ヒミズ

テーマ:

古谷実の同名コミックを映画化した作品。原作は未読です。


15歳の住田祐一の願いは“普通“の大人になること。彼の同級生で同じく15歳の茶沢景子の夢は、愛する人を守り、そして守られて生きること。そんな2人の中学生の日常が、ある事件をきっかけに180度変わってしまいます。罪を犯し、破滅へと向かう住田を茶沢は救おうとしますが...。


相変わらず痛いです。園子温監督作品らしいと言うべきでしょうか。とにかく殴る蹴る。肉体の奥まで染み込むようなやり取りをしないと人と人は関わり合えないということなのでしょうか。兎に角、殴り合います。明確に争う理由のない時でさえ、ちょっとしたゲーム感覚で叩き合います。


かなり悲惨な状況におかれている中学生2人。住田祐一と茶沢景子。


祐一は貸しボート屋の息子。父親は金を取りに帰る以外は家を空けたまま。母親は男との情事に夢中。彼の最大の夢は普通になること。というより、自分が普通であると思い込んで、現実の悲惨さから身を守ろうとしている様子。


景子は祐一に密かに恋心を抱いていて、何かと彼にまとわりつきます。そんな彼女も母親に自殺しろと迫られています。


そんな中で育ってきたにしては、きちんとした感じの2人。祐一はホームレスな人々との輪を保つことで、景子は祐一に関わることで、一人であることから免れています。


2人とも引き籠ってはいません。引き籠れるほどの贅沢は許されない状況にあるということなのかもしれませんが、取りあえず、他人との関係を繋いでいます。


ただ、祐一は、物理的には他人との関係を維持していますが、彼の人生は彼独自のルールの下にあり、閉じられています。けれど、景子がそこに強引に侵入し、彼の人生は外に開かれることになります。独自の世界を破られることへの抵抗と祐一の心の奥底に潜む生に向かう気持ち。そのせめぎ合いが伝わってきて、殴る蹴るの描写とともにヒリヒリした感じがしました。


東日本大震災と絡ませた設定は原作とは変えたところのようですが、私たちが拠り所としていた社会の大きな一部が破壊されるというできごとと本作で描かれる破壊と再生の物語がリンクする感じがしました。


暴力的な描写は、どうも、好きになれないのですが、それでも、観終えてある種の清々しさが感じられる手応えのある作品でした。多分、人は、例えそれが殴り合い蹴り合いであろうとも、誰かと繋がらなければ生きていけないし、暴力的なおせっかいでも、他人の支えは必要だということなのでしょう。


一度は観ておきたい作品だと思います。



公式サイト

http://himizu.gaga.ne.jp/



ヒミズ@ぴあ映画生活

AD