リコは結城が好きなんだね。誰にも負けないくらい大好きなんだね。
苦しいと訴える私に佐奈が言った。
『素直に結城に気持ち伝えたら・・・きっと結城は答えてくれるよ』
あれから数日、結局、心の中のモヤモヤは燻ったままでいる。
そろそろ部活、終わったかなぁと思い、教室を出る。
既に日が落ちた廊下は電灯も薄暗く、人の気配もない。
なんとなく怖くて、下駄箱で急いで靴を履き替えていると・・・
『付きあう気無いから・・・ゴメン』
体育館に続く渡り廊下の入り口付近から、コウ君の声。
『麻井さんがいるから・・・付き合えないってこと?』
相手は竹内さんとわかる。声が震えている。
『リコは関係ない・・・だけど、俺、知ってるから・・・この前のこと』
コウ君の声が少し大きくなる。
知ってるって・・・もしかして・・・あの時のこと?・・・どうして?
あの日、用事があるって、コウ君には嘘をついて先に帰った。
知られてないと思ってたのに・・・
『リコを傷つけるような人とは、正直関わりたくないんだけど・・・
竹内ってさ・・・そんな奴じゃないって思ってたからさ・・・
ちょっとショックだったよ。残念だよ・・・』
そして、いつものコウ君からは想像できないほどの冷たい声で
『次は無いからね。女だろうが関係ないから・・・覚えといて』と告げる。
『結城君・・・でも・・・わたし・・・本当に好きなのっ!』
涙声で叫ぶ竹内さん。
コウ君は何も言わず、泣いている竹内さんの横を通り、こちらに歩いてくる。
下駄箱の前で身を隠すように佇む私に、気付いていてたのか・・・
『ごめん。待たせた・・・帰ろっか。』といつもの優しい声。
盗み聞きしたような罪悪感。
「ゴメン・・・コウ君・・・聞こえちゃった」と俯いたままだった顔を上げ
コウ君を見る。少し苦笑いのコウ君・・・
『何でリコが謝んのかな・・・俺の方こそ、ゴメン。』
リコ、大丈夫だった?もう、腫れてないか?
そして、大きな手でそっと、私の頬を優しく撫でる。
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