博士の愛した数式

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この作品は小川洋子作の「第一回本屋大賞」を受賞した話題の 同名小説 を映画化した作品です。


主人公の天才数学者「博士」は、交通事故による記憶障害のため、80分しか記憶がもちません。何を話していいかわからず混乱した時には、言葉の代わりに数字を持ち出します。博士の元で働くことになった家政婦の杏子とその息子の10歳の息子ルートは、博士との交流の中で、博士が教えてくれる数の世界の美しさを知り、純粋に数の世界を愛する博士自身に魅せられていきます。


実生活にそのままの形で役に立つというものでもないけれど、もし、なくなったら、かなりいろいろな場面で支障をきたすというのが、高等数学の世界なのでしょう。一見、無味乾燥で、複雑な計算式が、さまざまな製品などの構造や安全性を計算するために必要だったり...。


博士の言葉を借りるなら数学者は、「神様の手帳を覗き見る」ような作業をしているらしいのです。現にある数字の中に隠された真実を見つけ出す、世の中の様々な現象を導き出す数式を見つけ出す...。試行錯誤を繰り返し、努力し、何かを見つけ出したとしても、それが何かに生かされるのは、何十年後だったり、100年後だったりもする。自分が生きている間に評価されることも、栄誉や経済的なゆとりをもたらしてくれることがないかもしれない発見のために、コツコツと努力を重ねる姿には、真理を求めて厳しい修行に耐える聖職者のようでもあります。


素っ気ない雰囲気を身にまとう数字に隠された美しさや神秘の一端を見せてくれ、そのことが、特に事件らしい事件もなく何気なく過ぎていく日常の生活に潜む輝きを見せてくれるようにも思えます。


この中で、素数について何度か語られているのですが、私自身、素数には、何となく惹かれるものがあり、街中で目に入ってきた車のナンバーなどの数字を素因数分解する癖があったりするので、この作品の世界に親近感のようなものがあったのかもしれません。


博士と杏子とルートの出会い。一生の内に一度でもこんな出会いがあったら、それだけで、その人生は幸せだったと思えるような、そんな三人の交流が暖かく、心に染みました。


そして、博士を挟んでの義姉と杏子の関係。義姉の杏子に対する微妙な心情も上手く表現され、この作品の雰囲気に奥行きを与えていたと思います。


原作とは、少し、ストーリーが変えられたり、結構、大きな位置を占めるエピソードが削られていたりしました。そして、やはり、数字や数式の美は映像より文章で表現する方が適した世界なのでしょう、博士の数学者としての側面がやや弱くなっていたような感じは否めませんでした。けれど、それでも、原作の一番大きな魅力は表現できていたように思えます。原作の魅力を表現し、けれど、原作とは、また、違った味わいの作品に仕上がっていたと思います。原作は原作で、映画は映画で、それぞれに少し違って、でも、それぞれがきちんと独立した魅力ある作品となっていて、珍しく、原作との幸せな関係が成り立つ映画作品になっていると思います。


観終わって暖かく幸せな気持ちになれる一本でした。



公式HP

http://hakase-movie.com/



博士の愛した数式@映画生活

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