最近、流行(?)のアフリカ物ですが、その中で、最も、白人がアフリカで犯した罪に真摯に向き合った作品だと思います。


医学部を卒業し、目出度く学位を取得したニコラスは、ウガンダへ行くことを決めます。それが、1971年、アミン大統領がクーデターにより、政権を取り、イギリスの支援を受けてウガンダの新しい大統領に就任した時でした。地方の貧しい村で、先輩医師とともに診療に従事していたニコラスは、近くで開かれたアミン大統領の演説会に出かけた際に、偶然、アミン大統領の怪我を手当てをし、アミン大統領に気に入られます。やがて、アミン大統領の主治医となったニコラスは...。

今の世界で、先進国に生まれ育つということは、それだけで、貧しく力の弱い国々に対する加害者の立場にいると言っていいのでしょう。加害者は、往々にして、害を加えていることに対して無自覚です。けれど、その無自覚さ、無知さは、それだけで、十分に罪となり得るのです。


ニコラスの、きちんと事実確認を使用ともしない、周囲から与えられる情報に耳を傾けようとせず、、新聞記事にも目を向けようとしない姿勢が、いかに、周囲に災いをもたらし、多くの犠牲を出したか。自分の愚かさに、自分の罪に気付くチャンスは何度もあったにも拘わらず、そこから、学ぼうとはせず、反省もせず...。ニコラスの密告により捉われ命を奪われた側近の厚生大臣、ニコラスにより傷つけられ、ニコラスとの関係のために惨殺された第三夫人ケイ。ニコラスの命を救ったために殺された黒人医師。


ニコラスは、決して、悪人ではない、それどころか、基本的に善人です。けれど、彼の後先を考えない無邪気な行動が、取り返しのつかない結果を生んでいく様子は恐ろしいほどでした。白人である、先進国の人間であるということだけで、ある種の力を持つことになるのに、それを理解しようともせず、無自覚に、力を振り回し、周囲に傷を残していくニコラスの姿が愚かで哀れでした。


一方、アミン大統領についても、本作の所々で、ユーモアに溢れ懐の深く人間的な部分が描かれています。そのアミン大統領が権力を握るに連れて、変質していきます。権力欲、猜疑心、民衆の感情や痛みに対する無自覚。徐々に、泥沼にはまっていくように、狂気の独裁者への道を突き進んでいきます。恐らくは、自分自身は、最後まで理想の中にいたのかもしれません。客観敵意見れば、どれ程、残虐なことをしてきたか理解していなかったのかもしれません。けれど、アミン大統領のしてきたことは、大きく一つの国家を傷つけました。


ニコラスも、アミンも、それぞれ、ウガンダにおいて大きな力を行使できる地位にいました。そうした立場にいる者たちの、自己の力に対する無自覚が、いかに、国を、国民を傷つけたか。力のある者、富める者は、そのことだけで、他人を傷つける可能性を持っていることを自覚し、自分が無意識のうちに踏みつけている者たちに意識を向けていかなければならないのです。


愚かな者が力を持つことの恐ろしさ、先進国の人間にありがちな無知で無邪気で無自覚な善意がもたらす災い。そこを描き出したことに本作の意義があるように思えます。

さらに、アミン大統領の誕生に秘かに力を貸しながら、イザ、邪魔になると、その存在を消そうとする英国。ここでも、先進国のエゴが描かれます。世界のいろいろなところで起こる先進国の政権への介入。その身勝手で行き当たりばったりの介入が、どれだけ、多くの国々を翻弄し痛めつけてきたことか。


最近、アフリカを舞台にし、そこで起こっている問題の背景を描く作品がいろいろと公開されていますが、ここまで、先進国側の身勝手さを正面から描いた作品も珍しいような気がします。


そして、独裁者も民衆の熱狂的な支持を受けて誕生するものだという事実。もちろん、アミン大統領誕生の背景には、英国の力が大きく関与していたわけですが、ウガンダの一般民衆が、熱烈に支持したことは確か。それが、なくては、いくら英国が頑張ったとしても、アミン大統領があそこまで権力をほしいままにすることはできなかったでしょう。これは、アミン一人に限ったことではありません。あのヒトラーも、極めて民主的な制度の中から国民の熱狂的な支持を受けて一国のトップになったわけですし...。


さて、黒人医師に命がけで救出してもらったニコラス。果たして、彼は、その恩に報いる行動を取ったのか?ラストの後に流れるテロップを見ると、黒人医師がに託された役目を果たさなかったという形に納められているのだと思いますが...。(まぁ、単に、実在の人物でないニコラスに歴史的に重要な役割を担わせることはできなかったということなのかもしれませんが...)


アミン大統領を演じたフォレスト・ウィテカーが出色。残虐な言動を繰り返しながらも、一方で、ユーモア溢れる一面を持ち、子どものような可愛らしさを見せる時もある、不思議な人間的魅力と残酷さを併せ持つ人物像を見事に再現しています。


また、ニコラスを演じたジェームズ・マカヴォイも、わけがわからないままに深みにはまっていき、過ちを繰り返しながらも、無責任に逃げ回ろうとする愚かな善人の情けない姿を見事に表現していてニコラスの人物像にリアリティを与えています。本作は、事実に基づいて作られているとはいえ、ニコラスは架空の人物。けれど、この軽佻浮薄な青年を中心的な部分に据えたために、本作は、単なるドキュメンタリー的問題告発映画ではなく、エンターテイメントとしても優れた作品になり得ているように思えます。


ニコラスが象徴する白人社会が、いかに、アフリカを傷付け、弄んできたか、そして、そのことに対して、きちんとした責任を果たすことを放棄し続けてきたか、そのことを見せ付けられるような作品です。


私たち、日本人も、間違いなく、加害者の立場にあります。そこことをきちんと自覚し、考え、行動していかなければならないということなのだと思います。本作で描かれていることは、先進国に生まれ育った者として、知っておくべきことなのです。




公式HP

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ラストキング・オブ・スコットランド@映画生活