罪の手ざわり

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罪の手ざわり [DVD]/チャオ・タオ,チァン・ウー,ワン・バオチャン
¥5,400
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急激な変化を遂げる中国で実際に起きた事件から着想を得て、4つの事件が描かれます。

山西省の男:山西省・烏金山(ウージンシャン)に暮らす炭鉱夫、ダーハイ(大海)は、村の共同所有だった炭鉱の利益が、同級生の実業家、ジャオによって独占され、村長はその口止めに賄賂をもらっているのではないかと疑い、怒りを抱えていました。ジャオに、訴えてやると啖呵を切ったダーハイは、ジャオの手下たちに暴行され、大怪我をさせられます。街の広場で演じられていた古典演劇「水滸伝」の主人公、林冲(リン・チュウ)の「憤怒により、剣を抜き...」というセリフに自らの思いを重ねるダーハイは、猟銃を持ち出し、ジャオや村長のもとへと向かい...。

重慶の男:重慶に妻と子を残し出稼ぎのため村を出たチョウ(周)が、正月と母親の誕生祝いのため帰省しますが、彼の妻と幼い息子は複雑な表情でチョウを迎えます。各地から大金を振り込んでくる夫を怪しむ妻は、そっと夫のデイパックを開き、銃の弾倉を見つけてしまいます。さらに、彼女は、それぞれ行き先の違う切符を発見し...。

湖北省の女:夜行バスで湖北省、宜昌(イーチャン)に到着した男、ヨウリャンがカフェへ向かうと、風俗サウナで受付係をしている恋人のシャオユー(小玉)が待っていました。2人はもう何年もの付き合いになりますが、ヨウリャンには妻がいます。ある日シャオユーが勤務を終えて、勤め先の未使用ルームで洗濯をしていると、2人の男が「マッサージしろ」と部屋に入ってきます。自分は娼婦ではない、と断るシャオユーに男たちは執拗に迫り...。

広東省の男:シャオユーの恋人、ヨウリャンが工場長を務める広東省の縫製工場。そこで働く青年、シャオホイは、勤務中に別部署のスタッフに怪我をさせてしまいます。スタッフ分の給料を払うように言われたシャオホイは逃げ出すように仕事を辞めてしまいます。彼が向かったのは、東莞(トングァン)。より高給な仕事に就くために、香港や台湾からの客を相手にしたナイトクラブ"中華娯楽城"で働くことにしたのです。この店でシャオホイは、東莞に向かう列車の中で偶然乗り合わせたしっかり者のホステス、リェンロンと出会い...。

上海、北京といった発展した大都市だけを見ると、中国の近代化はかなり進んでいるようにも思えますが、一方、そんな大都市の周辺には、まるで別世界のような"田舎"が広がっているわけです。その絶望的に大きな"格差"の中に投げ込まれた個人の悲劇がそこに見えてきます。個々人の努力ではどうしようもない壁に押し潰されていく人々。彼らを悲劇から救い出す道はどこにあるのか...。彼らは、どこでどうすれば良かったのか...。その答えが見えてこないところに問題の根の深さが感じられます。

新宿駅周辺には良くいくのですが、必ずと言っていいほど、家電量販店やドラッグストアなどで"爆買い"する中国人の集団を見かけます。どれだけ買えば気が済むのか...という感じですが、相当の"軍資金"を用意してきていることは確かです。あの人たちも確かに中国人なら、本作で描かれているような人々も中国人、もちろん、もっと厳しい生活をしている人たちもいて...。

多少なりとも個人の努力が報われる世に生まれてくることができていたら、平穏な幸せを味わえたかもしれない人々。そんな彼らが、不正義と理不尽の中で溜めていく怒りや絶望の深さが伝わってきて遣り切れない思いがします。違った環境の中に生まれてくることができていたら、ごく普通の幸せを味わっていたであろう人々の中に、憤りや苛立ちが澱のように溜まっていく過程が丁寧に描かれ、それぞれの暴発に説得力が加えられています。

日本は"比較的、格差のない社会"と言われていますが、それでも、格差が広がりつつあることがいろいろな形で指摘されています。かつては、貧しく生まれ育っても、学歴を得ることで出自を乗り越えることができましたし、誰もが受けられる公教育が一定のレベルを保っていた時代で、奨学金等が整備されていた時なら、貧しい人々が学歴を得る確率はそれなりにあったわけです。けれど、そんな状況もかなり変わってきてしまっています。ここで描かれている物語が、私たちにとっても身近な現実になってきていることを考えると、身につまされるものがあります。

中国での"表現"を取り巻く問題も関係するのでしょうけれど、ここで描かれる個人の悲劇の、中国という社会の構造との繋がりについては、迫っていけていない感じがあり、その点では物足りなさが残りました。また、より虐げられている者たちの悲劇を強調するためなのかもしれませんが、ダーハイがジャオから受ける暴力、社オユーに対する客の暴力など、少々、やり過ぎ感もありました。(まぁ、やられ過ぎたからこそ、爆発したということになるのでしょうけれど...。)互いの間にある圧倒的な力の差を考えれば、あんな分かりやすくて激しい暴力は必要なかったのではないかと...。全体に、バイオレンスな場面が、バイオレンスを描きたいがために作られているようで、違和感が残りました。もっと別の形で、爆発することへの説得力を持たせて欲しかったような...。その辺りは残念でした。



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パリよ、永遠に

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フランスで大ヒットしたシリル・ジェリー作の舞台"Diplomatie"をフランスで映画監督として研鑽を積んだドイツ人の映画監督、フォルカー・シュレンドルフが、ジェリーとともに共同脚本を手がけ映像化した作品。

1944年8月24日。ナチス・ドイツ占領下のパリ。パリ防衛司令官、コルティッツ将軍(ニエル・アレストリュプ)は、ヒトラーの命令により、セーヌ川にかかる33の橋を破壊して川を氾濫させて市内の低地域を冠水させるとともに、エッフェル塔、凱旋門、ノートルダム大聖堂、ルーブル美術館などの世界的に有名な建築物を破壊する計画を立てていました。ホテルの一室で作戦の実行について打ち合わせをするコルティッツの元を、スウェーデン総領事のノルドリンク(アンドレ・デュソリエ)が訪れ、破壊を止めさせようとコルティッツの説得を始め...。

大部分がコルティッツ将軍に執務室となっているホテル内の一室で進行します。そして、その多くは、コルティッツとノルドリンクの会話劇。史実をもとにしている作品なので、結果は分かっているのですが、それでも、2人の遣り取りにドキドキハラハラ。2人の駆け引きがどう展開するのか、どんな材料が持ち出されてくるのか、スリリングな展開に惹きつけられました。

コルティッツは、パリ壊滅作戦が戦略上意味のない作戦であることを理解していたし、ナチス・ドイツの敗北を予感していた様子。一方、ノルドリンクの方は、コルティッツの作戦阻止が"正義"であることに疑いを抱いていなかったワケですから、最初から、コルティッツが不利な状況に立たされていたということになるのかもしれません。全体に、コルティッツが押され気味な感じはしましたが、そんな中で、家族を必死に護ろうとする姿には、胸を打たれるものがありましたし、時に、ノルドリンクが弱い立場にあるコルティッツを苛めているようにも感じられてしまったりして...。

ベルリンが攻撃された時無辜の市民が多数犠牲になったことをコルティッツが訴える部分などは、本作の監督が戦勝国ではなく敗戦国の人だからこそ描かれた部分かもしれません。ノルドリンクの狡猾さもしっかりと描かれています。特に、交渉を終えて、コルティックに背を向けた時のワケありげな表情にはゾクッとしました。この、一方を完全な正義として描かない辺りも本作の味わいに深さを加えていると思います。

起爆装置を破壊したり、コルティッツに従わず作戦を実行しようとしたヘッゲル中尉を射殺したのは、レジスタンスなのですから、パリを救ったのは、ノルドリンク一人の力ではなく、レジスタンスによる戦いの成果も大きかったということになるのでしょう。けれど、武力だけではパリを救えなかったことでしょう。このレジスタンスの成功の陰には、ノルドリンクの得た情報もあるようですし...。本当に国家を護ろうとするのなら、武力だけではなく、外交力が必須。交渉する力を持ててこそ、武力も活かせるということなのでしょう。

コルティッツは、捕虜とはなったものの3年後には釈放され手厚く遇されたとのこと。もし、パリを破壊し、多くの市民を犠牲にしていれば、戦犯として処刑されていた可能性も高いわけで、この決断が彼自身を救ったことは間違いないでしょう。彼の家族を救うというノルドリンクの約束は反故にされたようですが、ノルドリンクのヒトラーにコルティッツの家族を捉える余裕はないという予測は見事に的中したということになります。もしかしたら、家族が逃げられるだけの混乱をナチス・ドイツに与えられるよう作戦実行までの時間を引き延ばすというのも、ノルドリンクの"作戦"だったのかもしれませんが...。ノルドリンクがコルティッツから預けられた指輪は、その後、どうなったのかは気になります。

そして、ノルドリンクがコルティッツのところに行けたのは、ナポレオンの不倫のお蔭。さすがに恋の国おフランスです。(まぁ、このルートがなければ他の方法を考え出したのかもしれませんが...。)まぁ、この辺りは、歴史の面白いところかもしれません。

作中でコルティッツが、ノルドリンクに「君ならどうする?」と問いかけます。その問いは、私たちにも向けられているのでしょう。自分ならどうするのか。例え、疑問は感じていても多くの犠牲者を出しても家族を護るため命令に従うのか、家族を犠牲にしても良心に従って命令を無視するのか。

83分と短めな作品ですが、内容は実に濃く重く、観終えて満腹感がありました。お勧めです。


公式サイト
http://paris-eien.com/



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正しく生きる

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高名な芸術家であり、美術大学で教鞭を執る柳田は、大きな災害による原発事故以降、自身の最後の作品として、放射性物質を使ったオブジェの制作を始めていました。そんな柳田に自分の作ったオブジェを破壊された美大生の桜は、柳田を追い始め...。
街の弁当屋で働くいつかは、大きな災害に遭ったことを利用し、別の街で別の人間になるため、家と夫を捨て幼い娘の遥を連れて故郷を出ます。いつかのやり場のない鬱屈は、徐々に娘への暴力へと形を変えていき...。
圭は、漫才師になる夢を持つ朝雄、優樹とともに少年院を脱走し、チンピラの元で震災で行方不明になった姉の行方を探し始め...。
朝雄は、自分の子どもを出産しているはずの恋人、未夢の元を訪ねますが、流産したと告げられます。失意の中、それでも、未夢との将来のために、必死に働くようになります。ある日、ガイガーカウンターを持って自宅近くを歩いていたところ、柳田の家の前でガイガーカウンターが激しく反応します。桜は、その場面を目撃し...。

私にとって、岸部一徳は、"この人が出演している映画なら観てみよう"と思う俳優の一人。正義の人かもしれないし、極悪人かもしれない、小物か大物かどちらもあり、どんな役でもピッタリ嵌ってしまう変幻自在な感じ。そして、いつも見事な演技を見せながらも主役を食わず、脇役の立ち位置を外さない。そんな不思議な存在感が独特な魅力となっています。

で、何を考えているのか分からない、何故、そうした行為に走ってしまうのかもよく分からない柳田の役柄に、岸部一徳の俳優としての特徴がピッタリと合致。この人でなければ成り立たないキャラクターだったのではないかと思います。

多分、柳田は、本気で正義を実現させようと思ってたのだろうと思います。けれど、本気で"正義"を為そうとすれば、今ここにない"正義"を出現させようとすれば、"正義"が存在する場所を確保するためにも、破壊から始めるしかないのかもしれません。雨が降った後に虹が出るように、破壊の後にこそ生まれるものがあるのかもしれません。

本作に登場する人々。柳田以外は、皆、思うようにならない人生を歩んでいます。子どもの誕生を楽しみにし、恋人と子どもとの生活を大切にしようと思っていながら道を踏み外してしまうとか、災害から必死に護った子どもを虐待してしまうとか、姉を探そうとしているのになかなか上手くいかないとか...。そんな中、柳田は、一途にわが道を突き進みます。ブレないということは、存外、傍迷惑なものなのかもしれません。

決して、丁寧に説明がされている作品ではありませんが、難解な作品ではないと思います。それぞれの物語が進んでいく中で、少しずつ、それぞれの背景が見えてきますし、それぞれの行動の理由も徐々に浮かび上がってきます。その辺りの匙加減は良かったのではないかと思います。

少年院を脱走した朝雄たちを警察が捕まえに来るまでに、何故、そんなに時間がかかったのか...。保護司も未夢の存在を把握していたのですから、朝雄が未夢の住まいに辿り着く前に待ち構えているのが普通なのではないかと...。それに、警察官2人と保護司の3人で捕まえに行くというのも変なのではないかと...。かなり喧嘩慣れした青年2人を逮捕するのに、あの3人ではあまりに心許ないような...。柳田の"防護服姿"も、顔が覆われていないのは違和感ありました。本来、ゴーグルをしたりしてしっかりともれなく覆うべきなのではないかと...。作業をする部屋から出ても防護服を着ていたら、結局、あちこち、汚染されてしまうわけで...。そもそも、あれだけガイガーカウンターが反応するなら、防護服はあまり意味ないような...。柳田にしても、あんな作業をするなら、ガイガーカウンター位用意するのが普通なような...。桜が、初めて柳田の制作現場に入る場面も、あのあまりに陳腐な"怒り"の表現は気になりました。あそこは、もっと表現を抑えるべきではなかったかと...。本作のほかの部分と比較して、あまりに表現があからさまになんったところが気になりました。そして、群像劇として観ると、ラストで個々のエピソードが繋がっていく醍醐味が薄い感じが否めません。

↑の辺りは、もう少しきちんと作り込んでほしかった部分です。朝雄の件については、"最初の内は、警察側に未夢の存在は知られていなかった"にした方が無理しなくて済んだのだろうと思います。捜査の中で、未夢の存在が浮かんで、警官がやって来たという流れなら、まだ、納得もできるような...。

主人公のキャラクターと演じた俳優がこれ以上ないくらいにピッタリなことによるアドバンテージを↑でかなり潰してしまったのではないかと...。描かれているもの自体は面白いのに、表現の詰めの甘さが魅力を引き下げてしまっている感じで残念です。


公式サイト
http://www.tadashikuikiru.com/


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モダン・タイムス

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モダン・タイムス (2枚組) [DVD]/チャールズ・チャップリン,ポーレット・ゴダード,ヘンリー・バーグマン
¥4,104
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1930年代のアメリカ。オートメーション化された工場で働くチャーリーは、非人間的な労働のために正気を失います。工場を放り出された彼はひょんなことからパンを盗んだ少女と知り合いになり、彼女との生活のために何とかして仕事を得ようとしますが...。

あまりに有名なチャップリンのあまりに有名な作品です。初見ではありません。回数をはっきり覚えてはいませんが、何度か観ています。

現在も、非人間的な労働についてあれこれ言われていたりしますが、1936年当時にすでに本作のような視点があったとすると、人間は変わらないというか進歩がないというか...。時代の変化に伴って細かいところで違いは出てきても、末端の労働者たちが置かれた非人間的な環境とか、労働者と資本家の関係性とか、そういった部分は、連綿と続くものなのかもしれません。

まぁ、今の時代、本作のように"機械に翻弄されている"という感じは薄れ、どちらかというと、"単純労働は機械にやらせて人間はより複雑で付加価値の高い仕事をする"というイメージがあり、"機械は単純作業を低コストで黙々とこなす便利な存在"という感じになっているのかもしれません。けれど、だから、労働者たちの働く環境が"人間らしい"ものになったとは言えません。労働者が搾取される構造、時間を切り売りすることでしか生活の糧を稼げない状況というのは、基本的に変わっていないのです。

そして、この"人間の変わらなさ"故に、本作は映画としての輝きを維持しているのかもしれません。まぁ、そうだとすると、本作が名作として観られている状況は、労働者にとって幸せな状況ではないということになりますが...。

チャーリーが巨大な歯車に巻き込まれるあまりに有名な場面とか、見事なローラースケートとか、チャップリンが初めて歌う"ティナティナ"とか、名場面が散りばめられています。

ただ、残念なのは、"風刺"的な要素が散りばめられているにも拘わらず、作品全体を覆うヒューマニズムが、その切っ先を鈍らせてしまっていること。そして、延々と繰り返されるドタバタがしつこいところ。83分。決して長い時間ではありません。...というか、短い作品です。内容的に濃く、印象的な場面が多いこともあるのでしょうけれど、思いの外、長く感じてしまいました。同系統のドタバタが繰り返されるので、段々、飽きてしまいました。

ラストの纏め方は良かったと思います。それだけに、ドタバタの繰り返しによる中だるみやストーリーの流れがギクシャクしている部分があったのは残念でした。

とは言え、80年近くも前に、このような作品を生み出したチャップリンは、やはり、天才だと思います。


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さまよう小指

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さまよう小指 [DVD]/小澤亮太,我妻三輪子,末永遥
¥4,104
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5歳で出会った初恋の人、涼介に振られ続けてもヘコたれない、ブスで超恋愛至上主義の桃子。想いと勢い余って涼介の実家を全焼させてしまい絶縁されていましたが、月日が経ったある日、涼介がヤクザの笹神に切られた小指を偶然拾うと、本人に黙ってクローンを作ってしまいます。生まれてきたクローンを"あかいとこゆび"と命名し、幸せな日々を送りますが、やがて、涼介にクローンの存在がばれてしまい...。

クローンを作り出すっていうのは、なかなか面白かったです。そのクローンのお蔭で桃子は、"愛する相手に愛情を注いでもらう"という、涼介相手では叶わなかった体験ができるわけですし、涼介も、"我が身のことを考えず相手に尽くす姿"を目の当たりにすることになるわけです。

とはいえ、一言でいうと、無茶苦茶。ストーリーって何な感じで、個々のキャラクターと勢いで突っ走っています。まぁ、63分という短さだから、それでも後半失速気味にはなりましたが、何とか最後まで辿り着けたってところでしょうか。

このチープな無茶苦茶感が楽しめるかどうかが、本作に魅力を感じられるかどうかの分かれ目ってことになるのでしょう。残念ながら、私は、ダメな方でしたが...。

チープだから悪いというワケではないのですが、チープに徹するならもっと徹底的に安っぽい方が楽しめたと思いますし、そうでないなら、もっとじっくりと手間暇かけた方が良かったのではないかと...。勢いで押しまくった分、雑になってしまったような...。

桃子を演じた我妻三輪子が可愛らしくて、ねっとりしつこいストーカー女子の雰囲気を嫌味なく表現していて、作品の雰囲気を軽く明るく仕上げていましたし、笹神を演じた津田寛治のハッチャケた感じも印象的でした。この2人が本作の一番の見所。

桃子と涼介が安易にくっつかない結末には好感を持てました。

まぁ、ワザワザ観るまでのこともないけれど、レンタルのDVDだし、ところどころに印象的な部分もあったし、時間も短かったから許せるってところでしょうか...。


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レインマン

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レインマン [DVD]/ダスティン・ホフマン,トム・クルーズ,バレリア・ゴリノ
¥1,533
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サヴァン症候群のキム・ピークと面会した作家、バリー・モローが、キムをモデルに描いた小説を映画化した作品。原作は未読です。

ロサンゼルスで高級車のディーラーをしていたものの事業に失敗して破産寸前のチャーリーのもとに、絶縁状態だった父親の訃報が届きます。父の遺産目当てに帰郷した彼は、その遺産が名前も明かされない人物に贈られると聞きショックを受けます。相続の相手が、これまでその存在さえ知らなかった自閉症の兄、レイモンドであることを知ったチャーリーは、遺産を手に入れるため、レイモンドを施設から連れ出し、ロサンゼルスに向かうのですが...。

かなり前に観た作品ですが、改めて観直してみました。

"自閉症"という障害の描き方には、古さも感じられます(医師による「自閉症は会話ができない」的な発言がありますが、そんなことはありません。一方的な形になりやすいですが、話しはできるし、ある程度の会話は十分に成り立ちますし、それなりに社会生活を送れている人も、仕事ができている人もたくさんいます。)が、なかなか巧く特徴を捉えているとは思います。ただ、一般的に、自閉症の人は騒音が苦手だったりして、あのカジノの喧騒の中で落ち着いていられたことには疑問も感じましたが...。

そして、本作は、チャーリーが家族を取り戻す物語ともなっています。父との間に確執を抱え、家を飛び出したチャーリー。その父が亡くなってみたら、遺産は、たった一人の遺族であるはずの自分ではなく、どこの誰ともわからない相手のものとなることを聞かされます。この時、チャーリーは、父に完全に見放されたのだと感じたことでしょう。父親の車を無断で乗り回して捕まった時も、友だちは親が迎えに来てくれたのに、ただ一人来てくれなかった薄情な父親。けれど、レイモンドとの出会いによって、チャーリーは冷たいとしか感じていなかった父親の別の面を知ることになります。そして、幼い頃、確かに父親に愛されていた時期があったことも。さらに、レイモンドも、チャーリーのことを想ってくれていたことを。

レイモンドと出会い、彼と時をともに過ごすことで、チャーリーは兄を得ただけでなく、父親からの愛情を取り戻すことができたのでしょう。そして、そのことを通して、家族から愛されていた自分を取り戻すことができたのだと思います。それができたからこそ、レイモンドのことも受け入れることができたのでしょう。そのチャーリーの変化が、スザンナとの関係をも改善させていきます。

ところどころにコミカルな描写が挟み込まれ、笑える部分とシミジミする部分、泣ける部分がバランスよく配され、最初から最後まで作品の世界に惹きこまれました。レイモンドが、それなりにお兄さんらしい振る舞いをする場面があったりするところも、楽しく、クスリとさせられました。

ラストも、変な感傷に流され過ぎず、レイモンドがレイモンドらしく締めくくられていて良かったです。やっぱ、愛する弟との別れを惜しむより、いつものテレビ番組が優先なんですよね。そんなレイモンドに苛立つこともなく、すんなりと受け入れられるようになったところに、チャーリーのレイモンドに対する理解の深まりとチャーリーの成長を見て取れます。なかなかの名シーンだと思います。

レイモンドを演じたダスティン・ホフマンンの名演はもちろんですが、チャーリーを演じたまだ若々しいトム・クルーズが、レイモンドに対する感情の変化、一人の人間としての成長を大げさにならず、押しつけがましくなく、自然にリアルに表現していて見事です。

流石に名作と言われるだけのことはあります。お勧めです。


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俺たちは天使じゃない(1955)

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俺たちは天使じゃない (1955) [DVD]/ハンフリー・ボガート,アルド・レイ,ピーター・ユスティノフ
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先日、ここに感想を書いた1989年制作の同名作品のオリジナル版です。

悪魔島と呼ばれる刑務所から脱走を企てたジョゼフ、アルバート、ジュールスの3人は、逃走資金を奪おうとある雑貨店に入り込みます。店主のフェリックス・デュコテルは、どうやら、経営者としての才能には恵まれていません。厳しくて傲慢な従兄アンドレにこの店を任されているのですが、かなりの赤字を出している様子です。最初は、店の売り上げの強奪を目論み、そのためにはイザとなれば、店の人間を殺そうとまでしていた3人ですが、フェリックス一家に同情するようになり...。

以前、本作のリメイクとされる同名映画を観て、オリジナルである本作を観たいと思ったのですが...。本作を観る前に聞いてはいましたが、それにしても、全くの別物です。脱獄した3人組が主人公というところくらいしか共通点がない様な...。まぁ、別にそれはそれでよいのですが...。

フェリックスの店にやってくるお客たちも、3人を迷うことなく"囚人"と認識しています。そして、3人の囚人が脱獄したというニュースも流れている様子が見られるのですが、何故か、誰かが3人を捕まえるために店にやってくる気配はありません。悪魔島と呼ばれる場所には、刑務所もあるけれど、普通の人たちが普通に住んでいて、囚人たちも街の中を比較的自由に動き回ることができて、街の人たちは安い労働力として囚人たちを雇ったりしているようです。

そんな街で、3人組は、逃走資金を稼ぐため、雑貨屋に強盗に入ります。普通、そんな街であれば、店はもっと厳重に戸締りしているのではないかと...。何といっても"悪魔島"です。それなりに恐ろしい犯罪者が集められているのではないかと...。もしそうでないにしても、囚人たちがウロウロしている街で店を経営していて、この不用心さは信じられません。

そして、逃走を企てる3人も、実に緩いというか、トボケているというか...。屋根の修理をするはずが、覗きに熱心で、ほとんどそのための作業はしていないような感じがするし、金庫破りの天才、ジュールスの鍵の開け方はあまりに超能力だし...。

で、フェリックスがあまりに商売に向かなさ過ぎて、"悪人"アンドレに同情したくなりました。人が良く気が弱く、お客にツケで商品を持って行かれても文句も言えず、ツケを回収することもできず、帳簿を満足につけることもできず...。これだけ無能だったら、アンドレが苛立つのも無理はありません。元々、フェリックスがこの仕事を得られたこと自体が、アンドレの好意なワケで...。そして、このフェリックス。善良そうでいて、結構ズルいのです。お客を騙すような"押し売り"に嫌な顔はしても、結局、その行為を受け入れるし、帳簿の偽造に抵抗を示しても、誤魔化したい気持ち満々だし、アルバートが盗んできたものだと知りながらその七面鳥を喜んで食べているし...。積極的に悪を為そうとはしなくても、その悪の恩恵を受けようとするのは、かなりズルいですよね...。

確かに、アンドレは良い人ではないかもしれませんが、悪人、少なくとも死んだことをすんなりと天罰と決めつけられる程の悪人とは言えないような...。

クリスマスのユーモラスな物語...ということであれば、もっとほのぼのタッチにして欲しかったような...。このレベルで、死んでくれて良かった的な終わり方では、後味が悪いです。3人の身の処し方は納得でしたが...。

ハンフリー・ボガードの軽いノリの良い形に力の抜けた演技は印象的でした。それが見られるだけでも価値はあるかもしれませんが、まぁ、それだけかも...。


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竹と樹のマンガ文化論

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竹と樹のマンガ文化論(小学館新書)/竹宮惠子
¥価格不明
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マンガ学科がある京都精華大学。そこで教鞭を取ってきて、2014年、学長に就任した漫画家で、「ファラオの墓」「風と木の詩」「地球へ」などの作品をヒットさせた竹宮惠子と、「少女漫画を読める」を自負するフランス現代思想の専門家、2015年4月には、京都精華大学客員教授に就任予定の内田樹の対談。

竹宮惠子と言えば、やはり、「風と木の詩」。週刊誌への連載をリアルタイムで読んでいたのですが、かなりインパクトありました。電車の中では読むのは憚られ、自分の部屋でこっそり...。危うげな香りが漂う作品でしたが、ジルベールの美しさ、作品を包み込むおフランスな雰囲気がとても魅力的な作品でした。その作品が生み出された背景について、いろいろと語られています。

所謂、"BL(ボーイズラブ)"の原点とも言える「風と木の詩」。週刊少女コミックでの連載が始まったのが1976年、39年前のことです。まだまだ、少女漫画の中で性行為が描かれること自体タブー視されていた時代にあって、裸の男たちが絡み合うシーン満載の本作がいかに斬新で衝撃的だったことか!!!そのインパクトの大きさは今でも覚えています。この"問題作"を発表する場を得るためには、ヒット作を出し、描きたい作品を描く自由を手に入れる必要があり、そあのために「ファラオの墓」を描いたというエピソード。浦沢直樹が、描きたいものを描けるようになるために「YAWARA」を描いたと言っているのをどこかで聞いた記憶があるのですが、"自由を得るためにプロとしての評価を獲得する"というのは、漫画の世界だけでなく、働く者にとって心に留めておくべきこと。

漫画家と読者の関係なども、サービスの提供者と顧客の関係として幅広く通じることが語られていて、一種のビジネス書としても読める内容になっています。

竹宮惠子は、"花の24年組(昭和24年頃の生まれで1970年代の少女漫画の革新を担った女性漫画家たち)"と称される中の1人。他にも、萩尾望都、山岸涼子、池田理代子、大島弓子、木原敏江、青池保子といった錚々たる面々がそこに含まれるのですが、その24年組が誕生するきっかけとなった場所が、竹宮恵子と萩尾望都が共同生活をしていた大泉で、そこが"トキワ荘"ならぬ"大泉サロン"。その大泉サロンや24年組の漫画家たちを巡るエピソードもふんだんに盛り込まれ、1970年代中頃から1980年代前半頃の少女漫画が力を持っていた時代を知る者にとっては、強く惹かれるトリビアネタ満載です。

少女漫画の発展を担い、その後長く第一線で活躍してきた漫画家、そして、漫画を学問として後世に伝えることを職業としている竹宮惠子だからこそ語れる"漫画の歴史"はとても興味深く読むことができましたし、後半の京都精華大学漫画学科の教育の在り方が語られる場面では、竹宮惠子の大学教授、大学学長としての本気度が感じられます。漫画について学生たちに伝えていくためにどうすべきか、学生たちをどう育てていくか、いかにして漫画家として食べられるようにするか...。大学にいる時だけでなく、その先にあるものを見通した教育の在り方を真剣に模索する姿に一時代を担った大家としての矜持が感じられました。

そして、その辺りは、少女漫画大好きで、やはり長く大学で教鞭を取ってきた内田樹だからこそ、聞き出せたことなのかもしれません。内田樹の唱える説は、単なる思いつきにしか思えないことも少なくないのですが、その軽やかさと、竹宮惠子の語る内容の程よい重みのバランスが良く、マッチングの良さも光ります。

とても分かりやすい言葉と表現で話す2人の対談ということもあるのでしょう、変な負担感なくスムーズに読み進むことができました。まぁ、幅が広くなおかつどこまでも深い漫画の世界を語るには、あまりに短い対談であることは確かですが、それでも、漫画、特に少女漫画好きには楽しめる内容になっていると思います。強くお勧めしたいです。



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スターバックス株主優待券

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初めて、スターバックスの株を買ったのは2004年でした。28500円で1株購入(その当時は1株単位)。その後、徐々に株価が上昇。買い足したり、売ったりして、売買の利益と配当で、最終的に、売買の手数料や税金等を差し引いて、投資金額の38%の利益が出ました。とはいえ、軍資金に恵まれていないので、金額としては可愛らしいものでしかありませんし、38%の利益とは言え、10年かけてのことなので、利率としては大したことありませんが、まぁ、ド素人ですし、合格ラインではないかと...。

で、配当以外に、スターバックスの株を持っていることの特典として、"株主ご優待ドリンク券"があります。スターバックスで売っているドリンク1杯が無料になります。ドリンクの種類、サイズを問わず、トッピング等もすべて含めて無料ということで、サイズを大きくしていろいろと加えれば1000円を超えるドリンクをタダでgetできるようです。まぁ、"有効活用"に拘ってやたらとトッピングを加えたりしたら、味を犠牲にしてしまうのではないかとも思いますが...。(ネットで検索すると、スターバックスで買える高い飲み物の注文の仕方が出ていたりしますが...。)

昨年9月に、アメリカにある親会社がスターバックスコーヒージャパンに対して株式公開買付(TOB)を行うという発表があり、TOBが成功。上場廃止され、株主優待券も6月に送付されたものが最後となりました。それが↑です。

利用の期限が、この3月末日。結構、ギリギリになりましたが、先日、使いました。

最近、反抗期で不機嫌マックスの息子を連れて行きました。まだ素直だった時代には、時々、2人でお茶しに行ったりしていたのですが、近頃はそんなことになかなか付き合ってもくれず...。株主優待券をどうしようか考えて、ダメもとで息子に声をかけることにしたのですが、意外にもアッサリOK。もっとも、"朝、行こう"という話をしていたにもかかわらず、なかなか起きなくて、結局、昼になり、私の方は、大幅に予定を狂わされましたが、それでも、久し振りに息子との穏やかなひと時を持てたことは嬉しかったです。

注文したのは、私がショートラテ(HOT)、息子がアイストールラテ(ICE)ということで、"有効活用"というには程遠い使い方でしたが(その他に、お金を払って食べ物も注文したし)、それでも、普段、あまりできずにいた話もいろいろとすることができて、価値ある使い方ができたのではないかと思います。

毎年、届けられていた株主優待券が、もう来なくなるのは寂しいですが、仕方ないですね...。



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都営地下鉄大江戸線の六本木駅のところにある東京ミッドタウンの一角にある、"フード&カフェ Toshi Yoroizuka"。パリでコンクールに優勝したり、ベルギーで日本人で初めて三ツ星レストランのシェフパティシェに就任したということで有名になった鎧塚俊彦さんが目の前で目の前で作ってくれるカウンタースタイルのカフェということで、人気のお店です。

カフェとテイクアウトのお店とがあり、開店当初はどちらもとっても混んでいて、どちらも、並んで並んで、やっと入店できるといった感じでした。当然のことながら、テイクアウトのお店の方が回転は速いのですが、それでも、結構、店に入るまで待たされていました。さすがに、開店から月日が経つと、そんなこともなくなり、テイクアウトのお店の方は、基本、並ばず入れるようになっています。

休日しか行けないからということもあるのですが、カフェの方は、いつも並んでいます。入ってみたいとは思っているのですが、なかなか...。ミッドタウンなら行こうと思えばいつでも行けると思ってしまうから、余計になのでしょうけれど、並んでまで入ろうとも思えなくて...。で、お店がオープンして8年になるのですが、結局、1度もカフェ体験できないままになってしまっています。

でも、時々、テイクアウトは利用しています。ケーキも焼き菓子類も、基本、外れなしで美味しいです。お値段も、このクラスの有名店にしては、抑えめなのではないかと...。

で、今日は、タルトタタンです。この季節ならではのリンゴのお菓子です。タルトタタン自体が好きで、いろいろなところで見かけると注文してみることが多いのですが、同じ職場の3月で退職する人へのプレゼント用にクッキーを買おうと思ってお店に行ってみたらタルトタタンを発見。迷わず買いました。

青森産紅玉を丸々1個を焼き上げ、キャラメルとアングレーズのクリームを敷いたサックサクのパイの上に載せてあります。で、りんごの表面はキャラメリゼされていてパリッと。

基本、アッサリ目の軽い食感。りんごは口の中に入ってふんわりと溶けていくし、パイもサクッと軽く、クリームも風味はしっかりと効かせていますが、軽やかな感じ。りんごの自然な甘さと酸味のバランスが良く、そのトロッと溶けていく感じにパイのサクサク感が合っています。ちょっと見は重そうな感じもしますが、食べてみたら、あっという間に消えてなくなった感じ。これなら、いくらでも食べられそうです。1個しか買わなかったので、1個で終了でしたが、もっとたくさん買っていたら、3個か4個はいけたかもしれません。

タルトタタンにしては、アッサリし過ぎている感じがしなくもないですが、これ以上はないと思えるバランスの良さは見事です。以前、やはり、東京ミッドタウンにカフェがある"JEAN-PAUL HEVIN"のタルトタタンについて書きましたが、あちらは、苦みが効いたしっかり系の味わい。それぞれにそれぞれの美味しさと魅力があります。

りんごの美味しい季節だけの販売のようですから、もうそろそろ終りに近付いているのでしょうけれど、機会があれば、是非!!!お勧めです。


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