ガガーリン 世界を変えた108分

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ガガーリン 世界を変えた108分 [DVD]/ヤロスラフ・ジャルニン,ミハイル・フィリポフ,オルガ・イワノワ
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1961年4月12日、ソ連の宇宙船ボストーク1号に乗ったユーリー・ガガーリンは、前人未到の有人宇宙飛行に挑むため、宇宙へ飛び立ちます。108分の宇宙飛行の間、ガガーリンは自らの半生を振り返ります。貧しい農村に生まれ、空を夢見た少年時代。3000人以上の空軍パイロットの中から選抜された20人の宇宙飛行士候補生の1人として厳しい訓練に耐えた日々。そして、世界初の宇宙飛行士に選ばれるまで。その頃地上では、"人類の英雄"誕生と、新しい時代の幕開けに人々が歓喜の声をあげており...。

ソ連は、1957年10月4日、初の人工衛星、スプートニク1号の打ち上げに成功。同年11月3日にはライカ犬を宇宙に送り出し、アメリカとの宇宙開発競争で1歩リードしていました。そして、この"世界初の有人宇宙飛行"でソ連に先を越されたアメリカ、ケネディ大統領が"アメリカは、60年代に月に人間を送り込む"というアポロ計画に繋がっていくわけです。今よりもずっと、宇宙が未知の空間で、宇宙へ行くことが大きな冒険だった時代の興奮が伝わってきます。

無重力空間に人が行けばどうなるか、そんなことも分からないままに行われた宇宙飛行。宇宙飛行の成功による少尉への昇進を飛行中のガガーリンへ伝えていますが、それは、ガガーリンが生きて帰らない可能性が高いことを考慮してのことだとの話もあるようです。まぁ、宇宙飛行中に、その情報をあれだけ大々的に発表しているところを見ると、それなりに自信を持っていたのではないかとも思います。社会主義国家、ソ連の時代です。ガガーリンが無事に帰還できなければ、宇宙飛行の事実を隠蔽したいところだったでしょうから。

それにしても、1961年の世界はアナログです。ロケットを打ち上げ、軌道に乗せ、地球に戻るための計画を立てるためには、膨大な数の複雑な計算をこなさなければならないはず。この50数年の間でのコンピューターの進化を考えると、その手段なくしてこなした作業量の大きさにクラクラしてきます。コンピューターに頼り過ぎて力を眠らせてしまってはいるけれど、意外に、アナログで何とかなるってことなのかもしれません。

宇宙飛行士に選ばれるまでの厳しい訓練、候補生の間に渦巻く嫉妬、幹部たちの間にある確執、死の可能性の高い任務に就こうとするガガーリンを見守る家族の心情、少年時代のガガーリンの純粋な空への憬れ、宇宙開発をめぐる米ソの対立...。様々なエピソードが盛り込まれますが、"回想"という形で、映像の"現在"に至るまでの過程を"現在"の宇宙飛行の進行と上手くバランスを取りながら語られていくので、細切れ感も気にならず、物語の世界に浸ることができました。

大気圏への再突入の場面など、もっとドラマチックに盛り上げても良かったのではないかと思いますが、この地味で淡々とした感じがソ連っぽかったような気もしました。

描かれている内容のインパクトに比べると静かで地味な雰囲気に仕上げられていますが、思いのほか、興味深く観ることができました。一見の価値アリだと思います。


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家庭環境に恵まれず、学校でも問題児だった12歳のステット。けれど、彼の歌声の素晴らしさに気付いた校長の働きかけで、名門"国立少年合唱団"の付属学校への転校の機会を得られますが、そのチャンスを自ら手放してしまいます。ところが、シングルマザーの母が、事故で突然亡くなり、彼の存在を家族に知られたくない実の父親の意向もあり、その学校に入れられます。きちんとした音楽教育を受けてきた同級生たちの中、楽譜も読めないステットは馬鹿にされ、いじめにもあいますが...。

恵まれずにいた少年が、もって生まれた才能を見い出され、それを磨いていく中で成長していく物語。まぁ、ありがちといえばありがちです。で、ステットの声が"ボーイ・ソプラノ"なので、いくら技術を磨いても、その美声を出せる期間は限られています。遅かれ早かれ変声期が訪れ、ある日、突然、その美声は失われるのです。努力によって回避できる問題ではないのです。

元々、ごく一部の者にしか与えられない天賦の才能。しかも、努力を重ねて磨き上げても、短い一時期しか発揮することができない。この"儚さ"が"ボーイ・ソプラノもの"の最大の魅力の一つであることは間違いないでしょう。 そして、引退を考えなければならないのは、小学校高学年から中学生というまだまだ幼い少年たち。どんな能力であれ、永遠なものなどないのも確かですが、それにしても、短すぎます。合唱団の指導者、カーヴェルがそのことについてコメントする場面があるのですが、現実をきちんと伝えつつ音楽だけではない彼らの将来の可能性を指し示す厳しくも温かい姿にしみじみとしました。

歌い手にとって、声の質が大切なのは確かです。いくら楽器を演奏するウデがあっても、良い音を出せる楽器を得られなければ十分に実力を発揮することはできません。演奏家にとって楽器が大切なのと同様、歌い手にとっては声が大切。けれど、その声を巧く操る技術も大事で、だからこそ、楽典を学び、技術を身に着けるための訓練をするのです。ステッドの場合、なかなか普通は得られない特上の"声"を持てたわけですが、やはり、力のあるメンバーの中に入ると、それだけでは勝負になりません。技術を習得する必要に迫られ、彼なりに努力する姿が描かれるのですが、その部分の描き方が薄い感じで、しかも、身に着けたことが彼の歌に与えた影響があまりきちんと描かれていないので、声の良さだけで高い評価を得られるようになった感じもしてしまいました。教師たちのコメントの中ででも、彼の学びが歌にどう影響しているのかが表現されていたら、もっと彼の成長を実感できたのではないかと思います。

ステットは参加できませんが、この合唱団は日本公演を行います。そのための練習で、"ほたるこい"を歌っています。ちょっと歌詞の発音が変なところもありますが、さすがの美しいハーモニーが胸に沁みます。

ストーリーは、どこかで見たことのあるようなありきたりの物語ですが、それでも、"ハレルヤ"、"ピエ・イエス"など、数々の名曲に彩られ、惹き付けられました。カーヴェルを演じたダスティン・ホフマンを始め、少年たちを取り巻く大人たちが力のある演技陣で固められ、説得力も加えられ、それなりに楽しむことができました。

観るのであれば、音響の良い映画館で観たい作品です。


公式サイト
http://boysoprano.asmik-ace.co.jp/


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振り子 furiko

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振り子 ディレクターズカット版(特典なし) [DVD]/中村獅童,小西真奈美,山本耕史
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鉄拳の動画を基にした映画作品。動画も観たことがあります。

1976年 ひょんな事から出会った大介とサキ。やがて、2人は結婚。やがて、娘も生まれ、商店街の人々に見守られながら、夢だったバイク屋を経営し、幸せに暮らしていました。けれど、ある日、詐欺に遭い、バイク屋は倒産。家族の歯車が狂い始めます。そんな矢先、サキが倒れて寝たきりの状態になります。大介はサキを元に戻そうと懸命に努力しますが...。

基になっている動画自体がかなり短いものなので、物語的にはかなり膨らませてあります。それもあり、また、動画よりはマイルドな味付けになっていて、動画とはまた違った雰囲気になっている部分もありますが、思った以上に惹かれました。

物語はベタで、しかも昭和チックな古さが感じられますし、あまりにサキが出来過ぎていて、女な私から見れば、"大介、甘ったれんじゃね~よ"と言いたくなります。そして、バイクや倒産の過程や、大介が荒れていく過程はあっさりし過ぎて、この辺り、大介の彼の心の中の葛藤をもっと丁寧に描いて欲しかった感じもします。サキが、何故そこまで大介を支え続けるのかも、もっときちんと描いてほしかったと思います。最初、やけに焦点を当てられていたサキの髪飾りが、いつの間にか消えてしまっているとか、意味不明な部分もありましたし、ラストの大介の"悲劇"に絡んで登場する人物についてはやり過ぎだと思いますし...。それでも、元々の動画を観たうえで、その印象を持って観ているということもあるのかもしれませんが、"夫婦愛"が心に沁みてきますし、泣けてきます。

素直でストレート。あまりに捻りがなさ過ぎて、工夫もなくて、映画作品としては物足りない感じがしますが、大介を演じる中村獅童、サキを演じる小西真奈美をはじめ、力のある演技陣が物語にリアリティを加えていて、説得力が感じられました。

時代考証は甘い感じがします。2人が出会った1976年って、本作で表現されているより、もうちょっと"昔っぽい"のではないかと...。当時は、「違げ~よ」なんて言っていなかったはずだし、服装や髪形もちょっと...。そして、肝心の"振り子時計"。普通、4時と8時のところにある穴に専用の鍵をさしてゼンマイを巻くものかと思っていたのですが...。本作で、ゼンマイを巻くシーンがなかったと思うのですが、本作の時計は違うのでしょうか...。気になりました。"ゼンマイを巻き続ける"という場面を入れたほうが味わいが出たのではないかと思うのですが...。

基になっている動画と出演陣の演技力に支えられた作品ということかもしれません。最後に動画が登場します。この動画のためのあまりに長すぎるプロローグのような作品でした。


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アナーキー

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アナーキー [DVD]/イーサン・ホーク,エド・ハリス,ミラ・ジョヴォヴィッチ
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シェイクスピアの「シンベリン」を元に作られた映画。

ギャング軍団"the Britons"を率いる麻薬王、シンベリンは、シンベリンの娘、イノジェンと、後妻のクイーンの息子、クロートンを結婚させようとしていました。けれど、イノジェンは、ギャングの一員であるポステュマスと恋に落ち、親に内緒で彼と結婚してしまいます。そのことに激怒したシンベリンは、ポステュマスを追放。ポステュマスと出会ったヤーキモーは、イノジェンを誘惑して2人の愛が本物かどうか試すと、賭けを吹っ掛けます。一方、クイーンは、シンベリンにローマ警察からの献金の要求を断るよう唆し、シンベリンはそれを受け入れますが、そのことがきっかけとなり血まみれの抗争が勃発。ヤーキモーは賭けに勝つために策略を巡らせ、ギャング軍団とローマ警察の抗争は激化し...。

人間関係が複雑に絡み、一つのエピソードが、意外な形で他の物語に影響し、そこに関わる人々を動かしていきます。そこに、愛や恨み、嫉妬、欲が絡んでいく辺り、いかにもシェイクスピアな雰囲気です。

舞台設定を現代のアメリカに移していて、携帯電話とか、インターネットとか、イマドキのツールも使われているのですが、登場人物たちのセリフが、シェイクスピアらしい重厚な感じで、違和感ありました。シェイクスピアの原作では、シンベリン=王様なわけですから、それでよいと思うのですが、王とはいえ、麻薬王では、やはり、ちょっと違う感じがします。

イノジェンに関する部分でも違和感はありました。あんなに簡単にヤーキモーが近付けてしまうというのはどうかと。少なくとも、ポステュマスの件があるわけですし、シンベリンが、イノジェンの周囲にあまり気を配っていない様子なのは何故なのか...。

イノジェンについては、麻薬王のもとで育ったとはいえ、女の子だから稼業のあれこれからは遠ざけられて育てられてきた可能性も高く、不用心であったとしても仕方ないのだと思います。けれど、ギャングの一員であり、しかも、ボスの娘に手を出すという思い切ったことをしたポステュマスが、あんなに簡単にヤーキモーの策略に嵌ってしまうというのは不自然な感じがしました。大きな賭けをした以上、ヤーキモーがあれこれ陰謀を巡らすのは容易に予測できたはずのこと。ヤーキモーの動向にもっと眼を配っているべきだったでしょうし、"証拠"を疑ってもよかったのではないかと...。そもそも、あんな賭けをしたら、ヤーキモーが何かするのは眼に見えているのに、その賭けに乗ってしまうという点でダメダメです。

で、本来なら、感動の再会になるはずの場面でも最愛の彼女を払いのけてしまうし...。冷静に周囲の人物を見極め、その行動の裏を読み、的確な対処をする能力がこんなにもなくて、どうやって今まで生き残ってこれたのか、不思議です。それだけの強運の持ち主だったってことでしょうか...。

それでも、絡みあった人間関係とか、終盤からラストにかけて様々な伏線が回収されていく爽快感は、割と良い感じでしたし、シンベリンを演じたエド・ハリスは麻薬王としてのワルな迫力を出していましたし、掴みどころのない感じのを演じたイーサン・ホークも雰囲気がありましたし、豪華キャストが見せてくれていますので、全体としては、そこそこ楽しめる作品にはなっていたと思います。

畳みかけるようにハッピーエンドに転がっていくラストについては、変に綺麗に纏まりすぎた感じもあって、少々、呆気ない感じもしましたが、レンタルのDVDで観る分には、悪くないと思います。


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味園ユニバース

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味園ユニバース 通常版 [DVD]/渋谷すばる,二階堂ふみ,鈴木紗理奈
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大阪。広場で行われていたバンド"赤犬"のライブの最中、男がフラフラと現れます。彼は、突然、マイクを奪い、歌いだしますが、その素晴らしさに会場は水をうったように静まりかえります。男は、そのまま気を失います。やがて、目を覚ましますが、自分の事を何も覚えていないとのこと。その正体と歌声に興味を持った"赤犬"のマネージャー、カスミは、彼を"ポチ男"と名付け、祖父と暮らす自分の家に住まわせながら、バンドのボーカルとして迎えようとします。けれど、徐々に、"ポチ男"が記憶を取り戻し...。

本作で初めて"味園ユニバース"を知りました。

"味園(みその)"は1955年に開業した、大阪市千日前に建つビルで、"ユニバース"は、そのビルに入る老舗の豪華キャバレーだそうです。2011年にキャバレーが営業終了し、その後、同じ名前のまま貸しホールとなり、若者たちのライブ会場としても人気を得ているのだとか。最近は、日本サブカルチャー文化の発信地、アングラ芸術の発祥地として注目スポットとなっているそうです。

"ポチ男"役の渋谷すばるが、冒頭の歌で魅せてくれます。アカペラで、和田アキ子の「古い日記」をアカペラで歌うのですが、しっかりとした声量で言葉にも力が感じられ、観る者の心に迫るものとなっています。"ここでコケたら、物語全体が説得力を持てなくなってしまう"キモの部分なだけに、渋谷すばるをキャスティングしたのは大正解だったということになるのだと思います。

カスミ役の二階堂も良かったです。クライマックスのあまりの大活躍は失笑ものでしたし、"ポチ男"との関係性の変化についても、想定内の展開であるとはいえ、"ポチ男"の歌に惹かれ、人物に惹かれていく姿が巧く表現されていて印象的でした。

ただ、クライマックスでのカスミのスーパーウーマン振りには、引っ掛かりました。"ポチ男"は、カスミの力によって救われるべき存在なのでしょうから、カスミが"ポチ男を助ける"という展開自体はアリだと思う...というより、外せないのでしょうけれど、物語のキモとなる部分なだけに、もっと丁寧に理屈をつけて欲しかったです。"ポチ男"の歌が良く、"味園ユニバース"の昭和な香りも懐かしくて、既視感のあるストーリーであるにも拘わらず、それなりに楽しめたのですが、クライマックスに来て、一気に梯子を外されたような心地悪さがありました。

ポチ男の記憶を取り戻してからの物語の描写はどうも雑な感じがしました。急に駆け足になってしまったようで、それまでの展開とのバランスの悪さが気になります。

このクライマックスからラストにかけてがもっと巧く処理されていたら、作品全体から受ける印象は全然違ったものになってのではないかと思うのですが...。残念です。


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シンデレラ

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シンデレラ MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+Movie.../リリー・ジェームズ,リチャード・マッデン,ケイト・ブランシェット
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御馴染の"シンデレラ"を実写映画化した作品。

若い夫婦に可愛い娘、エラが生まれ、幸せに暮らしていた3人ですが、母親が亡くなります。貿易商を営む父親が数年後に再婚し、エラは、父の再婚相手、トレメイン夫人とその連れ子である姉妹ドリゼラとアナスタシアと暮らすことになりったエラ(リリー・ジェームズ)。けれど、父親が仕事で長い旅に出ている間に亡くなり、それを機にトレメイン夫人と義理の姉妹から召使いのようにこき使われる日々を強いられます。勇気と優しさが魔法の力になるという亡き母の教えを胸にひどい仕打ちに耐えてきたエラでしたが、ついにこらえきれずに家を飛び出し、森へ馬を走らせます。馬が暴走したところを青年に助けられます。キットと名乗った青年は、エラに惹かれますが、彼女は名乗りもしないまま、彼の前から消えます。実はその国の王子である青年は、エラとの再会を願い、結婚相手を選ぶための舞踏会に国民を招待することにし...。

基本的には、結構、楽しめました。ただ単に"王子"というだけで、その人となりについてあまり言及されていなかった王子様の人物像も丁寧に描写され、そのことが、物語の厚みを持たせていました。魔法の部分の描写も巧く処理され、実写でのヘンに引っ掛かるところなく楽しむことができました。変身させられる側の戸惑いも描かれているところなども面白かったです。魔法が解けてもガラスの靴だけはそのままなのは、何か他のものだったものを変えた馬車、御者、従者、ドレスは元に戻ったけれど、ゼロから新しく生み出した靴はそのまま残ったってことなのでしょうか。馬車などは、時間が経過すれば元に戻ってしまうことが分かっていても、時間的な制約があり、舞踏会の時間に間に合わせるためにカボチャなどを変身させたけれど、靴のような小物はゼロから作る余裕があったので魔法が解けても元に戻らかったなら、辻褄があいますね。

まぁ、これは、お伽噺を聞いた時にも感じたことなのですが、いくら何でも、あれだけ大勢の娘たちがいて、ガラスの靴を履ける人がエラ以外、だれ一人いなかったというのはあり得ないと思うのですが、それは、魔法の靴が履く人を選んだってことでしょうか...・

エラのお父さん、なかなか良さ気な方なのですが、再婚相手の選び方は間違った様子。見る目がなかったのか、彼女を選ばざるを得なかった理由があったのか、経済的な安定を求めていた彼女の計略に嵌ったのか...。結婚後、出張が多くて、家を空けることが多かったから、トレメイン夫人が何をしているか気付かなかったということなのでしょうか。まぁ、お父さんが意地悪な継母になる女性と再婚しないこと、"シンデレラ"の物語にはならないわけですから、無理矢理にでも結婚させるしかないのでしょうけれど、もう少し、設定に工夫があれば、なお、良かったのではないかと...。

エラも王子も、外見だけでなく内面も美男美女で、出来過ぎなカップルではあるのですが、御伽話ですから、こうした部分での美しさは必要なのでしょう。元々の物語に含まれていた残酷さは削られ、その分、物語としての厚みは削がれた感じもしましたが、実写で忠実に描くとホラーになってしまうでしょうから、納得できる範囲の"調整"なのだろうとは思います。

登場人物たちの意識が、多少なりとも"現代的"になっている部分も、適度に処理されていて、昔話の舞台設定や装束と違和感なく溶け込んでいたと思います。

気になる部分もあったことは確かですが、全体としては、見応えのある作品に纏められていたと思います。観ておいて損はない作品だと思います。


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シアトル郊外の片田舎に住むシャーリーとヒンダは、30年来の大親友。そんな彼女たちの最近の話題は"経済成長"。テレビなどではエコノミストたちが盛んに"経済成長のための消費拡大"を訴えますが、物を増やして幸せになるとも思えません。この先、どうしていくことが幸せなのか、2人は答えを求めて大学生や大学教授、経済アナリストに、感じたままの質問をぶつけます。しかし、満足する答えが得られなかったため、世界経済の中心地、ニューヨークのウォール街へと向かい、財界トップが集まるディナーに乗り込んで...。

何とも元気なおばあちゃんたちです。アラナイ(大体90歳)で2人合わせて178歳のコンビですが、実にエネルギッシュで迫力があります。無視されても、適当にあしらわれても、追い出されても、馬鹿にされても、脅されても、負けていません。子どもたちのため、孫たちのため、ひ孫たちのため、その先の子孫により良き地球を残すため、どこまでも、自分たちの答えを追い求めようとします。老いを言い訳にしないその姿に圧倒されました。この2人のキャラクターに支えられた作品です。それぞれの個性が輝き、2人の絶妙なコンビネーションに笑わされ、考えさせられます。

ただ、一方で、シャーリーとヒンダという素材に頼り過ぎてしまっている感じもします。本作の監督がどうして2人の存在を知ったのか、作中で2人が話をしている学者とはどのようにコンタクトを取ったのか、その辺りの背景があまり描かれず、ところどころ唐突な感じがあって、違和感も残りました。

ド素人のおばあちゃんたちがゼロから学んでいくという設定だから仕方ないのだと思いますが、財界トップに突撃というには、あまりに準備不足な点も違和感ありました。まぁ、おばあちゃんだから許してねってところもあるのでしょうけれど、やはり、トップへの突撃となれば、それなりに"武装"しておく必要があったのではないかと...。あまりに無防備な感じがしてしまいました。マイケル・ムーア監督のドキュメンタリ作品の突撃のようにとまではいかなくても、もう少し何とかならなかったかと...。

経済的な面でなく、アメリカ社会の不都合な面(ホームレスの問題とか、2人に対するホテルの警備員の対応とか)も映し出されていて、その点は興味深かったです。盲腸レベルの手術でも莫大な医療費を請求されて破産しかねないと言われているアメリカで、ヒンダの医療費は大丈夫だったのかという点は気になりました。何らかの有利な保険に入っていたのでしょうか、実は大金持ちだった(ようには見えませんでしたが)だったのでしょうか...。経済を扱っている作品だけに、そこをスルーしているのは不思議な感じがしました。

ラストの展開は良かったと思います。シャーリーとヒンダの諦めない気持ちが伝わってきますし、未来に働きかける方法としても悪くなかったと思います。学生たちの反応がもっと伝えて欲しかったとは思いますが...。

テーマとなっている経済云々という点についてはあまり興味を惹かれる部分がありませんでしたが、少なくとも、"もうトシだし..."と何かを諦めようとしている人にとっては、観ておくべき作品だと思います。


公式サイト
http://www.shirley-hinda.com/


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ぼくらの家路

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10歳のジャックは、毎日、6歳になる弟のマヌエルの世話で大忙し。まだ若いシングルマザーの母、ザナは、2人の息子を可愛がってはいますが、恋人とのデートや夜遊びも我慢できません。そして、ザナが家を空けていたある夜の事件からジャックは施設に預けられることになります。ジャックは、なかなか施設に馴染めずにいて、帰宅ができる夏休みを楽しみにしていましたが、帰宅できるはずだった日に迎えが2日後になるとザナからの電話が入ります。ジャックは、施設を飛び出し、夜通し歩き続けて家に着きますが、ザナは不在。ザナの携帯に電話しても通じません。鍵を持っていないジャックは家に入ることもできません。ジャックは母に伝言を残すと、ザナの友人の家にマヌエルを迎えに行き、2人で、仕事場、ナイトクラブ、昔の恋人の事務所まで、ザナを探してベルリン中を歩き回り...。

まだ幼い子どもたちを放置するザナですが、それでも、彼女なりの愛情はあるようです。それなりに息子たちを可愛いと思っている様子ですし、ジャックが自分の恋人に嫌がらせをしても、その背景にあるジャックの気持ちを受け止めていますし、そのことでジャックを叱ったりはしません。けれど、寂しい思いをしているジャックやマヌエルを迎えに行くことより、恋人とのデートを優先させてしまうし、デートに夢中になれば、携帯の電源も切りっぱなし。迎えを待っている子どもたちから連絡がある可能性なんて考えてもいない様子。

もしかしたら、目の前にいない相手の気持ちを想像するということが極端に苦手なのかもしれません。しっかり者のジャックだから何とかしてくれるだろう、施設に預けているのだから、友人に預けているのだから大丈夫だろう、都合の良い期待に縋ってしまうのかもしれません。2人の息子に対しては、自分が保護し育てるべき子どもというより、自分を癒してくれる可愛いペット的な感覚が強いのかもしれません。2人の息子の帰宅を喜びますが、多くの困難を乗り越え、やっとの思いで叶えた母との再会を喜ぶジャックに対しても、その間どう過ごしたのか、どうやって家に戻ったのかを聞こうともしません。関心がないのか、想像力がないのか...。

ザナの愛情は嘘ではなかったのでしょう。そして、ジャックが自身が幼い身でありながら、より幼いマヌエルを必死になって守り、細やかに世話を焼く優しく強い兄になれたのも、その愛情があってのことなのでしょう。そして、ジャックもマヌエルも、自分たちを可愛がってくれるママが大好き。けれど、ジャックは、可愛がってくれるだけザナのもとで暮らしていくことの問題点も理解できたのでしょう。ラストのジャックの選択とその表情が印象的です。

ジャックは、ザナに捨てられたのではなく、彼の方がザナからの自立を決意したのです。子どもは、いつか、親から自立するもの。あまりに早い時期にその選択をせざるを得なかったジャックですが、親から離れるということ自体は、遅かれ早かれジャックの人生に訪れたことで、それだけをもって彼が不幸だとは言えないでしょう。むしろ、ザナへの感情に振り回されず自身とマヌエルの将来について、より良いと考えられる選択ができたこと、その選択をする力を持てたことは幸福だと言うべきなのかもしれません。ジャックの不幸というより、その逞しさが呼び寄せた希望の光が感じられるラストになっていて、それまでの展開から予測されたよりも心地よく観終えることができました。

どこかで見聞きしたような母を探す幼い子どもが、やっと母と再会できて万歳!!な感動物語とはまた違った、シビアではあるけれど、現実感があり、希望と子どもの逞しさを感じさせられる作品です。

ジャックの顔のアザに気付きながらも、「何でもない」というジャックの言葉を鵜呑みにしたのか、その後のジャックの周辺に気を配る様子もなかったり、予定通りに帰省できなくなってショックを受けたジャックを放置して施設を抜け出すのを見過ごしたり、ジャックが戻ってきた時にも薄い反応しか示さなかったり、養護施設の対応の拙さは気になりました。実際、あんなものなのでしょうか?子どもたちの間にトラブルがあったり、様々な精神的なショックにより子どもが問題のある行動をしたりといったことはよくあることでしょうし、普通、こうした施設では、そうした場合のノウハウも蓄積されているはず。もうちょっと、きめ細やかな対応がされるべきなのではないかと...。

施設側の対応という点については、違和感も残りますが、幼い子どもの自立の物語として、心に沁みる印象的な作品に仕上がっていると思います。ジャックを演じたイボ・ピッツカーの演技が出色。見事でした。彼の演技だけでも観る価値アリかもしれません。原題は"Jack(ジャック)"ですが、まさにその通りです。


公式サイト
http://bokuranoieji.com/


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カプチーノはお熱いうちに

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アドリア海を臨む南イタリアの街、レッチェ。カフェ"タランチュラ"で働くエレナは、ある雨の日、バス停でアントニオに出会います。差別的な発言をするアントニオに不快な思いをさせれるエレナでしたが、その後、彼が同僚、シルヴィアの恋人だと知ります。何故か、エレナは、シルヴィアを訪ねてカフェにやってくるアントニオが気になります。やがて、2人は結ばれ...。13年後、エレナは、同僚のゲイのファビオと2人で別のカフェを始めて成功させ、アントニオとの間には2人の子どもをもうけていましたが、夫婦の間はギクシャク。そんなある日、叔母に付き合って検診を受けたところ...。

①タランチュラを舞台とした男女の三角関係→②その13年後のアントニオと結婚したエレナが2人の子どもに恵まれ、病気が発覚し、闘病する現在→③アントニオと結婚するまでの過程、という順序で物語が描かれます。②のパートが深刻な話になるのですが、その後に、2人が結ばれるまでが描かれるので、ほんのりと幸せな気分を味わいながら観終えることができました。

まぁ、①の後に突然②がくるので、どうしてそうなったのかという部分に関しては違和感を抱きながら②を観ることになりますので、ちょっと落ち着かない感じもしたのですが、それでも、この内容でこの後味の良さを出せるのは見事です。

そして、悲劇よりも温かさが強く感じられた背景にあったのは、エレナとアントニオの相思相愛。最初、アントニオがエレナから逃げ出すのではないかと思ったのですが、そんなことはありませんでした。それが意外な感じでもあったのですが、最後のパートでそれも納得。どんな経緯があっても、ハードルがあっても、運命は2人を結びつけるものなのでしょう。何の打算もなく結びついた2人。ベストカップルな2人ですが、それにしても、病院のベッドの上であれはないんじゃないかと...。さすがイタリアン!!!ってとこでしょうか...。

病魔に侵され、衰弱していくエレナ。けれど、周囲には彼女を温かくユーモアを持って支えてくれる人たちがいます。そして、2人の想い出の中にある海の美しさ。

基本となっている物語は、左程珍しくもない典型的な闘病ものラブロマンスではありますが、描き方の上手さ、全体を包み込む温かさに支えられ、心に沁みる心地の良い作品に仕上がっていると思います。

原題の"Allacciate le cincture"の意味は、"シートベルトをお締めください"だそうです。イタリアだし、カフェだから"カプチーノ"なのでしょうけれど、もうちょっと何とかならなかったものかと...。


公式サイト
http://www.zaziefilms.com/cappuccino/


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皇居一周

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今年は、9月の第3月曜日である敬老の日が21日となったことから、秋分の日の23日との間にある24日が"国民の祝日"となり、敬老の日の前の土日と合わせると5連休という"シルバーウィーク"の年。

仕事の種類などによっては、祝日なんて関係ないという人も多いわけで、そういった方々には申し訳ない気もするのですが、特にここ数日は、このシルバーウィークを心の支えに仕事をしていたようなもので...。

最近は、トシのせいでもあるのだとは思いますが、連休だから遠出するというのも億劫になってきていて、まして、混雑しているだろうと思うと益々気力が湧かず...。

けれど、だからといって、そう滅多にない祝日の並びの良い時をいつもの週末と同じ過ごし方をしてしまうというのもあまりに勿体ない気がして、日帰りでどこかに出かけようと思い立ちました。新幹線で東海~京都辺りとか、東北方面とか、新潟方面とか、北陸方面とか、中央線で甲州方面とか、いろいろ考えたのですが、結局、混雑を避けること、朝ゆっくりでOKなところと考え、ぐっと身近な"皇居一周"を計画(という程、大したものではありませんが)しました。

それ程、時間がかかるものではないので、その後は、休憩も兼ねて(?)映画を観ようと思い、まずは、有楽町辺りの映画館で座席を確保、そして、皇居方面へ徒歩で向かいました。

まずは観光客らしく二重橋。で、皇居外苑の広場辺りから反時計回りでスタート...と思ったら、警視庁の交通安全イベントをやっていました。"SUPER DRIVERS"というスタントチームによる交通事故の再現があるとこのと。映画やTVドラマなどにも出演しているスタントチームとのことで、せっかくのチャンスと思い、見ていくことにしました。やはり、なかなかの迫力でした。ヘッドホンをしながら自転車に乗っていて後ろから近づいた車に撥ねられるとか、傘を差しながら自転車を運転していてほかの自転車と正面衝突とか、見通しの悪い交差点でのバイクと自転車の衝突とか、プロの技を間近に見るというのは初めての体験で面白かったです。

で、最初でちょっと時間を取ってしまいましたが、いよいよスタート。内堀通りを歩きます。桔梗門を過ぎ、大手門から東御苑(皇居東地区。旧江戸城本丸、二の丸、三の丸の一部。大奥もここにあったのだそう)へ。三の丸尚蔵館の展示を見て、御苑内をウロウロ。1657年の明暦の大火で焼失するまで天守閣があった天守台の上に登り、北桔橋門(きたはねばしもん)から御苑を出て、再び、内堀通りに出ました。

千鳥ヶ淵。この辺りは、花見の時期は賑わう場所です。就職したばかりの頃、研修を受けていた場所から千鳥ヶ淵が近く、金曜日の夕方に皆で花見をしたのを思い出しました。

半蔵濠、半蔵門。昨年までやっていた"TOKYO FM 夢の第九"の練習会場となっていたTOKYO FMホールが、半蔵門のすぐ近くにあり、懐かしかったです。今年はなくなってしまったのですが、是非、復活して欲しいもの。この辺りは、もう随分前になってしまいましたが、以前通っていた中学高校も近く、そんな意味でも懐かしさがありました。

三宅坂辺りから、首都高都心環状線がグッと近づき、ちょっと人影も疎らに。その辺りまでは、それなりに歩道も広さがあり、ちょっとした緑地があったり、ベンチが置かれていたりで、いわゆる観光客でない散策する人も結構いたりしたのですが、半蔵門を過ぎると徐々に人が少なくなり、三宅坂辺りになるとマラソンで周回する人くらいになります。(まぁ、そういう人たちがそれなりの数いるわけですが...。)

桜田門、祝田橋を通り、日比谷。

大都会、東京のど真ん中でありながら、緑豊かで、ゆったりと歩けるスペースがあるのは嬉しい感じ。歩きながら、明治生命館、東京海上日動英国大使館、憲政記念館といった歴史が感じられたり、由緒正しさが感じられたり、重厚さがあったりする建物が見えたり、景色を楽しみながら歩けることもあって、負担感なく歩くことができました。

交通安全のイベントを見たり、東御苑内を散策したりという時間を含め、一周に2時間20分。最近、あまり長く歩くということをしてこなかったので、結構、疲れましたが、無理なく自分のペースで歩けたこともあり、久し振りに一定の運動をした充実感もありました。

その後の映画は、あまり混んでいなかったこともあって、ゆったり座ることができて、足を休めながら、水分補給しながら鑑賞するには程よい感じ。眠ってしまうこともなくゆっくりと映画を観ることができました。

また、桜の時期とか、紅葉の時期とか、違う季節に歩いてみたいです。


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