アパートの鍵貸します [DVD]/ジャック・レモン,シャーリー・マクレーン,フレッド・マクマレイ
¥1,890
Amazon.co.jp


ニューヨークの保険会社に勤めるしがないサラリーマンのバクスター(バド)。彼は4人の課長に自分の部屋を時間貸しして勤務評価を上げて貰っていました。課長たちは不倫のためにバドの部屋を使っていたのですが、社内での不審なメッセンジャーの動きや不自然に高評価を受ける社員に気付いたシェルドレイク部長が5人目に割り込み課長昇進を持ちかけてきます。昇進して気を良くしたバドは以前から気になっていたエレベータガールのフランを誘いますが、シェルドレイクの不倫相手がフランでした。妻と別れるといいながら、いつまでも煮え切らないシェルドレイクに愛想を尽かしたフランは、不倫を解消しようとしてシェルドレイクが帰った後の部屋で睡眠薬を大量に飲みます。帰宅したバドはフランの命を救うことになるが隣人のドレイファス医師やフランの家族からは誤解されてしまいます。誤解が誤解を呼び...。


出世はしたいけれど、普通にやっていてはなかなか難しい。それで、仕事の実力以外のところで勝負をかける...ということは、まぁ、あること。どうせ働くなら、少しでも良い待遇で、良い賃金で...と願うのも分かるハナシ。そして、バドには、出世の手段となる地の利の良いアパートがあったワケで、それなら、それを利用したくなるのも人情。需要があって、それに応えるだけで、大きな犠牲を払うこともなく出世できるとなればなおさらのこと。そのために、多少、ご近所から誤解を受けることはあっても、大きな実害はないわけで...。4人の課長に部長が加わって5人になっても、1人1日であれば、休日の2日は自分のものという計算になるのですから、悪い話ではありません。


古い作品ですが、イマドキのサラリーマンにも通じる"勤め人の悲哀"といったところでしょうか。5人目に割り込んできた部長の相手が、密かに想いを寄せる相手だと知った時のバドの気持ちたるや...。


けれど、フランが自殺未遂を起こしてからのバドは、本領発揮。愛する女性を護ろうと頑張ります。"しがないサラリーマン"から"頼りがいのあるオトコ"に変わっていく辺り、なかなか見応えがありました。フランの手当てをしに来てくれた医師の非難もどこ吹く風、ヘンに肩に力を入れるわけでもなく、自然体で受け流す姿には、"本物のオトコの強さ"が感じられます。


この先、"絶好の立地のアパート"という秘密兵器を失ったバドが、どうやって、生活の糧を稼いでいくのか...という不安要素を抱えた2人ではありますが、まぁ、頑張っては行くのだろうと思わせてくれます。


あの有名なラケットでパスタを茹でるシーンに代表されるコミカルな場面も織り込まれ、安心して観られる楽しい雰囲気の作品に仕上がっています。


バドを演じたジャック・レモン、フランを演じたシャーリー・マクレーンが、いずれもはまり役。細部までよく練り込まれ、丁寧に作られた名作だと思います。一度は観ておきたい作品です。