断食芸人

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カフカの「断食芸人」をベースにした作品。原作は随分前ですが読んでいます。

 

寂れた商店街に1人の男(山本浩司)が現れ、片隅に座り込みます。男に興味を持った少年が男の写真をSNSに投稿すると、翌日から投稿を見た人々が男の周りに集まってきます。何の反応も示さず、虚空を見つめているだけの男の存在について人々はそれぞれに持論を展開し始め、いつしか男は「断食芸人」に仕立て上げられ...。

 

男は、本人の意思とは別のところで、「断食芸人」にされてしまいます。そして、男の"断食"という行為について、様々な人が、様々な立場からあれこれ意見を述べ、評価し、そこに何らかの意味を見つけようとします。

 

原作では、主人公の"断食"という芸に対する想い入れが描かれ、周囲の無理解に対する苦悩が描かれますが、本作では、主人公その人よりも、周囲の物語が描かれていきます。

 

そして、原発、過剰医療、アイヌ沖縄、天皇制...様々な問題が絡められます。勝手に解釈して勝手に納得したり、熱狂したかと思うとあっという間に忘れ去ったり、理解不能なものに接したときの"世間"と言われるものの反応があれこれ描かれていて、なかなか面白かったりはしましたが、整理されないままに色々と盛り込み過ぎた感じで、全体的に散漫な印象を受けました。

 

2日目でもう"断食"と決めつけたり、動画をアップしてすぐにマスコミが駆けつけるほどまで話題になったりといった展開は、あまりに拙速。長期間の断食にも関わらず、それ程、痩せ衰えることもなく、動けなくなることもないというのもあまりに嘘っぽいです。男自身の行動や断食に対する周囲の反応に不条理さを持たせるのであれば、男に世間が注目するまでの過程はリアルに描いた方が、物語の世界に入りやすいような気がするのですが...。

 

まぁ、私なぞも、こうして誰かが作った映画を観て、勝手なことをあれこれ書き連ねているわけで、作った側からすれば、あまりに浅薄で斜めな内容になってしまっていることもあるでしょう。

 

本当に理解することも、分かりあうことも難しいかもしれないけれど、あれこれ言うことを認め合い、それぞれが自分の頭で考え、自分の言葉で語ることで、少しずつ溝を埋めたり、共存する道を切り開いていくことが大切なのかもしれません。

 

映画として面白かったかというとかなり微妙ですが、色々と考えさせられる作品ではありましたし、今の私たちを取り巻く問題を切り取った物語にはなっていると思います。

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