大殺陣 [DVD] 大殺陣 [DVD]
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江戸時代の史実、"甲府宰相怪死事件"の真相に迫ろうとする時代劇。
 
徳川家第四代将軍、家綱の世。大老の酒井は五代将軍に自分の思い通りになる甲府宰相、綱重を立てて天下を我が物にしようとしていました。これに怒った軍学者、山鹿素行と彼の元に結集した10人の同志は綱重暗殺計画を企て...。
 
歴史上の人物が登場しますが、描かれていること自体はフィクションです。史実を基にイメージを膨らませて創作した物語といったところでしょうか。将軍の跡継ぎ問題に絡めた権力争い。いかにもありそうなことではあります。
 
綱重は、三代将軍家光の三男。で、家光の長男である四代将軍家綱の弟で、やはり家光の四男である五代将軍綱吉の兄。そして、六代将軍家宣の父ということになります。だから、彼が第五代将軍に推されるのも尤もなオハナシ。で、酒井の意のままになる人物だったのかというとそれも疑問だったりします。
 
まぁ、そもそもフィクションなので、それは置いといて...。
 
過激派の活動が盛んだった時代、山鹿素行とその一味によるテロ活動を描いた作品ということになるのかもしれません。
 
結構、登場人物が多く、その一人一人のエピソードがアレコレ描かれて、全体に、焦点が絞られず散漫な感じになっていて、作品としての纏まりも弱い感じが否めません。特に前半部分は人と人の関係性やストーリーが分かり辛い感じがしました。
 
単純明快な勧善懲悪ではないことも分かり難さの原因の一つかもしれません。実際、善悪というのは、そう簡単に割り切れるものではないでしょう。考え方、見方を変えれば、どちらにも多少なりとも理屈があるもの。そして、どちらの側にも、大儀と私利私欲が混じり合うもの。そのドロドロこそは、人の世のリアルなのかもしれません。
 
最後は壮絶な戦いが繰り広げられます。刀でバッサバサと切り捨てるという見栄えのする殺陣ではなく、一太刀二太刀では簡単には死なず、埃まみれ、泥まみれ、血まみれでのた打ち回りながら陰惨な殺し合いが続けられます。剣の達人でもない普通の侍たちが刀を振り回してなりふり構わず敵を倒そうとする姿。そこに、人と人が命の遣り取りをするリアリティが感じられます。
 
里見浩太朗が一応、"主役"ということのようですが、こうした泥臭い作品の雰囲気には今一つ合わないキャスティングかもしれません。里見浩太朗は、もっと、作り物のオハナシの中で巧く存在感を出すタイプではないかと...。
 
ただただ襲われるために登場するヒロインは、何のために登場したのかよく分かりませんでした。バッサリと登場場面を切り捨てても、何ら問題なかったのではないかと...。西部劇にも時代劇にも、襲われる美女は欠かせないということなのでしょうか。
 
まぁ、前半部分は、最後の殺陣のお膳立てで、兎に角、リアルな殺し合いを描いてみたかったということなのかもしれません。そこが、何よりの見所で、そこだけな作品な感じがします。
 
それでも、殺陣は一見の価値ありだと思いますが...。