ロード・オブ・ウォー

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世界をまたにして活躍する大物の武器商人を主人公とした作品です。


ソビエト連邦崩壊前夜のウクライナに生まれたユール・オルロフは、家族とともにニューヨークへ移住し、両親の営むレストランを手伝っていました。ある日、ロシア人ギャングの銃撃戦を目撃したことをきっかけに、ユーリは武器商人となることを決意します。弟のヴィタリーをパートナーに、闇の世界に足を踏み入れたユーリは、世界でもトップレベルの武器商人にのし上がっていきますが、その背後には、インターポールのバレンタイン刑事が迫っていました。


本物の武器商人を取材し、実話に基づいて作られたというだけに、相当にリアリティのある作品に仕上がっています。


ユーリは、支払いさえきちんとするなら、相手を選ばず武器を売ります。当然のことながら、武器は、人を殺すために作られたもの。武器の進歩の歴史は、いかに効率よく確実に、多くの人間を傷つけ、その命を奪うかを追い求めた歴史でもあります。世界の武器商人が大量に扱い、最も流通していると言われる銃、カラシニコフは、厳しい環境や状況の中でも長く使える武器として重宝されているとのこと。ユーリは、いかに人を殺すのに有効なものかを説きながら武器を売って歩くのです。


ユーリは、「世界最大の武器商人はアメリカ」なのだと言います。自分たちが扱う武器の量など、アメリカが世界に売りさばいている武器の量に較べれば、ほんの僅かなものなのでしかないのだと。アメリカを始めとする世界の大国が表立って売ることができない武器を扱う自分たちは、各国のトップにとって必要な存在なのだと。


もともと、オサマ・ビン・ラディンを訓練し武器を用意し戦闘能力を与えのはアメリカであるにも拘らず、やがて、邪魔になったオサマ・ビン・ラディンの行為をテロと決めつけ、その撲滅を理由に戦いを仕掛け、大量の武器を消費し、徹底的に破壊し、今度は、その復興に当たって、アメリカの大企業が利益を得ている、そういう構図があり、そこに、彼ら武器商人も組み込まれているのです。


そして、ユーリも、根っからの極悪人ではないのです。弟や妻や子どもに対しては、普通に愛情を示します。その愛情は、決して嘘ではないのでしょう。息子と同じ年頃の少年兵の姿には動揺を隠すことができても、息子がおもちゃの銃で遊ぶことには心を痛めます。愛する妻や息子に対して、自分が武器商人であることを隠そうとする配慮も見せます。しかし、例え、武器商人としての仕事を続けることで、愛する人々を傷つけ、失っても、武器商人として生きることをやめることはできません。決して、全く、それらの出来事に心が痛まなかったわけではないでしょう。けれど、その傷には、すぐに癒えてしまうのか、隠されてしまうのか、どうも、長くは残らないようです。


「武器商人=絶対的な悪」という単純な善悪二元論で語らなかったことが、この作品に深みを出しているような気がします。そして、単純に悪いだけではない武器商人ユーリ役のニコラス・ケイジは、実に説得力のある演技でした。


そして、音楽も良く、特に、レナード・コーエンの「ハレルヤ」の流れる場面には、胸を打たれました。


人類の歴史のごく始めの頃から、人々は争ってきたのだと言われています。人類の歴史は、戦争とともにあるといってもいいのでしょう。戦争があるところには、武器があります。戦争で武器が使われるためには、誰かがどこかで武器を作り、誰かがそれを流通されているわけです。そこには、多くの人々がかかわり、多額の資金が流れ、利権、人々の生活...、いろいろなものが複雑に絡んでいます。


この作品を観ていると、武器商人たちの非道さを実感しますし、そのことに激しい嫌悪感を覚えます。けれど、同時に、もはや、「人の命を奪う武器を売る」ことの非道徳性を問うたり、武器商人の倫理観に訴えたり...、そんな感情論では、彼らには対抗できないということも思い知らされるのです。彼らは、武器がいかに残酷に人の生活や命を奪うことなど十分に承知の上で、それを売りさばいて利益を上げているのですから。


多くの人々の生活に大きな災厄をもたらす武器だとしても、それを作ることで、流通させることで生活している人が大勢いるのも事実。様々な外交上の駆け引きのために、大量の武器を必要とする勢力があるのも事実。


人類が戦いの歴史から決別するためには、感情論ではなく、武器を作ること、武器を流通させること、武器を保有することが損であり、武器とは関係のないところでもきちんと生活できるのだということを納得させられる理論の構築が必要なのです。


少なくとも、日本は、軍需産業に大きく依存せず(全くないとは言い切れないでしょうね)、戦争の名の下に一人の人間も殺すことなく、国民の多くが、少なくとも何とか食べていくことができる国になっています。その中にいる私たちが、戦争や武器とは関係ないところで、生きて行く方法論を確立することができないものだろうか...、そんなことを考えさせられました。


あと、面白かったのが、ユーリと彼を追うバレンタイン刑事の関係。ユーリは、何をするかわからない彼の顧客たちと違って、バレンタイン刑事は、どんな状況にあっても法を破らないことを知っています。だから、決して、自分を闇で無法に拷問を加えたり殺すようなことはしないと。武器商人としての仕事関係で関わる人の中で、弟のヴィタリー以外で、ユーリが最も信頼を置いていたのは、このバレンタイン刑事かもしれないというのが、皮肉な感じがしました。



公式HP

http://www.lord-of-war.jp/index2.html



ロード・オブ・ウォー@映画生活

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