「大阪府警捏造事件」から見えてくる「児童ポルノ禁止法」の危険な性質
テーマ:反児童ポルノ法さて、飲酒検問の際に、警察官が、数値を水増し、捏造した事件に関しては、各紙の報道によると、「デジタル式」と呼ばれる検査器を用いた上で、
「デジタル式は事前に自ら飲酒するなどして数値が印字された記録紙を用意することが可能(読売)http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20120307-OYO1T00715.htm?from=main1より」
「事前に自ら飲酒し、基準値以上の数値が印字された記録紙を用意していた可能性が高い(読売)http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20120307-OYO1T00188.htm?from=topより」
「飲酒の検知作業は違反者の目の前で実施する決まりだが、山下容疑者は検知器が男性から見えないようにしていた(毎日)http://mainichi.jp/select/jiken/news/20120307k0000m040012000c.htmlより」
というようなやり口が用いられ、捏造がなされていたと言われています。また、捏造したとされる当人が
「署に1台しかない「呼気中アルコール測定器」を自由に持ち出すことができる立場(朝日)http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201203070082.htmlより」であり、「相手男性への聞き取りや呼気の測定などを1人で実施していた(朝日)http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201203070082.htmlより」
だったことも、問題の発生につながったのではないかとみることもできるでしょう。さらに、
「男性は検問時、警部補に「350ミリ・リットルの缶ビールを飲んだ」と説明していたが、検事の取り調べで証拠書類を見せられた際、500ミリ・リットルの缶ビールを飲んでいたことになっていた(読売)http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20120306-OYO1T00699.htm?from=topより」
と、微量ではあるもののお酒を飲んだ人をターゲットにするという方法を絡めてもいます。ターゲット自身にも、「飲んだ」という認識があるため、不正が露見し辛いということかも知れません。一種の「心理トリック」とも言えます。
こうした、仕掛けた側の警察官にとって非常に有利な状況と、物理的、心理的ないくつものトリックによって支えられた捏造も、「検問時に警部補からアルコールの検出数値が表示された検知器を見せられてもおらず、不審に思った男性が翌10月、「数値が高すぎる」と同署に抗議し、検出数値を水増しした疑いが浮上した(読売)http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20120306-OYO1T00699.htm?from=topより」ことから露見することになったわけですが、深刻な問題、脅威だったことは間違いないでしょう。明確な法的な基準で区切られているからこそ、法と「検査」の正当性が生まれるわけであり、それらの点がないがしろになってしまえば、不正な処理によって、市民が不利益を被ってしまうからです。
もっとも、「捏造の危険」は、現場の努力によってかなりの程度まで食い止めることが可能ですし、ここまで大事になってしまったからには、警察サイドも何らかの抜本的な対策に乗り出すものと考えられます。さすがに、便利なデジタル式計測器を旧型のアナログ式に戻してしまうということはないでしょうが、検査器の徹底した管理と、検査時の複数人態勢を順守することで、捏造リスクを相当数下げることはできるはずです。
一方で、事件の摘発にあたって、客観的な「数値」が機能しているとは言いがたい案件も存在します。とりわけ、「児童ポルノ禁止法」絡みの事案は、その典型例とも言えます。
法的に、「児童ポルノ」の要件を満たすには、「年齢」、「露出の度合い」、二号および三号ポルノに関しては、「性欲喚起性の有無」の三つが問われるわけですが、
「三号ポルノ」の一部については、露出的定義が、
「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11HO052.html)より」
であれば抵触するということになっているわけですが、どこまでを「衣服の一部」を着けていないものとして法規制の対象にするのかという部分が、極めて曖昧です。場合によっては、半裸状態だけではなく下着や水着、あるいはそれ以上に露出の少ない状態のものでも、違法とされかねず、逆に取り締まる側が、水着レベルの画像を摘発したとしても、「不当性はない」ということになるわけです。
「一号」、「二号」、そして、「三号ポルノ」の一部である、「衣服をまったく着けていない姿態」画像や映像の部分に関しては、露出的な定義は一応比較的明確化されていると言えますが、もっとも性的な度合いが強いとされる、「一号ポルノ」、すなわち、
「児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態」
を映した画像や映像以外の場合、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」かどうかによって、違法性が問われる形となりますが、「性欲の喚起性」を判断するのは、取り締まる当局側の一存によります。
そのため、普通はなかなか性欲を喚起するとは言いがたい乳幼児の裸の写真を「黒」と判定されても「不当」ではありませんし、逆に、「二号ポルノ」にあたるような「児童」の明確なエロ画像を「白」と判定したとしても「不当」とは言えません。
露出的定義の曖昧さと併せて考えても、警察は二号及び三号ポルノの合法性と不法性を、ほぼ完全に独断で定められる権限を有していると言えるのです。平等であるはずの法において、堂々と恣意での運用の「合理化」とも取れる条文が記載されているとも言えるわけですね。
もっとも確かなように思える「年齢」の部分についても、恣意的運用がまかり通っています。児童ポルノ禁止法の場合、年齢を客観的なデータから知ることができなくても、当局側が「見えた」と「判断」すれば「被写体は児童」ということになってしまうからです。今や全体の半数近くが特定年齢ではなく、「鑑定」によって「児童と主張」されたからということで、立件されているような状況です。
つまり、「露出」、「性欲喚起性」、「年齢」の全てで、客観的判断が可能な数値が存在していなかったり、あるいは恣意的運用が可能な状況があるわけです。飲酒検問で言うなら、警察側が「飲んだ」と言えば、客観的な証拠もなしに有罪にされてしまうという状況なわけで、これはもう、どうにもなりません。
もちろん、「水増し」もやりたい放題です。
というよりも、「露出」にしても、「性欲喚起性」にしても、水増しが半ば公認されているような法体系になっているので、「捏造した」と問題視されることがまずあり得ないという形になってしまっています。
「年齢判断」の部分にしても同様です。
確たる物証ではなく、自白ですらなく、ある意味では、取り締まる側の主張がそのまま「証拠」になってしまうのです。
客観的な数値をもって違法の基準としているわけではないので、今回の大阪の事件のように、数値の不備を突くこともできなければ、裁判で反証することもできません。トリックによる捏造の危険はあっても、常に客観化、数値化した物証を求められる飲酒絡みの事案と比べると、児童ポルノ禁止法の悪い意味での曖昧さ、客観性の無さ、恣意での運用を半ば「公認」している危険性は、特に際立つものがあると言えるでしょう。
単純所持者、取得者に対しても、その法的処罰範囲を拡大しようとする動きのある児童ポルノ禁止法ですが、もし仮に処罰範囲が拡大したとなると、法律の性質上、大阪の水増し事件と同等、あるいはそれ以上にひどい恣意的運用の横行は避け辛いものがあると言わざるを得ません。そして、「一枚の画像を見ていただけで百万人を逮捕することが可能」な法律である以上、警察が本気を出せば、そうした危険な法律の脅威に、年間で数万人、あるいは数十万人以上の人が晒されるという事態は、普通に考えられると言えるでしょう。
本日のまとめ
● 警察による不祥事報道が相次いでいるが、情報が隠ぺいされた結果表に出てこないからすれば、かなりマシな状況ではある。
● 大阪での飲酒捏造事件に関しては、いくつものトリックと、それを可能にする状況によって行われたが、露見した。数値が明確化されており、提示された数値と実情の明らかな違いを指摘できたことが大きかったと言える。
● 一方で、児童ポルノ禁止法には、「露出的定義」の部分で曖昧な点が大いにあり、二~三号ポルノに組み込まれた「性欲」定義も、極めて主観的で、半ば、法律が当局による恣意的な運用を「公認」してるとさえ言えるれべるであり、「年齢」に関しても、画像の見た目だけで判断して立件することが公認されていて、しかも極めて常態化している。
● 客観的物証など望めない部分が多過ぎるため、法律的に大阪の事件にあったような、あらゆる水増しが行われるのを防ぐことができず、被逮捕者側は、不正を突くこともできなければ、裁判で反証することもできない。ある意味では、警察官の言葉がそのまま「証拠」になってしまう。
● そんな物証主義の対極に位置するような法律による処罰を、情報の取得者、ないしは単純所持者まで拡大させようとする動きがあるのが現状だ。もし取得・単純所持罪が成立し、警察が摘発に本腰を入れたならば、「一枚の画像を見ていただけという百万人を逮捕する」こともできる法律だけに、年間数万人~数十万人以上の人が、この「水増し恣意的行使何でもアリ」の法律の脅威に晒されることも現実的に考えられる。
参考文献 児童ポルノ禁止法条文 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11HO052.html






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