みかんの丘

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ジョージア最西端の黒海北岸に面するアブハジアのエストニア人が多く住む集落。ジョージアとアブハジア間に紛争が勃発し、多くのエストニア人は帰国しましたが、みかん栽培をするマルガスとみかん用の木箱を作るイヴォの2人の老人は残っていました。ある日、イヴォの自宅近くで戦闘が起こり、数人の兵士が命を落としますが、アブハジアを支援するチェチェン兵アハメドとジョージア兵ニカの2人は生き残ります。イヴォとマルガスは、アハメドとニカをイヴォの自宅に運び込み介抱し...。

 

ジョージアとエストニアの共同制作。

 

本作の舞台となったアブハジアは、19世紀後半、ロシアが帝政時代に征服した土地。その際、イスラム教徒だったアブハズ人の半数近くが移住を余儀なくされ、ロシア帝国内からエストニア人が移住し、開墾、集落を築きます。ロシア革命後、アブハジアは文化的、政治的な自治が認められますが、スターリンの時代、ジョージア化が推し進められます。

 

1980年代後半から1990年代前半、ソ連のゴルバチョフ政権によるペレストロイカ、東西冷戦の終結、ソ連の崩壊により、連邦を構成する各共和国で独立の気運が高まりジョージアも1991年に独立。けれど、アブハジアの統合を主張するジョージア人と自治を主張するアブハズ人は対立。元々、イスラエル教徒が多かったアブハズ人たちをやはりイスラエル教徒が多いチェチェン人の義勇兵が支援するという形になりました。1994年に停戦合意します。国際的には独立が認められていませんが、2008年、ロシアがアブハジアの独立を承認し、経済的な支援等を行い、実効支配を強めています。

 

戦争や民族紛争は、一部の特殊な人々だけの問題ではなく、人間の歴史とともにある問題で、普遍的な問題なわけで、アブハジアを巡るあれこれを全く知らずに観ても、十分に味わえる作品だと思います。

 

アハメドもニカも、互いに相手に仲間を殺され、それぞれ傷も負わされています。互いに敵同士で、相手に強い憎しみを抱いています。そして、アハメドもニカも、兵士として敵を傷つけ殺してきました。

 

一方で、2人とも、命を救ってくれたイヴォに対し恩義を感じ、イヴォとの約束を守ろうとする誠実さも持ち合わせています。戦いの場では当たり前のように敵を殺す2人も、日常の場ではごく普通の青年。穏やかな日常の中で、2人とも、"敵"が自分と同じように普通の人間だということに気付いていきます。素朴だけれど美味しそうな料理が並べられる食卓を挟んで向き合う2人の互いに対する気持ちが変心する様子が繊細に描かれます。

 

イヴォの家の中で育まれた奇跡のような友情も、やがて厳しい現実に飲み込まれていきます。

 

戦争の酷さを直視しつつ、その中でも潰されることのない人の強さ、可能性を見せてくれる作品です。

 

87分という短めの作品ですが、実に濃厚な物語でした。是非、観ておきたい作品だと思います。かなりお勧め。

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