あの時、黒岩が続けた言葉。
『俺、良いこと思いついたんだよね。
デジタル物に俺の存在を残そうと試みてたけど、短すぎるちっぽけな俺の人生
のかけらは、ただの金持ちボンボン野郎の残骸なだけで、機械なんかに残しても
日の目は見ないわけ・・・
なら、生身の人の心に刻みつければ良い・・・
でも、周りには、真の俺を理解できるような純真な人間は一人としていなかった。
だけど、俺、見つけたわけよ・・・麻井を。
これが本題。
俺、麻井を手に入れるから。麻井の全てを俺の物にする。
そして、俺の存在をこの世に残す・・・俺が消えるまでにね。
君にわざわざ了解を得る必要ないんだけど、俺が消えた後の麻井の為に、
一応、話したわけ・・・』
そして、黒岩は言葉を続ける。
『君さ、何で、麻井に手出してないの?死を目の前にするとさ・・・
本能で動いちゃうかもな俺』
視線をまっすぐ俺に向ける黒岩。
俯いて、ただ黙って聞いていた俺も、黒岩をまっすぐ見る。
しばし睨みあう・・・
そして俺は、沈黙を破ってフッと軽く笑い
「お前がそう思っても、リコはどうかな・・・
リコが同情をしてくれると思ってるなら、リコを理解できてねぇよ。
リコは同情なんかしねぇ。まっ、リコはお前を救いたいと動くだろうが・・・
お前のものには絶対にならねぇ・・・甘いよお前。
あっ、俺はお前に同情するけどね。フッ・・・」
そう言って腰を上げ、
「つまらない話で引き止めないでくれる」と、その場を後にした。
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