バス事故、運転手を逮捕=「疲れて居眠り」―
関越道乗客45人死傷・群馬県警
時事通信 5月1日(火)21時0分配信
大型バスが道路脇の遮音壁に激突し、
乗客7人が死亡、
38人が重軽傷を負った事故で、
群馬県警は1日、
自動車運転過失致死傷容疑で、
千葉県印西市のバス会社「陸援隊」運転手の河野化山容疑者(43)=千葉市中央区新宿=を逮捕した。
県警によると、同容疑者は
「居眠りしたのは疲れていたから」
と話している。
河野容疑者は、
高速道に乗ってから事故まで
「計3回休憩した」と供述。
休憩は1回15分だったと説明しているという。
県警高速道路交通警察隊捜査本部は、
バスの走行状況や事故までの経緯を捜査。
会社側にも、
過労運転を容認した道交法違反の可能性がないか調べを進める。
逮捕容疑は
先月29日午前4時40分ごろ、
藤岡市内の関越道で、
大型バスを時速約90キロで運転中、
道路左側の遮音壁に衝突し、乗客45人を死傷させた疑い。
河野容疑者も重傷を負い、
前橋市の病院に入院したが、
病院の検査結果から逮捕は問題ないと判断した。
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今村昌平監督作品で、
柄本明さんが主演された映画で、
『カンゾー先生』という映画があります。
この映画の舞台は、
太平洋戦争中の日本で、
たしか瀬戸内海沿いのどこかだった、
とウロ憶えの記憶があります。
柄本さん演じる主人公のお医者さんは、
どの患者さんに対しても、
「肝臓炎だ」としか診断しないので、
肝臓炎しか知らないヤブ医者として、
近所でバカにされるのでした。
そして「肝臓炎」としか診断しないので、
『カンゾー先生』という訳です。
でも「肝臓炎」という診断は、
決してヤブ医者の見立てではなく、
「欲しがりません、勝つまでは」
というフレーズが象徴するように、
軍国主義の日本の在り方は、
国民に無理を強いるような統治支配だったようです。
たしか朝日新聞出版社が刊行していた本で、
日本が降伏した事実を知って或る国民が、
昭和の天皇陛下に向けて、
”私たちの尽力が足りず、申し訳ありませんでした”
というような声が出てきた、
という記録があった憶えがあります。
夢も、贅沢も、出征した大事な身内の命も、
何もかもが、
強制的に「戦争の犠牲(投資)」になり、
そうした投資=犠牲を払っている以上は、
彼らも、ある種の投資者にならずを得ず、
当時の彼ら日本人の犠牲=投資が報われるのは、
「戦争に勝つ」か「戦争に負けない」事だったからこそ、
そういう料簡(りょうけん)や言葉が出てくるのではなかったか、
と思ってしまいます。
そういった国民がカツカツの在り方には、
当然に無理(歪み)が生じてくるのでした。
患者全員に見受けられる「肝臓炎」は、
「欲しがりません、勝つまでは」という
無理な在り方ならではの歪(ひず)みの証左だったのです。
あるいは少なくとも、
この戦争当時において成り立っていた、
理不尽や不合理や都合や利害・慾や権力行使の様々が、折り重なった縮図を、
「肝臓炎」と相関させて、
表現されている映画ではないか、
と思われます。
「いびつさ」や「無茶な在り方の歪(ひず)み」を、
「肝臓炎」という言葉や症状をとおして描く、
という表現手段に、面白味を感じたもので、
この映画を憶えていました。
ちなみに、この映画のラストでは、
広島に原爆が落とされて、
そのキノコ雲の不気味さをして、
カンゾー先生に、
「肝臓炎じゃ」と言わせています。
さて時代変わって現在にあっては、
虐待は、
その虐待者による犯罪には違いありませんが、
その一方で、その虐待現象の内に、
<雇用の不安定化>や<労働条件の悪化>
という社会問題も、同時に思ってしまいます。
正社員であっても、
フラストレーションやストレスの捌け口が、
「セクハラ」という形であったり、
「パワハラ」という形であったり、
「変態行為」や「痴漢」という行為で出たり、
「いじめ」、
さらには、”暴力という形で発散”すれば、
責められたり、咎められるので、
「正義」という偽りの仮面をつけて行使する形で、何とか自身の良心を納得させて、
”合法的に”誰かを責める、
つまり八つ当たりする
――世界を良くするためではなく、
ストレスや暴力を発散するための偽りの「正義」――。
ある会社によっては、
そうしたストレスの捌(は)け口の犠牲として、
派遣労働者を雇って、
正規社員のストレスの遣り場を、
スケープ・ゴートさながらに、
その派遣社員に一手に集めさせて、
サンドバックのように、
精神的にボロボロにされて、
ポイ捨てされる場合まで、あるようです。
こうした「いじめ」は、
まがう事なき社会的な病気ではないでしょうか。
ストレスや攻撃性の捌け口の形態は、
さまざまでも、
新自由主義の「トリクルダンウン理論」さながらに、
そのシワ寄せは、
立場が上の方から下の方へ、
そして弱者のほうに、弱者のほうに、
流れていきます。
それが、きれいな瞳をした子供たちや、
同じく、きれいな瞳をした動物たちに、
そのシワ寄せが、
集まって来ませんでしたでしょうか?
きらきら輝いていた円(つぶ)らな瞳からは、
ひかりが消え、闇がさしていくのでした。
<経済分野に関する規制緩和>は、
競争激化により、
経済活動に従事する労働者の、
雇用条件や労働条件、ライフスタイルにも、
影響を及ぼしました。
つまり、経済分野だけの<規制緩和>や<自由化>などといったある一面の変化だけでも、
「労働の在り方」や「社会の在り方」を変容させるには、
じゅうぶんなのではないでしょうか?
そう、それはケータイの存在一つで、
社会の在り方や仕事に仕方や就活の在り方が、
いつしか、まったく変わってしまっているように。
グローバル化により、
国際レベルでの激しいコスト競争を背景にして、国際競争の生き残こりをかけて、
各国が、
国内の産業を保護してきた<経済分野の規制>を
緩和したり、撤廃したりしましたが、
各国には各国固有の、地理条件や文化や歴史があるにもかかわらず、
なぜか共通して、
やがて決まって<労働や雇用に関する規制緩和>に、
事が運んだようです。
つまり、<規制緩和>や<自由化>で
競争が激化した中で、競争に勝つべく、
自由に経済活動を展開するには、
労働者の権利や雇用を保護する規制は、
ジャマでしょうが無い、と。
そうして<経済分野の規制緩和>のおかげで、
企業側からの要請の声が続出して、
ついに<労働や雇用に関する規制緩和>も、
実現されてしまえば、あとに待っているのは、
「労働の商品化」と「雇用融解」、
つまり「労働力の買い叩き状態(買い手市場化)」だ!
冒頭に引用した新聞記事で、
わたしは、
2002年の「改正道路運輸法」(小泉政権)という
<規制緩和>による、タクシー業界の労働条件の悪化を、真っ先に思い浮かべました。
タクシー事業への新規参入と大量乗車とで、
”低価格競争の悪循環or好循環”が起こりました。
タクシードライバーは、
競争が激化すればするほど、
お客さんを探したり、
また、より理想的に送り届けるべく、
無理な運転をしなければならなくなる、
といいます。
生活が出来るようになるためには、
休日乗務と長時間労働との毎日。
そうした不眠不休の勤務にもかかわらず、
競争の激化で、平均賃金は、生活するには、
やっとの金額。
タクシー業界にかぎらず、
トラック運送業界でも、
”1円でも安く、1秒でも早く、
荷物を送り届けることで、
なんとか生き残ってゆく”
という激しい競争が、展開される一方での、
「居眠り運転事故」と、
それによる「業務上過失致死罪」の発生。
「飲酒運転」は言語道断ですが、
交通運輸業界の<規制緩和>での競争激化、
その中で生き残るための「コスト削減」という「合理化策」は、
そこに働く労働者が注意すべき「安全性」を
確保するための「余地」が、
やがて犠牲になるのではないでしょうか。
「効率化」あるいは「工夫」は、
「余地」を創出する手段になりうる場合があるのですが、
「効率化」で創出できた「余地」も、
やがて<競争の激化>が見つけ出し、
それも奪い取っていってしまうのではないでしょうか。
”1円でも安く、1秒でも早く”送り届ける競争の激化により、その会社にも、ドライバーにも、無理を強いるようになり、
それが合法‐違法の境界を越えさせ、
安全性が殺がれていき、それがやがて、
事故につながるという訳です。
もし私が、<規制緩和>推進論者ならば、
物は言い様で、
「<規制緩和>による競争激化で、
良質ながら低価格で、
商品やサービスを、
消費者は購入する事ができますよ」
と取り上げます。
でも私たちは、「消費者」であるためには、
まず先に、「収入を得る必要」があります。
その「消費者」でもある私が、
その<規制緩和>や<自由化>の猛威にさらされる業種で働く身ならば、
”高品質・低価格”、そのための「雇用融解」を、もろに受ける立場に立たされる事をも、
意味します。
消費者としては、
”高品質で低価格”に越した事はありませんが、
何かの歪(ひず)み(「雇用融解」)をともない、
それが前提での”高品質・低価格”は、
その無理さ(不健全さや不自然さ)により、
やがて何か「悲劇」や「悲惨」という帰結で、
世間に顕(あら)わになるはずで、
それは、「悲劇」という形で発生するばかりでなく、
直接的にか間接的にか、まわり回って、
自分にも降りかかってくるものではないでしょうか?
「自助努力」という言葉、
あるいは「自己責任」という言葉、
そして今回の「過失致死」という言葉の中から、
金子勝 教授による
「思い起こせば、不良債権問題、イラク戦争への協力、小泉「改革」の失敗、原発事故……と、
失敗を何も総括せず、
誰一人責任を取っていない。
だから、何度でも同じ失敗を繰り返すのだ。」
という言葉を、
掘り起こすことが出来ると思っています。
http://asumaken.blog41.fc2.com/blog-entry-4333.html
もし、こういう過失事故が起こってしまうと、
そのドライバーは、
捕まる身でありながら、
同時に、政策や社会の被害者でもあるように思われるのは、私だけでしょうか?
もし、こうした人々が捕まるのならば、
その政策を実施した政治家や官僚も、
捕まるべきではないでしょうか。
それが「責任」じゃないのでしょうか?
辞任する事は、けっして「責任を取る」ことではなく、
「課題を片付けもせず、やり逃げていくこと」でしかなく、
責任は、自分も、その償いをする事でしょう。
「保釈金」で逃げることも許さず、
犠牲者に対して償うぐらいの「責任」追及が無いから、何の知識もなく、大臣を拝命できたり、”売国”や”国賊”という形容詞を使いたくなる政権運営が、実現されてしまうはずです。
「悪気が無かった」というならば、
彼らドライバーにも、
「悪気が無かった」はずです。
それに、
社会や雇用、労働条件やライフスタイル、
そして人生を、メチャクチャにしたり、
経済的理由で、
市場からの退場を余儀なくされたり、
また消費税の徴収で、商売の資材も差し押さえられて、生きる術を奪われて、自殺していった経営者たちの死屍累々が、
この10年余だけでも、
何万人も出てきたならば、
それは戦車や機関銃で、
市民や国民を銃殺し回った国家テロと、
実質的かつ結果的には、
なんら変わりません。
ただ、「武力テロ」ならば一目瞭然ですが、
「経済テロ」は、放射能や放射線のように、
目に見えず、手で触れず、匂いを嗅ぐことができない・・・
つまり、その原因やメカニズムを把握しないかぎり、存在しないに等しい、
という厄介なものです。
そう、ちょうどマスコミや御用学者が、
原発利権で、国民にウソを流布して、
権力に与したように、
「構造改革」や「規制緩和」、「自由化」や「グローバル化」の欺瞞を流しつづけるかぎり、
市場からの退場で、
路上に投げ出されたり、
離婚で家族が崩壊したり、
自殺者が出たとしても、
その暫定的な原因が、
「不景気」や「格差」など、
悲劇をもたらした当事者たちにとって、
非常に都合がいい「解釈見解」で片づけられるように。
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「ツアーバスの功罪」
http://d.hatena.ne.jp/shoriuchi/20120112」6384091<関連記事>
○ 鎌田實 「中流崩壊」
○ 水谷修 「こども崩壊」
○ 鎌田實 「人間の心のなかには獣がいます」
○ 正社員化への道を阻んだ大手輸出企業(消費税増税が、ワーキングプアを増加させる《番外編》)
○ ”レプリカント化”に追い込まれていく人類!?
○ 「グローバル化」って何だろう? ~その1~
○ グローバル化って何だろう? ~その2~
○ 新自由主義(市場原理主義)は「征服の武器である」(『私物化される世界』)
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「カンゾー先生」 (Wikipedia「カンゾー先生」)
あらすじ
1945年 (昭和20年)、岡山で開業医を営む赤城風雨は、
周辺住民で流行していた内蔵病を、
往診するたびにあちこちで肝臓炎と診断していた。
その一辺倒な診断から
「カンゾー先生」と住民から小馬鹿にされ、揶揄されつつも、
肝臓炎の研究には人一倍熱心だった。
その肝臓炎とした診断が
周囲に信用されないなかで、
彼の独自に行う肝臓炎の研究が進む。
肝臓炎原因の究明へ赤城風雨が向かう頃、
看護婦として雇っていた淫売癖のある万波ソノ子が、
近隣の捕虜収容所から脱走したオランダ兵のピートを、
何の気なしに怪我人として赤城医院へかくまってしまう。
第二次世界大戦の日本帝国軍と虚勢する日本兵と、
その捕虜オランダ兵を巡って、
赤城風雨の周囲の人々を巻き込み、
開業医としての彼の在り方があやふやになっていく。
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<関越道バス事故>
「陸援隊」に多数の法令違反…運輸局監査
毎日新聞 5月2日(水)21時31分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120502-00000087-mai-soci
群馬県藤岡市の関越自動車道で7人が死亡した高速ツアーバス事故で、バス会社「陸援隊」(千葉県印西市、針生裕美秀<はりう・ゆみひで>社長)に多数の法令違反があったことが2日、国土交通省関東運輸局の特別監査で分かった。
同省規則で義務づけられている運行指示書を作成せず、
乗務前に運転手の健康状態を確認する「点呼」も実施していなかった。針生社長が同局の聴取に対し認めた。
関東運輸局は2日、4月30日に続いて2回目の監査を行い、針生社長からも事情を聴いた。同局は安全管理面で重大な違反が常態化していた疑いもあるとみて、乗務記録などを精査し運行や労務管理の実態を調べる方針。
同局関係者によると、針生社長は運行ルートや休憩場所を記載した運行指示書を作成せず、自動車運転過失致死傷容疑で逮捕された運転手の河野化山(こうの・
かざん)容疑者(43)に対し、東京ディズニーランド(千葉県浦安市)に着いた後、旅行会社「ハーヴェストホールディングス」(大阪府豊中市)から行程表
を受け取るよう指示していたという。また、運転手が遠隔地にいる場合は電話で点呼を実施する義務があるが、それも行わず点呼簿も作成していなかったという。
さらに、事故を起こしたバス以外の運行指示書も一部保存されておらず、乗務時間などを定めた国交省の基準に違反しているケースも認められた。営業所には乗務員の経歴などを記録した乗務員台帳が見つからず、安全教育を怠っていた疑いも浮上。同局関係者は「挙げたらきりがないほどの違反が見つかった」と話している。
一方、成田労働基準監督署は2日、「陸援隊」の勤務実態を調べるため3回目の調査に入った。千葉労働局によると、調査には針生社長が初めて立ち会い、労働基準法が定めた労働時間を超える勤務実態がなかったかなどを聴いた。同署は今後、河野容疑者への聴取も検討する。
【一條優太、田中裕之】