『ごめんな・・・斉藤・・・』
先輩の部屋に入り、先輩をベッドに寝かせると、繰り返される謝罪の言葉。
「先輩、話はもう良いから・・・とにかく寝てください。すごい熱なんだから・・・」
先輩の額に手を当てると、そのまま先輩の大きな手に強く掴まれる。
『斉藤の手、冷てぇな・・・気持ち良い・・・』
「先輩が熱いんだよ。」
先輩は、私の手を握ったまま、眼を瞑り寝息を立て始める。
しばらく手をそのままにしていた私は、時計を確認して焦る。
22時43分・・・やばい・・・家に連絡しなきゃ・・・。
そっと手を離し、携帯を出す・・・やっぱり・・・お母さんから着信3件。
キッチンの隅からお母さんに連絡をいれると、初めて聞く慌てた大きな声。
『加奈・・・どこにいるの?何かあったの?早く帰ってきなさい!』
いつもきちんと連絡を入れる私だから、かなり心配をしたみたい・・・
「ごめんなさい・・・でも・・・ごめんなさい、帰れない・・・あのね・・・
あの・・・先輩がすごい熱なの・・・先輩、一人暮らしで・・・ほっとけない。」
彼氏が居るって話も未だしてないのに・・・
オドオドと話す私に、一変、落ち着いた声でお母さんは、
『そう。じゃあ加奈、今日は傍に居てあげて、きちんと看病しなさい。』
えっ・・・いいの?・・・あまりの・・・あっさりさに驚く。
「ホントに良いの?」
『良いも何も、病人が一人ぼっちなのに・・・放って帰って来いなんて・・・
言えないでしょ。お母さんそんな非情じゃないわよ。』
「ありがとう。」
『加奈・・・今度、必ず彼氏を家に連れてきて、紹介してね。約束、わかった?』
「うんっ。」
信じてもらった事が嬉しくて、元気良く返事したのは良いけど・・・
結局きちんと話を聞いてない・・・先輩は彼氏だよね?
謝るって事は・・・まだ私・・・先輩の彼女だよね?
『加奈・・・流した涙の分だけ幸せになれるから・・・がんばって。』
どこかで聞いたような言葉・・・なんかの歌詞かな?
ホント、私の事、分かってる・・・お母さんって、やっぱりすごい。
「お母さん・・・私、先輩の事、大好きだから・・・がんばる」
そう大きな声で宣言した私の耳に・・・
聞こえきた返事は・・・耳元の携帯からではなく
『がんばる必要なんてねぇよ・・・俺の方が間違いなくお前に惚れてる』
ベッドで眠っているはずの・・・先輩の声だった。
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