サイドカーに犬

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不動産会社に勤める薫は、ある朝、ふいに有給休暇を取り、馴染みの釣堀を訪ねます。そこで、釣り糸をたらしながら、父が会社を辞め母が家出をした小学校4年生の夏休みを思い出します。母が家を出た数日後、突然やってきたヨーコさんとの日々は、薫にとって実に画期的なもの。タバコを吸い、自転車を乗り回し、歯が解けると禁止されていたコーラを飲ませてくれ、清志郎の音楽を教えてくれたヨーコ。薫は、破天荒ながら、子どもと対等に向き合ってくれるヨーコを、好きになっていくのですが...。

子どもが大人になるということは、親から離れる、親がいなくても何とかできるようになるということなのでしょう。本作では、薫が、母の家出により母から離され、母の帰宅により母のいない間慕っていたヨーコからも離され、そのことで、親からの精神的な独立を迫られます。そして、その時に、ヨーコが垣間見せてくれた大人の世界、自転車やコーラや清志郎に象徴されるものが薫を支える一つの力となったことでしょう。


子どもの成長が子どもの視点で描かれていきます。子どもは概して、多少ズレた感じのある大人に魅力を感じるもの。そのズレに陳腐な大人にはないもの新鮮なものを感じるのでしょう。そして、子どもは、身近な大人に他世ざるを得ない。


子どもは、幼ければ幼いほど、大人に依存しなくては生けていけないものです。母がいなくなったからといって、いつまでも、そのことにこだわり続けていても何もならない。ヨーコに頼らざるを得ない。薫がヨーコに惹かれた背景にヨーコの魅力があったことはもちろんでしょうけれど、他に頼る相手のいない薫の切なさも感じられます。その辺りが、薫ほどにはヨーコの側につかず父を頼った弟との違いのように思えました。


そして、ヨーコとの交流がきっかけとなって訪れた目覚め。薫の父親への頭突きと犬の鳴きまねには、確かな薫の意思と、けれど、それ以上のことをするわけにもいかない子どもとしての限界をわきまえている分別が感じられ、本作におけるとても重要な場面となっています。


ヨーコを演じた竹内結子が熱演です。予告編などからは、もっと弾けた感じを予測していて、その点では物足りなさもありましたが、弾けすぎないながらもしっかり印象を残したのは見事。


そして、香役の松本花奈の目力も印象的でした。突然のことに戸惑いながらも、確実に成長していく姿が心に残ります。


ヨーコもぶっ飛んでいますが、お母さんもなかなかのものです。突然、二人の子どもと夫を置いて家を出たと思ったら、突然、戻って、いきなり、ヨーコを非難するのですから。鈴木砂羽も、このお母さんの一見地味ながら、激しい面を持つ役どころをしっかりと捉えていたと思います。


上映館もあまり多くない地味な作品ですが、雰囲気のある佳作と言えるでしょう。お勧めです。




公式HP

http://sidecar-movie.jp/



サイドカーに犬@映画生活






http://www.eigaseikatu.com/tb/tb?movie_id=17904
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