ALWAYS 三丁目の夕日

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昭和33年の東京のある町の「三丁目」を舞台にした作品。


”金の卵”として中学卒業と同時に青森から就職するために東京へやってきた少女、そんな少女を受け入れる将来は大きくなることを夢見ている自動車の修理工場[鈴木オート」を経営する一家、駄菓子屋の店番をしながら大作家になることを夢見る物書き、病気の父親の入院費用を賄うために作った借金返済に追われ水商売をする女性、親に捨てられた少年、戦争で妻子を失った男性、そんな大人たちと生きる元気な子どもたち...。昭和33年12月に完成した東京タワーが出来上がっていく様子がところどころに映像として折り込まれていました。

特に決まった主人公を追うというのではなく、全体を貫くストーリーがあるのでもなく、様々なエピソードが積み重ねられていきます。一つ一つのエピーソードは、特別なものではなく、先の展開が読めるようなもので、目新しさもないのですが、ところどころで笑わされ、泣かされました。


この作品には、主な舞台となっている「鈴木オート」の一家3人を始め、何人かの主要人物が登場します。けれど、特定の登場人物が主人公というよりも「昭和33年の”三丁目”」とその時代そのものが主人公だったのかもしれません。


まだ貧しさも残っていたけれど、戦争は終わり、人々は平和を実感し、「今は苦しくても、将来は、もっと良くなる」と純粋に信じることができた時代。生活が少しずつ便利になり、物が豊かになっていった、そして、そのことをそのまま良いこととして受け止めることができた時代。「明日はもっとよくなる」と多くの人が信じていられた時代の躍動感、活力を感じられる作品でした。


昭和33年、私はまだ生まれていませんでした。私自身が知っているのは、もう少し後の世界なのですが、でも、今のように、生活が便利になり、物質的な豊かさを求めることに、環境破壊などの影の部分をほとんど感じずにいられた時代です。


将来に希望を持ちやすかった時代、多くの人が「少しでも豊かな生活をしよう」という共通の目標を持てた時代、そこには、物が溢れ、地球環境が危機的な状況をむかえ、将来への明確な目標を持ちにくくなり、はっきりとした将来像を描きにくくなった現代の社会が失ったもので溢れていました。


もちろん、今の社会に問題となっていることは、そのほとんどが、その高度成長の時代の影で、育まれてきたものなわけで、そういう意味からも、その時代のすべてを「昔は良かった」という形で肯定するつもりもないのですが...。


ただ、見事に作りこまれ、再現された懐かしい町の風景に郷愁を誘われ、懐かしい暖かい気持ちを呼び起こされたような気がします。


観客を選ぶ作品かもしれません。基本的には、子どもから高齢者まで楽しめる作りにはなっていたと思います。けれど、映画館で、笑っていたのは、40代以上の年代の観客だったような気がします。さまざまな場面に反応して泣き笑いしているのは一定以上の年代とおぼしき観客で、一方、比較的若い層の反応は、今ひとつだったような...。


思い出すとホンワカと暖かい気持ちになれる子ども時代、もう戻ることができないことも、実際は、決して、明るい面だけではなかったこともわかってはいるけれど、ふと「古きよき時代」を思い出してみることで、自分の人生を受け入れる気持ちになれて、明日への活力が沸いてくる。40代以上の人にとっては、そんな効能を得られる作品なのかもしれません。

ということで、特に、40代以上の方にお勧めの作品です。


ちょっと、わからなかったのが...

母親が育てられず、結局、駄菓子屋に預けられた少年、「淳之介」。姓が「吉行」なので、最高齢の現役美容師として名を馳せた吉行あぐりの息子であり、女優吉行和子の兄である作家の「吉行淳之介」ということになるのですが、作家「吉行淳之介」の実際の生い立ちとは違う育ち方をしています。この少年に「吉行淳之介」という名前が付けられた背景が何かあったのでしょうか?(この少年を育てることになった作家志望の駄菓子屋も「芥川龍之介」をもじった「茶川龍之介」ではありましたが...。)この作品を観るだけでは、よくわかりませんでした。


[「吉行」ではなく、「古行」だったようですね。そして、淳之介の実の父親が「川渕康成」。それにしても、芥川龍之介と川端康成と、何故、吉行淳之介なのかは、やはり、不思議な感じがします。]


そして、ラスト


「明日も、10年後も、50年後も、この綺麗な夕日が続く」という意味のセリフは、現代への皮肉にも聞こえますが、確かに、あの頃、多くの人がそう信じて疑わなかったのです。あのころの未来に、今、僕たちはいるのかなぁ...♪。SMAPの歌声が聞こえてきそうです。


原作の漫画は、現在も、連載中のこと。2作目、3作目への布石とも受け取れるような場面も見られ、「寅さんシリーズ」に続くような展開になりそうな期待と不安も感じたりしています。



公式HP

http://www.always3.jp/index02.html


ALWAYS 三丁目の夕日@映画生活



~以下は、12月3日に追記~


40代以上にお勧めと書いたのですが、意外に、もっと若い方にも人気のようですね。


ただ、どうなのでしょう?あの時代が「古き良き時代」ではあったかもしれないけれど、確実に今の方が良いことも多く、一方、今の時代の悪い点とされるもののほとんどは、あの時代にその萌芽があるわけで...。


今の私たちは、あの時代に「物ののない時代の心の豊かさ」を見ますが、あの時代こそ、社会全体が「物質的豊かさ」を追い求めた時代だったわけで...。子ども時代を懐かしんだ後、どう今を、未来を生きるかが問題なわけで...。


確かに、子どもの頃、携帯もパソコンもなかったけれど十分に楽しかったです。でも、携帯を持てて、パソコンを持てて、もっと楽しくなったと思いますし、携帯もパソコンもない時代に戻りたいとも戻れるとも思わないのです。


懐かしい子どもの頃に思いを馳せながら昔話に花を咲かせるのは、害はないと思うのですが、もっと若い人たちには、是非、自分が全く体験していない時代を懐かしむより、これからの将来をより良いものにすることに力を注いで欲しいものだと思うのは、私がオバサンになった証拠なのでしょうか...?

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