『こっこっちの方がお断りよ!ほら、はやく加奈をはなせっ!!』
奈緒の方へ足を踏み出そうとした男は、『俺、口うるさいの嫌いなんだよね。』
そう言って私の方に方向転換・・・加奈を引っ張りゆっくりと近づいてくる。
加奈もかなり抵抗しているけれど、一向に放そうとしない奴の手は
強く加奈の腕を掴んでいるようで、加奈の腕に食い込んでいるように見える。
何とかするにも・・・私・・・どうやって加奈を助ければ良いのか・・・わからない。
とりあえず・・・うん、もうやるしかないよ・・・カッコだけでも・・・なんでも。
構えるファイティングポーズ。
この際、恥ずかしいとか考えない・・・うん。やってやろうじゃない。
でも、見た目は、案外さまに成ってるはず・・・いつも鏡の前でやってるもの。
もう来るなら来い!
『クックッ・・・パンチ力無さそ・・・あのさ・・・邪魔だから・・・そこどけよ』
「何よ。何が何でも絶対に、ここは通しません!」そう言ったと同時に・・・
急にニヤついてた男の顔が、強張りだした。
えっ?私、そんな怖い?
少しずつ後ずさる奴。それでも加奈の腕だけは、一向に放す気配は無い。
「ちょっちょっと、加奈をはやく放し『ぎっぎっ・・・』私を見て奴が突然発した言葉。
「ぎ?・・・何よ、ぎっ?って」
『ぎん・・・銀・・・あっ・・・』
「銀?」あぁ・・・もしかして・・・そうなんだ・・・私の背後に誰かいるんだ。
そう思って振り向こうとしたけれど、奈緒の後方から現れた人に視線を奪われる。
颯爽と現れたその人は・・・瞬く間に男に近づき・・・
『てめぇ、俺の女に何してくれてんの?』と一言発すると
ボスッっと男の腹部に一撃を食らわし、意図も簡単に加奈を奪い返した。
まるで、映画のワンシーンの様・・・カッコ良過ぎる。
加奈の肩を抱き『大丈夫か?』と聞くその人は、まさにヒーロー。
そう、それは加奈の彼氏・・・井上先輩。
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