弾劾できぬなら特別委を | 平野幸夫のブログ

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

 


「いい加減なことを言ってるんじ
ゃないよ」。巨額の教育利権をば
らまいた加計学園疑惑について、
野党の質問にまったく答えず、信
じ難い野次まで口にしてブチ切れ
。そんな安倍晋三首相の国会での
あきれた振る舞いを幼稚さからだ
けと片付けてはならない。多くの
有権者はその品位に欠けた姿に、
議会制民主主義が心底侮辱された
思いになったのではないか。海の
向こうのように、直接の弾劾制度
がないなら、国会に調査のための
特別委員会を設置、国政の私物化
を覆い隠そうとする安倍首相を「
お白洲」に引きずり出し、集中審
議をしなければならない。このま
ま総理自身が政官一体を巻き込ん
だ戦後最悪の疑獄の解明が進ま

なければ、まさに、民主主義の崩

壊である。



米国のトランプ大統領に解任され
た前FBI長官の上院情報特別委
員会での証言が始まった。「ロシ
アゲート」疑惑は大統領に対する
弾劾に向かう様相を強めている。
この外電や韓国の前大統領告発な
どをみて、為政者の不正をただす
ため、議会や検察が機能している
ことを改めて実感する。米国社会
の暗部を果敢に照射する映画製作
で知られる映画監督のマイケル・
ムーア氏はトランプ大統領を「す
べての悪を具現化した人物」と言
い切り「今行動しなければならな
い」と弾劾支持を呼び掛けている
。目を転じてこの国の政治状況と
虚偽答弁を平然と繰り返す安倍首
相をみて、ムーア氏の言葉を投げ
返したくなる。そして、どんなに
真相解明が阻まれても、無力感に
かられていただけでは済まされな
いことも痛感する。


残念ながら、今検察の捜査が動き
出す気配はないが、それでも新聞
の調査報道や内部告発によって、
安倍首相の「腹心の友」が率いる
加計グループに総額400億円も
の巨利がもたらされた仕組みが白
日の下にさらされつつある。政府
がどんな釈明や隠蔽工作をしても
、新設獣医学部の設置条件を整え
ず突っ走ってしまったのが致命的
だった。政府は世論の反発に押さ
れて、ようやく文科省の文書を調
べ直す姿勢を見せ始めたが、どこ
まで認めるのか懐疑的にみなけば
ならない。


今治市での新設が国家戦略特区に
適用された昨年11月段階で、石破
進前地方創生担当相が設けた「4
条件」をクリアしていなかった事
実が次々判明。「岩盤突破」など
と美名をならべても、内実は縁の
深い人物だけがうまみを得られ続
けた規制緩和だったのである。8
日の国会では自由党の森ゆう子参
院議員の独自調査によって、募集
公表前に、今治市だけと開学時期
の事前協議をしていたことが新た
に判明、内閣府はさらに窮地に立
たされた。



内閣府が強引に文科省や農水省に
「総理のご意向」をかさに認めさ
せていたことは、前川喜平前文科
事務次官の告発と後に続く複数の
文科省職員の証言で明白になった
。「総理のご意向」文書はもはや
「あったことをなかったことには
できない」(前川証言)のである



将棋界では中学生の藤井4段が次
々年上の棋士を撃破、詰んだ盤面
が紹介されているが、加計疑惑は
もう「詰んだ」状態だ。安倍首相
の関与はなかったと言い続けても
逃げ切れない局面になった。森友
学園疑惑に比べて、政権の異常な
までの隠ぺい工作になかなか突破
口を見いだせず、当初は報道に及
び腰が目立った。しかし、朝日新
聞の文書スクープと前川前次官の
告発報道によって、見事に端緒を
作った。



古巣の毎日新聞もここにきて地道
な特ダネを連発している。そもそ
も今回の52年ぶりの新設認可の根
拠があいまいだったことを詳細に
報道した。特に獣医師全体が飽和
気味で、農水省が全く需要予測を
立てられなかったお粗末さを衝く
記事を掲載、国会でも政府側は答
弁に窮した。さらに毎日は安倍首
相の「1校に限るという要件は獣
医師会から要請があった」との国
会答弁を検証。日本獣医師会の会
長らが「そんなお願いをしたこと
はない」と反論した記事を8日の
朝刊に掲載した。安倍首相は平然
と国民にウソを述べたことになる


度重なる前川前文科次官攻撃がひ
んしゅくをかっている菅義偉官房
長官にもさすがにメディアから反
発が強まり始めた。東京新聞の社
会部の女性記者が、「根拠がはっ
きりしない個人攻撃ではないか」
という趣旨の質問を10分以上突き
つけた。「御用メディア」と呼ば
れる読売、産経記者が話を変えよ
うとしても、動じなかった。そん
なネット上の会見の画面をみて大
きな拍手を送りたくなった。官房
長官会見は本来、そうあるべきだ
った。


満足な質問も出来ず、パソコンの
キーばかりを打つだけで発表ネタ
しか発信できない官邸お抱え記者
がいかに多いことか。東京新聞の
女性記者と比べ、あまりにも情け
ない存在に映る。政権によるメデ
ィアの分断を許してはならない。
ようやく使命感を感じさせる記事
を発信し始めた朝日、毎日、東京
新聞などとその他のフリーの心あ
る記者らの連携と奮闘に期待した
い。


かつて絶大な権力を誇ったあの田
中角栄元首相もロッキード事件の
火の粉を払うことができず、19
76年、国会のロッキード事件調
査委員会設置による集中審議と証
人喚問を認めざるをえなくなった
。同調査委員会は3年半も活動が
続き、その後のリクルート事件で
の特別委員会の前例となった。現
代史を少し振り返るだけで、政界
浄化に向けて、与野党の議員が進
むべきべき道筋が見えてくるはず
だ。このまま何もできず国会が閉
会すれば、「安倍独裁」による利
権政治と人権を抑圧する共謀罪の
害毒がもうぬぐい切れないほどこ
の国に浸透してしまうだろう。


   【2017・6・9】