ヒトラー 最後の代理人

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アウシュビッツ強制収容所の所長だったルドルフ・ヘスが、処刑される前、1947年2月に書いた手記をもとにした作品。

 

1946年、ポーランドの留置場で裁判を待つ、元アウシュビッツ強制収容所長のルドルフ・ヘス。なかなか取り調べが進まない中、若き検察官、アルバートが尋問を担当することになり...。

 

ヘスと彼を取り調べるアルバートのやり取りがほとんどの部分を占めています。

 

自身の行為について、「命令に従っただけ。命令には絶対に従わなければならないと教え込まれていて、疑問を持つことなど考えもしなかった。」と応えるヘスと、「本当に何も疑問に思わなかったのか?」と繰り返し迫るアルバート。

 

ヘスの答えは、はぐらかしているようでもあり、本心からアルバートに問いかけられていることが理解できていないようでもあり...。

 

バンナ・アーレントが、やはりナチスの戦犯であるアイヒマンの裁判を傍聴し、アイヒマンが極悪人ではなくごく普通の小心者であったことを指摘し、彼の悪行の原因としてその“完全なる無思想性”を挙げていますが、本作のヘスに、そのアイヒマンの姿が重なりました。2人とも、忠実に命令に従い、着実に実行する有能な官僚に過ぎなかったということなのかもしれません。

 

アルバートの質問にヘスが淡々と答えるだけで、それぞれの内面に踏み込めていない感じがして、全体に薄味で、歯痒さを感じました。

 

そもそも、尋問の担当者が、アルバートに代わったことで、何がどう変化したのかもよく分かりませんでしたし...。

 

この尋問が、2人にどのような影響を与えたのかを炙り出し、当たり前の役人たちが、独裁者を支え、冷酷な執行者となること、今、普通の人として生きている私たちに、ヘスになる可能性があることの恐ろしさに迫れていたら、見応えのある作品になったと思うのですが...。

 

題材が良かっただけに残念です。

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