夜のピクニック

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恩田陸の同名小説 を映画化した作品です。


原作のイメージ通りの真っ直ぐな青春映画でした。原作のイメージを壊していないのは見事だと思います。が、あまりにそのまますぎるという感じもします。原作のある映画作品の難しいところだと思いますが、原作から離れすぎても不満が残るし、原作に忠実すぎても物足りなさがある...。映画は映画で独自の世界を築きながら、原作のイメージを活かすというのは、なかなか難しいのでしょうが...。


そして、本作は、「原作に忠実すぎた」感があります。もちろん、長編の原作を約2時間の映像で表現する以上、ところどころ削られていたり、短縮されたりはしていますが...。(説明的な部分が、かなり端折られていました。原作を読んでいると特に引っかかる部分はなかったのですが、原作を読んでいないとわかり難い部分はあるかもしれません。そういう意味では、本作は、「原作を読んでから映画を観る」方が楽しめる作品と言えるでしょう。)


とはいっても、正面からまさに今この瞬間に進行している青春を見据えた真っ直ぐさは、爽やかで、観ていて気持ちの良い作品に仕上がっていたと思います。


みんなで夜歩く、ただそれだけのこと。確かに「それだけのこと」なのですが、同時に「普通、しないこと」でもあります。本作のように、学校の伝統行事としてでも存在していなければ、やらないことでしょう。そして、そんなことに、意義を見出し、そこに何かを賭ける気持ちになれるのも青春ならではなのだと思います。


観ていると、かつて青春真っ只中だった頃を思い出し、懐かしい気持ちになれる...。そんな作品です。誰も、心の中に持っている、真っ直ぐな部分を刺激してくれる。そして、そんな真っ直ぐさが自分の気持ちの中に残っていることに気付かせてくれる作品だと思います。


「それだけ...?」という印象も残らないわけではありません。本当の歩くだけだし、ラストの方までいっても、今ひとつ、長距離を歩いている雰囲気には欠けていますし...。肝心の貴子と融の関係についても、ほとんど口をきくこともないまま卒業することになりそうな状況におかれている背景の描き方は薄かった気がしますし...。


映画そのものがどうこうというより、映画を観ることによって、自分の中の何かが刺激される。その刺激される部分と刺激されたことによって心の中に甦ってくるものの違いが、本作への評価を分けるのかもしれません。




[以下、ネタバレあり]








ところどころに挟まれるアニメや笑えないギャグ、ヘタなロック...。少々、作品のテンポを崩している感じもありましたが、それはそれで、青春ぽさを強調しているようでもありました。まだ子どもだけど、突っ張っていて、背伸びして、でも、何かが足りなくて、どこかもどかしくて、自意識過剰で...。


80kmを歩く中で、周囲の助けを受けながら、貴子と融は一つの壁を乗り越えます。こんな風に、何かを乗り越えながら、少しずつ成長し、大人になっていくのでしょう。高校時代というのは、そろそろ、子ども時代に別れを告げ、大人への道を歩み始める時期でもあります。この先、きっと、この経験は、彼らの人生を支える柱の一つとなるはず。


ラスト、貴子は融たちと一緒にゴールします。「GAOL」と大書された門を潜る貴子たちの背中の映像が貴子たちの正面からの映像に変わり、上を見上げると「START」の文字が...。歩行祭は終わり、貴子の「賭け」も決着します。そして、貴子と融の間に大きく横たわっていた問題は一応の解決をみます。けれど、それは、別の何かの始まりでもあります。人生はまだまだ続くのです。この映像は、彼らの「GOAL」が、実は、別の何かの「START」なのだということを鮮やかに表現して見事でした。この辺りの表現は、映像ならではといったところでしょう。




公式HP

http://www.yorupic.com/




夜のピクニック@映画生活
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