昨日、ここに感想を書いた「金日成のパレード/東欧の見た"赤い王朝"」と、シネマヴェーラ渋谷で当時上映されている作品です。

韓国の脱北支援者に渡されたカメラで北朝鮮の住民数人が極秘に撮影した映像を編集した作品です。映像は十数時間分に及び、それを韓国の脱北支援者から託されたアジア映画社の朴炳陽(パクビョンヤン)代表が編集したそうです。撮影されたのが2005年前後とのことですから、9年ほど前、「金日成のパレード」から17年を経た時期の北朝鮮ということになります。

当局の許可なく撮影などしていることがばれれば公開処刑されるという国での隠し撮りですから、まさに命懸け。そのために、撮影者の身元がばれないように注意が払われている様子も窺われ、観る者にも、その生命を賭けた緊張感が伝わってきます。

大勢の人が集まる"チャンマダン(市場)"と呼ばれる闇市。地方経済を支える場ともなっているとのこと。売り買いされている様々な物に、北朝鮮の人々を取り巻く厳しさとその中で生き抜こうとする人々の逞しさが感じられます。北朝鮮のことが伝えられる時、その異様さばかりがクローズアップされがちですし、本作でも、その異常さが伝えられるのですが、それでも、そこには当たり前の人間の生活があることにも気づかされます。

そして、"コッチェビ"と呼ばれるホームレスの子どもたち。貧しいながらも、仲間と分かち合う姿勢が貫かれ、自分の気持ちを歌という形で表現する場面もあり、過酷な状況に置かれながらも「金日成のパレード」に登場する"豊かな"人々より人間らしさが感じられたりもしました。その良し悪しはともかく、置かれた状況の厳しさが団結を生むというのも事実なのでしょう。

公開処刑の映像もあります。銃声とともに崩れ落ちる人の映像も衝撃的ですが、公開処刑の場に動員されてきた人々が、淡々と処刑を眺め、何事もなかったかのように引き上げていく様子に、こうしたことがいかに日常的に当たり前のように行われているかが垣間見られ、そのことに愕然とさせられました。

日本にいる脱北者の解説も加えられ、映像だけでは捉えきれないところが補われます。

「金日成のパレード」とは時代の違い、地域の違いがあるとは言え、全くの別世界です。金王朝の偉大さの証左ともされる首都、平壌の"豊かな生活"を支えるために地方が搾取されているということもあるでしょうし、「金日成のパレード」の時代より、北朝鮮自体の状況が厳しくなっているということもあるのでしょうけれど、あまりに圧倒的な落差は衝撃的ですらあります。

「金日成のパレード」と併せて観ることで、北朝鮮の表と裏について、窺い知ることができます。是非、併せて観たい2本です。



人気ブログランキング