ボーダータウン 報道されない殺人者
テーマ:DVD- ボーダータウン 報道されない殺人者 [DVD]
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シカゴの新聞社の記者、ローレンは、ある日、上司から、メキシコとの国境の町、フアレスで起きている連続女性殺害事件の取材を命じられます。フアレスに着いたローレンは、かつて一緒に仕事をし、共に賞を獲得したディアスの協力を得ようと、彼が経営する新聞社、エル・ソロ社を訪ねます。当局の圧力が強く、なかなか真実を報道できないマスコミが多い中、エル・ソロ社は、弾圧に負けず、真実の報道を続けていました。ローレンは、殺されかかったものの、危うく難を逃れた先住民女性、エバと出会い、彼女を匿います。ローレンは取材を続け...。
メキシコとアメリカの国境。それは、豊かさと貧しさを分ける線でもあります。僅かな距離を隔てて、世界で一番豊かな国と接するメキシコの経済力はアメリカの足元にも及びません。アメリカにとって、メキシコは、近くて安い労働力を供給してくれる場。そして、メキシコにとってアメリカは、豊かさで溢れた国。命を賭けて国境を越えようとする人間が後を絶たないのも、国境を挟む2つの国の格差の大きさの故。
そんな国境の町、フアレスでは、女性が殺される事件が頻発しているとのこと。15年間で発見された死体だけで450以上。けれど、実際には、5000人以上の被害者がいるとも推計されているのだそうです。闇から闇へと葬られる数々の事件。被害者のほとんどは、安い賃金で過酷な条件の下で酷使される労働者。生きている間は搾取され、殺されても闇に葬られる...。生きても殺されても安い命としてしか扱われない悲劇が描き出されます。
多くの殺人事件が起きていること、そのほとんどが事件として扱われることさえないこと、そして、事件として捜査されたものさえ、真相は謎のまま。例え、犯人と思わしき人物が逮捕されても、なかなか、有罪にはなりません。本作は、その背景にあるものを探り出そうとしています。
本作が、どこまで真実に迫っているのかは分かりません。現実は、これ程までには酷くないのかもしれませんし、もっと酷いのかもしれません。けれど、少なくとも、現実の一部であることは間違いないのではないかと思える内容にはなっています。
どうしようもない格差の中で、人間は人間にどれだけ残酷になれるのか。これは、フアレスだけの問題ではありません。人が人を搾取する。(人を搾取するのは、人間以外にあり得ないでしょうけれど...。)それは、世界各地に、歴史上のどこにでも、見られる光景。
それだけではありません。権力の都合により、真実が歪められる、それも、どんな国にも、どんな時代にも起こってきたこと。ローレンの国、"自由の国アメリカ"でも起きていること。本作でも、ローレンが書いた記事は掲載中止の憂き目にあいます。実際にも、"9.11"後の報道が、どれ程、権力に都合の良い情報ばかりを伝えてきたか。
ローレンのヒロイズムが強調され過ぎた嫌いはありますし、彼女があまりにステレオタイプに描かれた感じはします。ディアスにしても、相当な意思を持って新聞社を存続させ、真実を報道することに力を尽くしてきたはず。それにしては、その存在が今ひとつ活かしきれてなくて残念。"ドラマ"の作り方も中途半端な感じがしました。それでも、なかなか表に現れてこないものにメスを入れようとした点は評価できます。
重い作品ですが、観ておくべき作品の一つでしょう。




