世界はときとき美しい

テーマ:
GPミュージアムソフト
世界はときどき美しい


5編の短編からなる"映像詩"です。

「世界はときどき美しい」30歳のヌードモデル、野枝は、自分がモデルとなった絵を前にして、自らを騙り続けます。

「バー フライ」大阪、新世界の飲み屋を梯子する「蠅男とあだ名を付けられた」中年男性は、酒を飲み、路上に寝る生活を繰り返しています。

「彼女の好きな孤独」ベッドの上で噛みあわない会話を続ける男女。二人とも、本当の自分の気持ちが分からないままにいます。

「スナフキン リバティ」避妊が失敗したために生まれてくる子どもに戸惑う男性と妊娠したその恋人。

「生きるためのいくつかの理由」寂しい気持ちを娘に伝えられないでいる母親と、その母親の気持ちを知りながらも自分の生活を捨てられない娘。


そう、世界はときどき美しい。同じことが繰り返される退屈な日常、瑣末なことに悩まされ、煩わしいことも多く、なかなか、思うようには人生を歩めない。生きることは、つまらなく、辛く、哀しく、虚しさに苛まされ...。それでも、そんな日々の中には、たまには、輝くような瞬間を見ることができ、まれには、心の底からの喜びを感じられることもあり...。それは、時に、とてもささやかな物ではあるけれど、そうした日常の中に垣間見られる美しさに目を向ける余裕を持てていれば、人は生きていけるものなのかもしれません。


本作では、若さの喪失を実感しているはずの年齢の女性、中年男性、倦怠期にある男女、思いがけない展開に戸惑う男と女、互いに相手を気遣いつつもぎこちない母と娘、それぞれの、一見、"美しさ"とは縁がないように見える日常に、一瞬の美しさを見つける。その視線は温かく、心に沁みます。


そして、映像に柔らかく添えられる音楽。


映像は、8mmで撮られているということなのですが、暖かな肌触りが感じられる映像でした。瑞々しい緑と緑の中に射し込む光。ただの飲んだくれの中年男の日々でさえも美しく見せてくれた本作の映像は印象に残るものとなりそうです。


こうした美しさがあるから生きていける。そして、こうした美しさを何気ない日常の中に見出す力こそ、人に幸福をもたらすものなのかもしれません。


ありきたりの人生の繰り返される平凡な日常の中にも、ほんのりと心温まる美しさが隠れているかもしれない、そう思わせてくれるちょっと幸せな空気が感じられる作品です。



世界はときどき美しい@映画生活

AD