ワーキング・プアから抜け出せないシングル・マザーたち
テーマ:ブログ中央公論に「ワーキング・プアから抜け出せないシングル・マザーたち」橘由歩さんというノンフィクション・ライターの方が書かれた論考が掲載されてます。これいいなあー。
論考の「起」は、昨今バッシングされてきた「若い母親」の子殺し事件。事件の背景を追いながら、そこから、シングルマザーの置かれている現状について、考察を深める。シングルマザー世帯の生活実態の数値分析、世帯所得分析、国際比較、当事者のインタビュー&ルポ、専門家のコメント、文献調査と、非常に多角的で、なおかつわかりやすくそして刺激的(ほめすぎ?)。読んだ方で、もしかしたら詰め込みすぎっていう感想をお持ちの方もいるかと思いますが、・・・・まあ、もっとページ割けばよかったのに。手間かかっていらっしゃると思いますし、プロのお仕事かと。
抜粋してご紹介させていただきます。ライターさんの写真をみるときっと同じ年くらいの女性かなあー。雨宮処凛さんといい、同世代の若い(って言わせて 笑)同性にいらっしゃるのは、ほんとに励みになります。
今年に入り、立て続けに報じられた、若いシングルマザーによる子殺し、親殺し。幼くして命を奪われた子どもたちの、あまりに短すぎる生を思えば言葉もない。世の誰もが若い母親たちを、「母親になる資格なし」と断罪した。問題は彼女たちが、なぜ子育てを全うできなかったか、子殺しという最悪の結末に向かわざるえなかったかだ。
本人の資質の問題や、シングルマザーへの偏見に貶める以前に、見落としているものはないのだろうか。少子化が危機的問題として叫ばれているこの国で、シングルマザーは一体どんな状況に置かれているのだろう。
05年1月に公表された「平成15年全国母子世帯調査」によれば母子世帯数は122.5万世帯(全世帯の2.7%)、前回調査の5年前と比べれば、28.3%増加している。母子世帯になった理由については離婚と未婚が増加し、死別は減少している。今日的傾向として若いシングルマザーの増加が顕著だが、これは「できちゃった婚」の急増と密接な関係がある。とりわけ近年、急速に増えているのが10代後半や20代前半という若い世代の「できちゃった婚」だ。
家族社会学の観点から「ひとり親家族」の研究を行う、神原文子教授によれば、「25歳未満は6割ができちゃった婚ですね。高校生で妊娠、中退。18~19歳で産んで、経済問題やDVで21~22歳で離婚というのが、最近よくあるひとつの傾向」と言う。おそらく事件を起こした彼女たちも、このパターンだったのだろう。
仕事の経験のないままにシングルマザーとなる、若い女性たち。夫の収入も不安定ゆえ養育費は期待できない。実家が援助してくれればいいが、頼れない場合も多い。06年12月30日、埼玉県和光市で焼け落ちたアパートから、2歳の男児の遺体が発見された。24歳のシングルマザーは、友人とスノーボードをするため「パンとおにぎりを置いて」外出していた。彼女は「母になる資格がない」「勝手気ままな母親」だったのか。警察官の前で、彼女は泣き崩れた。
「子どもが自分でゴハンを食べられるようになったし、1日くらい骨休みがしたかった」(『読売新聞』2007円3月6日)
1年前に夫と別居し、母子二人だけの生活になった彼女は、深夜の調理のお仕事に就き、子どもを育てた。夕食と入浴の後、子どもを寝かせて午後10時に出勤、帰宅は午前4時。日中は子どもといっしょに過ごす。男児は乳幼児検診も予防接種も欠かしたことはなかったという。公的扶助が受けられることを何も知らず、育児とお仕事に明け暮れた彼女の日々。彼女はたった一人、子育てと労働を自分に課した。そうせざる得なかったから。一ツ橋大学大学院の本木喜美子教授は、こう指摘する。
「日本のシングルマザーの特徴は、きわめて高い就労率にあります。これは他の国では例を見ません。イギリスのマジェラー・キルキーの分類によれば日本は育児に専従するのではなく、就労しているにもかかわらず低賃金のために貧困リスクをかかえている国々のグループに分類されています。しかもアメリカ、ドイツなど、このグループの平均就労率は60%程度であるにも関わらず、日本は実に87%と突出した数字になっています」
右記分類の理由は、母子世帯の平均年収が、212万円(03年11月現在)という事実で、一目瞭然だろう。
これは公的扶助である児童扶養手当や、養育費を加えた額で就労収入となるとわずか162万円にすぎない。この年収も98年と比べて17万円減少しているが、これは非正規雇用の拡大がシングルマザーを直撃したからだ。現にこの5年で「常用雇用者」の比率は50.7%から39.2%減少、逆に不安定な就労である「臨時・パート」が38.3%から49%に増加している。ちなみに02年度の一般世帯の平均年収は589万円だから、その半分にも及ばない低収入労働と子育てのはざまで喘いでいるのがシングルマザーの現状なのだ。02年11月、国は児童福祉手当の減額措置を決定、いまや母子家庭への所得保障という最後の砦も取り払おうとしている。
母子加算の打ち切りの理由について、神原教授は「生活保護基準が一般母子家庭の生活水準より高いのは不公平という認識が打ち切りの主な理由なのです。しかし、発想が逆でしょう。生活保護基準は憲法で保障されている最低生活基準なのだから、生活保護基準に合わせて、一般母子家庭の生活水準を引き上げるべきなのです」と怒りを隠さない。これは母子家庭の子どもに、未来を描く権利などないと言っているに等しい。
「08年から継続5年以上の母子世帯は児童扶養手当が最大半分まで削減されます。政府の名目は“給付中心から、自立支援へ”なのですが、実際は福祉予算の削減が狙い。03年から児童福祉手当の支給基準を引き下げる代わりに、さまざまな就労支援策を立ち上げたのですが、アドバルーンをいくつも上げているだけのようで実績がなかなか見えないのです」
神原教授は就労支援策の効果が上がってから児童福祉手当の削減を検討すべきであるとこの施策を厳しく批判する。「調査対象の254名中、何らかの行政の就業支援策を利用した人は46名、うち就職や転職ができた人が18名、うち正規採用に至ってはわずか6名。いくら就労支援を謳っても大事なのはその仕事で生活できるかどうか。母子家庭の中で、収入が増えた世帯と収入が減った世帯との格差が広がっています。でも、勤労収入が増えたといっても年収300万円なのです」
すでに87%のシングルマザーは働いている。なのに国はさらに「働け」という。
子どもは延長保育で預かるからと。しかし、厚生労働省が「見る」子どもは就学前限定。小学生以上の子どもはすっぱり切り捨てられる。「母子福祉法の目的は、ひとり親で育つ子どもたちの健全育成なのに、母親の就労ばかりを強調する。収入を上げるために、母親がかけもちで働くことになると、夜間、子どもが置き去りになることもある。子どもの生活保障、進学保障をどう考えているのか。03年大阪市の実態調査では、母子世帯の16歳以上の子どもの中学卒(あるいは高校中退)率が10%を超えていた。日本全体で3%なのに本人のやる気だけの問題では決してないでしょう。高校卒でもなかなか就職が困難な状況の中で、これらの子どもたちは十分に自立できないまま、社会に出ざる得ないのです。」
女性が一人でも子どもを豊かに育んでいける社会こそ当たり前であるべきではないか。
大卒よりも高卒、高卒よりも高校中退と学歴が低いほど、離婚率が高いという調査結果がある。経済的に不安定な階層同士が結婚し、その経済的不安定さが離婚を後押しするのだ。神原教授は口惜しさをにじませこう語る。「ほとんどのシングルマザーは、子どもにわびしい思いをさせたくないと、いろんな工夫をして頑張って、一生懸命働いて子育てをしています。しかし20歳以上の第一子の学歴は有配偶者より総じて低いのです」
こちらのブログを読んでいる方は、わたしはわりと硬いことばかり書いているので人文系の編集だと思っている方もいると多いと思うのですが、もともと生活情報誌出身の編集です。ですので、「家計」にはうるさいのかなと思うのですが、生活情報誌もいろいろあって、私がいた雑誌はだいたい年収300万円くらいの結婚したての主婦層が読者層でした。
昔、編集部の女同士(ほぼ全員女性なんで)でいってたんですけど、「女の自己実現のために男が家事育児に参画をー」って簡単にいう人もいるけど、家に6時くらいに帰ってくるだんなさんだったら、まあ言ってもいいんじゃないかと思うけどね、夜中にへとへとになって帰ってくるだんなさんにいえないし、年収低いとだいたい共稼ぎだから、朝、子どもに菓子パン食べさせるってことで手一杯なんだよね。だから特集で「朝ご飯」とか企画は出るんけど特集ではほとんどやらない。なぜかというとそういう需要がないから。端的に売れないからです。
ようするにお父さんもお母さんもどっちも余裕ないわけですよ。でもね、余裕ないなかでほとんどの人はちゃんと生きよう、子どもをなるべくちゃんと育てようと思っているんだと思いますよ。・・・「早寝早起き朝ご飯」ですか、そりゃできるならやってるって。
なんか新潮とかだと、「最近の母親は子どもに菓子パン食わせとる、けしからん!」とか短絡的な話になってしまうわけです。もうちょっとふつうに考えて欲しいんだけどねー。





1 ■無題
安原さん、こんにちは。
どこかで見たことある本の題名だと思ったら、読売新聞に載ってました。
家族壊す「消費主体」社会
http://job.yomiuri.co.jp/library/column/li_co_07041801.cfm