地下鉄(メトロ)に乗って

テーマ:
浅田 次郎
地下鉄(メトロ)に乗って


不思議な雰囲気の作品でした。


地下鉄の出入り口を通してタイムスリップしてしまう主人公。そこで過去の父に出会い、ずっと教えられることのなかった父の生い立ちを知るようになります。そして...。


面白いのは、タイムスリップをしているのが、主人公だけではないこと。主人公の真次とその不倫相手のみち子。


他の時間への出入り口が地下鉄だというのも面白かったです。確かに、使い慣れていない地下鉄の駅を利用する時、どこの出入り口が地上のどの場所とつながっているのか、混乱してしまうことがあります。


巨大な都市の下に巡らされている地下鉄の網。比較的、浅いところから深いところまで。その複雑さは、日頃、地下鉄を利用しなれている人でも、路線図がないと上手く利用できないほど。同じ名前の駅なのに乗り換えに時間がかかったり、違う名前の駅なのにとても近かったり...。要領よく乗りこなすには、それなりの修練が必要な世界です。


その地下鉄の特性を上手くいかした世界が作られていて、かなり、ありえない話なのにも関わらず、妙なリアリティを感じてしまいました。


そして、自分の現在、過去に大きく関わり、自分の原点とも言える父の生い立ちを知る「自分探し」の旅の面白さが重なります。


父の生い立ちに接することで発見する父の新たな面。今まで知らなかった父の姿に触れることで父への憎悪が解けていきます。父への赦しが自分の存在を受け容れることに繋がり、父を認めることで自分の人生に折り合いを付ける道を見出していきます。この過程の描き方が見事で、シミジミと胸に染み入ります。


さらに、「自分探し」の結果、暴きだされた思いがけない真実...。


正直、みち子との結末には納得できませんでした。それが、いかに酷い事実であれ、「自分の存在を消すことでなかったことにしてしまう」解決方法を取るべきだったのか。やはり、お互いに存在しあいながら問題を解決する道を探るべきではなかったのか...。



10月に映画が公開されます。

http://www.metro-movie.jp


ロケには、東京メトロが全面協力しているのだとか。本物を使った地下鉄の映像が楽しみです。

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