新川直司の同名漫画の実写映画化作品。原作は未読です。

 

天才ピアニストと評判だった有馬公生は、母の死をきっかけに演奏ができなくなっていました。高校2年生のある日、幼馴染の澤部椿を通じて、勝ち気で自由奔放なバイオリニスト、宮園かをりと出会います。その独創的な演奏に興味を惹かれ、さらに、かをりにコンクールでの伴奏を頼み込まれ、公生は再びピアノと母との思い出と向き合うようになりますが...。

 

特に前半部分は、かなりの勢いで"粗筋を説明している"感じの描写でした。個々のエピソードを映し出すというより、ナレーションやセリフで伝えているという感じ。で、過剰な説明があるのにも関わらず、「聞こえなくなるのは贈り物」についてはスルーされていたり...。重要と思われる部分が無視されてしまっているのは気になります。

 

クライマックスで、かをりが現れない中、公生がソロでピアノを演奏するシーンなど演奏シーンはそれなりに丁寧に描かれていて、気持ちに訴えかけてくるものも感じられたのですが、他をあまりに端折り過ぎてしまった感じが否めません。

 

コミックで全11巻という物語を映画化するのですから、思い切った取捨選択は必要なのですが、それにしてもです。そして、省略の仕方も中途半端。説明的なセリフを中途半端に織り込むより、説明は説明と割り切って、映画の物語を理解するために必要な情報を巧くナレーションでまとめ、映画として作る部分を絞り込んだ方が、すっきりと作品の世界に集中できたのではないかと思います。

 

中途半端な作りが、本作の物語を、死に分かれた母と息子の物語、挫折を味わった天才の再生、不治の病に侵された少女の物語、友情物語...、どこかで観たようなありきたりな物語にしてしまっているような...。

 

登場人物たちの言動が高校2年生にしては幼いような感じがしていたのですが、どうやら、原作では中学2年生の設定のようですね。演じる俳優たちに合わせて年齢設定を変えたのでしょうか?(それでも無理矢理感があるキャスティングですが...。)この年代、数年の違いで大きく変化しやすい時期だけに、原作通りの設定にするか、登場人物たちを3年分成長させるかして欲しかったところです。

 

クライマックスからラストにかけては、悪くなかっただけに、長い原作を映画化する難しさが前面に出てしまった感じがして残念でした。