TOKYO TRIBE/トーキョー・トライブ

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TOKYO TRIBE/トーキョー・トライブ [DVD]/鈴木亮平,YOUNG DAIS,清野菜名
¥5,184
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井上三太のコミック「TOKYO TRIBE2」を実写映画化した作品。原作は未読です。

近未来の"トーキョー"には様々なトライブ(族)が存在し、そこに住む若者たちは、街を暴力で支配しながらお互いの縄張りを守っていました。トライブ間では、日常的に暴動や乱闘が繰り広げられていましたが、互いの力関係は拮抗していて、絶妙なバランスで保たれていました。けれど、ある事件をきっかけに、均衡が崩れ、"ブクロWU-RONZ"のヘッド、メラと"ムサシノSARU"に所属する海(かい)の2人を取り巻く"トーキョー"中のトライブを巻き込んだ、激しく壮絶なバトルが勃発し...。

"近未来のトーキョー"の造形は、どこかで見た感じがします。"暴力が支配する近未来"なんて、今まで散々どこかで語られてきた陳腐なものですが、ほぼ全編、ラップで物語られるという点は、斬新と言えば斬新。まぁ、ミュージカルの一つの形式と言えるのかもしれませんが...。海を演じたYOUNG DAISは、本職のヒップポップミュージシャンだそうですが、流石に、このラップのセリフが決まっています。ただ、他の出演陣とのラップの力量の差が目立ってしまっていて気になりました。こうした形にするのなら、ラップの力量は揃えるべきだったと思います。あるいは、ナレーションだけをラップにするとか...。

で、"役者"としては、YOUNG DAIの存在感は薄かったです。まぁ、俳優陣に豪華メンバーが揃えられている以上、仕方のないことなのかもしれませんが、やはり、"餅は餅屋"ということなのでしょう。ラップについても、演技についても、個々の力量の差が悪い形で目立ってしまっていたと思います。

そして、どこか、"若者ぶった"感が漂い、無理して若さを出そうとしている印象を受けてしまいます。そもそも、少子化が問題になっている日本の近未来は、若者よりも、年寄りが幅を利かせる世界になっているイメージがあり、本作の近未来の"トーキョー"にリアルさが感じられないのかもしれません。そえに、イマドキの若者については、どちらかというと"草食"なイメージも強く、近未来の若者についても、どちらかというと、エロと暴力より、オタクでひきこもりなイメージの方がぴったりくるような...。

原作があっての映画のようですが、特にストーリーらしいストーリーがあるわけではありません。出演陣も豪華ですが、個々のキャラクターの造形もしっかりしていないので、それぞれがそれぞれに熱演しているにも拘わらず、その豪華さが却って無駄な感じになってしまっています。個々のシーンの繋がりも曖昧で、描きたい場面をいろいろと撮ってみて何となく繋げてみましたという感じで、特に訴えてくるものがあるわけでもありません。

それでも、勢いと熱さだけは感じられますし、この滅茶苦茶な感じは好きな人にとってはたまらなくクセになるものなのかもしれません。そして、勢いと熱さだけで2時間近くを持たせたのだから、ある意味、それはそれで凄いということになるのかもしれません。まぁ、少々、胸やけやら胃もたれやらの気分になってしまいましたが...。


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フォンターナ広場 イタリアの陰謀

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フォンターナ広場 イタリアの陰謀 [DVD]/ヴァレリオ・マスタンドレア,ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ,ミケーラ・チェスコン
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1969年12月12日16時37分。イタリア、ミラノ。フォンターナ広場に面した全国農業銀行が爆破されます。死者17人、負傷者88人。ミラノ警察は左翼の犯行を疑い、アナキストたちを次々に連行。彼らのリーダー的存在となっていた鉄道員、ピネッリも容疑者とされます。けれど、現場の指揮をとるカラブレージ警視は、ピネッリの人間性を信頼し、真犯人が別にいるのではないかと考えていました。そんな中、ピネッリが、取調中に転落死してしまいます。自殺か、事故死か、殺人か。カラブレージ警視は裁判でその矢面に立たされながらも、次第に事件の真相に近づいていきますが...。

多くの死傷者を出しながら未解決のままになっているフォンターナ広場爆破事件。容疑者とされ、取り調べを受けていた人物が警察で亡くなったとなれば、その背景について様々な憶測が行きかうのも無理はありません。この事件については、さらに、カラブレージ警視が、1972年、ミラノの自宅前で銃撃され、死亡。共産党員で資産家のフェルトリネッリも、同じ1972年、高圧線の鉄塔の下で爆死。事件当時、外務大臣、後に首相になったモロは、1978年、「赤い旅団」に誘拐され、ローマ市内で死体となって発見されています(この事件をテーマにした映画が「夜よ、こんにちは」)。これが、互いに関連性のない別々の事件とは考えにくく、背景に"政治の闇"があることが疑われるのも当然のことと言えるでしょう。

取り調べを受けていたピネッリの後にも何人かの容疑者が浮かんだものの、結局、全員、無罪とされ、誰が犯人だか明らかにされないままになっている事件。国家権力が隠ぺいに関わった事件の真相をそう簡単に解明できるわけもなく、これも当然のことながら、本作で事件の真実が示されているわけではありません。

事件の背景にあったものが、丁寧に示され、事件を取り巻く当時の社会の構造のようなものを見せてくれています。当時、起こったことをできるだけバランスよく、主観を交えずに並べ、観る者に歴史を考える視点を提供する...といったところでしょうか。

とはいえ、登場人物たちが実在の人物で実名で出てきてはいるものの、ドキュメンタリーではなく、フィクション。ピネッリとカラブレージ警視、それぞれの妻が魅力的に描かれていて印象的。2組の夫婦の在り方と2人の妻がそれぞれに夫を支える姿が胸に沁みました。"歴史のお勉強"的な面が表には出ていますが、この人間ドラマ的な部分も興味深かったです。

登場人物も多いし、いろいろな立場の人が、かなりのスピードで入れ代わり立ち代わり出てくるので、誰が誰なのか把握するのは、結構、大変でしたが、公式サイトに登場人物の一覧が出ていて、助かりました。普通に考えて、公式サイトにそうしたものを掲載する必要のある作品...ってことなんでしょう。主要な登場人物だけで10人位はいるので、しっかり観ていないと置いてきぼりです。(これは、私が日本人だからからなのかもしれませんが...。)まぁ、人物の横に字幕が入れられていたり、説明的セリフが散りばめられたりなど、親切設計にはなっていますが、ちょっとでも気を抜くと訳が分からなくなる作品です。そういう意味では、映画館で観るより、時々、戻ったり、止めたりしながら観られるDVDでの鑑賞に向いた作品ということになるのでしょう。

ちょっと予習をしたうえでのDVD鑑賞がお勧め。


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アクト・オブ・キリング

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アクト・オブ・キリング オリジナル全長版 2枚組(本編1枚+特典DVD) 日本語字幕付き [B.../出演者不明


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1965年9月30日、インドネシアで発生した"9・30事件"後の大虐殺。その虐殺の実行者たちに自らの殺人を再現させ、その胸中と虐殺の実態に迫っていきます。最初は、自慢げに自らの手柄を語っていた虐殺の実行者たちの心情が、過去を演じることで徐々に演技を通して徐々に変化していく様子を追ったドキュメンタリー。

得意気に"共産主事者たちを始末した"経緯を語る人々も、決して悪人ではありません。ごく普通の男たち。子どもや動物に対して優しい心遣いを見せてもいます。何人も殺していた当時でさえも、良き夫であり、良き父でもあったことでしょう。けれど、そんな彼らも殺戮者になりました。いえ、むしろ、良き夫であり父であったからこそ、"大切な家族"を脅かす(と考えられる)者に対して冷酷になれるのかもしれません。そして、"敵"を殺すなら、それは正義。平時に街で人を殺せば殺人ですが、戦場で敵を殺せば、手柄となり、名誉となるわけです。本作に登場する"殺戮者"が自慢気なのも当然と言えば言えるわけで...。

もっとも、少なくとも、第三者的視点に立てば、とても、彼らが行ったことが無謬の正義とは言えません。いくら何でもそんな理由で殺すなんて、しかも、それが正当化されるどころか、手柄とされているなんて...という部分も多く、同時に、彼らの罪悪感や後悔のなさに驚かされます。本作は、そんな"殺戮者たち"の"罪"に目が向けられ、徐々に、"殺戮者"が自身の"罪"に目を向けていきます。その過程は、人類の歴史の中に果てしなく繰り返されてきた殺戮に対処する一つの効果的な方法のようにも感じられます。ただ、そこにあの"犠牲となった共産主義者"のセリフは何だったのか...。最後でちゃぶ台をひっくり返されたような印象を受けてしまいました。

まぁ、アメリカの支持を受けて成立したスハルト政権下で起きた虐殺で、スハルト政権が行った共産主事者たちに対する徹底的な弾圧は、アメリカの意向に沿うものでもありました。その虐殺という行為は、アメリカの政策に基づくものであったことを考えると、"殺戮者たち"が社会的に評価を得ているのももっともなのでしょうし、彼らの行為を一方的に糾弾する形にならないよう何らかの逃げ道を用意せざるを得なかったのかもしれませんが...。

さらに、本作を撮った側が、同じ罪を抱えながら、自身の罪には真摯に向き合っているように思えないのは気になりました。作中で、アメリカ大陸を手に入れるために、欧州の人々が先住民族を駆逐したことに触れられていますが、アメリカでは、"凶暴なインディアンたち"を"退治"する勇敢な白人の英雄たちが数多く描かれてきました。本作と違い実際に殺戮を行ってはいない者たちが演じているので、その点が違うワケですが、演じる者たちの中にも悔恨の情など全くなかったことでしょう。

現在でも、世界に目を向ければ、"多くの敵を殺した英雄"が、新たに生まれています。フランスでテロを起こした犯人も、"イスラム国の英雄"となるのでしょう。自分たちが神と信じる存在に反した生き方をする"敵"に適切な罰を与えたのですから。けれど、同時に、テロの犯人を殺した者も手柄を立てとされているのでしょう。多分、殺し合いが終わらないのは、両方に正義があるから。私利私欲のために戦う場合、自分の命を犠牲にしては目的を得られないわけですから、命の遣り取りをするところまでは行きにくいのでしょうけれど、正義のために戦うとなると双方が命懸けになるから始末におえません。

現在の私たちの視点から見れば、とても、彼らの行いが正義であるとは言い切れませんが、当時の彼らには、確かに"正義"があったのだと思います。その彼らの中にあった"正義"やそれを支えたアメリカなどの存在と現在の彼らを取り巻く状況の関係にもっと言及して欲しかった気がします。その部分が薄かったため、製作者側が年老いた"英雄たち"を苛めているような雰囲気も感じられ、その辺りがモヤモヤしてしまいました。

描写もダラダラして、121分が長く感じられました。もっとコンパクトに纏めるべき内容だったと思います。題材が興味深かっただけに残念な感じがしました。


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BAD FILM

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BAD FILM [DVD]/東京ガガガ
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香港が中国に返還された1997年。東京を舞台に、対立する在日外国人排斥を掲げる日本人グループと、高円寺を縄張りとする中国人グループ。その抗争に明け暮れる若者たちの姿が描かれます。

2時間半を超える長さとその長い時間、最初から最後まで衰えることのないエネルギーには圧倒されました。出演者たちの尽きぬエネルギーに溢れる映像は圧巻です。

今から観ると懐かしさが感じられる1990年代後半の東京。渋谷のスクランブル交差点近くの映像に今は亡き"東海銀行"の看板などが大きく映っていました。この映像が撮られてから20年足らず。その間で変わったものと変わらないもの...。当時の高円寺、新宿、渋谷といった街に懐かしさを感じる人にとっては、この舞台となっている街の映像を観られるだけでも嬉しい作品だと思います。

新宿も、渋谷も、これまで、様々な形で熱気に包まれてきた街です。本作の約30年前の1968年には、"新宿騒乱"。10月21日の国際反戦デーにあたるその日、新左翼の学生が駅構内に突入して破壊活動を行っています。その翌年には新宿駅西口広場での"フォークソング集会"。最近では、渋谷駅周辺で、サッカーW杯など大きなスポーツイベントに関連する騒ぎなどがニュースになったりしていますが、まぁ、過去の反戦に関連した熱気が本作の中で再現されているような面もあり、その点も懐かしさを呼び起こすのかもしれません。

懐かしさだけでなく、在日外国人問題とか、同性愛とか、今の社会問題にもつながる部分もあります。本作で描かれるvs中国人の言動は、今の兵とスピーチに繋がっていますし...。いつの時代にも、どこの国にもあるマイノリティを排除しようとする動き。対象が、外国人だったり、異民族だったり、性的なマイノリティだったり、病者だったり...。私たちは、意外に、自分自身が差別する側になる可能性についても差別される側にもなる可能性についても無視しがちですが、本当はちょっとしたことから対立が生まれ、排斥されたりされたりすることになるのだと示しているような作品でもあります。

懐かしく、それでいて、実に現代的な問題を描いている作品になっていると思います。

で、映画作品として面白かったかというと、その点については微妙です。本作を覆う"過剰さ"を処理しきれていないのだろうと思います。この"過剰さ"を巧く処理できれば、それが、作品のエネルギーとなり、観る者の心を揺さぶっていくことになるのでしょうけれど、その点については今一歩な感じがしました。

本作だけで観てどうこうというよりは、その後の「愛のむきだし」といった作品に繋がっていくものとして観て興味を惹かれる作品と言えるかもしれません。


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MUD [マッド]

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MUD -マッド- [DVD]/マシュー・マコノヒー,リース・ウィザースプーン,タイ・シェリダン
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アメリカ南部、ミシシッピ川中州にある小さな島。14歳の少年エリスとネックボーンは、その島に潜伏する奇妙な男マッドに出会います。マッドは2人に嘘か本当か、テキサスで人を殺して賞金稼ぎに追われている身であることを明かし、町で自分を待つ恋人ジェニパーに会うため助けを借りたいと話します。興味をもった少年たちは、マッドに協力することにしますが...。

悩みを抱えた少年が、自分たちとは違う世界からやってきた大人の男と出会い、彼との触れ合いと別れを通して成長する...というのは、これまでに幾度となく語られ、描かれてきた物語。まぁ、基本的に、面白くなるストーリーだと思います。で、本作も決してつまらなくはありません。というより、なかなか面白かったです。

子どもの目から見た男女の関係、夫婦の葛藤といったものが丁寧に描かれ、もう子どもではいらず、大人にもなり切れない少年たちの揺れる心が伝わってきました。

マッドと2人の少年が何かを得ていくのではなく、何かを諦めたり捨てたりする物語になっていて、その中で新しい人生を切り開いたり成長したりしています。そして、そこには、いろいろな"愛"が描かれるのですが、そのどれもが綺麗な形には収まりません。その辺りの展開には、それなりにオリジナリティが感じられて悪くなかったです。愛を信じたいお年頃の子どもたちが、愛もそうそう純粋なものではなく、愛によって傷ついたり裏切られたりすることもあるのだと知る。けれど、そんな中で、自分なりの愛を見つけていくことで、彼らは大人への階段を上っていきます。

演技陣も良かったです。マッドを演じたマシュー・マコノヒーは流石の演技力で存在感を示していましたし、エリスを演じたタイ・シェリダン、ネックボーンを演じたジェイコブズ・ロフランドの2人の少年も印象的でした。

それなのに、今一つ作品としてのインパクトに欠けるのは何故なのか...。

マッドとジュニパーの関係の描かれ方は中途半端だし、2人が最後に見つめ合うシーンも、命懸けの恋をした2人の別れとしてはあっさりしすぎた感じがしました。

マッドが、2人の少年を成長させる役割を担っている割にはお子ちゃま過ぎたというのもあると思います。そして、最後の部分のグダグダ。大きな事件がおころわけでもなく淡々とマッドと少年たちの触れ合いを描いていく辺りは、地味だけれど、それなりに心動かされるものがあったのですが、ヘビに噛まれたエリスを病院に運び込んで...とか、銃撃戦とか、何だか、ご都合主義の展開も目につくし、無理矢理、ストーリーを盛り上げて感動を煽ろうとしているようで、取ってつけた感が引っかかりました。ラストにも違和感が残りましたし...。

最後での失速が惜しい残念な作品でした。


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さよなら歌舞伎町

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一流ホテル勤めと周囲に偽りラブホテルの店長をしている徹(染谷将太)。ミュージシャンを夢見る恋人、沙耶(前田敦子)と同居していましたが、倦怠期になりかけていました。ホテルには、時効間近の池沢との潜伏生活を支えるために清掃の仕事をしている鈴木里美も働いていました。そこには、同棲する恋人のチョンスに内緒でデリヘル嬢をやっているヘナ、家出している福本雛子と雛子を風俗の世界に引っ張り込もうとしているスカウトマンの早瀬など、様々な客がやってきます。ある日、ホテルでAVのロケが行われますが、その主演女優は徹の妹でした。そんな中、そこに徹がいるなどとは夢にも思わない沙耶が、彼女をデビューさせてくれるというプロデューサーとともにやってきます。さらに、不倫中の刑事のカップルがやってきて里美に目を留め...。

一応、徹と沙耶が中心になっているようなのですが、ダルそうな雰囲気を程よく身に纏わせた徹はともかく、沙耶は登場するシーンも少なく、影が薄まってしまっています。分量的にはヘナの出番が多く、存在感としては里美と池沢が一番だったかと...。そして、二番手として刑事カップルといったところ。この2組を中心に据えた物語にしていたら、もっと面白くなったのではないでしょうか。

やはり、この辺りは、役者としての力の差でしょうか。徹と里美の遣り取りなど、何気ないところで笑わせてくれたりしましたし、刑事カップルも独特な感じにいい味出していました。群像劇だと、出演陣の技量を揃えるか、その差に応じた構成を考えないと、力量の差が目立ってしまうのでしょう。このバランスの悪さは気になります。

ヘナとチョンス、雛子と早瀬は、"薄幸だけれど健気に頑張る"可哀想な女子とそんな女子を受け入れ愛する男という図式があまりに単純で、物語としての魅力に欠ける感じがしました。沙耶についても、ギターを爪弾き歌う姿にあまり魅力が感じられず、デビュー云々と言われても何だかリアリティが感じられません。

まぁ、どこか非現実的で、薄っぺらなところは、歌舞伎町らしさでもあるのかもしれませんが...。ただ、もっと猥雑な感じは出して欲しかったです。怪しげで危険な香りが漂う歌舞伎町のイメージからすると、あまりにあっさり味になり過ぎている印象を受けます。

そして、徹は、この先、新たな人生を切り開いていこうとするのなら、この決着のつけ方はいろいろな意味であまりに無責任。ただ逃げ出しているだけのように見えてしまいます。クライマックスのキレ方も何だか中途半端だし...。まぁ、そこが振り切れていないから、スッキリと再出発という流れになりにくいのかもしれません。その徹に投げかけられる沙耶のセリフは、あまりに陳腐だし...。

それぞれのカップルの描き方のバランスの悪さもあるのだと思いますが、全体に、今一つ盛り上がりに欠けます。ところどころ冗長なシーンもあり、135分という上映時間以上に長い感じがしてしまいました。無駄に長いシーン(AVの撮影シーンとか、ヘナの雨宮相手のお仕事シーンとか、ヘナとチョンスの2人での入浴シーンとか)をもっとコンパクトにすれば、テンポも良くなり、物語に入り込みやすくなったのではないかと思います。

ラブホテルという場所の怪しさやそんな怪しげな世界に絡め取られていく人々の姿を、単に可哀想で健気な人々と捉えるのではなく、哀しさの中にもある喜びや、"可哀想で健気"な中にもある逞しさや狡さも描けていたら、もっと面白くなり得たのではないかと思うのですが...。残念です。


公式サイト
http://www.sayonara-kabukicho.com/



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中島みゆき 縁会 2012~3 劇場版

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2012年10月25日から2013年5月23日にかけて全国13会場で29公演行われたコンサートの映像を劇場版として編集した作品。

セットリストは以下の通り
 1. 空と君のあいだに
 2. あした
 3. 最後の女神
 4. 化粧
 5 過ぎゆく夏
 6. 縁
 7. 愛だけを残せ
 8. 風の笛
 9. 常夜灯
10. 悲しいことはいつもある
11. 地上の星
12. NIGHT WING
13. 泣きたい夜に
14. 時代
15. 倒木の敗者復活戦
16. 世情
17. 月はそこにいる
18. 恩知らず
19. パラダイス・カフェ
20. ヘッドライト・テールライト

中島みゆきの力を改めて感じさせられる101分でした。

まるで自分自身の心の中に潜んでいたものを探り当てて掬い取ってくれたような歌詞。胸に染み入るようなメロディ。そして、曲に合わせて変わる音質が変わる艶と張りのある声。まさに女王。後方には大勢のバックミュージシャン、前方には満員の観客。大勢の人をたった1人で引っ張っていくために、どれだけのエネルギーが必要なことか!!!その存在感に圧倒されました。打ちのめされるような凄さ。舞台の上で履いている靴にも驚きかされました。結構な高さのピンヒールです。御年62歳でこのヒールでこの声を出していたとは!!!こんなにも力強く、大勢の人のこころの貫く音楽を生み出すためにどれだけのものを賭けてきたのか。本来、純粋に歌を楽しむべきところ余計なこととは思いながら、そんなことが頭をよぎってしまいました。

デビューが1975年。初めてオリコンチャート1位になったのが、1977年の「わかれうた」。その後、1981年に「悪女」、1994年に「空と君のあいだに/ファイト!」、1995年に「旅人のうた」、2003年に「地上の星/ヘッドライト・テールライト」と4つの年代にわたってシングルチャート1位を獲得した唯一のソロ・アーティストとなっているのも有名な話。2014年にはももいろクローバーZに提供した「泣いてもいいんだよ」がオリコン1位を獲得。未だにヒット曲を生み出し続けている息の長さを支えてきたものを伝えてくれる作品にもなっています。

一番、嬉しかったのは、「世情」。コンサートで歌われたのは27年振りとのことでしたが、それを聴けたのは本当に良かったです。最初に聞いたのは、1981年に武田鉄也が主演したTV番組「3年B組金八先生」で挿入歌として使われた時でした。フルコーラスで流されていてとても印象的でした。

他にもっと聴きたい曲もあったりしましたが、それを言い出したらきりのない名曲揃いの中島みゆきですからそこは我慢することにします。お勧めです。結局、帰ってから、amazonでポチッとしてしまいました。


公式サイト
http://www.enkai-movie.jp/


中島みゆき「縁会」2012~3 (DVD)/中島みゆき
¥7,560
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渇き。

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渇き。 プレミアム・エディション(2枚組+サントラCD付)[数量限定] [DVD]/役所広司,小松菜奈,妻夫木聡
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深町秋生の「果てしなき渇き」を映画化した作品。原作は未読です。

元刑事でロクデナシな藤島昭和に離婚した元妻から連絡が入ります。成績優秀、容姿端麗で、学園のカリスマでもある女子高生の娘、加奈子が失踪したとのこと。藤島が加奈子をどこかに隠しているのではないかと疑っている様子です。藤島は、加奈子の行方を追うことになりますが、その過程で浮かび上がってくる加奈子の姿は、それまで藤島が想像したこともないようなもので...。

流石に役所広司です。本当に徹頭徹尾ロクデナシ。加奈子の"裏の顔"が次々と明らかになっていく過程を見せられても、まぁ、この父の娘ならさもあなんと、当然のことのように思えてしまって、全然、意外な感じがしません。まぁ、成績が良かったとか、美人だったとか言われても、イマドキ、成績優秀と容姿端麗が性格の良さと結びつかないからといって、それ程、意外性はないでしょうし...。

そして、藤島だけでなく、登場人物のかなりの人々がロクデナシ。感情のままに喚き散らして、八つ当たりして、殴って、刺して、撃って...。本当に手の付けようがありません。獣同士の仁義なき喧嘩という感じ。ただただ怒りをぶつけるためだけに相手を痛めつけている感じで、誰もが何も解決しようとしないし、解決したいとも思っていない感じがします。そして、それぞれの"狂気"があまりに没個性で、同じような"狂気"が重ねられていくので、とてもくどい感じがします。まぁ、そんな中、ひたすら楽しそうな浅井役の妻夫木聡は印象的でしたが...。

映画も、ただ暴力シーンをいろいろと撮るためだけに作られているような感じがして、それ以外に何をしたかったのかが分かりませんでした。やたらと暴力的なのですが、そこに関わる人たちの心の痛みのようなものが全然感じられません。

結局は似た者親子な藤島と加奈子。"好きだから壊したくなる"、"愛しているから殺したくなる"というその歪んだ愛情と、その異常性をコントロールできずもがき苦しむ姿に焦点を当て、全体に出血量と暴力の描写をぐっと抑えたら、もっと、2人の心の痛みが伝わってくる作品になったと思うのですが、根っから異常な人たちがその異常性に相応しい行動をしているだけな感じになってしまったのは、何とも残念でした。


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闇のあとの光

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闇のあとの光 [DVD]/アドルフォ・ヒメネス・カストロ,ナタリア・アセベド,ルートゥ・レイガダス
¥4,860
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メキシコのとある村。フアンとナタリア夫妻は、森の中の一軒家で幼い息子と娘とともに生活していました。使用人や犬たちに囲まれ、幸せに生活していた彼らでしたが...。

ストーリーは一応あるようですが、物語を描くことを重視した作品ではありません。時系列が前後しながらストーリーが進行しますが、きちんと登場人物の名前が呼ばれるので、一応、ストーリーの流れを追うことはできます。ただ、時系列に沿って描かない必要性が感じられないし、ところどころに挟み込まれる意味ありげだけれど、ストーリーにはあまり絡んでこないシーンが散りばめられ、作品の焦点をぼかしてしまっている感じがします。

意味ありげなシーンや、いろいろとテクニックを使ってみた的な映像が登場しますが、それぞれが作品全体の物語の中で、どのような意味を持つのか、他の場面とどのように関連するのかは、よく分からないままにラストを迎えてしまいます。何だか、ストーリーの描き方も、全体の構成の仕方も、難解で意味ありげにするための技巧でしかないような...。

森の風景とか、水たまりとか波の描写とか、印象的な映像も織り込まれていて、その部分は力があり、心に残りました。特に冒頭の描写は、そこだけでも映画館の大きなスクリーンで観たいと思える程。でも、それだけ...でした...。これなら、わざわざ"映画"にする必要なはなかったのではないかと...。"映画"にするなら、ストーリーを重視する方向か、ストーリーは全く無視でひたすら映像を重視する方向か、どちらかにするべきではなかったかと...。全体に、独りよがりな感じがあり、中途半端な作品になってしまった感じがします。

タイトルは"闇のあとの光"が、"闇"も"光"も十分に描けておらず、"赤い物体"がやってきた目的やその存在が意味するところもよく分かりません。まぁ、"赤い物体"については、その造形がいかにも悪魔な感じで、分かりやすくはあるのですが、その出現によって何がどう悪化したのかは???。そして、この部分の描写はあまりに漫画的で、不安感が高まったり、怖さが感じられたりという効果は薄かったような気がします。天候の変化などをとらえた映像で、そうした"悪"の存在を示した方が、余程、効果的だったのではないかと...。

"アート"であろうとして"映画"になり損ねた作品...といったところでしょうか...。


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早熟のアイオワ

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早熟のアイオワ DVD/ジェニファー・ローレンス,クロエ・グレース・モレッツ,セルマ・ブレア
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1976年、アイオワ州、カウンシルブラフス。14歳のアグネスは、売春をしている母親のサラ(セルマ・ブレア)、幼い妹、ビーとキャミーの4人で、夜ごと、ポーカー賭博やセックスを目的にドラッグディーラーたちが集まってくる"ポーカーハウス"と呼ばれる家に住んでいました。(ジェニファー・ローレンス)キャミー(クロエ・グレース・モレッツ)アグネスは、そんな悲惨な環境の中で、勉強やバスケットボールに励みながら、バイトもこなし、必死に妹たちを護ってきました。けれど、サラは、そんなアグネスに売春を迫るようになります。さらに、アグネスが多少なりとも自分への愛情を感じていた、サラの恋人であり、客引きもしていたデュバルからは...。

作品の冒頭にも"実話に基づいている"と示されますが、本作を監督したロリ・ペティの自伝的作品とのこと。

なかなかに悲惨な環境に置かれた子どもたちです。こんな環境の中で、アグネスが文武両道に秀でた優等生に育ったのは何故か、よく分かりませんが、とてつもなく天才だったっていうことなのでしょうか...。まぁ、田舎の小さな町の中のことだからここまでできたということなのかもしれませんが、その辺りの背景はよく分かりませんでした。

そして、小さな田舎町であれば、アグネスが置かれた状況について周囲も理解していたのではないかと思うのですが、そんな子どもたちに差し伸べられる福祉の手などはなかったのでしょうか...。新聞社でアルバイトをしていたアグネスですから、社会的な制度を活用することを考えても良かったような気がするのですが...。それとも、そんなものに頼らず自分の力で何とかしたいと思う気持ちが強かったということなのでしょうか...。特に新聞社の社長(?)は、彼女を何とかすることにもっと力を尽くしても良かったのではないかと...。

子どもに酒を勧めたり、子どもがタバコを買い、それをすぐに吸い出しても誰も何も言わなかったり、車を運転してもOK(じゃないのかもしれませんが...)だったりとか、そうした部分を観れば、そんな子どもたちが当たり前に存在する地域...ってことなのかもしれませんが...。

ある1日を描いているようですが、後半の時間の流れは、随分ゆっくりだったような気がします。アグネスが試合の前に1回、家に戻ったのはまだ日の高い頃。その後、部屋の扉を開け、リビングの方に出で、しばらくしてデュバルと話したりした時に、「もう試合に行かないといけない」というセリフがあります。で、その後、警察車両が来た時には、外が完全に暗くなっていました。そのあとデュバルとの"事件"があり、サラとの遣り取りがあり、デュバルとサラに対峙する場面があり、その後に、車を飛ばしてバスケの試合の会場に行くと、まだ試合の途中なのですが...。バスケの試合って、そんなに夜遅く始まるものなのでしょうか。14歳の子どもが選手として参加するような試合なのに...。まぁ、そんなものなのであれば、その時間の経過の仕方に文句言っても仕方ないのですが...。

そして、家に戻ってビーを外に出したアグネスが、部屋の扉を開け、リビングの方に出たのは何故か...。本当なら、部屋で過ごすか、すぐ試合会場に向かうかすべきだったのではないかと...。このアグネスの行動は謎でした。

物語的には、いろいろと惨いことが起こっている割には平板な感じがしました。描き方によっては、もっと、印象に残る物語になり得た内容だと思うのですが...。冗長に感じられる部分も多く、同じようなセリフやナレーションが繰り返されてくどい感じがする部分があったり、そんなところもマイナス要素になってしまったのかもしれません。

ただ、演技陣は見事。主演のジェニファー・ローレンスが、懸命に2人の妹を護りつつ、勉強でもスポーツでも成果を上げ、バイトもこなすしっかり者を自然に演じながらも、まだまだ14歳の子どもという面も見せる辺りが見事です。そして、ジェニファー・ローレンス同様、本作出演後、華々しい活躍をしているキャミーを演じたクロエ・グレースも実に可愛らしく、それでいながら、アグネスの妹らしい聡明さも覗かせて良かったです。ビーを演じたソフィア・ベアリーもちょっとませた感じの少女を好演しています。さらに、どこまでいってもとことんダメダメな母親を見事に存在させたサラ役のセルマ・ブレアも印象的。出演陣の演技力で魅せてくれる作品です。

ラストに流れるマーヴィン・ゲイ&タミー・テレルの"Ain't No Mountain High Enough"が胸に沁みました。その歌詞に、アグネスは、自分の人生を重ねたのでしょう。きっと、高い山も深い谷も越え、広い川も渡っていくであろうアグネスたちの将来に希望が感じられるラストでした。その後、字幕で、アグネスがいろいろなものを乗り越えたことは示されますが、2人の妹たちの行く末が気になりました。


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