これまでに、スカイプ について、下記の4つの項目についてお話を進めてきました。


1. 便利な利用方法

2. カリスマ経営者達

3. 必ず成功するマーケティング戦略

4. 無料の裏にある経営戦略


で、本日はいよいよ最終回ということで、順風満帆にみえる彼らの快進撃に忍び寄る「スカイプの敵」(反対勢力)と、彼らに近づく「巨人」についてお話をさせていただきます。


skype



■ スカイプの反対勢力とその動き


今までにご説明したとおり、スカイプは立ち上げ当初からまさに「快進撃」を続けてきましたが、そんな彼らには、たくさんの敵がいることも確かです。それは彼らがターゲットとしたマーケットが「電話」という、まさに既得権の巣ともいえる業界を選んだことにも起因します。


Vodafone Germany では、2007年7月よりスカイプなどのVoIP事業者(インターネット電話事業者)からの通話を遮断する意向を発表。Vodafone本社、その他のEU諸国、アジアでのVodafoneでは同様の動きはまだ無いようですが、これは電話業界がスカイプをはじめとする各VoIP事業者を脅威とみなしている動きだといえます。


そして米国ではもっと露骨な排除政策ともいえる動きがあり、先日、連邦通信委員会(FCC) はインターネット電話事業者に対し、911緊急電話サービスを追加し、発信元の住所と電話番号を通知することを義務づけました。


これは現在のスカイプでは100%技術的に不可能な要求なのです。


また中国でも同様に VoIP事業者を排除する動きがあります。ここで重要になってくるのは、電話事業者というのは、先進国などでは民営化されていることもありますが、世界中の多くの国では、まだまだ電話事業者が国営のところがたくさんあります。日本も昔は電電公社(現NTT)がありましたね。


コレは何を意味するのか。


すなわち、これからのスカイプの戦いは「一般企業 対 一般企業」だけではなく、「国家権力」との戦いも強いられるということになります。 ルクセンブルグの新興VoIP企業に「国益」を損ねられることは、米国や中国を初め多くの国が良かれとは思っていません。



■ スカイプを利用するユーザー


スカイプをこよなく愛するユーザーたち。本来スカイプを支えるはずの、彼ら自身がスカイプの脅威となりつつあることも確かです。


これは私自身もそうですが、いくら「無料のサービス」とはいえ、一旦使い出すとちょっとした不具合があると「許せなくなってくる」というのが、万国共通のユーザー心理というものではないでしょうか?


スカイプを始めて使ったときの感動などはすっかり忘れてしまい、ちょっとトラブルがあるとイライラしているのは、きっと私だけではないと思います。


スカイプはインターネット回線を利用するため、

通話品質はその回線の速度などに依存します。


回線が混んでいると、当然通話品質が落ちるので、声の到達の遅れや、途中で通話が切れたりという現象が発生する可能性があります。スカイプはあくまでソフトウェアなので、いくらこのソフトを改善したところで、利用するインターネット回線のクオリティまでは、踏み込むことができないのです。


スカイプを始めて使ったユーザーのほとんどの人が、その通話品質の高さ、そして無料ということにとても驚き感動します。しかしそんな彼らも1ヶ月もすれば、そんな感動はすっかり忘れてしまい、どんどん通話品質に関する要求が強くなってきます。


スカイプではこれから、SKYPE INSKYPE OUT という、プレミアムサービス(一部有料)を進めていきますが、有料サービスにおいて、どこまで通話品質を保っていけるのかというのも、とても重要なポイントだと思います。


前にもブログでご紹介 しましたが、日本のブロードバンドサービス(高速インターネット)は、世界第一位(速度、価格など)の水準です。しかし全世界的に見ると、これはとても稀なケースで、ほとんどの国がまだまだ低速のインターネット回線を使っているということを忘れてはなりません。



■ スカイプに近づく巨人


今後、そんな壁を乗り越えなければならないスカイプですが、とはいいながらも現時点で1億4000万人がダウンロードしたサービスであり、世界中がこの会社の動向に注目していることは確かです。


そしてそんな彼らに近づこうとしている巨人がいます。



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そうなんです、Yahooがスカイプ社の買収に乗り出しているとの憶測が、米国メディアで騒がれていますが、現時点ではその真相は誰にもわかりません。


スカイプの年間売り上げは公開されていませんが、アナリストの調査では

60億から100億ドルぐらいにはなるだろうと予測しているそうです。


C-NET の記事によると、スカイプの筆頭株主である、投資会社Draper Fisher Jurvetson (1000万ドル出資)と、創業者であるZennstrom氏 は、

スカイプ社をこのまま未公開企業のままにしておきたいと考えているそうで、もし買収のオファーがあったとしても10億ドル以下の金額では決して手放すことはないと述べたそうです。


ちなみにDraper Fisher Jurvetsonは、過去にHotmailやOvertureといったインターネット成功企業のベンチャーキャピタルを担当した有名な会社です。



さて、5回にわたってご紹介させて頂いたスカイプですが、今後のインターネットを語る上で絶対に外せない存在である事は確かで、特にユーザーの視点から考えれば、無料で全世界中に電話が掛けれるサービスはウェルカムなことであり、国家権力などの障壁をどの様に越えていくのか、これからも彼らの動向がとても楽しみです。



追記=> bearさんから、FCCの 911緊急電話サービスについて

下記の質問を頂きました。


はじめまして。 このブログをみてSkype Inなどを利用しようかと考えていたのですが先日FCCが義務づけた911関連の情報が気になります。Skypeが撤退してしまわないかと・・・。この義務についての情報などリンクを教えていただけ無いでしょうか?あつかましいお願いで申し訳ありません。


本件に関しては、スカイプが今回の規制の対象になるのかどうかがハッキリしておらず、この件が引き金になって SKYPE IN のサービスからすぐに撤退するとは思えません。もし最悪の事態になったとしても、裁判を繰り返して時間稼ぎはすると思います。


・ FCCが発表した5月19日付けの発表はコチラ (原文PDF)です。

・ C-NET Japan の関連記事はコチラ です。



■ 本日のオススメ本


Douglas Barry
Wisdom for a Young Ceo: Incredible Letters and Inspiring Advice from Today's Business Leaders