聖 夜 | 新宿 鼠通り

新宿 鼠通り

逃れよ…強壮な風の吹くところへ…






「…改札口まで…行きます…」




「…えっえっ…す…すみません…」










今年は…



これで…もう…逢うことはない…だろう…



「…どうぞ…よい年を…」



ふりかえり…改札口まで見送ってくれた方に…声をかけた…



「………」



怯えが浮かんだ瞳に…ぶつかり…



はっとして…目を…逸らしてしまった…



浮き足立った…クリスマスも…



慌ただしい…大晦日も…



静寂の…元旦も…



邪魔で…恨めしく…どうでもいいこと…なのだろう…



年の瀬に…



ちょっと…飲みたかった理由も…



駅まで一緒に…歩きたかった理由も…



改札口まで…見送りたかった理由も…



わかったような気がした…



「…すべては…意味が…あること…だと思います…」



「…意味が…ある…こ…と…か…」



怯えが…浮かんだままの瞳を…



今度は…しっかり見つめ…強く手を振った…



うなだれ…去ってゆく背中を…見守る…



気の利いたことなんて…何も言えない…



なんの力にも…なれない…



無駄に…涙が流れる…



でも…でも…



祈っています…応援しています…



うまくいきますように…



元気になりますように…



素敵な…聖夜でありますように…






1







敬虔なカトリック信者の…両親から…生まれたけれど…




クリスマスは…僕に…ずっと…関係ないことだった…




シアワセな家族やカップルは…




その関係を…いっそう強化できることを…確認しあい…




たったひとりのひとたちは…




いまや…クリぼっち…なんて言葉で…自虐的に笑う…




くだらねぇ…




どこが…聖夜なんだよ…




ホームレスであろうと…病人だろうと…




キチガイだろうと…変態だろうと…




キリスト教徒ではなかろうと…




どんな人間にも…等しく…




シアワセの奇跡を…くれよ…




怯えた瞳を…笑顔に…変えてくれよ…