キック・アス

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人気のアメコミ作家、マーク・ミラーの同名コミックを、ブラッド・ピットをプロデューサーに据え映画化した作品です。


ヒーローに憧れる平凡な高校生、デイヴは、ネットでコスチュームを買い、それを身に着けて街に出ます。決して強くはない、というより、ひ弱な彼ですが、ワルを見つければ、果敢に向かっていきます。その活躍ぶりがYou Tubeにアップされ、アクセスが殺到、たちまち人気者になります。けれど、彼に取り引きを妨害されたと思い込んだ麻薬組織に狙われるようになり...。


面白かったです。


血が飛び散り、大量の弾丸が飛び交い、多くの人命が失われ、眼を背けたくなる痛い場面もたっぷりなのに、ところどころ笑えて、最初から最後まで、時間を感じさせられない面白さでした。


ストーリーも良くできていたと思いますし、展開もテンポ良く、演技陣もそれぞれに好演で、音楽のセンスも良く、細かいところまで練られていて、作品の世界に引き込まれました。


登場人物たちの造詣も見事。デイヴは純粋に正義の心を持ってことに当たろうとしたわけですが準備不足でヨレヨレ。ビッグ・ダディとヒット・ガール親子はしっかりとした計画と準備をした本当に強い正義の味方に見えますが、実は、正義とは名ばかりの復讐の鬼。そして、レッド・ミストは正義の名を騙ったワルで、親掛かりの資金だけはたっぷり。この辺りのバランスは巧かったと思います。ワルの度合いが増すごとに装備や武器が豪華になっていくというのも面白かったですし...。


けれど、それにしても、あまりに暴力的。確かに、マフィアはワルだけど、ビッグ・ダディとヒット・ガールの方だって、相当にワルです。大体、彼らの動機は、"正義"ではなく、ただの"復讐"なわけだし...。まぁ、正義が復讐よりマシとは限らないのでしょうけれど。ある意味、アメリカらしくはあります。この親子には、存在する証拠などない"大量破壊兵器"を隠し持っているという思い込みを根拠に、それをはるかに上回る大量破壊兵器を使って、自分たちよりはるかに軍事力の弱い国へ攻め込んでいくアメリカの姿が投影されているのかもしれません。


だって、この親子、ワル側よりずっと沢山の人を殺していますよね?それも、アメリカと同じではありますが...。正義面している分、ワルより始末に終えないというのも、アメリカという国と同じ。


復讐の方法にしても、こんなバイオレンスではなく、もっと笑えるような、けれど、しっかりと敵を辱められるような方法は考えられるはず。これでは、本当のところ、どっちがワルか分からなくなってきます。バズーカで飛ばされたダミーコは、どこかのビルに飛び込んでいましたが、あれ、スッゴク迷惑ですよね...。死者が出ていた可能性だってあったのでは?正義の味方がいかに傍迷惑な存在かは、ウルトラマンに街を破壊された経験がある私たち日本人なら理解できるところですよね。


あと、少々、誤解もあったようで...。ヒット・ガールは、キック・アスに「あんたがいなければパパはあんなことにならずに済んだ」と言いますが、それは言いがかり。元々、キック・アスが組織に狙われるようになったのは、ビッグ・ダディ親子の所業をキック・アスがしたことと誤解されたからなワケで...。ホントにメ~ワクな正義の味方です。


ビッグ・ダディ親子の大量に殺し破壊することへの逡巡のようなものが描かれていれば、もう少しスッキリ見終えていたのかもしれませんが、やはり、大量殺人、それも、10代前半の少女が殺しまくるというところには、引っ掛かりを感じました。


そして、最初は、実際に現実世界の中でヒーローになろうとする人がいないことに疑問を抱いていたデイヴが、その理由に気づく辺りは、印象的だったのですが、その気づきとは裏腹に徹底的な暴力に走ってしまったのは、やはり、残念でした。


と、引っ掛かりを感じながらも、結構、笑ってしまいましたし、ホロリともさせられました。けれど、それこそが、"暴力による正義"の本当の恐ろしさなのかもしれません。だからこそ、人々は長い歴史の中で、暴力によって行われる正義に拍手喝采してきたのでしょうけれど...。


このような作品を面白く観てしまって、本当にいいのか、疑問を感じてしまったりもしました。


東京では、来月の閉館が決まった「シネセゾン渋谷」で公開中です。結構、よく行く映画館だっただけに残念です。



公式サイト

http://www.kick-ass.jp/



キック・アス@ぴあ映画生活

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