鈴木あみのコンサート
あれは私が中学校三年生の頃のお話です。
まだ「鈴木亜美」が「鈴木あみ」の名で活躍していた頃のお話です。
まさに、その「鈴木あみ」の武道館コンサートに行った時のお話です。
時は西暦2000年。
物語は当時の友人、
鈴木あみ大好きっ子後藤(仮名)君の一言から始まったのです。
後藤「田中(私/仮名)!!
もし鈴木あみのコンサート行けたら一緒に行かない?」
当時私は、鈴木あみにあまり興味はなく、
SPEEDにウツツを抜かしていた身分でしたので、
あしらう程度に 「いいよ」 とOKを出したのです。
~後日~
興奮気味の後藤君が私に寄ってきて言うのです。
馬並みの鼻息で言うのです。
後藤君「チケット取れた!!」
当時の鈴木あみ人気と言ったら
もう飛ぶ鳥を落とす勢いなわけで、
武道館コンサートは発売後数分で SOLD OUT しちゃったくらい。
(Wikipedia 『鈴木亜美』 調べ)
そんな状況なので、正直中学校に通っている私たちは
チケットの販売元に電話などする時間もなく
チケットは事実上入手不可能な状態。
まさに Mission:Impossible なわけです。
皆が不可能と思われる状況を打破しただと…?
この場面、何回も見たことがある…。
ジ…ジョジョ?
まさか、この後藤………
ジョースターの血を受け継ぐもの!?
なんてDIO並みに勘ぐってみたり、みなかったり。
実際は、後藤君のお母様が息子に頼まれ
息子の授業中に電話を掛けまくっていただけの話。
そんなこんなで、約束したし
コンサートというものに1回行ってみたいと思っていたので
いざ、武道館へ!!
~コンサート当日、武道館にて~
いよいよ私にとっての初コンサートが始まりました。
左隣には鈴木あみファンの友人・後藤…。
右隣にはもっと鈴木あみファンの知らない誰か…。
なんか気になるヤツです。
”ファッションは一見普通だが、何かまだ隠している”
そんな感じのヤツでした。
コンサート開始時刻になり、暗くなる武道館。
音楽・歌声とともに鈴木あみの登場です。
盛り上がる会場。
湧き上がる歓声。
噴き出るPASSION。
興奮する友人。
曲がわからない私。
………盛り上がれるわけがない。
だって曲知らないんだもの。
準備不足もいいとこ。
もう周りを観察して楽しむしかありません。
そしてコンサートの雰囲気を学ぶしかありません。
私にできることは…それしかありません。
鈴木あみが歌っている間、キョロキョロと周りを見渡します。
依然盛り上がり続ける会場。
しかし、何曲か歌い終わると突然静寂があたりを包みました。
今まで散々「ワー!!」「キャー!!」言っていた皆の衆が
一言も発しなくなったのです。
それどころか、あっけにとられている私を尻目に
皆、椅子に座り出すのです。
友人も何が起こっているかわからない様子。
もう何が何だか…。
すると、鈴木あみが口を開くのです。
「皆さん、次の曲は座ってまったり聴いてください。」(こんなニュアンス)
察してやがる!!
バンドの雰囲気を察してか、鈴木あみの表情を見てか、曲順が決まっているのか、
何が理由かはわかりません。
しかし、その日武道館にいた者のほとんどが察して座ったのです。
なんなんだ、この「言われる前にやる」模範的な人間たちは…。
とりあえず、言われるままに座席に座り
しっとりとした曲を聴いていました(あいかわらずわからない曲)。
そしてその曲が終わると同時に会場は一気にまたボルテージがギュンギュン。
「ワー」だの「キャー」だの。
友人も手を挙げてYAH YAH YAHみたいな感じ。
…そういえば右隣は?
右隣のただものじゃない雰囲気を持つ者…。
メモってたーーーぁ!!
よくよく見るとコイツ、曲が終わるたびに
メモ帳を取り出してメモを取っているじゃないか!!
おそらくは曲順をメモっておるではないか!!
しかも落とされた照明の中で。
メモをとり終わったら何事もなかったかのようにノリノリになる右隣。
「静」 と 「動」 を繰り返す繰り返す。
なぜ気付かなかったのか…。
人間とは不思議なもんで、そんな右隣に気を取られていると
左隣が全くおろそかになってしまうもんです。
私がそのことに気付いたのは、
鈴木あみが武道館の2階席(私たちがいる所)の近くに来たときでした。
「あみぃ~ごぉ~っ!!!」
という聞き覚えのある声が…。
そうです。 お察しのとおりです。
…左隣の友人・後藤です。
彼は今まで私の前で鈴木あみのことをアミーゴと呼んだことはありませんでした。
しかし、空気に呑まれたのか、それが本来の彼なのか
「あみぃ~ごぉ~っ!!!」 なんて言いながら
思いっきり手を振ってるのです。
もう 遠心力で手がちぎれるんじゃね? ってくらい全力で。
隣の私への迷惑なんて考えずに、全力で。
どちらにしても、コンサート会場にいる以上、
正しいのは右隣・左隣なわけで、
マイノリティは私。
アウェイなのも私。
女子バレー国際大会開催中の代々木体育館にいる外国人選手くらいアウェイ。
それはわかってますが…
友人の変わり具合を目の当たりにした私は帰り道…
友人と話していても…
うまく笑えませんでした。
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