『ユイカワっ!まずい事になってる。』
陽が慌てて教室に駆け込んで来て、息切れしたまま話し出す。
『アイツが動いた。はぁーはぁー・・・ユイカワと仲良くなってきた事に焦ったらしい・・・
アイツ・・・放課後に勝負かけるらしい・・・はぁーはぁー・・・もしかすっと、もしかするかも』
何となく察しがつく話だが・・・
「アイツって誰だ?」
早速、手を打たないといけない事は、陽の様子から解るが、敵の正体を知らないままでは、
動き様が無い。
俺は、狙ったものは確実に手に入れる・・・それを阻む者はどんな奴でも容赦しねぇ。
『テニス部のエース・・・須藤って言って、顔がソコソコ良いから女にスゲェ人気あんだよ。
で、あの彼女が普通に話かけるぐらい、ふたりは中学の頃から仲良くて・・・
でもアイツずっと余裕ぶってか、自信あるからか、何も行動に移さなかったのに・・・
そりゃー俺の知らないトコで、告白とかしてたのかもしんねぇけど、あからさまに行動するのは
今回が初めてなんじゃないかって感じで・・・
まっ、聞く話では・・・マジで力、入ってるらしいぜ。
やっぱ男から見てもパーフェクトのユイカワに対して、危機感すげぇ感じてんだろっ!って・・・
だったら今までこの俺に対して、脅威は微塵も抱かなかったのか?って、話になるな。
あっ?俺って完全に舐められてたんじゃね?そう考えると、やっぱムカつく野郎だ。
それはそうと・・・女達の話じゃ、奴は朝いつも駅で彼女を待ってて、一緒に登校してるらしい。
勝算あっての告白だって、普通科じゃ持ちきりだ。
どうする?ただ傍観したりなんてしねぇだろ?どんな手、打つ?』
長々と説明する陽の表情は、なぜか楽しそうで・・・俺が女に振られるのが見たいのか?
かなりテンションが高い。
「しゃーねーな・・・先手打たれちゃ、ざまーねぇ。」
陽の話しを聞いてるうちに、俺の心は決まる。
うじうじ考えてるのは俺らしくねぇ・・・誰だか知んねぇけど、そいつの動きを窺って動くなんて
やっぱ性に合わねぇ・・・先手必勝。
『先手したからってソイツが成功すっかは、時の運?ちゅうか・・・五分五分っちゅうか・・・』
ぐだぐだと話をするそんな陽を置いて、俺は、黙って席を立ち教室を出る。
『おいっ!ユイカワ~・・・何処行くんだよ?!』
俺の突然の動きに驚いた陽が、教室から廊下に顔を出し叫ぶ。
俺は、陽に背中を向けたまま・・・
「ソイツが放課後なら、こっちは今からしかねぇだろっ!!」と、叫び返す。
もちろんそのセリフを聞いた陽が、パニクったのは言うまでも無い。
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