になってる。』


陽が慌てて教室に駆け込んで来て、息切れしたまま話し出す。


『アイツが動いた。はぁーはぁー・・・ユイカワと仲良くなってきた事に焦ったらしい・・・


アイツ・・・放課後に勝負かけるらしい・・・はぁーはぁー・・・もしかすっと、もしかするかも』


何となく察しがつく話だが・・・


「アイツって誰だ?」


早速、手を打たないといけない事は、陽の様子から解るが、敵の正体を知らないままでは、


動き様が無い。


俺は、狙ったものは確実に手に入れる・・・それを阻む者はどんな奴でも容赦しねぇ。


『テニス部のエース・・・須藤って言って、顔がソコソコ良いから女にスゲェ人気あんだよ。


で、あの彼女が普通に話かけるぐらい、ふたりは中学の頃から仲良くて・・・


でもアイツずっと余裕ぶってか、自信あるからか、何も行動に移さなかったのに・・・


そりゃー俺の知らないトコで、告白とかしてたのかもしんねぇけど、あからさまに行動するのは


今回が初めてなんじゃないかって感じで・・・


まっ、聞く話では・・・マジで力、入ってるらしいぜ。


やっぱ男から見てもパーフェクトのユイカワに対して、危機感すげぇ感じてんだろっ!って・・・


だったら今までこの俺に対して、脅威は微塵も抱かなかったのか?って、話になるな。


あっ?俺って完全に舐められてたんじゃね?そう考えると、やっぱムカつく野郎だ。


それはそうと・・・女達の話じゃ、奴は朝いつも駅で彼女を待ってて、一緒に登校してるらしい。


勝算あっての告白だって、普通科じゃ持ちきりだ。


どうする?ただ傍観したりなんてしねぇだろ?どんな手、打つ?』


長々と説明する陽の表情は、なぜか楽しそうで・・・俺が女に振られるのが見たいのか?


かなりテンションが高い。


「しゃーねーな・・・先手打たれちゃ、ざまーねぇ。」


陽の話しを聞いてるうちに、俺の心は決まる。


うじうじ考えてるのは俺らしくねぇ・・・誰だか知んねぇけど、そいつの動きを窺って動くなんて


やっぱ性に合わねぇ・・・先手必勝。


『先手したからってソイツが成功すっかは、時の運?ちゅうか・・・五分五分っちゅうか・・・』


ぐだぐだと話をするそんな陽を置いて、俺は、黙って席を立ち教室を出る。


『おいっ!ユイカワ~・・・何処行くんだよ?!』


俺の突然の動きに驚いた陽が、教室から廊下に顔を出し叫ぶ。


俺は、陽に背中を向けたまま・・・


「ソイツが放課後なら、こっちは今からしかねぇだろっ!!」と、叫び返す。


もちろんそのセリフを聞いた陽が、パニクったのは言うまでも無い。




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