「…改札口まで…行きます…」
「…えっえっ…す…すみません…」
今年は…
これで…もう…逢うことはない…だろう…
「…どうぞ…よい年を…」
ふりかえり…改札口まで見送ってくれた方に…声をかけた…
「………」
怯えが浮かんだ瞳に…ぶつかり…
はっとして…目を…逸らしてしまった…
浮き足立った…クリスマスも…
慌ただしい…大晦日も…
静寂の…元旦も…
邪魔で…恨めしく…どうでもいいこと…なのだろう…
年の瀬に…
ちょっと…飲みたかった理由も…
駅まで一緒に…歩きたかった理由も…
改札口まで…見送りたかった理由も…
わかったような気がした…
「…すべては…意味が…あること…だと思います…」
「…意味が…ある…こ…と…か…」
怯えが…浮かんだままの瞳を…
今度は…しっかり見つめ…強く手を振った…
うなだれ…去ってゆく背中を…見守る…
気の利いたことなんて…何も言えない…
なんの力にも…なれない…
無駄に…涙が流れる…
でも…でも…
祈っています…応援しています…
うまくいきますように…
元気になりますように…
素敵な…聖夜でありますように…
敬虔なカトリック信者の…両親から…生まれたけれど…
クリスマスは…僕に…ずっと…関係ないことだった…
シアワセな家族やカップルは…
その関係を…いっそう強化できることを…確認しあい…
たったひとりのひとたちは…
いまや…クリぼっち…なんて言葉で…自虐的に笑う…
くだらねぇ…
どこが…聖夜なんだよ…
ホームレスであろうと…病人だろうと…
キチガイだろうと…変態だろうと…
キリスト教徒ではなかろうと…
どんな人間にも…等しく…
シアワセの奇跡を…くれよ…
怯えた瞳を…笑顔に…変えてくれよ…