2008-12-06 02:06:18

未来を写した子どもたち

テーマ:映画

インドのカルカッタ。売春窟で生まれ育った子どもたちのほとんどは、売春窟の中で人生のほとんどを過ごすことになります。そして、女の子の場合、将来は、売春婦になるしかありません。ロンドンからやってきた写真家、ザナ・ブリスキは、インドに来て、売春窟で生活をしながら撮影をするうち、こうした、子どもたちにカメラを与え、写真を撮ることを教えるようになります。自分なりの表現手段を持った子どもたちは、自分たちの可能性を知り、将来に夢を抱くようになります。一方、ザナは、子どもたちの将来のため、彼らが置かれた環境から救い出そうと努力しますが...。


ここに登場する子どもたちは、売春窟に生まれ育ち、そのために、日本のほとんどの子どもたちが当然のこととして得られるものの多くを得られずにいます。学校に行き教育を受けることもできず、そのために、将来の仕事も限られ、貧困から抜け出すことができません。


優秀なIT技術者として世界中に出て行き、外貨を稼ぎまくる数多くのインド人たち。彼らの様子からは想像もできないような貧困の中で、ごくごく基本的な教育さえ受けられずにいる子どもたち。


本作に登場する子どもたちは、望んでこのような環境に生まれてきたわけではありません。もちろん、彼らだけではなく、私たちを含め、すべての人間が、生まれる環境を選ぶことなどできないわけですが...。けれど、生まれ育つ環境は、どういう遺伝子を受け継いだかということを含めて、人生に大きなぬぐい難い影響を与えます。


それが、どんなに理不尽なことであっても、彼らは、彼らの宿命を背負って生きていかなければなりません。ザナが、彼らを学校に入れるために奔走する姿が映し出されますが、たった、"それだけのこと"のために、どんなに大きな労力が必要とされたことか!


そして、チャンスが与えられても、それを生かしきることの何と難しいことか!


写真という表現手段を得た子どもたちが、次第に、子どもらしい感情を表現するようになり、生き生きしていく過程には清々しさが感じられましたが、一瞬、希望の光を見られた後には、深い闇が見えます。光を見た後だけに、その闇の深さが胸に迫ってきます。


世界が不条理と理不尽にまみれていることを実感させられます。そして、この不条理や理不尽は、あまりに根が深く、規模が大きく、問題の解決に立ちはだかる壁はあまりに高く堅固です。ザナは、自分の無力さを感じながらも、その大きな問題のごくごく一部を解決しようともがきます。ザナが救えたのは、ごくごく小さな一部の子どもたちに過ぎません。けれど、何もしないより、誰も救えないより、遥かに意義のあることだったことは確か。小さな小さなものであるけれど、ザナは、確実に種をまき、それを芽を出させることに成功したのです。


この世界はどうしようもない不幸や苦悩に満ち溢れているけれど、けれど、そんな中でも、絶望せず、立ち向かおうとする人がいて、新たな自分の道を切り開いていこうとする力も芽生えている。不衛生でドラッグや売春、闇の商売といった違法行為に囲まれていて、それでも子どもは育っていき、そんな子どもだちにも、瞬間的ではあるにせよ笑顔や楽しみがあり...。


子どもたちの写真とともに、本作で描かれる光と闇のコントラストが印象的でした。売春窟からそう遠くないところで、衛生的で整った設備の中で高度な教育を受けている子どもたち。売春窟の子どもたちが見せる全てを諦めたような表情とその中で瞬間的に見せる子どもらしい明るい表情。


思いのほか、淡々とした描き方になっていて、作品としての盛り上がりには欠けますが、貧困の問題、子どもの権利に関する問題、教育に関する問題...いろいろと考えさせられます。


そして、こうした"恵まれない子どもたち"への援助の方法という部分でも考えさせられます。大切なのは、単に与えることでも助けることでもなく、彼らが、自分自身の力に変えられるものを伝えることが重要なのでしょう。


本作で描かれているのは、私たちが知るべきこと。一見の価値ある作品です。



*ザナが2002年に設立した子どもたちを支援する基金「Kids with Cameras」のHP内に本作が製作された2004年以降の子どもたちについて書かれています。明るい未来に向かって確実に歩んでいる者あり、行方が分からなくかっている者あり...。ここでも、明暗は別れています。



公式HP

http://www.mirai-kodomo.net/



未来を写した子どもたち@映画生活



Kids with Cameras のHP

http://www.kids-with-cameras.org/home/



現在の子どもたち(上記、HP内)

http://www.kids-with-cameras.org/news/?page=2008-04-13-calcuttaupdate.incl

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