昨年、4月から遠距離通勤が始まり、「帰宅時間が遅くなる→夕食が遅くなる→昼食を終えてからの時間が長くなっていて余計に食べてしまう→太る」という流れで、ただでさえ多かった体重が更に増加の一途。7月に人間ドックだったのですが、その1カ月前、久々に体重計に乗って愕然としました。そこに示されたのは、妊娠後期を除いてはかつてない程の数値!!!適切な体重を13kgも超過するその値に流石に何とかしなければと一大決意をしたのでした。

元々、ダイエットの必要性は感じていたわけで、いろいろなダイエット情報に興味を持ってはいました。けれど、ダイエットのために食べたい物を完全に我慢するということもできず、少しダイエットしてもすぐ継続できなくなってリバウンドを繰り返していました。で、そんな中で、"糖質制限ダイエット"が効果あるとの話を聞いていたのですが、"ご飯大好き"で何はなくとも白いご飯さえあれば幸せな私としては、炭水化物を制限するなんてとんでもなかったわけです。

けれど、あまりに危機的な重さに、そんなことも言っていられない状況になっていることは認識せざるを得ず...。それでも、ご飯を全く食べないというのはあまりにストレスフルで、とてもそんな状態を継続できるとは思えませんでしたので、取り敢えず、"①夜はご飯、パン、麺などを食べない"、"②炭水化物をできるだけ減らす"、"③夜は果物、お菓子類を食べない、当分のある飲み物を取らない"の三点を心がけるようにしました。で、夕方、5時頃までは、それまで食べていた程度の量まではOKということにしました。

結構、夜にご飯を食べてしまっていましたし、夕食の後、一口の甘いものがなかなかやめられずにいたので↑の方法で、かなり糖分の摂取量を減らすことができたと思います。

で、結構、早い段階で効果が出始めました。最初の2カ月で1kgの減量、そして、その後は、ほぼ1カ月に1kgペース。

"ご飯を我慢する"というのが、結構なハードルの高さで、最初は、ご飯を食べられないストレスがかなりのものでした。夜、寝る時のお腹が空いた感じが何とも我慢しがたく、それも、相当にイライラの元になっていましたし...。アルコール依存とか、薬物依存とかの禁断症状がどういうものなのか分かるような気分にもなったものです。

炭水化物を摂取すると、満腹中枢を満たすセロトニンが多く分泌され、満腹感と幸福感を得られるのだそうです。で、炭水化物は薬物などと同じように耐性ができてしまうので、より多くの炭水化物を欲するようになり、食べる量がどんどん増えてしまうのだとか。炭水化物とコカインは脳の同じ部位を刺激を与えるという話を聞いたこともあります。

実際、最初の1週間くらいはかなりきつかったです。けれど、ある程度の日数が経過すると、意外な程、"ご飯を食べたい"と思わなくなります。始めは、夜は抜いても、朝と昼は、ダイエット開始前と同じ量のご飯やパンを食べていたのですが、次第に、それまでの半分くらいの量でも満足できるようになりましたし、それ以上のご飯やパンを食べたいとも思わないようになりました。

始めは食べたいのを我慢するという感じだったのですが、段々、そんなに食べたいと思わなくなり、"我慢する"という感じはなくなってきています。今は、食べたいと思うだけ食べても、糖分の摂取はダイエット開始前の3分の1位になっていると思います。

そして、単に制限するだけでなく、一方で、きちんとタンパク質を取ることも大切なのだとか。で、基本は

朝:ご飯、味噌汁、魚か肉、ヨーグルト、トマト
昼:パンかお握り(基本250~350kcal)
夕方:帰りの特急の中で軽食(基本200kcal程度)
夜:スープ(鶏肉か豚肉とたっぷりの野菜)、ヨーグルト
にしました。後、日中は少しだけクッキーとか、チョコレートとか。

この内容だと、そんなに我慢が必要ないし、最初の"禁断症状"を越えれば、無理せず継続できます。まぁ、それでも、職場の宴会とか、年末年始の何やかやとか、ある程度、夜に食べざるを得ない場面を完全に排除することはできませんが、宴会の前後は、なるべく↑よりも抑えるようにしたりとか...。

そんなこんなで、昨年6月のピークから、10kg減らすことができました。やはり、余分な体重がなくなると、動きが軽くなった感じがして調子は良いです。1ℓの牛乳パック10本分が自分の身体から消えたのですから、軽くなりますよね...。これまで、牛乳パック10本分を身につけていたのかと思うとゾッとしますが...。取り敢えず、後3kg。ある程度、余分な部分が落ちてきたからなのか、このところ、少し、体重が減るペースは落ちています。なので、この先は3カ月1~1.5kgペースを目指そうかと...。

なので、今年8月末に最初の目標としたところにもって行きたいなぁと...。



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大人ドロップ

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大人ドロップ [DVD]/池松壮亮,橋本愛,小林涼子
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樋口直哉の小説を映画化した作品。原作は未読です。

高校最後の夏休みが迫る中、親友の岡田始(前野朋哉)から彼がひそかに思いを寄せている同級生、入江杏(橋本愛)とのデートの約束を取り付けるよう頼まれた浅井由(池松壮亮)。けれど、それが原因となって杏を怒らせてしまい、仲直りできないまま夏休みに入ってしまいます。そして、杏は何の前触れもなく遠くへ引っ越してしまいます。杏の行動にスッキリしない思いを抱いた由は、思い切って杏に手紙を出します。届いた返事から学校を辞めた本当の理由を知った由は、始とともに、杏に会うため、片道200キロメートルの旅に出て...。

子どもの枠の中にも入り切れず、だからといって、大人とも言えない微妙な時期です。ちょっと背伸びして頑張ってみたりはしても、一方で、子どもとしての無力さにも気付かされてしまい、そのギャップに苛立ったり...。大人になってから振り返って、甘酸っぱさや気恥ずかしさに溢れた時期。懐かしい様なこそばゆい様な気持ちにさせられます。思い出したいような封印してしまいたいような...。その時は真剣だったことも、大人になって振り返ると、随分無理していたなぁとか、痛いなぁとか...。

本作の青春は熱血ではなく、平熱のダラダラしたゆるい青春。妙に郷愁をそそられるその空気感は良かったと思います。

ただ、前半のほのぼのとした甘酸っぱい青春は、後半に入ってがらりと雰囲気を変えてしまいます。まぁ、杏が学校を辞めた理由として描きたかったところなのかもしれませんが、ここはもっと他の理由づけもできたでしょうし、前半の雰囲気のまま引っ張った方が違和感なく観られたのではないかと思います。

由を演じた池松壮亮、始を演じた前野朋哉、杏を演じた橋本愛、杏の親友、春を演じた小林涼子、それぞれに良かったです。池松壮亮はサラリーマン姿も高校生姿も違和感なく安定感のある実力を感じさせる演技でしたし、前野朋哉も剽軽な味わいを巧く出していましたし、橋本愛は抜群の存在感、小林涼子は実に可愛らしかったです。個々のキャラクターの描き方も良かったのだと思いますが、それぞれの人物の個性がしっかりと表現されていて、その点は、本作の魅力になっていたとは思います。

けれど、何故か、面白いとは思えませんでした。全体に淡々とし過ぎた感じがしましたし、いろいろな要素がバラバラに詰め込まれ、とっ散らかった感じになってしまったのかもしれません。ラストのまとめ方も何だか中途半端。全体にぎこちなさが漂い、それはそれで、青春の不器用さ、未熟さを表現しているようでもありました。ところどころ、きらりと光るものが感じられ、決して悪い作品ではないのですが、正直、あまり面白くはありませんでした。まぁ、青春なんてそんなものかもしれませんね。ドラマチックであるようで平凡だし、輝いているようでどんよりしているし、そういう意味では、青春らしい作品なのかもしれませんが...。

"森田公一とトップギャラン"がヒットさせた曲、「青春時代」が思い出されます。"青春時代が夢なんて後からほのぼの思うもの。青春時代の真ん中は胸に刺刺すことばかり"(by 阿久悠)本作のテーマ音楽はこちらの方が相応しかったかも...。どうも、エンディングの曲とか、作品の雰囲気に合っていない感じがして気になりました。



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STAND BY ME ドラえもん

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STAND BY ME ドラえもん(DVD期間限定プライス版)※2015年6月30日までの期間.../水田わさび,大原めぐみ,かかずゆみ
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言わずと知れた藤子・F・不二雄の漫画を映画化した作品。

何をやらせても冴えない少年のび太の前に現れたのは、22世紀から来たのび太の孫の孫セワシと、ネコ型ロボット、ドラえもん。のび太の悲惨な未来を変えるため、お世話係として連れて来られたドラえもんでしたが、乗り気ではありません。そこでセワシはドラえもんに"成し遂げプログラム"をセットして、のび太を幸せにしない限り、22世紀に帰れなくしてしまいますが...。

これまでTVでもアニメが放映され、何度も映画になってきた国民的作品、"ドラえもん"。その始まりの物語、のび太とドラえもんの出会いからが描かれています。かなり多くの人がすでに知っている物語ですが、朝、遅刻しそうな時に"どこでもドア"があればいいのにとか、勉強している時に"暗記パン"が欲しくなるとか、何かというとドラえもんの道具を思い浮かべてしまうような世代が子どもだった時代が描かれていて、郷愁を呼び起こされる作品となっています。ただ、この世代にターゲットを絞るなら、ドラえもんは大山のぶ代であって欲しかったですが、それは難しいのでしょうね...。

"未来の国からはるばると"、"しずちゃんさようなら"、"雪山のロマンス"、"のび太の結婚前夜"、"さようならドラえもん"、"帰ってきたドラえもん"を中心にまとめたストーリーとなっています。

ストーリー自体は、よく知られているものですから、物語に感動できるかどうかという点については、やはり、弱いです。それでも、ドラえもんが帰ってくるシーンとか、やはり、ジンと来ましたが...。

携帯電話もパソコンもなく、畳の部屋が基本で、住宅地には空き地があり土管が置かれていた時代が丁寧にリアルに描かれています。子どもを取り巻く環境も、随分大きく変わったものです。ただ、この昭和レトロな時期に子どもの時を過ごしたのだとしたら、しずかちゃんと結婚するのしないのという時期は、本作に出てくるような近未来の世界ではなく、昭和の終りから平成の初め頃になるワケで、今よりは数十年先のような感じがする本作の世界には、違和感を覚えました。

いつもドラえもんの道具に頼る甘ったれなのび太が、なかなか成長しないのもお約束。とはいえ、原作では、もうちょっと道具を出すドラえもんの側にためらいというか、のび太に努力させようとする姿勢があったと思うのですが、そこが薄くなってしまっているのは残念。のび太を成長させないことには幸せな未来は来ないわけですから、ドラえもんは、もっとしっかり指導しなければならないはずなのですが...。それに、ここまでダメダメでは、しずかちゃんが、何故、のび太を選ぶのかが分からなくなってしまいます。これでは、しずかちゃんは"だめんず・うぉ~か~"です。

原作をリアルタイムで読んでいた世代にはグッとくるはずの物語を描いている割には、その世代が馴染んでいた設定がところどころ変えられていて、感動に浸りきれない部分もあり、その辺りが微妙なところ。

子どもの頃は、のび太に自分を重ねて観ていましたが、今、本作を観ると、ドラえもんとか、しずかちゃんのお父さんとか"保護者"の側に共感している自分に気付かされます。のび太がというより、観る側の自分が年齢を重ねている("成長"したかどうかは別として)ことを実感させられたりもしました。

ドラえもん映画初のCG作品とのことですが、何かと粗が目立つ作品になってしまっていて残念でした。

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幕末高校生

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幕末高校生 DVD通常版/玉木宏,石原さとみ,柄本時生
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高校で日本史を教える未香子と教え子の雅也、恵理、慎太郎は、幕末の江戸にタイムスリップしてしまいます。1868年、江戸では新政府軍の幕府軍の戦いが始まろうとしていました。けれど、日本人同士の無益な戦いを避けたい勝海舟は、西郷隆盛に和平交渉に向けての文書を送っていました。そんな中、2014年からタイムスリップしてきた高校で日本史を教える未香子と教え子の雅也は、不審な装い、言動から江戸城に捕えられ、ひょんなことから勝海舟の元に引き取られます。江戸の街を覆う不穏な空気にも「和平交渉が行われるから、江戸で戦は起こらない」と言い切る未香子でしたが、既に、歴史は未香子たちが知るものとは違う方向に動き出していました。このまま歴史が変われば、未香子たちの未来はなくなってしまうかもしれません。一緒にタイムスリップしてきているはずの恵理と慎太郎を探しながら、自分たちの未来を護ろうとする未香子と雅也でしたが...。

幕末といえば、日本の歴史の中でも大きな転換期となった時期で、実にドラマチックな時代。小説、TVドラマ、教養番組、映画...、様々な形で描かれてきてもいます。様々な角度から切り取って面白いストーリーを組み立てられる時代ですし、日本の歴史の中でも戦国時代と並び、一番、面白い物語を描ける時代と言えるでしょう。

それなのに、どうして、こうなってしまったのか...。かなりしっかりした出演陣が揃えられ、それぞれ、きちんと演技しているのに、何だかあまりに残念な感じになってしまっていました。

現代の4人の幕末への馴染み方もあまりに安易というか何というか...。もっと違和感を感じながらあれやこれやを乗り越ていく部分があったほうが良かったし、受け入れる側も何だか妙にあっさりしすぎていて引っかかりました。

歴史が変わってしまうことへの危機感とか、元の時代に戻れるかどうかの不安とか、その辺りも、いまひとつきちんと描けていなかった感じがします。

タイムスリップした4人が持ち込んだ現代の物も、物語の中できちんと活かしきれていなかったし...。特に車の扱いはアッサリし過ぎだし...。"幕末高校生"のはずが、"幕末女教師と勝海舟"だし...。

勝海舟の人物造形が新しかったと言えば言えるのですが、それにしてもです。前半のダメ人間な勝海舟が、何故、陸軍総裁になれたのか...。それなりに能力が評価されているとか、何かと策士だとか、そういった部分がないとそこまでは出世できなかったのではないかと...。後半はしゃっきりしていたし、クライマックスの大立ち回りは一応は見せ場になっていたと思うのですが...。まぁ、あの殺陣も、キラキラさせ過ぎではありましたが...。それにあの時代背景であそこまでやったら、江戸城無血開城がどうこうと言っていられなくなるレベルの大きな戦いになってしまったのではないかと...。

徳川慶喜の言動にも違和感が残ります。もう大政奉還した後なのですから、既に、日本を徳川家が支配する時代は終わっているわけで...。今さら、徳川家が支配者であり続けることに拘るといのは不自然な気がします。徳川家が政権を握ることを重視するなら、"政権を護る"ためではなく、"政権を取り戻す"ための戦いになるワケで...。

伏線もいろいろ張られていた割にはきちんと回収されていないし、ドラマとして薄っぺらいし、チープな感じが漂うし...。だからと言って、コメディにも、ナンセンスなハチャメチャにもなり切れていないし...。

もっとずっと面白くできるはずの内容なのに、残念です。というより、この素材で、この出演陣で、ここまでツマラナク仕上げていることが奇跡...かもしれません。

とはいえ、この内容で、これだけきちんと演技している出演陣には、"プロ"を感じました。流石です。


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野いちご

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野いちご <HDリマスター版> 【DVD】/マックス・フォン・シドーほか
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78歳の医師イーサク・ボルイ。妻は既に亡くなっており、息子は独立して、今は家政婦のアグダと2人きりの日々を送っています。名誉教授の称号を授与されることになったイーサクは、授賞式の日の明け方、奇妙な夢を見ます。人影のない街、針のない時計、彼の前で止まった霊柩車の中の棺にいる彼そっくりの老人...。夢から醒めたイーサクは、息子の妻と車に乗り込み、式典に向かいますが、その先々で奇妙で不可思議な出来事に遭遇し...。

年老いて孤独なイーサクの見る夢は死の予感に満ちており、不気味に彩られています。孤独な老人の寂しい晩年...に見えるイーサクの日常ですが、確かな愛が彼を包んでいます。

現在の彼の日々とは全く違う輝きが感じられる若き日の想い出。その若き日の映像が、イーサクの人生の豊かさを感じさせてくれます。そして、今のイーサクを作り上げてきたものが明らかにされていく中で、イーサクの現在の姿に、少しずつ新しい面が見えてきます。過去を追体験することで、自分の現在を見つめ直していくイーサクは、これまで気付かなかった、あるいは、気付こうとしてこなかったものを見ることができたのでしょう。

何歳になっても、例え死を目の前にした状態にあったとしても、人は新しい人生を切り開いていくことができる。時間を巻き戻すことはできず、人生をやり直すこともできないけれど、過去を振り返り見つめ直すことで、何かを変えていくことができる。旅を終えたイーサクの息子夫婦やアグダへの言葉には明らかな変化が窺えます。

で、だからといって、イーサクも成長して万々歳...という単純な結末にはなっていないのも心憎いところ。そう、結局、イーサクは、ラストで幻想に逃げ込みます。長い年月をかけて築き上げられてきた生き方は、そう簡単に変えられるものではありませんが、ちょっとした変化が心の奥底にあるものを動かしていくこともある。イーサクとアグダの関係も、大きく変わることはないかもしれませんが、互いに何か大切なものを確かめることができたはず。そしてそれは、息子夫婦も同じなのだと思います。

基本的には、"孤独な老人を描く死の予感に満ちた映画"なのですが、美しい映像とコミカルな描写で、思いの外、暗さが感じられない作品となっています。
死も孤独も否定することなく、人間の欠点や過ちを受け入れていくことで得られる平穏。哀しさも寂しさも後悔も、全てを含め、人生は生きるに値する、そう思える作品だと思います。

イーサクの想いをその豊かな表情で見事に表現したヴィクトル・シェストレムの名演が光ります。見応えのある作品でした。


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アメリカン・スナイパー

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アメリカ軍で最も強い狙撃手と呼ばれた、クリス・カイルの自叙伝「ネイビー・シールズ最強の狙撃手」を実写化した作品。原作は未読です。

"9.11"を伝えるニュースの映像を観ながら、軍隊に志願することを決意したクリス・カイルは、アメリカ軍特殊部隊"ネイビー・シールズ"の一員としてイラクに出征します。スナイパーとなった彼は、故郷に残した家族を想いながらも、仲間を護るため次々と"敵"を射殺します。人並み外れた狙撃の制度からレジェンドと称される大活躍をしますが、クリス自身も心に傷を負い...。

クリスの銃口は子どもにも向けられます。本作で"女子ども"を撃った場面では、標的となった人物が武器を使おうとしていて、結果的に、"そのおかげでアメリカ兵が救われた"ワケで、"祖国を守るための行為"として正当化することもできたのでしょうけれど、実際には、"誤射"だったケースもあったのではないか...。まぁ、この点については、クリスは本物のレジェンドで、誤謬はなかったのかもしれないので、何とも言えませんが、少なくとも、"アメリカ軍に殺された無辜の市民"もかなり存在したわけで...。

クリスを始め、PTSDや何らかの身体的、精神的な後遺症を負ったアメリカ兵もこの戦争の犠牲者であることは間違いありませんが、それでも、少なくとも彼らには、軍隊に入らないという選択肢もあったわけです。アメリカ軍も兵士を集めるために必死で、ほとんど詐欺まがいのことまでやっているようで、かなり追い詰められて入隊せざるを得なかった兵士もいるようですが、それでも、多くの場合、軍隊に入らないという道も選ぶことができなかったわけではないのです。クリスの場合は、自分から進んで積極的に参加したのですし...。けれど、イラクの人々にすれば、普通に生活をしていた場を戦場にされてしまった状況で、否応なく戦争に巻き込まれてしまったるのですから、やはり最大の犠牲者はイラクの普通の人々。アメリカ兵なら、例え障害を負ってもきちんとした治療を受けたり、補償を受けることができるかもしれませんが、イラクの人々はそれすら難しいことでしょう。

本作には、アメリカ軍に協力したために酷い殺され方をする子どもとその父親が登場します。アメリカ軍への協力を拒否すればアメリカ軍に殺されていたかもしれません。けれど、協力しても結果は同じ。何かと人を殺すという点においては、結局、敵も味方も同じ。けれど、"国を守るため"とはるばる遠くまでやってきたのはアメリカ。自分たちが生活する場を戦場としたアメリカを追い出そうとするのがイラク側。あれだけあると言い張っていた"大量殺人兵器"も見つからず、本当の意味でイラクがアメリカにとって"驚異的な敵"だったのかどうかも疑問です。そもそも、アメリカ以上に"大量殺人兵器"を持っている国など存在しないわけで...。

戦いの場では命懸けの厳しい状況に晒されても、それでも、アメリカ兵には比較的安心して生活ができる兵舎があり、それなりの食事をとることもでき、シャワーを浴びることもでき、故国の家族と電話で話をすることもできます。けれど、"テロリスト"側には、そんな贅沢をする余裕はなく、両者の間には圧倒的な格差が見て取れます。"9.11の報復"にしても、半沢直樹以上の仕返しになっています。

今や唯一の超大国となった国が普通の人々が平穏に生活する街を戦場として、そこに自国の若者をたくさん送り込んだのはアメリカです。確かにクリスは多くのアメリカ兵を守り、その命の危機を救ったのでしょう。けれど、そもそも、兵士たちの命を危険に晒したのはアメリカ。国が危険な場所に送り込んだ若者たちの命を守るためにクリスがイラクの人々を殺す。この構図を考えれば、本当に若者たちを守るために有効なのは、イラクの人々を撃つことではないのは明白でしょう。

クリスが兵士たちを守ろうとしたこと自体は良いとしても、では、何故、クリスが兵士たちを守らなければならないような状況を誰が作り出したのか...。そこは、もっとしっかり描いたほうが良かったような...。

クリスは偉大なる祖国を守るために入隊しました。幼い頃から、父親に、羊を守る番犬となれと育てられてきました。クリスは何を守ることができたのか...。戦場での経験から心に大きな傷を負いながらも、なかなかそれを認めようとしないクリスの姿は、自らの正義に固執し続けるアメリカという国の姿に重なります。クリスが、テキサスで生まれ育ったカウボーイというところもミソ。アメリカの中でもかなり右な感じの氏素性は、クリスが自らの過ちを無視しようとするところに結びついているのかもしれません。

イラクの側の視点が欠けている感じは否めませんし、イラクでアメリカの若者たちが戦うことになった背景の描き方も薄い気がして残念。それでも、クリスを演じたブラッドリー・クーパーは迫真の演技だし、映画としての構成も見事で惹きこまれました。

クリスの功績を称え国を守ろうとする行為、己の命を捧げて祖国のために戦うことの尊さを描いているようでもありますし、戦争の酷さや愚かさを描いているようにも思えます。戦争を賛美しているのか、反戦なのか、いずれにしても、本作を観れば"戦争には行きたくない"、"(身近な人々を)戦争に行かせたくない"という気持ちになるのではないかと思います。

軍隊を持ち、その軍隊を海外に向かわせるということは、本作で描かれているような事態に巻き込まれていくということ。日本もそんな将来が待つ道に歩みだしてしまっていいのか...。私たちの行く末についても考えさせられる作品です。


公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/americansniper/



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ラジオの恋

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中国放送アナウンサーで、バラエティー番組などでも活躍する横山雄二が本人役で主演する作品。

広島のラジオ局でパーソナリティーを務めるベテランの横山は、ラジオに耳を傾ける人は少なくなってしまっているに違いないと思い込み、仕事へのモチベーションを失っていました。毎日、飲み歩き、二日酔いでスタジオ入りする日々を送っていたある日、"ラジオの女神"と名乗る少女、ミミと出会い...。

確かに、ラジオって、昔に比べればずっとマイナーな存在になっていると言わざるを得ないのかもしれません。世代的に受験勉強のお供はラジオの深夜放送だった自分自身を振り返っても、大人になってからグッとラジオを聴く機会は減っています。たまに、友人などが運転する車に乗った時、その人がいつも聞いている放送を何となく聞くくらい。それでも、結構、面白く聴き入ってしまったりすることもあるのですが...。

でも、ラジオにはラジオならではの魅力もあるということに改めて気付かされました。映像が見えないから、想像力が掻き立てられたりもするし、映像が伴う媒体以上に素直な気持ちを表現できたりもするし...。そして、阪神や東北での災害などを通して、災害時に頼りになる存在としても見直されていますし...。

まぁ、ありがちなストーリーって感じはします。それなりに成功を収めた仕事に対する意欲を失った人が、自分の仕事に救われている人々の存在に触れ、自分の仕事の意味を再確認して、意欲を取り戻す。そして、そこに、その人物の仕事に救われている人々のエピソードが絡められるという構成。ありきたりと言えばありきたりですが、妙に凝り過ぎたり、奇を衒った感じがなく、素直でバランスのとれた作りになっていて、変に肩ひじ張らず、笑って泣いて楽しめました。

友情出演のアンガールズがなかなかいい味出していましたし、矢沢永吉も流石に大スターの存在感を出しています。

ラジオと広島に対する愛に溢れた作品。テーマとなっている対象への愛の強さが本作の魅力を生んでいるのでしょう。とても良い気持ちで観終えることができました。地味ですが、シミジミと心に沁みる作品。時々はラジオを聞きたいと思いました。観て良かったです。


公式サイト
http://radiolovefilm.com/



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サケ・ボム

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サケボム [DVD]/濱田岳,ユージン・キム,マーレン・バーンズ
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創業300年の伝統を誇る酒蔵を継ぐことが決まった純朴な青年、ナオト。酒蔵を継ぐ前に思い切りバカなことをやってこいと休みを取らされた彼は、突然姿を消してしまった恋人、オリビアに会うため、アメリカを訪れます。ロサンゼルスに住む叔父の元を訪ねると、ナオトの従兄弟、セバスチャンに、オリビアが住んでいるはずのサンフランシスコの
にナオトを送らせることにしますが...。

イマドキ、携帯電話もPCも持っていないナオト。「田舎者だから」と彼は言いますが、そんなわけはありません。いくら何でも現代の日本で、普通に人が住んでいるような場所で、電話がないとか、PCでネットができないとかあるとは思えず...。それに、あれだけIT系ダメダメだったナオトが、特に機器の操作を教えられり練習したりした様子もないのに、数日のうちに動画の編集をバッチリ決めて動画サイトにアップしてしまうとかあり得ません。

ナオトが継ぐことになった酒蔵で造っているのは、"七賢"ですが、これは、山梨県北杜市にある山梨銘醸株式会社です。確かに、"田舎"ではあるのでしょうけれど、電話もないってことはありませんし、電話回線があればネットはできるわけですし、基本的に携帯電話も使えます。大体、電話がなくて酒蔵の商売ができるものではありません。もちろん、山梨銘醸株式会社もホームページがあるワケで...。
ちなみに山梨銘醸株式会社公式サイト→http://www.sake-shichiken.co.jp/index.html

何も、ナオトをここまでの"田舎者設定"にする必然性もなかったと思います。別に普通レベルに携帯もPCも使える設定で物語的にも大きな問題はなかったのではないかと思うのですが...。

描き方という点についても、いくつか難点が...。ナオトは、酒蔵を継ぐということをどう捉えているのか、日本酒に対してどんな想いを抱いているのかといった部分も曖昧なまま。オリビアへの気持ちについての処理も、オリビアの側の捉え方も描けていないし...。セバスチャンの"改心"もあまりに唐突で安易だし...。

アメリカ社会に未だに根強く残っている人種的偏見の描き方などは面白かったですし、差別されている側のそれを逆手に取るような言動も面白かったのですが...。全体としては、納得いかない部分が多かったです。


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ある結婚の風景

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5時間に及ぶテレビシリーズが再編集され、劇場公開もされていますが、本作は、テレビシリーズ版です。全部で6話の構成になっている作品ですから、長いです。そして、本作の後日譚が、以前、こちらでも感想を書いた「サラバンド」ということになります。

夫のユーハンは42歳の助教授。妻のマリアンは弁護士。結婚して10年になります。2人の娘にも恵まれ、おしどり夫婦と見られていた2人は、地元の新聞社から夫婦関係に関する取材を受けます。けれど、そこのとから、2人の関係が徐々に変化していき...。

結婚についても、愛についても、考えれば考えるほど、迷宮の奥に引き摺りこまれ、何だか分からなくなり、意味を感じられなってくるものなのかもしれません。共に生活を始めるきっかけとしては確かにあったはずの情熱も、年月の経過とともに薄らぎ、輝きに満ちていた関係もくすんでいきます。

まぁ、愛だの恋だの言っているうちは、2人の関係は特別なもので心踊らされるものなワケですが、共に生活をし、子育てなどをするようになれば、それは当たり前の日常になるのですから、いちいち心ときめかせているワケにはいきません。

穏やかな日常を維持するには、あまりあれこれ考えたり、話し合ったりしない方が良いのかもしれません。けれど、普段、いちいちその意味や在り方について考えることもなく、言葉にして表現する必要性も感じないようなごく当たり前の日々や人間関係について、考え出すととまらなくなってしまうものかもしれません。

長い時間、とことん語り合うユーハンとマリアン。この2人の長く濃い会話劇には、夫婦の総てが詰まっているようにも思われます。結婚(あるいは同棲)生活というものを経験した人なら何かしら頷ける部分があることでしょう。

永遠と感じられた熱い情熱で結ばれてもどうしようもなく嫌になることもあり、別れてしまうこともある。けれど、どんなに嫌になっても、共に生活した時間の総てが簡単に消え去るわけもありません。そして、感情だけでなく、経済的なものを含めて様々なものに縛られている関係を清算するのは大変なこと。

けれど、互いに距離を置いたことで改めて、相手の存在の意義を認識するということもあるのでしょう。別れて穏やかな表情を見せ合う2人が印象的です。まぁ、常に、結婚している相手との関係よりも、不倫相手との関係の方が甘いということかもしれませんが...。

それにしても、ユーハンとマリアンが、"愛"を2人の関係の中心に置くことができたのは、それぞれが経済的に自立しているからかもしれません。一方が他方に経済的に依存していたら、愛だけで婚姻関係を考えることはできません。結婚相手と純粋に愛で結ばれるためには、それぞれが自分の生活を成り立たせられるだけの経済的基盤が必要なのだと思います。

夫婦について、結婚について、いろいろと考えさせられる作品です。あまり真剣に観過ぎてしまうと離婚したくなる...かもしれません。本作がスエーデンで放映された時、離婚が増えたと言われていますが、それも分かる気がします。

約5時間というのは、やはり、長いですが、10年間もの間、結婚していた男女の関係の重さをを描くには必要な時間だったのでしょう。観るのも楽ではありませんが、惹きつけられる作品でした。


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夏の遊び

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夏の遊び <HDリマスター版> 【DVD】/マイ・ブリット・ニルソンほか
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バレリーナのマリーは仕事を続けるか、恋人の新聞記者ダビッドと結婚するか、悩んでいました。そんなある日、古い日記が届きます。彼女は日記を読みながら、13年前に初恋の人ヘンリックと過ごしたひと夏を思い起こします。ヘンリックとの恋は永遠にも思われていたのに、彼は、海からの飛び込みに失敗し、死んでしまいます。一方、マリーを愛する伯父のエルランドは日記を隠し、マリーにプロポーズします。日記を送りつけたのは復縁を望んだエルランドでしたが、マリーは復縁を拒否します。マリーは、舞台を待つ彼女の前に現れたダビッドに、日記を渡します。日記を読んだダビッドは彼女にキスし、舞台へと送り出します。

現在のマリーは、バレリーナとしての衰えや老いを感じるようになる時期。好きでその道一筋で生きてきたマリーにとって、バレリーナとしての日々に終りが来ることを実感せざるを得ない状況というのは、なかなかにキツイものでしょう。

そんなマリーにかつての情熱を思い起こさせる日記。若かりし頃の恋は、夏の光に輝いています。ほんのひと時の喜びと、終盤の黄昏。その長い時期が訪れようとしている時、どうすべきなのか、何ができるのか...。

マリーの過去の恋と現在の恋が並行して描かれます。ヘンリックとの恋を実らせることを願い、バレエへの情熱も強かった若き日と、ダビッドとの恋にものめり込めず、バレエについても限界を感じている現在。両方を手に入れかけていた過去とどちらも選べずにいる現在。その落差は、ある程度の年月を生きた人であれば、誰しも感じるものでしょう。

そして、過去と現在のマリーの恋に、エルランドのマリーの母への叶わなかった想い、エルランドのマリーへの想いが重ねられます。エルランドがマリーに、彼女の母への想いを語る場面がありますが、エルランドのマリーへの想いと、マリーの若き日の自身への想いが重なります。

若き日のロマンスにも、ほんのりと死の影が漂います。老いは、ある日突然、全く別の世界から舞い降りてくるものではなく、若さの中にもひっそりと身を潜めていて、時の経過とともに徐々に表面にあらわれてくるもの。生まれ出た時から、その中でひっそりと死の準備が始められるのは、生きとし生けるものの宿命なのでしょう。

"コッペリア"のコッペリウスの扮装をしたバレエ教師のセリフは、やや"演説"的になってしまっていますが、現在のマリーとこのバレエ教師の関係は、若きマリーとエルランドの姿に重なります。

過去に封印をしていたマリーは、行く先に不安を抱いていましたが、過去を解き放ち、受け入れたことで、この先に待ち受ける日々への覚悟ができたのでしょう。少々、安易に流れてしまった感じはしますが、希望が射す心地よいラストでした。

ロマンスとしては単純だし、含蓄のあるバレエ教師の言葉も物語全体の中では上滑りしてしまっている感じもありますが、"若さと老い"、"生と死"、"光と影"の対比や、いくつかのロマンスが重ねられることで物語に深みが加えられています。

ベルイマン作品にありがちな小難しさがなく、肩の力を抜いて楽しめる作品です。


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