参院選前の今だからこそ観るべき映画!「帰ってきたヒトラー」 | 帰ってきた神保町日記      ~Return to the Kingdom of Books~

参院選前の今だからこそ観るべき映画!「帰ってきたヒトラー」




 紛れのない傑作!
 今年観るべき1本。
 シリアの内戦に端を発した難民問題、アメリカ大統領選候補トランプの人気、改憲の絡んだ7月10日の参院選、そしてつい先日決まったイギリスのEU離脱と、ヨーロッパで躍進する保守政党とナショナリズム。
 このタイミングでこの映画が公開された意味は大きい。
 現代のドイツにタイムスリップしたヒトラーを描いたブラックコメディ。
 確かに笑える。
 映画の中では、ヒトラーに扮した俳優が実際に街中に出て、人々の生の反応を映した様子が何度も挿入される。物語はフィクションだが、人々のヒトラーに対する反応はドキュメンタリーなのだ。
 嫌悪を表す人もいれば、彼と自撮りをしたがったり、ハグを求める人もいる。ドイツ最大のタブーとされるヒトラーに対する反応が、必ずしも嫌悪だけではないという事実。
 そんな様子に最初は笑っていられるのだが、やがてこの映画の裏側に潜んでいる危険な匂いが表ににじみ出す。
 ヒトラーは現代ドイツ人の抱える不満に耳を傾け、ドイツの進むべき道を指し示し、それは現代最先端のメディアを通じて拡散されていく。ヒトラーにとって、これほど国民を御しやすい時代はないのだ。
 特にラストの10分間でのヒトラーの台詞には戦慄する。ヒトラーとは何者だったのか?そのひとつの答えがそこにある。
 そして真実に気づいた者がたどる皮肉な結末。

 大衆の支持を集める者が本当に正しいのか?
 ヒトラーを求めたのは大衆ではなかったのか?
 耳障りの良いことを繰り返す者には気をつけろ。
 目の前の幸福だけを求めて思考停止するな。

 参院選を間近に控えた今だからこそ、絶対に見ておくべき映画。