移民/外国人は「便利な敵」~日本版「プラン・メキシコ/NAFTA」への罠(7)~ |   「生きる権利、生きる自由、いのち」が危ない!

  「生きる権利、生きる自由、いのち」が危ない!

突きつめれば「命どぅ宝」!
【新】ツイッター・アカウント☞https://twitter.com/IvanFoucault
徳冨蘆花「謀叛論」を再発見してたら、
「ソクラテスの弁明」が、なぜ好きなのか、最近になって納得し始めた今日この頃です。


前回記事では、
新自由主義政策」の一環のおかげで
働き手のクビが切られやすくなり
それまで〈中流階層だった働き手人々〉が、
”「底辺層に追いやられてしまった”り、
また〈低所得層〉が、
より困窮(こんきゅう)に喘(あえ)ぐようになる事から、
イタリア映画の『自転車泥棒』のような
悲しい事情もふくめて、
軽犯罪化が増える”など
全体的に治安が悪くなる」のだが、
その解決策は、治安悪化の根源である
新自由主義ネオリベラリズム)」政策そのもの
ではなく
「〈底辺層〉への取締の徹底化投獄化」をおこなう、
という「問題のすり替え」が行なわれる為に、
アメリカの〈ネオコン(新保守)のシンクタンク
が発明した刑罰化理論
――「新自由主義政策補完する刑罰化理論」――
を、アメリカから大西洋を越えて、
ヨーロッパに導入・輸入するための
下準備”や”舞台裏”、”策動の模様を見ました。


そこでは「問題のすり替え」、
「問題のすり替え」のために
あらかじめ間違った解決策や選択肢だけしか
用意されていなかった
模様を押さえました。


ロイック・ヴァカン教授いわく、
大西洋を渡ってきた治安回復の物語は、
福祉国家に対する戦争を背景に、
ネオコン・シンクタンクが普及させたものである。
それらは、ナンセンスな概念
「理論」を装ったスローガン
そして社会学的な偽りによって織りなされた
きわめて退屈な物語だった。”
(ロイック・ヴァカン『貧困という監獄』P.58)


徹底的な取締り刑罰政策をするため口実である
“「都市暴力」という概念が、
じつは統計上の一貫性も、社会学的な厚みもない
行政上の完全な人工物であることを明らかにする共に、
この概念
どのように政治的に発明され利用されているか
を描写すること、
これこそが研究者の使命なのである。”(P.51)

マスコミ行政御用政治家御用学者も、
たとえば「都市暴力」という作られた脅威現象から、
まだ底辺層に叩きこまれていない市民〉を
救う”ためには、
警察を増強し、取締りを徹底化し、
刑罰を厳格化すること
不可避である”と、
捏造された研究結果の累積を論拠として
正当化しようとするのであるが、
そうした「世の中の動き」に一定の距離をもって
冷静に物事を捉え、問題の根源を掴もうとする、
ロイック・ヴァカンという社会学者は、
本当の問題の所在を、次のように見ています。


”この「都市暴力」の「爆発」こそ、
貧困刑罰によって管理するという、
いまのジョスパン政権[フランス]の路線転換動機
――または口実――となっているのである。
この「都市暴力」というカテゴリーは、統計的には、
あらゆるものをごちゃまぜにしたナンセンス
ほかならない


     (引用者中略)

問題の所在は、
国家規制緩和政策を推進する一方で、
経済や都市政策の領域から撤退した結果
(引用者:「小さな政府」化した結果)

貧富の格差が拡大し、
労働条件社会環境大きく不安定化したことにある。
しかし、これについては、
口に出すことも憚(はばか)られるのである。”
(同P.64-65)

これについては、
口に出すことも憚
(はばか)られる”というのは、
個人的に興味深いもので、
保護主義擁護論」や「自由貿易への懐疑」の声を
出すこと
出来ない空気
日本国内では成立しているように
(中野剛志『自由貿易の罠』)

フランス国内などでは”治安問題本当の所在が、
新自由主義政策であること”を指摘することが、
タブーであって、封殺化の空気
成立してしまっているように受け取りたくなります。

もし仮にそうだとすると、アメリカのシカゴ大学 社会学部に所属しているからこそ、
祖国のフランスをはじめヨーロッパの世情を、
(はばか)る”ことなく、問題の所在の究明を
続けることが出来た
のでしょうか?
――新自由主義の総本山は、
(故)ミルトン・フリードマンを教祖とする
シカゴ大学 経済学部という皮肉――


さて、
問題の根源」や「問題の元凶」たる
新自由主義」政策に、
眼差し問題意識向けさせず教えない為にも、
その代わりに、
学術がかった粉飾をふりかけた
偽物の犯人を用意することで
一般国民〉や〈大衆〉の視線を
問題の本質や根源から
(そ)らして
目くらまし」をさせたまま
なので、
問題の元凶知らない大衆〉を
(あざむ)いて利用すべく

政治や経済的事情からくる〈大衆の不満
移民に向けさせて支持を集めたり
いろいろと好都合な方向に運ぶべく利用する
ヨーロッパの政治家の狡知(ずるがしこ)を、
今回は取り上げておこうと思います。


ただし、〈ヨーロッパ白人の大衆の不満を、
〈(有色人種の)移民に振り向けるに当たっては、
司法警察が、〈(有色人種の)移民系〉を、
”「差別的不公平」かつ「優先的」に捕まえ
投獄している”事から、
きわめて恣意裁量操作的な既成事実”が
成立してしまっている事を、まずお伝えしておきます。


ヨーロッパの刑務所の「常連客」と呼べるのは、
今日ますます、労働者階級の下層部分であり、
とりわけ、
アフリカ系労働者家庭に育った若者たちである。

 たしかにヨーロッパのどの国でも
外国人や「第二世代」と呼ばれる
非西洋地域出身の移民の子ども
そして有色人種は、厳しい状況におかれている。”
(P.106)

フランスの刑務所
外国人割合が増加しているのは、
一部の排外主義者が唱えるように
外国人の犯罪が深刻化したからではなく
もっぱら入管法違反で収監される人の数が
二〇年間で三倍に増大したからだ
ということが明らかになる”(P.109)

”たとえば警察による一時拘留のような、
一見きわめて中立的で平凡に見える司法の実践も、
外国人移民に見える人々に対しては、
徹底して不平等に作動する傾向がある。
かつてロンウィ―労働者街の若者たちは、
[このフランス司法ダブル・スタンダード
揶揄(やゆ)して]
司法には四〇変速のギアがある
と表現したことがある。
彼らの表現を借りれば、
この「四〇変速司法」は、
問題地区」などと遠回しに呼ばれている、
札付きの地区の住民たち検挙し
収監するときには
トップギアに切り替えて、爆走する術
フランス司法は]わきまえているのだ。
もちろん、
そのターゲットとなる失業者移民家庭は、
「栄光の三〇年」と言われる好景気の時代に、
これらの地区に定住するようになった下層労働者
ほかならない。
事実、
シェンゲン条約マーストリヒト条約によって、
EU域内の自由移動に向けた法整備が進むと、
EU域外からの移民問題は、
条約調印国によって、
大きく再定義されることになった
すなわち、
行政の言説政策の言説の両面において
移民問題は、組織犯罪テロリズムと同じように
各国の内政問題にとどまらず、
ヨーロッパ大陸全体の治安問題として
捉えられるようになったのである。
こうしてヨーロッパ中で、
警察、司法、刑務所足並みを揃えて
外見が非ヨーロッパ人の人々
徹底的に取り締まるようになった
これらの人々は肌の人すぐわかるため、
それだけ警察司法横暴に晒されやすい
こうして、まさに移民
犯罪者に仕立て上げる構造がつくられ

犯罪を撲滅(ぼくめつ)するどころか
むしろ
いたずらに犯罪者が
生み出されている
のである。


 この移民犯罪者化のプロセスを
大いに助長しているのが、
さまざまな政治的潮流のメディア

政治家の存在
である。
彼ら
犯罪が増えているのは、移民のせいだ
と主張することにより
一九八〇年代のネオリベ改革以降
ヨーロッパに蔓延するようになった排外主義感情を煽りたて
大衆的な支持を獲得しよう腐心しているのである。
このメッセージは(引用者中略)
ますます抵抗なく受け入れられていることは
間違いない
こうして、(非ヨーロッパ系の外国人たちは、
世間から常にうしろ指をさされ
真っ先に疑われ
社会の片隅に追いやられている

しかも、国家権力からは
異常なまでの執念深さで追い回されているであろう。


 ノルウェーの犯罪学者ニルス・クリスティーの
表現を借りれば、外国人
便利な(suitable enemy)」にされている
(引用者中略)
外国人移民は]
あらゆる社会不安のシンボル兼ターゲットされているのである。
このように刑務所と刑務所の与える烙印
背景として、ヨーロッパでは
白人以下というカテゴリーが形成された。
このカテゴリーは、
抑圧的な措置による貧困層の管理
正当化するために
作りあげられたものである。
しかも、
このような弾圧政策
国籍を問わず
大量失業不安定雇用に蝕まれる
大衆層全体
拡大しようとしている
のである。”
(同P.111-113)

以上の引用文を通じて判かるのは、
検挙率や投獄率の累積データや実績が示すとおり、
「移民」や「有色人種の外国人」や
「問題地区の定住者」だから、
「都市暴力の張本人」になりがち、
というよりも、
40変速ギア」よろしく、
不公平」かつ「恣意的」に
まず優先して移民有色人種の外国人」が、
検挙逮捕投獄されるが故に、
外国人系移民系」の
投獄率・犯罪率データが、
既成事実データ」として”構築されてしまう
という事であります。

「困窮」や「境遇」や「居住地域」によって、
就職などが制限されてしまい、
犯罪に奔ってしまう悪循環
は、
昔からあり、その点も視野に入れておくべき一方で、
移民投獄傾向の既成事実化常識化」が、
変速ギア」の恣意裁量的取り締まりで、
構築されることになり、
そして、「マスコミのプロパガンダ」、
扇動政治家の排外主義マイクパフォーマンス」で、
常識”や”一般通念”として
世間的に認知されてしまう」のですが、
その認識は、本質に通じていないので
やがて結局は
そうした扇動に乗せられて、利用された結果、
自分たち一般国民にとっての禍患(かかん)
となって、降りかかって来るのでありした。


その”禍患”とはか?

それが、
恣意(しい)捏造的に構築された既成事実」を、
マスコミのプロパガンダ〉と
御用政治家による排外主義的演説〉に
まんまと乗せられて
一般大衆圧政策が、
[やがて結局は]国籍を問わずヨーロッパ白人)、
大量失業と不安定雇用に蝕まれる
大衆層全体へ拡大
する
、という禍患なのであります。

 なぜ「〈外国人移民への弾圧」が成立する
世間的空気」は、権力にとって都合がよく
外国人移民は、
便利なのでしょうか?


それは”社会不安シンボル”としての
スケープゴート犠牲)」あるいは「隠れ蓑
になってくれるのでありますが、
便利隠れて
どういう正体が潜んでいるのでしょうか?


そこで、何故「〈移民への弾圧政策」が、
ヨーロッパ白人〉も含めた〈一般国民〉の
大量失業」と「雇用不安定化」と
繋がることになるのでしょうか




そのメカニズム
の話が、
次回以降に紹介していくテーマであり、
このシリーズを設けた理由であります。



なぜ「雇用融解」や「雇用不安定化」、
そして「軍国化を忌み嫌うのか
そのワケも、読めてくるのではないでしょうか?