ケン君は、ミッキーに手を挙げ、苦笑いをしながら小声で話す。
『村瀬、頼む・・・成にも絶対に、俺の事言わないでくれ・・・
じゃねぇと俺、確実に殺られる・・・
ボール男は別の誰かわかんねぇ奴って事にしてくれ。』
顔の表情と言ってる事が全然違うから、私とミキは唖然となった。
結局・・・成君の送り込んだ私の監視役がケン君だったって事じゃないのかな?
じゃあ・・・なぜ私にボールをぶつけるようなマネしたんだろう。
チラリと横に立つ苦笑いを続けるケン君を、再度見る。
すると今度は・・・
『村瀬、頼む・・・あんま俺を見るな・・・渡会が来た・・・』
と、保健室の時と同じ表情・・・怯えるような?
いったい何なのだろう。
成君と仲が良いなら、歩君にこんなに怯えるかな?
でも、くわしく聞く事もできないまま、ケン君は『じゃ、またな』と駆け足で
駅の改札に消えた。
『奈緒、言った方が良いんじゃない?彼氏君にだけでも・・・アイツ、やっぱ怪しいよ』
ミキが、ケン君が消えた改札の方を向いたまま、私に忠告してくる。
『だって、スパイって事もありえるじゃん。彼氏君と敵対してるグループとかさ』
まぁ・・・ミキの話もまんざら冗談とは言えないけど。
でもね、やっぱり考えないと・・・簡単にそんな事言えないよ。それに、ケン君って
そんな悪い人に思えないんだよなぁ・・・また、私は甘いって言われるだろうけど。
『奈緒、何があった?』
気が付けば目の前に、歩君とその仲間達。
慣れていないミキは、少し戸惑った表情で、私の腕を掴む。
『何かされたのか?さっきの野郎に・・・』
歩君は、本当に勘が良い。だから、私は、慌てて首を横に振る。
『歩、大丈夫だって。アイツは、俺の知り合いだから・・・
ちょっと軽い感じだけど、悪い奴じゃない。
奈緒ちゃんにボール投げた奴の事、知ってんかなっと思ってさ、連絡入れたら
アイツから、しばらく監視してやるって言ってくれたわけ。
なっ、奈緒ちゃん・・・アイツ別に変な事しなかっただろ?』
成君は、完全にケン君の事を、信用しているみたいだ。
益々、分からなくなる。
ケン君は、はたして敵なのだろうか?味方なのだろうか?
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