コウⅣ3 | 恋愛小説 くもりのちはれ

あの時、黒岩が続けた言葉。


俺、良いこと思いついたんだよね。


デジタル物に俺の存在を残そうと試みてたけど、短すぎるちっぽけな俺の人生


のかけらは、ただの金持ちボンボン野郎の残骸なだけで、機械なんかに残しても


日の目は見ないわけ・・・


なら、生身の人の心に刻みつければ良い・・・


でも、周りには、真の俺を理解できるような純真な人間は一人としていなかった。


だけど、俺、見つけたわけよ・・・麻井を。


これが本題。


俺、麻井を手に入れるから。麻井の全てを俺の物にする。


そして、俺の存在をこの世に残す・・・俺が消えるまでにね。


君にわざわざ了解を得る必要ないんだけど、俺が消えた後の麻井の為に、


一応、話したわけ・・・』


そして、黒岩は言葉を続ける。


『君さ、何で、麻井に手出してないの?死を目の前にするとさ・・・


本能で動いちゃうかもな俺』


視線をまっすぐ俺に向ける黒岩。


俯いて、ただ黙って聞いていた俺も、黒岩をまっすぐ見る。


しばし睨みあう・・・


そして俺は、沈黙を破ってフッと軽く笑い


「お前がそう思っても、リコはどうかな・・・


リコが同情をしてくれると思ってるなら、リコを理解できてねぇよ。


リコは同情なんかしねぇ。まっ、リコはお前を救いたいと動くだろうが・・・


お前のものには絶対にならねぇ・・・甘いよお前。


あっ、俺はお前に同情するけどね。フッ・・・」


そう言って腰を上げ、


「つまらない話で引き止めないでくれる」と、その場を後にした。






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