St. Valentine's Day 3 | 恋愛小説 くもりのちはれ

リコは結城が好きなんだね。誰にも負けないくらい大好きなんだね。


苦しいと訴える私に佐奈が言った。


『素直に結城に気持ち伝えたら・・・きっと結城は答えてくれるよ』


あれから数日、結局、心の中のモヤモヤは燻ったままでいる。




そろそろ部活、終わったかなぁと思い、教室を出る。


既に日が落ちた廊下は電灯も薄暗く、人の気配もない。


なんとなく怖くて、下駄箱で急いで靴を履き替えていると・・・ 


『付きあう気無いから・・・ゴメン』


体育館に続く渡り廊下の入り口付近から、コウ君の声。


『麻井さんがいるから・・・付き合えないってこと?』


相手は竹内さんとわかる。声が震えている。


『リコは関係ない・・・だけど、俺、知ってるから・・・この前のこと』


コウ君の声が少し大きくなる。


知ってるって・・・もしかして・・・あの時のこと?・・・どうして?


あの日、用事があるって、コウ君には嘘をついて先に帰った。


知られてないと思ってたのに・・・


『リコを傷つけるような人とは、正直関わりたくないんだけど・・・


竹内ってさ・・・そんな奴じゃないって思ってたからさ・・・


ちょっとショックだったよ。残念だよ・・・』


そして、いつものコウ君からは想像できないほどの冷たい声で


『次は無いからね。女だろうが関係ないから・・・覚えといて』と告げる。


『結城君・・・でも・・・わたし・・・本当に好きなのっ!』


涙声で叫ぶ竹内さん。


コウ君は何も言わず、泣いている竹内さんの横を通り、こちらに歩いてくる。


下駄箱の前で身を隠すように佇む私に、気付いていてたのか・・・


『ごめん。待たせた・・・帰ろっか。』といつもの優しい声。


盗み聞きしたような罪悪感。


「ゴメン・・・コウ君・・・聞こえちゃった」と俯いたままだった顔を上げ


コウ君を見る。少し苦笑いのコウ君・・・


『何でリコが謝んのかな・・・俺の方こそ、ゴメン。』


リコ、大丈夫だった?もう、腫れてないか?


そして、大きな手でそっと、私の頬を優しく撫でる。



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