パンズ・ラビリンス

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ダークでビターな大人向けのファンタジーです。


舞台は、1944年、内戦終結後のスペイン。父をなくしたオフェリアは、母が再婚したフランス軍のビダル大尉の駐屯地で、ビダル大尉の子どもを身ごもった母のカルメンと暮らしています。オフェリアは、体調の悪い母を心配しながらも、冷酷なビダル大尉を父親として受け容れられずにいます。オフェリアに一片の愛情も示さない義父とその義父になつこうとしないオフェリアを攻める母。そんな中で、オフェリアに理解を示すのは、ビダル大尉と戦っているゲリラ軍に協力している小間使いのメルセデスだけでした。ある日、オフェリアの前に妖精が現れ、森の中の迷宮へと導きます。そこでは、牧神、パンが王女の帰還を待っていました。オフェリアこそが、昔、地上に出た際に記憶を失ってしまった地下の王国の王女、モアナだというのです。オフェリアは、王国に戻るために3つの試練を与えられます。一方、ビダル大尉の率いるフランコ軍とゲリラの戦いは激しさを増し...。


ファンタジーではありますが、決して、安心して子どもに見せられるものではありません。かなり、グロテスクで痛々しい場面も多いです。ところどころ、目を背けてしまいました。まぁ、古来、童話というものは、どこか残酷なう分を持っているものが多いわけで、残虐な場面があるのもファンタジーならではといえるのかもしれません。子どもを捨てたり、食べたり、最後は悪役に酷い復讐がされたりというのは、ある意味、童話の定番ですものね。


オフェリアはファンタジーの世界の王女となります。そんなオフェリアを母のカルメンはなじります。「辛くとも現実の世界の中で生きていくしかない」のだと。けれど、妻である彼女に対しても冷たく、非道なビダル大尉に付き従うことで生活の安定を得ようとしたカルメンが想い描いたものも幻ではなかったのか。そして、反対する勢力を力で抑え込み、自らの力を高めようとしたビダル大尉が創りあげようとした社会も幻想ではなかったのか。時に、現実の世界の方が、うそ臭く、欺瞞に満ちています。


オフェリは、辛い現実から逃れるようにファンタジーの世界に入り込みます。けれど、ファンタジーの世界でも、彼女は、試練に晒され、躓きます。


現実は辛い。ファンタジーの世界も甘くはない。けれど、ファンタジーの世界も、その中で正義を貫けば、大きな実りをもたらしてくれる。それは、決して、現実からの逃避ではなく、ファンタジーに支えられることで、厳しい現実をより豊かに生きていけるということなのでしょう。そして、理不尽で厳しいことだらけに見える現実の世界においてさえも、いつか、正義が勝利を収めるのだと。


ただ、全体として、残虐な描写の方が印象に残ってしまう点が残念。全体のバランスを考えると、もう少し、ファンタジックな場面が強調されても良かったような気がします。もう少し、いろいろな魔物を観たかった気もしますし...。妖精を含め、異界の生物たちの造詣は不気味でしたが、そんな中でも、第2の試練の場に登場した怪物ペイルマンの目玉など、不思議な可笑しさがあり、印象的でした。


ラストは、いろんな解釈ができるような形になっていて巧妙。考えさせられます。


私は、オフェリアは救われたのだと受け止めました。自分の信念に従って行動できたのなら、例え、そのために命を落とすことがあっても、魂は救われるのだと。そして、その魂を救うものこそがファンタジーなのだと。だから、人間にとって、ファンタジーは、必要不可欠なものなのだと。自分なりのファンタジーの世界を持ちえて、そこに殉ずることができたオフェリアは幸福のうちに生を終えることができたのだと。それは、現世で辛く残酷な仕打ちにあっても、死後の世界で永遠の命を得られれば、それこそが幸福なのだと唱えるキリスト教の死生観にも通じるもの。


本作で、勝利を収めたのは、オフェリアとメルセデスを含めたレジスタンスの人たち。「最後に正義は勝つ」というのも、とてもファンタジックな感じがしますが、こうして、現実の世界にある虚構を提示されると、正義が勝つことにリアリティが感じられます。


ファンタジーの世界と現実の世界の関係性のあり方、ラストの展開。特に、この2点が出色。本作の独特な雰囲気が上手く作られていて、作品の世界に引き込まれました。是非、お勧めしたい一本です。



公式HP

http://www.panslabyrinth.jp/



パンズ・ラビリンス@映画生活

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