『スウォーズマン』

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タイトル: スウォーズマン 剣士列伝〈デジタル・リマスター版〉





原題:笑倣江湖
英題:SWORDSMAN
90年香港
制作:徐克ツイハーク
監督:キン・フー、徐克ツイ・ハーク、程小東チン・シウトン、レイモンド・リー
脚本:ウォン・イン、レオン・ユーミン
音楽:黄霑ジェームズ・ウォン、ロメオ・ディアズ
出演:許冠傑サミュエル・ホイ、葉童イップ・トン、張學友ジャッキー・チョン、張敏チョン・マン、午馬ウー・マ、林正英ラム・チェンイン

金庸(きんよう)原作の『笑倣江湖』を映画化したもの。キン・フーが作り始めたものの、途中で制作のツイ・ハークと意見があわなくなり、後半、ツイ・ハークがまとめたといういきさつで、キン・フーっぽさはそれほど濃くない。
のっぽでヅラのあわないサミュエル・ホイであるが、なかなかかっこよくて、アクション・シーンも決まっており、ちょっとびっくりする。
男装のイップ・トンは、実に可愛い。が、演技派のイップ・トンの使い方としては、ちょっと物足りないかな。
敵方の手先を勤めるジャッキー・チョンは、まったくにこりとしない不気味な剣士っぽくってよろしい。
苗族の女酋長という感じのチョン・マンは、実にぴったしって感じ。

途中、でてくる午馬と林正英のエピソードは、全体としては余計に見えるかもしれないけれど、この作品を貫く「笑倣江湖」という謎の箏曲譜を見せるシーンで、続く爺二人の川上情死(致命傷を負った林正英とともに午馬が船を爆破して自らも死んでしまうのだが、どうも情死に見えるのはなぜ?)シーンは迫力一杯。

ちなみに、この作品の続編『笑倣江湖2』は、李連杰リー・リンチェ(ジェット・リー)とミシェル・リーに主役交替して(チョン・マンの役は、ロザムンド・クワンだった)作られているが、これにブリジット・リン扮する東方不敗がでてきて大当たりしたため、一般的には「東方不敗」という名称のほうが通っている。できれば二作続けて見て、役者を見比べてもらいたいかも。
筆者はどちらもよいので、軍配あげにくい。萌え度アップして、童顔のジェット・リーに一票、かな。
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タイトル: ワイルド・ヒーローズ~暗黒街の狼たち






原題:『義胆羣英』
英題:JUST HEROES
80年香港作品
制作:徐克ツイ・ハーク
監督:呉宇森ジョン・ウー、午馬ウー・マ
脚本:イー・ワン、トニー・ハウ
音楽:黄霑ジェームズ・ウォン、ロメオ・ディアズ
出演:姜大衛デヴィッド・チャン、李修賢ダニー・リー、陳觀泰チェン・カンタイ、周星馳チャウ・センチー、張徹チャン・ツェ、午馬ウー・マ、黄霑ジェームズ・ウォン、成奎安セン・フイオン、秦シ市チョン・プイ、狄龍ティ・ロン

ショウ・ブラザーズを代表する監督の一人、張徹の監督何周年記念だったかな、で、張徹門下が一堂に会しての記念作品……となるはずが、「船頭多くして船山に昇る」の典型的作品となった、どうにも評価しづらい作品。
おそらくこの作品は、周星馳のシリアス演技が見られるということが、一番評価されるべきところかもしれないぐらい、困った作品。
本当は、ジミー・ウォン去りしあと、張徹作品を支えた、姜大衛と狄龍を中心に据えた作品になるはずだったのが、狄龍が冒頭だけ出演してドロンしたといういきさつがあるらしい。
そうでなくとも、ジョン・ウーとウー・マが監督するって段階で、全然テイストが違うのは一目瞭然。そしてまったく違うテイストの画面をつなぎあわせているから、違和感ばりばりで、それはそれで面白い。
で、ウー・マ監督のほのぼのシーンにおける魚屋の姜大衛が出色の出来というべきか。
いや、やっぱり豪雨の中、張徹演じる大親分がやられるシーンで、兄貴(陳觀泰)に泣きながら電話をかける周星馳がよかったなぁ。

ダニー・リーのファンとしても、この中途半端な役柄はいただけないのであるが、回想シーンで、デヴィッド・チャンと背中あわせの乱射シーンはちょいと美味しいかも。
あ、冒頭、バイクに乗って駆けつけるシーンがいいのか。(←無理やり思い出さなくても……)

物語は、大親分が殺されて、誰があとを継ぐかっていうんだけど、血縁(甥らしい)の衛は過去に女を兄貴(泰)に取られて嫌気がさして足を洗って魚屋をやっており、修は軟弱で人望がなく、武闘派の泰が継ぐかなって感じになる。でも、ジジイ連中(ボスの片腕の午馬と弁護士の黄霑)は、泰はやりすぎだと思っている。で、午馬は自分の義理の弟(という言い方をしているけど、よくわからない)である修を強引に後釜に据える。
もちろんそれではおさまらなくて、泰の弟分であるジャッキー(周星馳)は、修こそが大親分を殺したに違いないと、泰を親分にすべく画策。で、彼等を追っかける李刑事(ダニー・リー組のウォン・パックマンが演じている)を泰が殺してしまうのだが、ジャッキーは自分が自首するといって、兄貴から銃を奪って警察にいく。
ところがどっこい、収監されているジャッキーは、刑務所の仲間に殺されてしまう。「お前が生きていると、泰兄貴が困るんだよ」ということで。
実は大親分を殺したのは泰だったわけですね。
で、修が衛を口説いて二人で共闘して、泰をやっつけてめでたしめでたし……って話のはずなんだけど、最後はみんな死んじゃったのかしら?というぐらい派手な銃撃戦(ジョン・ウーだからな)で、どうもめでたしなラストじゃなかったな。
たぶん、ジョン・ウーは、大団円という終わり方は嫌いなんだろう。
女優が二人、衛と修の彼女役ででてくるけど、見事なまでに目立たないのは、ジョン・ウーだから、といってしまおう。

ただ、『霹靂先峰』とこの作品の周星馳は、もし星爺に興味を持ったら、見ても損はないと思う。『霹靂先峰』は映画デビュー作品で、若干26歳(?)の作品だが、どう見ても10代にしか見えないのがすごい。
でも、この『ワイルド・ヒーローズ』の、兄貴のことを信じて、兄貴の代わりに自首してでたのに、兄貴に殺されちゃう役は、すごく好きなんだな。

でも、この破綻しまくった話を、どうしたらまとめられるかって考えるという意味では、萌え度の高い作品でした。
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原題:小心間諜
英題:TO SPY WITH LOVE
90年香港
制作:泰迪羅賓(テディ・ロビン)
監督:マック・タイキット
脚本:シト・チクホン、トゥ・クォッワイ 鄭忠泰
撮影:李子衛
音楽:泰迪羅賓(テディ・ロビン)
出演:泰迪羅賓、ニナ・リー、シベール・フー

鬼才テディ・ロビンの八面六臂の活躍が見られる楽しい映画。
ニナ・リーとシベール・フーの激突も楽しい。
女の子たちのロックバンドのマネージャーをやってるテディ・ロビンは変なやつ。(ドラムスやってるマリア・コステロは有名な歌手で、役者としても活躍している。彼女のシャウトのきいた歌声は、『友は風の彼方に』の冒頭でも聞ける)
今日も今日とて、ボインなねーちゃん(エイミー・イップだ)に迫られ、うひひと思ったら彼女は死んでしまい、そのあと妙なやつらに付け狙われる。
どうやらボインちゃんが盗んだマイクロフィルムを追って、各国スパイが入り乱れている様子。
かたやニナ・リー、かたやシベール・フー、どっちが正義かニセモノか。
いや美女に迫られるなら誰だっていいぞのテディ・ロビン。
とまぁ、こんな感じで、やっぱり最後は振られるのね、という展開でござる。

ニナ・リーもシベール・フーも大好きなので、この映画それだけでも美味しい。
特にニナ・リーの扱いは最高。
しかしねーちゃんたち、どうして最後、喧嘩するのにレオタードでなきゃいかんの?
いや、そりゃやっぱり、美しいボディラインを余すところなく見せつけるためでしょう。
てな感じの楽しい映画です。
どうってことないストーリーだけど、無駄がないので見ていて飽きることなく、最後まで楽しませてくれるのも、香港映画としては上出来……かな。

テディ・ロビンは、『飛龍伝説オメガ・クエスト』といい、『羣龍奪寶』といい、すんげー美味しい役者である。
が、本業はやはり、音楽家だね。
本名は關維鵬(スタンリー・クワン關錦鵬と親類?)、子役としても活躍し、60年代に「花花公子楽隊」というバンドを結成して、TVなどでも音楽活動をしていたらしい。
プロデューサーとしても映画に噛んでいるし、当然、映画音楽も多数(とりわけ『友よ風の彼方に』の音楽は特筆に値する……と思うよ)、そして主役脇役とりまぜて、画面でも異彩を放っているというわけ。

一番好きな作品は『羣龍奪寶』かなぁ……あのちょっと底意地の悪い、しかも底力ありそーなオヤジの役はよかったよ。
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黄霑(ウォン・バッ……ジェームズ・ウォン)が、11/23零時46分、お亡くなりになったそうだ。前日急に具合が悪くなって、そのまま、だったらしい。死因は肺ガン、とのこと。
享年64歳。
ちょっと早すぎるような気がする。

役者としても、すごく好きな人だ。
ダニー・リー主演の『タイガー・オン・ザ・ビート2』の叔父さん役とか。
『ワンチャイ外伝アイアン・モンキー』の色ぼけした知事とか。
『美少年の恋』のうらぶれたゲイのオヤジもすごかった。

映画音楽家としてのキャリアは、40年以上というから、20台も前半から活躍していたらしい。キャリアのはじまりは、ショウ・ブラザーズではないかな。
《獅子山下》(70年代後半の社会派テレビドラマ)の音楽も手がけたという。
わたしがもっとも好きな彼の作品は、『笑倣江湖』の主題歌だ。劇中、午馬と林正英と許冠傑の三人が歌う曲。映画の中でも吹き替えで、黄霑自身が歌っている。

個性派ぞろいの映画人の中では、その温和で面倒見のよい性格から、クッション材として重宝されたらしい(笑)。とりわけ後輩の面倒見のよさでは有名。
とにかく「いい人」だという評判だった。

しかし私生活では、奥さんが三人! なかなか多情の人で、だからこそ、あぁいう艶っぽい音楽をえんえんと作り続けていけたのかなぁ。

香港映画の中でも、ひとつの時代が終わった~という感じがしますよ。

「讓霑叔安息[ロ巴]!」(どうか安らかに眠ってください)

([]で括ったのは、これでひとつの漢字として読んでくださいね、というものです)
原題:慈禧秘密生活
英題:Lover of the Last Empress
95年香港
監督撮影:劉偉強(アンドリュー・ラウ)
制作脚本:王晶(バリー・ウォン)
出演:梁家輝(レオン・カーフェイ)
   邱淑貞(チンミー・ヤウ) 
   于榮光(ユー・ロングワン)
   周嘉玲(バレリー・チャウ)

三級片です。
三級というのは、香港では、18歳未満禁止のこと。すなわち、ポルノ。
素っ裸のチンミー・ヤウが龍の張りぼてにしがみついて、ふわ~~~っと浮いてる画像もすごいんだけど、それよりもチンミーが皇帝(身体が弱い役柄に、筋肉隆々のユーさんあてるのはどうかと思う)を誘惑シーンのお尻が素敵すぎる。必見(爆)。
このチンミー演じる西太后といい仲になるのは皇帝の弟、レオン・カーフェイ。つか、レオン・カーフェイ、アジア一のセクシー・スターに恥じないというか、いやなんか違うでしょうっつーか、いや役を選ばないのは彼に始まったことじゃない香港映画なので、とやかくは申しませんが。

とにかくチンミーが可愛い。少女のチンミーのあどけなさも見事。
あと、皇帝を誘惑すると決めて、娼館に性技を習いにいくシーンなんかもお素敵。
特に皇帝を誘惑するシーン、男装していて、そこからするりっとズボンが脱げちゃうんだけど、そのお尻の魅惑的なことといったら、そりゃもうすごいこと。
ただ、後年の「こわい」西太后の話になると、ちょっとチンミーでは迫力足りないかな、とは思う。皇后のバレリーを殺しちゃうシーンとか、それなりにがんばって盛り上げてあるんだけどね。

でも、ポルノ映画というよりは、西太后ってこんな人だったかも~、という興味が沸きますな。特に、若いころの西太后に焦点あしてた作品はあまりないんで、ポイント高いかも。

でもやっぱり、チンミーのヌードでしょうねぇ。
ただ、なんだろう、三級片っていうほど、ポルノポルノした感じはしませんでしたよ。



タイトル: イースタン・コンドル






原題:東方禿鷹
英題:Eastern Condors
87年香港制作
制作:レイモンド・チョウ
監督:サモ・ハン・キンポウ
脚本:バリー・ウォン

出演:サモ・ハン・キンポウ洪金寶、ユン・ピョウ元彪、コリー・ユン元奎、ユン・ワー元華、ジョイス・コウ高麗紅、ラム・チェンイン林正英、チョン・ゴッキョン張國強、ユエン・ウーピン袁和平……他

サモハン組が山ほどでてくるアクション映画。地味でかっこいい。
ベトナム戦争当時、チャイナ系の悪人や犯罪者を集めた特別チームをベトナムに投入して……って、実話かどうかわかりませんが、いかにも~な感じの展開。
とにかく、一人また一人と死んでいくのだけど、その死に方をいかに「かっこよく」決めるかってところに役者一人一人が凝っていて、それがなんともいえずよいのです。
若き日のチン・カーロウ錢嘉樂がでてたりね。

特筆すべきは、この作品でデビューした(はず)敵役の元華でしょう。えぇもう、元華かっこよすぎ。
これからしばらく悪役で名をなしますが、ほんとーはすんごくいい人っぽい。彼の別の側面というと、周星馳の父親役を演じた『ドラゴンファイト(龍的傳人)』かなぁ。若い時から年齢不肖のさまざまな役柄をこなしています。脇役バンザイ人生。

それから、ならず者集団を率いる苦労性(?)の軍人役の林正英(合掌)。むっちゃえぇっすよ。もちろん、キョンシー・シリーズの道士さまとして有名ですが、『ユンピョウINドラ息子カンフー(敗家仔)』『七小福』の二作は、京劇役者としての彼を前面に押し出した名演で、涙そそります。でも実は個人的に一番好きな作品は『ロボフォース 鉄甲無敵マリア(鉄甲無敵 瑪利亜)』なのです。背広アクション萌え~~♪

その後、サモハンの奥さんになっちゃったジョイス・コウ、(『98分署 香港レディ・コップス(皇家女將)』が好きだ~)もがんばっておりやす。

あと、個人的にナイスと思っているのは、コリー・ユン(ユンケイさん、と呼んでいるけど)。サモハン・チームの「とってもいい人」で、監督も器用にこなす。ジェット・リー李連杰の『方正玉(日本語公開名はフラッシュファイター、だったかな?)』の監督やってて、二作目では、かあちゃん(ジョセフィーヌ・シャオ)とからんでおかしかったな。

いい役者が多くて、「あれも」「これも」って目移りしちゃうこの作品、サモハン・チームの息の良さってのが見られます。
いやもう当然、サモハンとユンピョウもいいでっせ。
で、微妙に地味っぽいのも、サモハンらしい特徴だな。

サモハンの殺陣(武術指導)それ自体、どちらかというと、派手というよりは、「綺麗」な感じがします。ちょっと舞踊の要素が入っているように見えるのは、もともと彼が京劇役者の学校出身だからなのかな。(元彪と元華は同じ学校の出身。林正英は別の学校の出身で、そこの出身者にはジョン・ローンもいる)
同じ学校出身のジャッキー・チェン成龍が、どちらかというとアクション過多で派手に派手に見せる方向(これこそが、香港で一番受ける形だと思うけど)に比べると、地味なぶん、玄人受けかも。

でも、全体にそこはかとなく漂うユーモア感(こんな作品であるにも関わらず)が、サモハンの人柄を示しているようで、すごく好きなのだ。
日本未公開作品
英題:All's Well End's Well(終わりよければすべて良し、って感じかな)
92年香港
制作監督:高志森(クリフトン・コー)


出演(キャスト)
常満:黄百鳴(レイモンド・ウォン)
常歡:周星馳(チャウ・センチー)
常騒:張國榮(レスリー・チャン)
満の奥さん:呉君如(サンドラ・ン)
歡の彼女:張曼玉(マギー・チャン)
騒の彼女:毛舜[竹/均](テレサ・モウ)

お正月映画である
監督のクリフトン・コーは、毎年、お正月の華やかな映画を作ることで有名な人。ほかに、「開心(ハッピー)」シリーズで、美少女を発掘したりもしてる。

この作品、たぶん、内容的に日本で公開されることはないんじゃないかと思う。
それは、途中、周星馳の演じているキャラが、日本的にはいろいろと抵触するような行動をするからだ。

さて物語はというと「常家には三人兄弟がいる。長男には大変賢い嫁さんがいる、次男は典型的なプレイボーイ、三男はというと、ちょいとおかまがかっている。それぞれ性格も違うから、愛情生活もまた、いろいろというわけで……」。

何が面白いといって、三男(周星馳より年下役かよ!)なレスリー・チャン演じる、おかまっぽい夢見る青年。
なんというか、しぐさのひとつひとつが堂に入っていて、それがとても自然で、すごく可愛い。
マギー演じるちょいといかれた女の子にぞっこん惚れた周星馳、鉄砲のような得意のセリフを繰り出すディスク・ジョッキーの役がまた、なかなかサマになっている。
この作品の中で、大変に好きなのは、呉君如である。まぁサンドラらしい大げさな演技もあるけれど、珍しく煮え切らない優しいタイプの女性役で、これが意外なほど嵌まっていて、芸域の広さを思わせる。
元気一杯の毛舜[竹/均](もうもう)も楽しい。モウモウもコメディエンヌなのだけど、サンドラとはかなり系統が違っていて、その比較もまた楽しいのだよ。
マギーは……えぇまだ後年のぶっとんだマギーにまで至ってません。ごく普通の若い女優に見える(笑)。

後半、サンドラが家をでて、カラオケ・バーで働いている時に、客で黄光亮(トミー・ウォン)がやってくる。ふだんはかなり目つきの鋭い、マフィアなあんちゃんなんかをやっているトミー・ウォンが、日本人相手の接待で下手なカラオケ歌うビジネスマンの役で、ちょっと出なんだが、すんごくいい味出してる。

もともとの揉め事は、レイモンド・ウォン演じる長男の浮気から始まるんだけど、調子のいいこの長男を演じているレイモンド・ウォンは、実は映画制作に長いことたずさわっていて、映画界では重鎮なのだ。
クリフトン・コーとはよくつるむらしく、お正月映画の常連である。

それにしても、周星馳と呉君如が出ているのに、二人がからまない話って、珍しいよね。

六人が六人とも、それぞれ主役張って演技ができるタイプなので、掛け合いも素晴らしく、お正月映画らしいおめでたい仕上がりになっている。

このお正月映画というと、1988年の『俺たちは天使じゃない(八星報喜)』が有名かな。チョウ・ユンファとジャッキー・チュン、それに上のレイモンド・ウォンの三兄弟が……という、同じパターンの作品だ。
制作者が全然違うけど『大英雄』もお正月映画。
私の手元には『九星報喜』というのもあるけど、これはずっとあとのお正月映画らしい。これがまた面白い映画でね。そのうち紹介しま~す。



タイトル: 狼 男たちの挽歌・最終章

原題:喋血雙雄
英題:The Killer


監督:ジョン・ウー呉宇森
制作:ツイ・ハーク徐克
撮影:ウォン・ウィンハン、ピーター・パオ
音楽:ローウェル・ロー
脚本:ジョン・ウー呉宇森

キャスト

ジェフリー:チョウ・ユンファ周潤發
リー:ダニー・リー李修賢
ジェニー:サリー・イップ葉倩文
シドニー:チュウ・コン朱江
チャン:ケネス・ツァン曾江
ジョニー:セン・フイオン成奎安

サリー・イップがすごくかわいそうな作品である(笑)。
そういいたくなるぐらい、いや、アメリカで「これはホモ映画だ!」と断じられてしまったのも仕方ないかと思えるようなエンディングである。

作品は、組織に裏切られた殺し屋のチョウ・ユンファと、彼を追う刑事のリーの、何をどう間違えたか手に手をとっての逃避行(と見えてしまうのはなぜ?)。
全体がジョン・ウー・テイスト、というか、これぞまさしく、ジョン・ウーそのものという展開ばりばり。(教会とか白い鳩とか、決して手を触れることのない恋人同士とか、必ず死ぬチョウ・ユンファとか)

最初に選んでおいて言うのもなんであるが、筆者はジョン・ウーの美学とは相いれないらしい。
だが、その美学は特筆に値する。
チョウ・ユンファの殺し屋の白いマフラーなんか、その最たるものだろう。
殺し屋と刑事が盲目の美女の前でお互いに銃を構えるシーンは、あまりにも有名だ。
余談だがこのシーンのセリフが、ずーーっと気になっていた。
広東語の字幕(これをみるためには、香港版のDVDないしVCDを入手する必要がある)でチェックしても首を傾げる部分はいろいろあったが。
なぜ、リーがジェフリーの弟分なんだ(爆)。(ちなみに、ダニー・リーはチョウ・ユンファより年長なのだ。若く見える?)

脇役も豪華である。
チョウ・ユンファの相方にチュウ・コン、リーの相方にケネス・ツァン。どちらも、一時代前の青春映画のスターたちで、脇役としても燻銀の存在だな。
チョウ・ユンファを裏切るボスに、一人悪役商会とまで言われたセン・フイオン、ボスの雇った殺し屋にリッキー・イーと、ダニー・リー・ファミリーが揃っている。特に、セン・フイオンはダニー・リー作品で映画デビューして(もとはスタントだったそう)その後悪役としてあちこちの作品に出まくってるしね。
この人のいい役ってのが、実に味があって好きなのだけど……。(『月黒風高』とかロレッタ・リー主演の『古惑仔』外伝とか)

チョウ・ユンファは、実はコメディやらせるとすごいので、こういうシリアス一辺倒な作品だと、彼の良さが十二分に発揮していない、などと思ってしまう。というか、情けない男やらせたら天下一品なのよ……。
ダニー・リーは、どこをどう押してもダニー・リーで、チョウ・ユンファと組んだ『友よ、風の彼方に』では役柄を交換している(チョウ・ユンファが刑事で、リーが強盗団一味)のだけど、どうにも強盗が似合わないのだった。
サリー・イップも器用な役者なのだけど、本当にこの作品は「かわいそう」の一言につきる。いや、女優としてのサリーではなくて、役柄としてのジェニーがかわいそうなだけだけどな。

裏切られた時のチョウ・ユンファのなんともいえない表情萌え~とか。
モーターボートに乗ってユンファを追っかけるダニー・リー萌え~とか。
そのあたりはいいんですが。 やはり、部屋中にユンファの顔写真を貼って、彼に対する想い(としか説明できん)を滔々と述べるダニー・リーに至ると、笑ってしまうしかないというか。
最後の最後に「名前をきいてなかったな」ってのも、どうだろうというか。

あ、一番ラスト、セン・フイオン殺しちゃう刑事って、そもそもどうよってのは、まぁおいといて。
きっと、チョウ・ユンファをこんな目にあわせたセン・フイオンが、監督は許せなかったのね~、とか突っ込みをいれてみるしかないでしょー。
なんとなく、意地でもチョウ・ユンファとサリー・イップの手を重ねないぞ、というあたりに、監督の妄執を見た作品であった。