昨日の日本映画編に続き、本日は外国映画編です。今年、映画館で観た外国映画、65本の中から選んでみました。

[作品賞投票ルール(抄)]
◾選出作品は3作品以上10作品まで
◾1回の鑑賞料金(通常、3D作品、字幕、オムニバス等)で1作品
◾持ち点合計は30点
◾1作品に投票できる最大点数は10点まで
◾各部門賞に投票できるのは個人のみ
◾ニューフェイスブレイク賞は俳優か女優個人のみ
◾音楽賞は作品名で投票
◾以上のルール満たさない場合は賞の一部を無効

【作品賞】(3本以上10本まで)
フレンチアルプスで起きたこと」   4点
ぼくらの家路」   4点
イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」    3点
あの日の声を探して」    3点
おみおくりの作法」    3点
トラッシュ!-この街が輝く日まで-」    3点
ヴィヴィアン・マイヤーを探して」    3点
ボーダレス ぼくらの船の国境線」    3点
わたしはマララ」    2点
黄金のアデーレ 名画の帰還」    2点

【コメント】
「フレンチアルプスで起きたこと」は、幸せな家族の脆さを見せていて恐ろしいながらにも、いろいろと考えさせられる作品でした。「ぼくらの家路」は過酷な状況に置かれた子どもが描かれながらも、その中に子どもの逞しさと未来への希望も感じられて印象的でした。「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」は物語そのものの面白さと主演のベネディクト・カンバーバッチの名演に惹き付けられました。「あの日の声を探して」「おみおくりの作法」は、「おくりびと」とはまた違った弔いの在り方が印象的でした。「トラッシュ!-この街が輝く日まで-」は子どもたちの逞しさ、将来をきちんと考えた行動が印象的でした。「ヴィヴィアン・マイヤーを探して」は、全く知られていなかった人物の姿を炙り出していく推理物的な面白さもあり興味深く観ることができました。「ボーダレス ぼくらの国境線」は、世界で起こっている問題の解決策のヒントも見えてくる感じがしました。「わたしはマララ」は題材の魅力をきちんと伝えていたと思います。「黄金のアデーレ 名画の帰還」は単なる復讐や意趣返しだけではなく、得た物をきちんと社会に還元しているところが良かったです。
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【監督賞】
[リューベン・オストルンド] (「フレンチアルプスで起きたこと」)
【コメント】
日常的な出来事を中心に描きながら、ヒシヒシと怖さを伝える手法が見事でした。

【主演男優賞】
[ベネディクト・カンバーバッチ] (「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」)
【コメント】
これ以上はないというくらい、主人公のキャラクターを見事に表現していたと思います。

【主演女優賞】
[ヘレン・ミレン] (「黄金のアデーレ 名画の帰還」)
【コメント】
ヘンに被害者感情を高ぶらせるわけでもなく、凛とした姿が印象的でした。

【助演男優賞】
[アブドゥル・カリム・マムツィエ](「あの日の声を探して」)
【コメント】
声を出せない役で、ほとんど喋れない中、表情と仕草で内面をしっかりと表現していたと思います。

【助演女優賞】
[タチア・ザイプト] (「陽だまりハウスでマラソンを」)
【コメント】
夫のオシリを叩きながらも、夫の夢が叶うよう、必死に夫を支える愛情が伝わってきて心に沁みました。

【ニューフェイスブレイク賞】
[イボ・ピッツカー] (「ぼくらの家路」)
【コメント】
過酷な状況の中で翻弄されながらも、しっかりと自分の道を選び取っていく力強さが印象的でした。眼力が強くて印象的。

【音楽賞】
パレードへようこそ
【コメント】
冒頭で歌われる"Solidarity Forever"。労働歌としても歌われ、アメリカ南北戦争時の北軍の軍歌としても歌われたメロディーなのですが、その曲の成り立ちも含めて、本作の内容にぴったりの選曲だったと思います。
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【私が選ぶ○×賞】
該当なし
【コメント】

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この内容(以下の投票を含む)をWEBに転載することに同意する。


日本インターネット映画大賞外国映画部門投票受付サイト
http://blog.livedoor.jp/movieawards_jp/archives/maj2015y.html


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今年も終わろうとしています。

例年通り、日本インターネット映画大賞への投票をしながら、この1年に観た映画を振り返りたいと思います。これも例年通りですが、今年公開された作品で、映画館で観たもののなかから選びました。

今年、映画館で観たのは、日本映画48本、外国映画65本の合計113本。久し振りに100本を上回りました。

では、まずは、日本映画編を...。

[作品賞投票ルール(抄)]
◾選出作品は3作品以上10作品まで
◾1回の鑑賞料金(通常、3D作品、字幕、オムニバス等)で1作品
◾持ち点合計は30点
◾1作品に投票できる最大点数は10点まで
◾各部門賞に投票できるのは個人のみ
◾ニューフェイスブレイク賞は俳優か女優個人のみ
◾音楽賞は作品名で投票
◾以上のルール満たさない場合は賞の一部を無効

【作品賞】(3本以上10本まで)
戦場ぬ止み」    5点
俺物語!!」   4点
野火」    4点
恋人たち」    4点
あん」    3点
きみはいい子」    2点
駆け込み女と駆け出し男」    2点
アゲイン 28年目の甲子園」    2点
アラヤシキの住人たち」    2点
バクマン。」    2点
【コメント】
戦後70年の節目の年ということもあるのでしょう。戦争やこの先の平和について考えさせられる作品もいろいろと公開されましたが、その中からは2本。「戦場ぬ止み」は、日常の中にある平和を守る戦いが丁寧に描かれ印象的でした。全国的にあまり報道されない事実を教えてくれる作品でもあり、私たちにとって観ておくべき作品だと思います。「俺物語!!」は何と言っても鈴木亮平の演技が見事。面白かったです。戦争関係のもう1本「野火」は、極限状態に置かれた人間の在り方について考えさせられました。兵士も国民も大切にしない国家が何を守れるのかについても考えさせられます。「恋人たち」は登場人物たちを取り巻く様々な状況をちょっとした映像で伝える表現力が見事だったと思います。「あん」は理不尽な目に遭わされた者たちの再生が描kかれていました。樹木希林の自然な感じの演技が心に沁みました。「きみはいい子」は子どもに対する虐待を扱っていますが、その問題の深さ、難しさも描きつつ、希望も感じさせてくれる作品でした。「駆け込み女と駆け出し男」は教科書の歴史に書かれるようなものとはちょっと違った江戸時代のリアルが感じられて面白かったです。「アラヤシキの住人たち」は、"共生"という考え方の一つの可能性とそこにある喜びを見せてくれています。「バクマン。」はテーマである漫画への愛に溢れていて面白く観ることができました。
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【監督賞】
[橋口亮輔] (「恋人たち」)
【コメント】
主人公が妻の詩を受け入れられない様子を僅かな隙間から覗き見ることができる枯れたままのお供えの花で表現するなど、細部まで生き届いた感じの映像が印象的でした。この映像により語る力が見事だと思います。

【主演男優賞】
[鈴木亮平] (「俺物語!!」)
【コメント】
体形も顔もこれ以上ないという位、主人公のキャラクターにぴったりだったと思います。

【主演女優賞】
[樹木希林] (「あん」)
【コメント】
理不尽な目に遭わされながら、ヘンに卑下することなく、日々を丁寧に生きてきた主人公の優しさ強さを見事に表現していたと思います。

【助演男優賞】
[堤真一] (「駆け込み女と駆け出し男」)
【コメント】
お吟との"大人の恋"が心に沁みました。お吟の臨終の場面で虚無僧姿で読経する場面は名演だったと思います。

【助演女優賞】
[樹木希林] (「駆け込み女と駆け出し男」)
【コメント】
人の気持ちを思い遣る繊細さを持ちながらも、しっかりと肝の据わった感じが見事でした。

【ニューフェイスブレイク賞】
[内田伽羅] (「あん」)
【コメント】
映画初出演とは思えない自然な存在感が見事でした。

【音楽賞】
マエストロ!
【コメント】
音楽の力が感じられる作品。作中に彩りを加えるベルリン・フィルの演奏も良かったですし、の最後を巧く締めくくった辻井伸行のエンディングテーマも印象的でした。
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【私が選ぶベストエンドロール賞】
「バクマン。」
【コメント】
作品で取り上げられている漫画、少年ジャンプへの愛情に溢れたエンドロールでした。このエンドロールをじっくり観るためだけにDVDを買ってもいいと思えるレベルです。
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この内容(以下の投票を含む)をWEBに転載することに同意する。


日本インターネット映画大賞日本映画部門投票受付サイト
http://blog.livedoor.jp/movieawards_jp/archives/maj2015n.html


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完全なるチェックメイト

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本作が、今年最後の"映画館で観る映画"となります。

冷戦下の1972年、アイスランドでチェス世界王者決定戦が行われます。世界王者、ボリス・スパスキーに、アメリカ人のボビー・フィッシャーが挑みます。当時、チェスの世界ではソ連が圧倒的な力を持ち、1948年から24年もの間、世界王者の座を独占していました。若くして頭角を現し、史上最年少でチェスのグランドマスターとなったボビー・フィッシャーに対し、西側諸国がかける期待は大きく、2人の対戦は、米ソ両国の威信をかけた代理戦争の様相を呈し...。

フィッシャーの天才と狂気が描かれます。まぁ、当時の状況を考えれば、彼が盗聴や尾行を疑うのも、根拠のない話とも言い切れないでしょう。そして、対戦相手のスパスキーの言動を見ても、フィッシャーの"狂気"が彼が抱える精神的な問題による特有のものではなく、同じ状況に置かれた者であれば陥る可能性があると言えるワケで...。

チェスというゲーム自体に狂気を引き起こす要素があるような描かれ方をしていますが、その辺りには違和感も覚えました。作中で描かれている状況を見れば、チェスがどうこうという以上に、"代理戦争"をさせられるプレッシャーが問題だったような気がします。母親がFBIの監視対象だったのは事実なようですし、ソ連側からのプレッシャーもあったようですし、それなりの根拠があり、それを彼の妄想が膨らませていった結果、彼の狂気が深まったということなのではないでしょうか。

全体に重い雰囲気で、緊迫感が漂います。そして、その中で、追い込まれていくフィッシャーの様子が主演のトビー・マグワイアの名演で丁寧に描かれ、国と国のプライドをかけたつばぜり合いに心身を疲弊させていく彼の苦悩が胸に迫ってきました。ただ、一方で、チェスの対戦そのものの緊迫感は十分に伝わってこなくて残念でした。盤上で何が起こり、何が凄かったのかをもっときちんと伝えて欲しかったです。

スパスキーとの対戦がメインに描かれていますが、第2局の不戦敗の後、スパスキーの"譲歩"がなければ、フィッシャーは試合に現れることなく、スパスキーは闘わずしてチャンピオンになれたのでしょう。スパスキーこそが、誰よりもフィッシャーの登場を願っていたということなのでしょうか。フィッシャーが何を恐れているのか、ということについても、神父が"勝った後のことを恐れている"という感じのことを言っていたのですが、それはどういうことだったのか...。

ところどころ、突っ込み不足で消化不良な感じがする部分があり、気になってしまいました。

チェスのルールが分からなくても楽しめます。ヘンに演出で盛り上げることをせず、ドキュメンタリータッチで描かれています。まぁ、それはそれで悪くないと思うのですが、映画作品としての魅力は抑えられてしまっている感じもします。ドキュメンタリー性を大切にするのか、映画作品としての面白さを優先するのか...。その辺りが中途半端になってしまっているようで残念でした。

題材は面白かったと思いますし、トビー・マグワイア始め、出演陣も良かったと思います。もうちょっと描き方に工夫があれば、かなりな傑作になり得たと思うのですが...。悪くはなかったと思うのですが、もうちょっとでグッと面白くなったような気がするだけに残念です。

ちなみに、ボビー・フィッシャーは、本作のエンドロールでも触れられているユーゴスラビアにおけるスパスキーとの再戦が、米国が禁じるユーゴスラビアに関わる経済活動に当たるとされ、アメリカ政府からパスポートを無効化されます。で、そのために、日本に滞在していたフィッシャーは、2004年7月14日に成田空港から出国しようとした際、入管法違反で拘束されるのです。その後、紆余曲折を経て、アイルランド政府から市民権を与えられ、日本からアイルランドに出国。2008年1月17日に亡くなるまでの日々をアイルランドで過ごします。そして、その1億6千万円と言われる遺産は、日本のチェスの女子選手権チャンピオンだった渡井美代子が相続しているとのこと。この件で、"ボビー・フィッシャーを救う会"が結成され、羽生善治氏も当時の小泉首相に嘆願メールを出したり、週刊文春に記事を掲載したりしています。日本にも縁の深い人であることを初めて知りました。


公式サイト
http://gaga.ne.jp/checkmate/


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禁じられた歌声

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マリの古都、トンブクトゥ。郊外の砂漠で暮らす少女、トヤは、父のキダン、母のサティマや孤児の牛飼いの少年、イサンとともに幸せに生活していました。けれど、イスラム過激派が街に乗り込んできて、人々の生活を縛るようになります。彼らは、音楽を禁止し、スポーツを禁止し、従わない者に対して罰を加え...。

作中にも取り上げられていますが、マリ北部の街で、事実婚で子どもをもうけた若いカップルが石打ちにより処刑された事件を下敷きにして描かれています。ティンブクトゥは、2012年に外国から入って来たイスラム過激派に占拠され、翌年解放されるまでの間、支配されます。

作中で、様々な言語が行き交います。元々、砂漠を往来するキャラバンの要衝として栄えた土地です。いろいろな民族が共存しているのでしょう。様々な文化が入り混じって栄えた豊かな街が、蹂躙されていく様子が描かれます。けれど、元来街が持っていた豊かさに支えられるのか、人々は過激派に抵抗を試みます。特に、エアサッカーに興じる少年たちの姿には、風にしなるけれど折れない柳のようなしなやかな強さが感じられます。

過激派が人々を弾圧し蹂躙する様子が描かれますが、彼らを全面的な悪として存在させているわけではありません。タバコを吸い、踊る兵士もいたり、自己批判が上手くできず指導を受ける元ラッパーがいたり、サッカー談議に興じる兵士がいたり、彼らにも四角四面な原理主義者だけでない面があるのです。そして、彼らがリビアからやって来たことが示唆されています。欧米の介入もあり、カダフィ大佐による独裁が崩壊したリビアですが、その後、混乱状態に陥り、そこのとが、イスラム過激派の跳梁をもたらす原因ともなっています。オサマ・ビン・ラディンにしても、元々はアメリカが育てているわけですから、この件について、西欧社会も無実とは言えないのです。

人々が、日常生活のこまごまとした部分まで縛られる中、唯一、派手な服装をし、髪を隠さず、歌うことが許されているのが、精神を病んだ女性。狂気であることでしか、自由を手にできない世界こそが狂気なのでしょう。正気と狂気が逆転する狂気。

脆く崩れていく自由と権利。些細なことがきっかけとなって大きく運命を狂わされるトヤの家族。どんどん波紋が広がっていく恐ろしさ。

いくつかのエピソードが重ねられ、その中に、ごく一部の地域での特殊な出来事とは言えない、普遍的な問題が提示されています。全体的には、静かで淡々とした雰囲気なのですが、平和で多様な人々が共存していた街が、短期間で支配され、人々の自由が奪われていく様子には、自由や権利というものが、いかに奪われやすいものであるかが実感させられます。私たちが、今、手にしていると思っている自由や権利も、本当に大丈夫なのか、この先も持ち続けていくことができるのか、私たちはもっと真剣に考え、守るための行動をしていかなければならないのだと思います。

乾いた砂漠の風景、日干し煉瓦でつくられた家々、鮮やかな色彩の民族衣装や敷物、美しい映像も印象的でした。作中で描かれる多くの不条理。背景の美しさがその理不尽さを強調しています。

私たちにも決して無関係ではない出来事として、私たち自身のこととして受け止めながら観るべき映画だと思います。お勧めです。


公式サイト
http://kinjirareta-utagoe.com/


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消えた声が、その名を呼ぶ

テーマ:
1915年、第一次世界大戦中、オスマン帝国の南東部の都市、マルディン。アルメニア人のナザレットは、鍛冶職人として評判も良く、妻のラケル、双子の娘、ルシネとアルシネ、5人で幸せな日々を送っていました。そんなある日、憲兵がやってきて、ナザレットを強制的に妻や娘たちから引き離し、連れ出します。灼熱の砂漠で道路建設をさせられ、ともに連行された仲間の中には命を落とす者も現れます。アルメニア人の子ども、女性、老人たちが馬に乗った憲兵たちに家畜のように扱われながら歩いていく姿を見ることもありました。ある朝、アルメニア人の男たちは、手足を縄で繋がれ谷底に連れていかれ、喉を切り裂かれます。ナザレットも喉にナイフを突き立てられ、死にかけますが、何とか一命をとりとめます。ナザレットは声を失いますが、娘たちが生きていることを知り、娘たちを探そうと...。

本作は、1915年から1916年にかけて、オスマン帝国が行った死者100万人とも150万人とも言われるアルメニア人虐殺事件から始まります。アルメニア人の故郷はメソポタミア文明を育んだティグリス・ユーフラテス川の源流地域で、古代アルメニア王国は紀元前2世紀に建国され繁栄していましたが、1045年にビザンティン帝国によって滅ぼされ、その後設立した王国も14世紀に滅び、アルメニア人は中東からヨーロッパ各地へと広範囲に移住します。オスマン帝国内では大規模なコミュニティを形成します。オスマン帝国が弱体化していく中、キリスト教徒であるアルメニア人の独立や暴動を警戒するようになります。第一次世界大戦(1914~1918年)勃発後、オスマン政府はアルメニア人男性を強制連行し、辺境地域での労働に従事させた後に処刑しました。また、年配者や女性、子どもは町から移送し、武器は使わず飢えや乾きによって死に至るまで歩かせました。ヒトラーは、この一連の流れをユダヤ人虐殺の手本にしたとの説もあります。ちなみに、1991年、アルメニアは共和制の独立国家となっています。

その時点では一方的に被害者だったナザレットでしたが、過酷な状況を生き延び、娘たちを探しに行く資金を得るためには、善人ではいられず、悪にも手を染めます。

敬虔なクリスチャンで、いつも穏やかで善人であろうとしたナザレットでしたが、過酷な状況を生き延びるために、時に、悪に手を染めます。砂漠で労働をさせられるナザレットたちの近くを歩かされるアルメニア人たち。その中にいた一人の少女が倒れた時、助け起こしてやるナザレットでしたが、その後、助けを求められた時は、彼女の訴えを無視します。マルディンで幸せに過ごしていた頃の知人が脱走兵に金品を強奪される場面でも、助けて欲しいとの懇願に目を背けます。娘たちを探しにアメリカに行くための費用を捻出するためには罪も犯します。身を守るためとは言え、人を暴力を振るったり、銃で撃ったりという場面もあります。だからといって、完全に善き部分を失ったわけではなく、オスマン帝国が敗北し、街を脱出するトルコ人に人々が石を投げる場面で、彼は、どうしても石を投げることができません。

けれど、一方で、ナザレットを救い、娘の元に導いたのは、赤の他人の善意。一巻の終わりかと思われた場面で、見も知らぬ人々の見返りを求めない善意に出会い、救われます。"処刑"を生き延びることができたのは、彼を"処刑"させられた人物の悔恨と善意。そして、砂漠で水も底をつき、死にかけた彼を救い、住まいと仕事を与え、アメリカに行くために便宜を図ってくれたのも、シリアの石鹸工場のオーナーの善意。

人は、基本的に、完全に善であったり、完全に悪であったりすることはなく、状況によって、悪の部分が大きく現れたり、善の部分に比重が傾いたりするものなのでしょう。人間は、どちらの方向であれ、完全になれる程、強くないということなのかもしれません。

娘に会いたいという一途な想い。それが、彼を地球半周の旅に駆り立て、強い意志により、それを成し遂げます。けれど、そのために失ったものも少なくありません。喉に大きな傷を負い、そのために声をも失ったナザレットでしたが、娘を探す旅においても彼の中の善なる部分は大きく傷つけられます。娘に再会した後、彼は、そのために払った犠牲について胸を張って娘に語ることができるのか...。そして、喜びの再会の後、再び幸せを味わうことができるのか...。

ラストは、それまでの重厚な雰囲気に比べて、あっけなく、やや安易にまとめられた感じがしないではありませんでしたが、単純明快に割り切れない部分を見事に掬い取っていて、印象的な作品に仕上がっていると思います。

ナザレットを演じたタハール・ラヒム。声を失ってからは、動作と表情だけの演技になるのですが、その強い眼差しが実に印象的でした。

一度は観ておきたい作品だと思います。


公式サイト
http://bitters.co.jp/kietakoe/


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ヴェラの祈り

テーマ:
ヴェラの祈り HDマスター アンドレイ・ズビャギンツェフ [DVD]/コンスタンチン・ラヴロネンコ,マリア・ボネヴィー,アレクサンドル・バルエフ
¥4,104
Amazon.co.jp


ウィリアム・サロイヤンの長編小説「どこかで笑っている」をベースに作られた映画。

ひと夏を過ごすため、アレックス(コンスタンチン・ラヴロネンコ)は、妻のヴェラ(マリア・ボネヴィー)と2人の子どもを連れ、他界した父が遺した田舎の家にやってきます。そんなある日、ヴェラの妊娠が分かります。ところが、ヴェラは、その子どもの父親はアレックスではないと言います。アレックスは、戸惑い、兄のマルコに相談することにします。アレックスは、マルコのところに向かう車の中での息子との会話から、ヴェラのお腹の中の子の父親が仕事仲間のロベルトではないかと推測します。アレックスとヴェラは、子どもを堕ろすことにします。子どもたちが知人の家に遊びに行った夜、マルコが連れてきた闇医者に施術してもらいますが...。

冒頭から、事情の説明が一切なく、映像だけで状況が表現されていきます。何がどうなっているのか分からないまま映像を見続けることになりますが、徐々に、現在の状況を生み出す原因や経緯が明らかになっていき、何がどうなってこうなったのかが見えきます。見事な映像です。美しく重みのある映像に圧倒されました。映像を重視する作品でありながら、芸術性重視、物語軽視、観客置いてけぼりの良く分からない作品になることはなく、混乱なくストーリーを受け取ることができました。

夫にとっては、良き妻と可愛い子どもに恵まれた幸せな家庭でも、妻にとっては、自分を押し殺すことでしか居場所を得られない苦行の場だったということなのかもしれません。

ヴェラは、何故、アレックスに「お腹の子どもの父親はあなたではない」と言ったのか...。アレックスの反応はヴェラが期待したものとは違っていたのでしょう。アレックスに怒って欲しかったのか、彼女の言葉の裏に隠れた真実に気付いて欲しかったのか...。ヴェラはアレックスを試したのかもしれませんし、アレックスの反応に自分の人生を賭けたのかもしれません。ヴェラの言動にどれだけの想いが込められていたのか、その裏にどれだけの覚悟が秘められていたのか、アレックスがそこに思いを致すことができなかったことにヴェラは失望したのではないか...。

そして、もしかしたら、ヴェラの言葉は、ヴェラの想像以上にアレックスにダメージを与えたのかもしれません。自分のお腹の中の子どもが自分の子どもであることを確信できる女と、妻のお腹の中の子が自分の子であるかどうかについては取り敢えず妻の言い分を頼るしかない男とでは、このヴェラの言葉から受ける衝撃の大きさは違ってくるのかもしれません。

ヴェラがお腹の子について話そうとし、アレックスが制止する場面があります。その時、何を言おうとしたのか、真実を告げようとしたのか...。ヴェラのアレックスに対する「あなたはいつも他人事ね」といセリフが印象的です。ヴェラは夫婦として真剣に向き合うことを望んでいたのかもしれません。けれど、ヴェラ自身、アレックスからどのような反応があれば納得できたのか、分かっていなかったのかもしれません。そして、アレックスの対応は、ヴェラの期待とは違ったのでしょうし、ヴェラの言動は、アレックスに対し、ヴェラが想像していた以上の衝撃を与えたのでしょう。アレックスは、ヴェラが自分から離れていこうしていると受け止めたのかもしれません。

この長年連れ添った夫婦がすれ違っていき、溝を深めていく構図は、日本の"熟年離婚"と似たところがあるのかもしれません。定年後は家族と共に穏やかな老後を過ごすことを願う夫が、自分を縛り付けていた夫からの解放を願う妻に離婚を切り出されオタオタする訳ですが、アレックスとヴェラの関係に通じるものがあるような気がします。

美しく重厚な映像に圧倒され、いろいろと考えさせられ、深く印象に残る作品です。


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深川不動堂と富岡八幡宮

テーマ:
東京の小さな旅というか、散歩というか...。"東京歩き"第3弾です。

今回は深川不動堂と富岡八幡宮。門前仲町駅周辺をちょこっとブラブラしました。

門前仲町駅に昼頃到着し、深川不動堂へ。

「人情深川ご利益通り」と名付けられている参道の入り口には、伊勢屋。お団子や豆大福が美味しそうです。参道には、金つばのお店とか、佃煮屋さんとか、せんべい屋さんとか、深川丼のお店とか、京都の漬物屋、近為のお食事処とか、和のお店が並ぶ中、ワインのお店とか、オシャレなカフェが紛れ込んでいたりします。

随分前ですが、たまにケーキを買いに来ていた"Salon de Perignon"があった場所は工事中。(久しく行っていなかったので全然知らなかったのですが、結構前に、"パティスリー・カフェ・ウフレ"という名称に変わり、そのお店が閉店し、工事中のようです。)

ちょっとお腹も空いたので、どこかでちょっと一服とも思いましたが、まずは、深川不動堂へ。

石段を上がると左手には竜神様が祀られ、真正面に旧本堂。江東区内で最も古い木造建築とのこと。

旧本堂に向かって左側に平成23年4月に完成した現在の本堂。秘仏である不動尊像も、こちらに移されているそうです。外壁には真言文字がびっしり。まぁ、なかなかの迫力ではあるのですが、もうちょっと江戸情緒とか下町風情といったものを感じさせてもらいたいような...。

内部は、テーマパーク的な印象を受けました。毎日、護摩祈祷が行われているとのこと。護摩祈祷は、なかなかの迫力で、参拝の人も結構いて、人々の生活の中に生きている宗教という感じもするのですが、ヘンにハイテクな味わいには違和感がありました。

参拝順路を巡り、参道に戻り、どこかで一服と思い...。

結局、"MONZ CAFE"にしました。中に入るとレジがあり、そこで注文をしてから席に着いて待っていると飲み物などが運ばれてきます。メニューからは、カフェオレとバタートーストをチョイス。

店内は広すぎず、狭すぎず。席数は16(4人掛けテーブル2、2人掛けテーブル4だったかと...)ほど。入ったのが13時前頃で、6席(テーブル3つ)空いていて、入った後、少しして満席。1人客が4、5人、グループが2、3組といった感じでした。オシャレな雰囲気で、江戸情緒とはちょっと違う感じなのですが、木と大谷石が使われた内装は周囲の和の環境に合っていたと思います。

カフェオレは、エスプレッソとミルクの割合が私の好みにはぴったりでした。そこはかとない苦みが感じられ、しっかりとミルクも味わえます。バタートーストには、ちょこっとサラダ(ほとんどレタス、千切りのニンジンが少々)が添えられています。パンは小さめ。香りの良いバターがたっぷり塗られていました。

ゆったりとしたひと時を過ごして、富岡八幡宮へ。

不動堂よりは人が少なかったですが、それなりに参拝の人がいました。不動堂に比べるとごく普通な感じ。その中でも、目を引くのが御神輿。大鳥居を潜り、境内に入ってすぐ左側に御輿庫があるのですが、ガラス張りになっていて、中に収められている二基の大きくて豪華な神輿を見ることができます。日本一の大きさを誇る御神輿だそうで、"深川八幡祭り"で有名な神社なだけあります。

境内には"横綱力士碑"も。歴代横綱の名が刻まれている巨大な石も置かれています。勿論、現役の横綱たちの名前も彫られていました。

門前仲町駅周辺の商店街などを少しだけブラブラして、14時過ぎに駅へ。約2時間のお散歩となりました。今度は、富岡八幡宮の縁日の日に訪れてみたいです。MONZ CAFEでモーニング、富岡八幡宮、深川不動堂、そして、近為でランチとか...。


深川不動堂公式サイト
http://www.fukagawafudou.gr.jp/

MONZ CAFE公式サイト
http://www.monzcafe.com/

富岡八幡宮公式サイト
http://www.tomiokahachimangu.or.jp/index.html


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ここ数年、恒例となっていますが、クリスマスケーキは、高島屋で予約しました。やはり、例年通り、小さめのタイプです。

お店を代表するケーキ、"レジオン"をクリスマスバージョンにアレンジしたもの。アーモンド、ヘーゼルナッツ、麻の実の粉が使われたスポンジに、キャラメルのムースショコラをのせ、側面にはヘーゼルナッツクラクレン。

上に"Noel"の文字と柊が飾られているところがクリスマス仕様ということになるのでしょう。

キメがやや粗めのスポンジは、食感と風味が独特で、程よくしっとり。その上の濃厚なムースショコラとのバランスが良かったです。ムースショコラはややビターで、キャラメル風味でコクがありました。スポンジとムースのしっとりした食感に側面にタップリ使われているヘーゼルナッツクラレンの硬めな食感がアクセントを付けています。

なかなか個性的で美味しいケーキでした。

お店の場所は横浜市都筑区、駅でいうと横浜市営地下鉄のセンター北駅。我が家からはあまり行きやすい場所ではなく、お店にはなかなか行けそうにないのですが、よく行く新宿高島屋の地下の"パティシェリア"でもレジオンのケーキを扱っているので、他のケーキもいろいろと食べてみたいと思います。


レジオン 公式サイト
http://www.e-region.co.jp/cake.htm


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ロビン・ウィリアムズのクリスマスの奇跡 [DVD]/ロビン・ウィリアムズ,ジョエル・マクヘイル,ローレン・グレアム
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ボイドは、甥の名付け親を引き受けたことから、クリスマス・イブの夜、実家に帰ることになります。妻と子どもたちを連れて帰省するのですが、嫌っていた父親と久し振りに会うことになり、機嫌は最悪。そんな中、ボイドは、息子へのクリスマスプレゼントを自宅に置き忘れたことに気づきます。サンタクロースを信じている息子に、何としてもクリスマスの朝にプレゼントを渡したかったボイドは、大嫌いな父と2人で車に乗り、シカゴの自宅へ取りに戻ることになりますが...。

本来、日本では信者が少ないキリスト教由来のイベントで、日本の伝統とは違うものですが、今では年中行事としてすっかり定着しているクリスマス。明治天皇を祀る神社の参道である表参道でもクリスマスのイルミネーションが灯されるという宗教的寛容さは、何かと宗教問題で争っている世界に示したい風習なのかもしれないと思ったりしますが、それはさておき...。

クリスマスの"サンタ問題"を巡る物語です。これは、クリスマスを祝い、サンタクロースが登場する地域においては、普遍的な問題なのではないかと思います。息子が小さい頃、"サンタ問題"にどう対処するかという話題で、子どもを持つ友人たちと良く盛り上がったものです。いかに子どもにサンタクロースを信じさせるか...。まぁ、本当には存在しないサンタクロースがいるように思わせるのですから、ある意味、"騙している"のですが、こんな風に、大人が子どもを正々堂々と"騙し"、しかも、子どもがサンタクロースをどう捉えているかに一喜一憂しつつ、"騙されている"子どもの姿にホッコリできるなんて、他にはなかなかないこと。そして、子どもたちが大人になった時、自分を"騙して"くれていた大人たちの愛情を感じながら、懐かしく想い出せる幸せな記憶ともなるのでしょう。

NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)は、毎年、サンタクロースが全世界の子どもたちにプレゼントを届ける行程を追跡しているし、GOOGLEでも追跡サイトが作られているし、大人たちは本気度はタダものではありません。米ジャーナリズム史上最も有名な社説として知られている1897年9月21日のニューヨーク・サン紙の「サンタクロースは本当にいるんですか?」という少女の質問に答えた社説にしても、多くの人の心を捉えています。

本作も、そんな"サンタ問題"を巡る大人たちの騒動を描いています。父親との確執を抱えるボイドが、息子との関係の中でジタバタする内、自身の父との関係を見つめ直し、父との確執を乗り越え、父親としての息子との関係の取り方についても考え直すという物語。B級っぽいドタバタな味付けや、ボイドの父がアッサリ変身する部分には違和感がありましたが、クリスマスの力の影響か、そこそこ楽しめる作品になっていたと思います。(とは言え、本作が遺作では、ロビン・ウィリアムズとしても残念な気がしますが...。)

子どもたちがサンタクロースの存在を信じ、その"夢"を守るために大人たちが必死になれる状況というのは、ある意味、平和の象徴なのかもしれません。もうすぐクリスマス。今年も、そして、来年も、その先も、毎年、子どもたちが幸せなクリスマスを迎えられるよう祈らずにはいられません。


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ライアの祈り

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森沢明夫が"青森3部作"の完結編として発表した同名小説を映画化した作品。原作は未読です。

青森県青森市から、眼鏡店の店長として八戸市に転勤してきた35歳の桃子。姉御肌な性格で、すぐに店員たちからも慕われるようになります。そんなある日、強く誘われ地酒のパーティに参加。「人数合わせのバツイチ」と自虐ネタで笑いを取る桃子でしたが、そこで、市役所で遺跡発掘の担当をしているクマゴロウと出会います。不幸な結婚を経験し、恋愛に積極的になれずにいた桃子でしたが、専門の縄文文化や遺跡発掘について熱く語るクマゴロウに興味を持つようになり...。

不器用な男と傷ついた女の純愛物語。

結構、重い部分があるのですが、遺跡発掘現場のおばちゃんたちの軽口や眼鏡店の店員たちのお喋りが適度な軽さを与えていて、上手くバランスが取れていたと思います。親と子、職場の仲間同士、男と女...温かい愛に包まれた作品で、ほっこりとした気持ちになることができました。

クマゴロウの縄文への情熱とそこに魅力を感じるようになる桃子の関係の変化も説得力ありましたし、純愛にしては年齢が高すぎる感じもしましたが、それぞれの不器用さや一途さが丁寧に描かれ、2人のラブストーリーを自然に受け止めることができました。

クマゴロウがヴェトナムの長老に言われた言葉をどう解釈するか...。生物である以上、"子孫を残す"ということが大きな生存理由であることは確かです。けれど、特に、産んだ後に手間暇をかけて育てなければ使い物にならない人間の場合、"子孫を残す"ための働きは産むことだけではないということになるのでしょう。より良き未来の担い手を作り上げるためには、産むということと同様に育てる力が不可欠なのですから。

縄文時代の集落遺跡である是川遺跡、世界遺産にも登録されている白神山地のブナ林などの風景も、いかにもご当地映画といった感じではありますが、印象に残る美しい映像でした。

ただ、桃子と眼鏡店の店員、桜が、マスターが目の前にいるカウンターで桃子の離婚理由などを含めた話をするのですが、普通、そこまでディープな話、それも、桃子の中でまだまだ未解決な問題を明らかに他の人に聞かれる場所で話すだろうかと...。

桃子の物語が完成したのかどうかは気になりましたが...。この桃の子小説の話と夢の部分は削った方が、テーマがぶれなくて良かったのではないかと思うのですが...。

まぁ、それでも、心に沁みる作品ではあったと思います。レンタルのDVDで十分かとは思いますが、観て良かったと思います。


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