スタンド アップ

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「モンスター」で美貌以外のところでも十分に勝負できる女優であることを証明して見せたシャーリーズ・セロンの主演作です。


夫の暴力に耐えかねて離婚し、故郷の北ミネソタに帰ってきたジョージー(シャーリーズ・セロン)は、連れてきた2人の子どもとの生活のため、給料の高い炭鉱で働き始めます。しかし、そこで、想像を絶すような男性従業員たちからの嫌がらせにあい、退職に追い込まれます。ジョージーは、自分を理不尽に追い出した会社と闘おうとしますが、炭鉱がほとんど唯一の産業で、炭鉱に経済的に依存している町の人々はそんなジョージーに協力するどころか反発をします。四面楚歌の中、ジョージーは...。


このストーリーは、実話に基づいて作られているのですが、ジョージーのモデルとなった人物が炭鉱での勤務を始めたのが1975年、集団訴訟が起こされたのが1988年、PTSDと診断され出勤をやめたのが1992年のこと。日本で「男女雇用機会均等法」が施行されたよりも後のことです。法律が、ある程度、整っても、現実が追いつかないのは、日本もアメリカも同じことなのでしょうが、それにしても、これは、日本より進んでいると思われていて、「自由と平等の国」のはずのアメリカで現実に起きたことなのです。


ジョージーの職場が、アメリカと言ってもマンハッタンではなく、古い体質の残っている田舎町にあり、その中でも、究極の男社会と言っていい炭鉱だったから、ということもあるのでしょうけれど、これだけのことが、そう遠くない過去に起きていたことに驚きました。1988年当時、この炭鉱で働いていた労働者の中には、まだ、現役で働いている人も相当数いるはず、それくらいに、近い過去に起きたことなのです。

ジョージーは、働き始めた初日から同僚の男性の嫌がらせにあいますが、それでも、その職場を紹介してくれたグローリーに「感謝している。初めて自分で稼ぎ、子どもを養い、自分の家を持てる。はじめて実感できたの。”生きている”って。」と喜びを伝えています。現代の日本では、女性が「子どもを養い。自分の家を持つ。」だけの収入を得るのは、十分に”可能”なことではありますが、その機会を”男性と同等に”得られるかというと、まだまだ、疑問も残る、というのが実情でしょう。

一人の人間としてごく当たり前のこと、正しいはずのこと、そうしたことを主張し、周囲に認めてもらうということの難しさに圧倒されるとともに、その中で、一人でも立ち上がろうとするジョージーの姿が凛々しく素敵でした。


最初は、四面楚歌だったジョージーにも、徐々に、味方が現れます。ジョージーが立ち上がって未来へ向かう闘いに挑んでいく過程に、ジョージーとその父、ジョージーとその息子という二組の親子関係、そして、ジョージー自身の自分の過去と向き合い、不幸な過去と和解する姿が重なります。


DV、レイプ、10代での出産、シングルマザー、セクハラ、親子関係...、様々な問題が折り込まれ、少々、てんこ盛りになってしまった感もありましたが、全体としては、上手くまとまって説得力のある内容になっていたと思います。重いテーマでしたが、案外、軽く処理されていて、そのために、かえって、しっかりとテーマが伝わってくるような感じもしました。


それにしても、新年早々、良い作品が続いています。




[以下、ネタバレあり]








会社側は、ジョージーを男性遍歴の派手な女性とし、会社側に問題があってセクハラが起きたのではなく、ジョージーの性癖からくる個人的な問題として片付けようとします。(こういったやり方は、このテの問題で訴えられた側の取る常套手段ではありますが...。)そして、その意向に沿った嘘の証言をするジョージーの同僚でかつてのボーイフレンドだったボビー・シャープに、ジョージーの弁護士ビルは、ボビーの良心に訴えかけ熱弁をふるいます。そして、ついに、ボビーは本当の証言をします。


法廷での場面の最後に、ジョージー側は、集団訴訟への賛同者を求めます。最初、なかなか、手を挙げる人が出ないのですが、ようやく一人、そして、また一人....。最終的には、かなりの人数が、ジョージーの賛同者として立ち上がります。その中には、男性の姿もありました。


この作品の中心になっているのは、セクハラとそれに対する闘いですが、決して、「女が勝って、男が負けた。」という問題ではないのです。立ち上がったその瞬間は、男性にとっても、自分の職場で行われている不正義に目を瞑り、生活のためと自分を騙して長いものに巻かれて生きる情けなさから、自らのプライドを救い、一人の人間としての尊厳を取り戻せた瞬間だったのだと思います。


原題は「NORTH COUNTRY」ですが、この作品は、珍しく、邦題の方が、作品の雰囲気に合っていると思えました。まさに「スタンド アップ」でした。







私自身が、就職したのは、男女雇用機会均等法施行後です。そして、多分、今の日本の職場の中では、産休や育休といった権利も保障されていますし、性による差別やセクハラといったものに出会うことが少ない部類の職場だと思います。実際に、ワーキングマザーの数も少なくありません。そういう職場で働けることは幸運だと思っていますし、そのことに感謝しています。そして、こういう環境にいられる背景には、これまで、長い歴史の中で、女性の権利の獲得に真摯に取り組んできた多くの人の苦労があることを忘れてはならないと思いますし、多くの先輩が整えてくれた環境を守り、より良いものにして後輩に渡していきたいものだと思います。


そんなことも考えさせられました。






公式HP

http://wwws.warnerbros.co.jp/standup/



スタンドアップ@映画生活
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