『大英雄』

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タイトル: 大英雄


原題:『射鵰英雄伝之東成西就』
英題:The Eagle Shooting Heroes-Dong Cheng Xi Jiu
監督:劉鎭偉ジェフ・ラウ
撮影:ピーター・パウ、ラウ・ワイキョン
音楽:黄霑ジェームズ・ウォン

出演:張國榮レスリー・チョン(東邪)
   梁朝偉トニリー・レオン(西毒)
   梁家輝レオン・カーファイ(南帝)
   張學友ジャッキー・チョン(北丐)
   林青霞ブリジット・リン(三公主)
   張曼玉マギー・チョン(国師)
   王祖賢ジョイ・ウォン(小妹)
   劉嘉玲カリーナ・ラウ(全真教副教祖)
   葉玉卿ヴェロニカ・イップ(王妃)
   鍾鎭濤ケニー・ビー(全真教教祖)

『東邪西毒(楽園の瑕)』がなかなか編集できず、公開日迫ってもモノにならなかったために、八日で作った怪作、という評判が高いが、実際は、『東邪西毒』とセットで作っていたもの。
 昼間はシリアスな『東邪西毒』を撮り、夜になるとマッドな『東成西就』を撮っていたと、スタンリー・ンガイの王家衛論に書かれている。
 本当のところがどうかはわからないが、この作品はお正月公開作品。『東邪西毒』には正月映画らしいところは皆目ないので、こちらが間に合わせというのはうなずけなかったりする。

 正月映画というのは、さまざまなキャラクターがでてきて、あれこれすったもんだしたあげくに、最後はハッピーになるという展開が要求されて、クリフトン・コウが得意なのだが、『黒薔薇vs黒薔薇』という怪作で、一躍「おかしてものを作らせたら天下一品」と名前のあがったプロデューサーのジェフ・ラウが監督をしている。
 このジェフ・ラウ、王家衛作品では常に制作者として名を連ねるが、脚本も監督もオッケーな人。香港にはこういう異才が多い。
 で、この作品は逆に王家衛がプロデュースしている。

 話は……国王の後妻(葉玉卿)と結託した後妻の従兄弟歐陽峰(梁朝偉)は、国王の印を奪って、後妻とのあいだにできた子供を王位につけようとするが、王璽を持っているのは、じゃじゃ馬で名高い三公主(林青霞)だった。
 後妻と峰は三公主を狙うが、侍女たちの機転で三公主は馬に乗り、師匠の住む九宮山へと逃げる。
 後妻と峰は国師(張曼玉)を脅して三公主の行き先を狙わせ、空飛ぶ靴を入手した峰が三公主を追っかける。
 ところ変わって九宮山で、仲良く剣(?)の練習をする黄藥師(張國榮)と小妹(王祖賢)。七歳で山にはいってから、小妹以外の女を知らない黄は、「私のことだけ思っていてね」という小妹にうなずくものの、師匠の居場所を聞きにきた三公主に一目惚れ。三公主とともに去ってしまうから、小妹は大激怒。師匠に背いて山をおりようとすると、従兄弟(張學友)に「許嫁の仲だ」と呼び止められ、こいつを蹴散らして、黄の後を追う。
 失意の従兄弟くん(こいつ、乞食族のボスで、北丐と呼ばれる)自殺しようとするが、そのとき、空を飛んできて、空飛ぶ靴に火がついてしまい、急降下する峰と激突、九死に一生(?)を得る。
 死にたい北丐は峰に自分を殺せと迫るが、いくらがんばっても殺せない峰は、どんどんひどい状態になっていく。

 一方、全真教の教祖(鍾鎭濤)がついに悟りを開いて山からおりるという日、弟弟子(劉嘉玲)と弟子たちが揃って出迎えようとすると、空から降ってきた靴が頭にささって教祖は死んでしまう。ちょうど通り掛かった三公主は教祖の遺言を聞いてその衣を手にして後を追うが、錯乱した弟弟子に兄弟子の仇と追いかけられることになる。

 さて、南の帝国の王子(梁家輝)は、胸に666と刻まれた「真心人」に「愛している」と言ってもらえれば昇天して仙人になれる、と父親に言われ、666の愛人を探して旅立つ。
 彼等が一堂に会した旅籠、そこが混乱のはじまりだった……。

 いわゆる「旅桟形式」(『ドラゴン・イン』なんかに見られるやつですね)をパロったこの作品、随所にパロ満載らしいんだけど、もうギャグを通り越してなにやってるんですかな状態になる。
 たとえば、カリーナ・ラウと三人の弟子たちによる「四人の白鳥」のパロディとか。
 家輝女装してレスリー襲う(だろう)とか。
 首になっちゃった家輝をサッカー玉に見立てて蹴りまくるレスリーとか。
 まぁ、あれとかこれとかいろいろあって、最後には究極の力を得た峰を、みんなが三公主助けて倒すって話なんだが……。

峰すなわち西毒で、この役を『東邪西毒』ではレスリーが演じている。
レスリーが演じた黄藥師が東邪で、『東邪西毒』においてはレオン・カーフェイが。
という役柄のチェンジでもって話がわからなくなっているが、実際はこの『東成西就』は『東邪西毒』の続編なのだ。『東邪西毒』のラスト、愛する人を失った歐陽峰(レスリー)が、旅籠に火をかけ旅立った先が、この『東成西就』の舞台となる国なのだな。あまりにテイスト違うんで、信じられないかもしれませんが、そういう作りです。

 このふたつの作品は、金庸の『射鵰英雄伝』にでてくる伝説の四剣士、東邪、西毒、南帝、北丐の若き日の話、という設定になっている。
 香港人ならみんな知ってるこの話、「あそこにでてくる爺たちも、若いころはこんな感じだったかもよ」というわけですな。
(で、前半と後半でこんなにテイスト違うのかよ、と言われても、それは王家衛と劉鎭偉だから、としか言いようがない)

 役柄こそ違うが、役者のほとんどはかぶっていて(あまりに撮影長すぎて、王祖賢脱落とかあったけど)、役者たちの演技の幅を見るにはうってつけかも。つか、あそこまで、シリアス映画とお馬鹿映画を「同時に」やっちゃう役者たちって、すごいと思うよ、ほんと。

 最後、めでたく昇天する梁家輝があまりにもおめでたい、ひたすら笑ってほしい作品なのであーる。


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