昨日の日本映画編に引き続き、今日は、外国映画編です。

【作品賞】(3本以上10本まで)
 「世界の果ての通学路」   4点
 「誰よりも狙われた男」   4点
 「チョコレートドーナツ」   4点
 「フランキー&アリス」   4点
 「フルートベール駅で」   4点
 「聖者たちの食卓」   3点
 「リアリティのダンス」   3点
 「ショート・ターム」   2点
 「ジャージー・ボーイズ」   1点
 「大いなる沈黙へ グランド・シャルトルーズ修道院」   1点
【コメント】
「世界の果ての通学路」は困難をおして学校へ行く子どもたちの姿に未来への希望が感じられました。「誰よりも狙われた男」は作品としての面白さはもちろん、主演のフィリップ・シーモア・ホフマンの存在感が見事でした。「チョコレートドーナツ」は新しい家族の可能性を見せてくれましたし、主要人物3人の交流には心温まるものがありました。「フランキー&アリス」は、ハル・ベリーの存在感が出色。「フルートベール駅で」は大きな悲劇を描きながらも仄かな希望を感じさせてくれます。「聖者たちの食卓」は、その物量とそれが維持されている年月の長さに圧倒されました。「リアリティのダンス」は瑞々しさが印象的。「ショート・ターム」は子どもたちと施設のスタッフ双方の痛みを描きながら下手なお涙ちょうだいにせず、なおかつ希望を持たせていて見応えありました。「ジャージー・ボーイズ」は数々の名曲に彩られた優れたエンターテイメント作品でした。「大いなる沈黙へ グランド・シャルトルーズ修道院」は、撮影が行われたこと自体が奇跡といって良い作品。静謐で重厚な映像も印象的でした。ギリギリで選外となったのは、思春期の危うさを見事に表現した「17歳」、親子の交流、家族の再生がシミジミと描かれる「ネブラスカ 2つの心をつなぐ旅」、"箱入り主婦"の成長が清々しい「マダム・イン・ニューヨーク」といったところ。
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【監督賞】              作品名
  [ライアン・クーグラー] (「フルートベール駅で」)
【コメント】
 処女作でこの完成度は見事だと思います。悲劇を描き、安易に希望を示すことは避けながら、どこか人間への温かい眼差しが感じられて印象的でした。今後の作品にも期待したいです。
【主演男優賞】
  [マシュー・マコノヒー] (「ダラス・バイヤーズクラブ」)
【コメント】
 鬼気迫る名演だったと思います。病気が進行していく中で、必死に戦う姿が印象的でした。
【主演女優賞】
  [ハル・ベリー] (「フランキー&アリス」)
【コメント】
 同じ人間の中にありながら、全く違う3つの人格をリアルに表現して印象的でした。
【助演男優賞】
  [ステラン・スカルスガルド] (「フランキー&アリス」)
【コメント】
 力の入り過ぎない安定感のある演技で、ハル・ベリーの名演を引き立てていたと思います。
【助演女優賞】
  [ジューン・スキップ] (「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」)
【コメント】
  頑固で無茶な夫に負けず劣らずの破天荒振りを見せて、長年連れ添った夫婦らではの味わいを出していました。
【ニューフェイスブレイク賞】
  [アイザック・レイヴァ] (「チョコレートドーナツ」)
【コメント】
 ダウン症の主人公を単に当事者だからという以上に見事に演じ切っていたと思います。演じられる役柄の範囲はある程度限られてしまうのかもしれませんが、今後、他の作品での活躍も期待したいです。
【音楽賞】
 「黄金のメロディ~マッスル・ショールズ~
【コメント】
 音楽をテーマにした映画だからということもあるのですが、その曲が誕生した背景を描きつつ、名曲の数々が流され、音楽の魅力をたっぷり味わうことができました。
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【私が選ぶメモリアル賞】
 [フィリップ・シーモア・ホフマン] (「誰よりも狙われた男」)
【コメント】
 亡くなったというニュースを聞いた時は、とてもショックを受けました。私にとって、「この人が出演しているなら、それだけで劇場に観に行くことにする」と決めている俳優の一人でした。この先、新たな出演作が製作されることはないということが、本当に残念です。
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 この内容(以下の投票を含む)をWEBに転載することに同意する。

日本インターネット映画大賞公式サイト
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今年も日本インターネット映画大賞への投票をしながら、この1年に観た映画を振り返ってみたいと思います。例年通り、今年公開された作品で、映画館で観たもののなかから選びたいと思います。

今年、映画館で観たのは、日本映画30本、外国映画57本の合計87本。ここ数年、毎年、映画館で観る映画の本数が前年より減っていたのですが、久し振りに前年を上回りました。

では、まずは、日本映画編です。

【作品賞】(3本以上10本まで)
 「そこのみにて光輝く」   5点
 「福福荘の福ちゃん」   4点
 「太秦ライムライト」   4点
 「三里塚に生きる」   3点
 「ある精肉店のはなし」   3点
 「百円の恋」  3点
 「神宮希林 わたしの神様」   2点
 「滝を見にいく」   2点
 「毎日がアルツハイマー2」   2点
 「イン・ザ・ヒーロー」   2点
【コメント】
選んだ10本のうち、4本がドキュメンタリー作品となりました。単に今の社会に伝えたいこと、後世に残すべきことを記録するという以上に、"映画作品"としての完成度の高いドキュメンタリーが多かったような気がします。「三里塚に生きる」は、世間に忘れられた今でも続く闘いに目を向けされてくれました。「ある精肉店のはなし」は私たちの生活に欠かせない食に関する大切な問題を扱っています。「百円の恋」は主演の安藤サクラが出色。「神宮希林 わたしの神様」は伊勢神宮という日本人の精神性を支えるものに樹木希林の凛とした生き方が重ねられ印象的でした。「毎日がアルツハイマー2」も避けられない老いの問題に真正面から取り組みながらもユーモアを失わない点が良かったです。「そこのみにて光輝く」は原作小説も読んだのですが、原作の世界を見事に映し出しながら、映画作品としても見応えのある作品になっていたと思います。「福福荘の福ちゃん」は大島美幸の熱演も印象的でしたが、温かい雰囲気が心にじんわりと沁み込んできて印象的。「太秦ライムライト」は何といっても、主人公、福本清三さんが素晴らしかったです。ラストシーンも出色。「滝を見にいく」も、それなりに人生を積み重ねてきたおばちゃんたちならではの魅力を出していました。「イン・ザ・ヒーロー」は「太秦ライムライト」と同様、作品を支える大きな力でありながら目立たない存在に目を向けた点が良かったです。ちなみに、迷いつつも選外とした作品としては、なかなか歴史的エンターテイメント作品として楽しめた「超高速!参勤交代」、平和になりきれないイラクの現状を映した「イラク チグリスに浮かぶ平和」、命懸けの撮影が行われた「北朝鮮・素顔の人々」といった作品があります。
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【監督賞】      作品名
  [纐纈 あや] (「ある精肉店のはなし」)
【コメント】
 私たちの命を支える仕事の一つでありながら、これまでほとんど知ることがなかった屠畜がテーマとして取り上げたという点も良かったと思いますし、映画作品としての完成度も高かったと思います。
【主演男優賞】
  [綾野 剛] (「そこのみにて光輝く」)
【コメント】
 静かな淡々とした描写の作品ですが、その中で、登場人物の心情を丁寧に表現して印象的でした。
【主演女優賞】
  [安藤 サクラ](「百円の恋」)
【コメント】
 宮沢りえ(「紙の月」)、大島美幸(「福福荘の福ちゃん」)の中の誰を選ぶかかなり迷いましたが、インパクトの大きさ+演技力という点で安藤サクラに軍配が上がるかと...。
【助演男優賞】
  [松方 弘樹] (「イン・ザ・ヒーロー」)
【コメント】
 出演時間は短いのですが、さすがの殺陣で魅せてくれます。クライマックスを見事な殺陣で盛り上げて印象的でした。
【助演女優賞】
  [小林 聡美] (「紙の月」)
【コメント】
 クライマックスの宮沢りえとの対決は長く映画史に残るであろう名場面だったと思います。迫力あるシーンでした。
【ニューフェイスブレイク賞】
  [上白石萌音] (「舞妓はレディ」)
【コメント】
 何も知らない田舎育ちの少女が垢抜けていく様子を見事に演じていたと思います。今後に期待したいです。
【音楽賞】
 「福福荘の福ちゃん」
【コメント】
 懐かしの昭和メロディーが作品の雰囲気や登場人物たちのキャラクターの表現に巧く活かされていたと思います。
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【私が選ぶおっさん賞】
 [大島 美幸] (「福福荘の福ちゃん」)
【コメント】
 主演女優賞で、安藤サクラ(「百円の恋」)、宮沢りえ(「紙の月」)の誰を選ぶか迷いましたが、最終的に安藤サクラに。けれど、本作の大島美幸の存在もどこかに残しておきたいと思いました。見事なおっさん振りでした。
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真夜中の五分前

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本多孝好の同名小説を映画化した作品。原作は未読です。日中合作で映画化ということもあるのでしょうか、原作の設定を大きくアレンジし、舞台を上海とモーリシャスに変更しているとのこと。

時計修理工の良はルオランという美しい女性と出会います。彼女には見分けがつかない程そっくりな一卵性双生児の妹、ルーメイがいるのですが、そのルーメイの婚約者は、かつて、ルオランが惹かれていたティエルン。ルオランとルーメイの間には、愛や嫉妬、複雑な感情が渦巻いている様子。ルオランと愛し合うようになった良ですが、ある日、モーリシャスに行ったルオランとルーメイは事故に遭い...。

ミステリーとしては悪くなかったと思います。ルオランかルーメイか、その境が徐々に曖昧になっていき、その中で、前に登場したエピソードまでもが怪しく思えてきて、謎の渦の中に飲み込まれていきます。2人の身近にいる人間の迷いとともに、本人の中にさえ迷いが沸き起こってきます。果たして、自分はルオランなのか、ルーメイなのか、どこかで人生が入れ替わっていたのではないか...。

このミステリアスな雰囲気は良かったのですが、そこだけに力が注がれ過ぎて、ロマンスの部分は弱くなってしまった感じがします。原作がある物語なので、本作の問題ではなく、原作の問題なのかもしれませんが、良とルオランの出会いには無理矢理感が拭えませんし、ティエルンが疑問を抱いたままで結婚したのも何故か分からないし。ミステリーな部分についても、ティエルンがプレゼントした洋服をもう一方が持っていたのなら、その洋服に関する想い出を共有していないのは不思議だし...。

舞台を上海に移した理由もよく分かりません。日本人の良が上海の小さな修理屋で働いている理由も提示されません。この辺りも気になりました。



以下、ネタバレあり。







結局、モーリシャスから帰ってきたのは、ルオランなのか、ルーメイなのかについては、はっきりとは示されません。前半の伏線から推測しようにも、前半の伏線そのものが本当のことだったのか、"騙し"だったのかがはっきりしません。

モーリシャスから帰ってきた女性の謎。ある服についてティエルンに買ってもらったことを忘れている場面がありますが、前半でティエルンにその服を渡されたのが描かれていた通りルオランなら、生き残ったのはルーメイということになりますが、前半の女性がルオランを装ったルーメイなら、生き残ったのはルオランということになります。生き残った女性がプールで溺れる場面がありますが、彼女がルーメイなら本当に溺れていたということになりますが、ルオランが溺れているふりをしたとも考えられます。頭の傷についても確実な証拠とはならないでしょう。良に返した時計が5分遅れでなかったのも、ルオランが手紙に書いた通り、自分の時間を取り戻した結果なのかもしれないし、"5分遅れ"になっていた意味を知らなかったルーメイが時間を合わせた結果なのかもしれません。そもそも手紙を書いたのが本当にルオランだったのかどうかも分かりません。時計のありかはルーメイも知ることができたわけですし...。



もう少し、細かいところをしっかりと描きこめばもっと見応えのある作品になったと思われるだけに残念でした。


公式サイト
http://mayonaka5.jp/



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サンバ

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フランスで10年間働いているサンバ。ようやく、皿洗いから料理人に昇格する決まり、張り切っていました。ところが、ビザの更新を忘れていたことで収容所に入れられてしまいます。移民を支援するボランティア団体に参加するようになったばかりのアリスは、サンバの支援を担当することになります。燃え尽き症候群で睡眠薬を手放せずにいたアリスは、厳しい状況にあっても明るさを失わないサンバに興味を持ちます。けれど、支援も虚しく、サンバには"国外退去命令"が出されてしまいます。けれど、強制執行はないため、サンバは、収容所から出ることができました。サンバは、警察の目を逃れながら日雇い仕事をしていましたが...。

移民問題と燃え尽き症候群を組み合わせるのはどうかという疑問はありますが、社会的な問題を見据えている点は良かったですし、深刻な問題をコミカルに描きながらも、その本質に迫ろうという意気込みが感じられるところにも好感が持てました。不法労働者に対しては取り締まりが行われ、正当な理由ありと認められなければ退去命令も出されます。けれど、不法労働者たちの労働で社会が支えられてもいるのです。不法労働者だからこそ、安い賃金で働かせることができ、そうしてコストを抑えられるからこそ成り立つ部分もあり...。移民を必要としながら、排斥しようともしている社会の矛盾にも目が向けられています。

正式な労働許可を持っていても移民が生きていくは大変、不法滞在者が生きていくのも当然ながら大変、れっきとしたフランス人だとしても女が一人で生きていくのも大変...。それぞれの大変さの中で、それぞれに生きていこうとしている姿は良かったと思いますし、大変さの中にいる者同士が惹かれあっていくという展開も悪くはないと思います。

そして、結構、深刻で重い話なのですが、味付けはコミカル。"サンバ"という名前でありながら、踊れない主人公がフランスで生き残るために奮闘する物語で、決して、ツマラナイ話ではないのですが、サンバに絡んでくる人々の描き方が、それぞれに中途半場で、焦点がブレてしまっている感じが心地悪かったです。

サンバとアリスの恋の物語、サンバとウィルソンの友情物語、この2つが軸と言えば軸なのですが、ウィルソンが、結構、重要な存在の割に、ヘンにアッサリと消えてしまって、落ち着きがよくありません。ウィルソンの恋についても、"国籍詐称"についても、放置されたまま映画は終わってしまいます。

終り方も微妙です。ハッピーエンドと言えなくもありませんが、手放しで喜べる終わり方とは言えません。弱い立場に追いやられた者同士が、権利を得た者と得られない者に立場を別ち、その2者の争いの結果、一方が何とか生き残る権利を手にする...というのは、どうも、引っかかりました。まぁ、スッキリ目出度く終わらせられる類の問題ではないってことなのかもしれませんが...。


公式サイト
http://samba.gaga.ne.jp/



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ベツレヘム 哀しみの凶弾

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イスラエルのシークレット・サービス、ラジは、パレスチナ人の少年サンフールを情報屋として使っています。サンフールは、指名手配されている過激派組織の幹部イブラヒムの弟で、ラジは15歳の時にサンフールに接触して以降、長い時間をかけて彼との信頼関係を築き上げてきました。17歳になったサンフールは、ラジの要求に応じつつも兄へ忠誠を誓うという二重生活を送りながら、パレスチナ過激派の中で大きな役割を果たすようになっていました。そんなある日ラジに、サンフールを犠牲にしてでもイブラヒムを暗殺せよとの命令が下り...。

長い長い争いを続けているパレスチナとイスラエル。いろいろな面で、イスラエルの側の力が勝っていて、イスラエルが圧倒的な力でパレスチナを蹂躙しているといった印象は拭えません。村上春樹のエルサレム賞受賞スピーチも想い起されます。

血で血を洗う敵同士がごく至近距離で日常を送っていることが伝わってきます。もっとも、近いところにいるからトラブルも起き、抜き差しならない争いにも発展するのでしょうけれど、日常の中に戦いがあり、殺し合いがあるという現実の過酷さ。"平和で安全"な日本で生まれ育っていると想像しにくいことですが...。

元々は脅す者と脅される者、利用する者と利用される者という関係だったラジとサンフールの間にも信頼関係が芽生え、親子にも似た感情が生まれてきます。行動をともにする、一つの"仕事"に共同して携わるということはそういうことなのでしょう。そうだとしたら、理由はどうあれ、長い年月、憎しみ合い殺し合ってきた敵同士の間にも、信頼関係が生じる可能性がある...ということになるのですが...。

ラストは、ある意味、予想通りの結末。報復は報復を生み、更に、報復が繰り返されるのでしょう。ラジにも子どもがいて、その子どもは、サンフールへの復讐と誓うことになるでしょう。そう、報復に報復が繰り返されて、その連鎖が断ち切れないところに、今のパレスチナ、イスラエルの問題があるのです。

巨大な敵に押し潰されそうになる中、パレスチナ側の想いも揺れます。イスラエルとの和平を進めようとする勢力もあれば、徹底抗戦を主張する勢力もあり...。一枚岩になれないのも、それだけ、追い詰められているからなのかもしれません。様々な事情と思惑とが渦巻く状況が、90分を切る短い時間の中に巧く整理されて描かれていました。

ドキュメンタリー的なリアルな雰囲気を持つ作品ですが、リアルさに拘り過ぎたのか、映画作品としての面白みには欠けているようにも思えます。ラストもやりきれない終り方で、ただ投げ出されたような感じだし...。

それぞれがそれぞれの"正義"のために必死になっている中で起こるのが果てしない殺し合いだとしたら、"正義"とは何なのか...。

とは言え、これが"イスラエル映画"だということは、一つの希望なのかもしれません。イスラエルの側から、このようにパレスチナに寄り添って描いているのですから。


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エヴァの告白

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1921年、エヴァ(マリオン・コティヤール)と妹マグダ(アンジェラ・サラフィアン)は戦争の影響で情勢が不安定な祖国ポーランドを離れ、ニューヨークに到着します。けれど、入国審査で医師に肺病と診断されたマグダは隔離され、2人は引き離されます。エヴァは入国を拒否されますが、ブルーノ(ホアキン・フェニックス)という見知らぬ男性のおかげで強制送還を免れます。劇場を経営するブルーノですが、裏では売春の斡旋を商売にしていました。エヴァも妹との再会を果たすためのお金を稼ぐため、売春をするようになり...。

本作の物語自体はフィクションだそうですが、監督・脚本を務めたジェームズ・グレイは、自分の父方の祖母(ロシア系ユダヤ人)の実体験やエリス島で生き別れになった姉妹の実話などから着想を得たとのこと。エヴァがバナナの食べ方を知らないというエピソードは祖母の実体験そのままだそうですし、ブルーノのモデルは母方の曾祖父の知人で売春斡旋をしていたマックス・ホックスティム、オーランドのモデルはマジシャンで読心術師だった実在の人物テッド・アンネマンとこのこと。

エヴァへの愛情を持ちながら、その想いを伝えることもできず、素直にエヴァを大切にすることもできず、屈折した形でしか彼女に向き合えないブルーノ。その関係は、ブルーノの従兄弟であり、やはり、エヴァに想いを寄せるオーランドが絡むことで、更に複雑なものとなります。

このブルーノの存在感が出色です。

エヴァを演じたマリオン・コティヤールも悪くはないのですが、何が何でも生きていこうとする強さが今一つ伝わってきません。2人の男の自分への想いを知りながら、それすらも、生きるための手段として利用しようという狡さ、生き抜くためには彼らを踏み台にしようとする逞しさが前面に出ても良かったのではないかと...。

何だか、生き抜こうという気持ちは強いけれど、ただ、過酷な運命に翻弄される薄幸な美女って感じで、キャラクターの描かれ方が薄味な感じがしました。売春にしても、強制されたという以上に、大金を稼ぐ手段として選び取ったという面があるワケです。3人の関係の中で起きる不幸は事件も、エヴァが一因となっていますし...。自らが決めた目的に辿り着くためには何でもする強い覚悟がしっかりと表現されていたら、ブルーノの存在感とのバランスが取れたのではないかと思います。そこが薄かったため、何だか、ホアキン・フェニックスの独壇場になってしまっていて、その点が惜しまれます。

オーランドを演じたジェレミー・レナーも、それなりに良かったのですが、立ち位置が今一つ中途半端な感じがしました。もう少し、エヴァやブルーノとの絡みも欲しかったですし...。

ラストは、一応はハッピーエンドということになるのでしょう。けれど、きちんとビザを得ていないと思われる2人にとって、行く末は明るいとは言えません。真っ当な仕事に就ける保障もありません。健康面で問題がある妹を抱え、後ろ盾となっていたブルーノを失ったエヴァを待ち構えるのは、これまで以上に過酷な日々である可能性も低くはありません。ここも、エヴァなら乗り越えていくだろう...と素直に思えるだけのものをエヴァの中に見られず、ラストの希望も薄い感じがしました。

まぁ、エヴァもブルーノもオーランドも、単純に善悪で割り切れないキャラクターとして作られていた辺りは、作品の味わいを深めていて良かったと思います。特に、ホアキン・フェニックスがブルーノの捻じれた感情にリアリティを持たせ、複雑な心情を見事に表現した力の演技は見応えがありました。このホアキン・フェニックスの演技があるだけでも、観るべき価値があると思います。


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百円の恋

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32歳の一子は実家でだらしない毎日を過ごしていましたが、離婚して実家に戻ってきた妹の二三子といざこざを起こし、一人暮らしをすることになります。100円ショップで深夜労働にありつき、相変わらずな日々を過ごしていました。そんなある日、よく通るボクシングジムで姿を見かけていたボクサーの狩野と出会います。ところが、ちょっとした誤解がもとになり、狩野は一子の元から姿を消します。狩野を行方を知りたくてジムを訪ねた一子は、ボクシングを始めることになり...。

一子を演じる安藤サクラの凄さが際立つ作品です。体型、服装、身だしなみ、生活振り...何をとってもどうしようもなくダメダメで、ほとんど人間として破綻しているような一子が、ボクシングを始めることで、大きく成長していきます。身のこなしが軽くなり、パンチが鋭くなり、体は引き締まり、表情も生き生きしていきます。その変化を見ていると、どんどん一子を応援したくなり、クライマックスの試合の場面では涙が出てきました。特に、ボコボコにされながら、不思議と美しさを感じさせる一子の表情が印象的でした。

前半のダメダメな中でも、狩野に誘われて一子にしてはとっても頑張ったであろう可愛らしいワンピース姿(+彼女なりの背伸びした勝負下着)とか、それなのに靴はスニーカーとか、バイト先の同僚に無理やり連れて行かれたホテルでの一件とか、一子の純粋さと不器用さが感じられて見事だし、狩野が一子が100円ショップで買う物とか、一子と狩野の初デートの時の乗り物とか、ところどころ、コミカルな部分が程よく散りばめられ、シリアスな部分もバランスよく配され、作品の世界に惹きこまれました。

最初の出会いの時は、完全に狩野が優位に立っていた2人の関係が、変化していく様子も描かれ、そこからも、一子の得たものが伝わってきます。一子が狩野に見とれる関係から、狩野が一子に見とれる関係に変わっていく。そして、同じ体験の共有して、2人は新たな対等な関係を持てるようになっていく...ということなのかもしれません。

最初は、一子の無謀さに呆れながらも、その一生懸命さに引き付けられていくジムの会長の一子への想いは観る者とオーバーラップし、観る者の気持ちを引っ張ります。この辺りの描き方も良かったです。

仮にもボクサーな一子が、一般人を殴ってはアカンでしょうとか、その殴られる彼も、確かに多少お堅いところがあったり、ちょっとばかり人を見下すようなところがあるけれど、別に酷く悪人なわけでもないのに悪く描きすぎなんじゃないかとか、廃棄品をもらいに来ていたおばちゃんの最後はいくら何でもなんじゃないかとか、気になる部分もないワケではありませんが、それでも、十分に楽しめる作品です。

一度は観ておきたい作品です。お勧め。


公式サイト
http://100yen-koi.jp/



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今年も高島屋で予約したクリスマスケーキです。例年、生クリーム&イチゴ系のケーキのことが多かったのですが、昨年に続いて今年もチョコレート系にしました。

"マ・プリエール"というお店の"ノエル ペパデオーロ"というケーキ。

ガナッシュとチョコレートのスポンジを何層か重ねた上にチョコレートをコーティング。そして、トナカイとサンタさんの飾り。カカオ80%というビターなケーキでした。しっとり、トロッとしたチョコレートで、ケーキ自体も、大きさに比べてずっしりした重みがありました。で、濃厚な割にしつこさはなく、意外にサラッと食べられる感じ。チョコレートを堪能できるケーキでした。

このお店のケーキは初めてなのですが、できるだけ砂糖と脂は避けたい体型の私としては、小振りなサイズ(16×4.3cm)というのも嬉しくてこのケーキに決めました。以前は、4人以上の家族で食べることを想定していると思われる大きさのケーキばかりだったのですが、最近は、徐々に、1~2人前の小さいサイズのケーキが充実してきていて喜ばしい限りです。

息子も高校生。サンタクロースが来なくなって久しい我が家ですが、せめてケーキは楽しみたいもの。

今年から来年にかけても、昨年から今年にかけての時同様、9連休!!!明日、明後日と2日仕事をすれば、お休みです。頑張ろう!!!

Merry Chiristmas!!!良い子な皆様に、素敵なプレゼントが届きますように!!!


マ・プリエール 公式サイト
http://www.ma-priere.com/


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スティーヴとロブのグルメトリップ [DVD]/スティーヴ・クーガン,ロブ・ブライドン,マルゴ・スティリー
¥5,184
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コメディアンのスティーヴは、イギリス北部の有名レストランを約1週間かけて食べ歩くグルメ取材旅行の仕事が舞い込み、彼女を同行させようとしたが、断られてしまいます。そこで、友人で同じコメディアンのモノマネ好きなロブと旅をすることになりますが...。

"グルメ・トリップ"というタイトルから、様々な美味しい料理を食べ歩く物語なのかと思ったのですが...、そして、スティーヴも確かに"有名レストラン"の取材をする仕事を依頼されているのですが...、何だか、あまりグルメではありません。旅をしているし、そこここで食事をしていることは間違いないのですが...。

食事はしていても、似ているのかどうかよく分からないような物真似(確かに似ていて笑える部分も一部ありましたが)と、面白いのかどうかよく分からないようなお喋り(まぁ、笑える部分が全くなかったわけでもありませんが)が延々と繰り返される感じ。物真似やお喋りの面白さが理解できないのは、私の側の問題かも知れませんが、食事をしていても、その料理の味などについての話題があまりないままにストーリーが進んでいくので、これで、"グルメ取材"として成り立つとは思えず...。

スティーヴに"グルメ取材"の依頼があったということは、彼ならそれができると見込まれてのことなのだと思うのですが、料理にきちんと向き合っている感じがありません。これでは仕事にはならないのではないかと...。

何より、一番に"冴えないオジサン2人の掛け合い"、大差があって二番に"イギリス各地の風景"、付け足しに"食事"ってところでしょうか。一応は、グルメ取材の旅なのですから、もう少し食事について描いて欲しかったし、2人の掛け合いにも食事に関する話題を取り入れて欲しかったような...。

まぁ、そもそもイギリスを舞台にして"グルメ・トリップ"というところに無理があるのかもしれません。まぁ、原題は"THE TRIP"なので、邦題の問題なのでしょう。有名レストランを巡るというのも、単に旅を始める理由というだけで、テーマは"旅するオジサン2人のグダグダ"ってことなのかもしれませんが、どうせなら、この2人のグダグダ振りに見合った旅の理由を設定して欲しかったような...。"路線バスの旅"(TV東京系)的な旅のような設定だったら、もっと、素直に楽しめたのかもしれません。


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暮れ逢い

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シュテファン・ツヴァイクの短編小説「過去への旅」を映画化した作品。原作は未読です。

1912年。フリドリック・ザイツは、に就職します。入社後すぐに社長のホフマイスターにその働き振りを評価され、社長の個人秘書となり、息子、オットーの家庭教師もするようになり、やがて、社長の屋敷に住み込むようになります。ホフマイスターの若き妻、ロットと惹かれ合うようになりますが、互いにその想いを伝え合うことも、触れ合うこともありませんでした。そんな中、ザイツは、ホフマイスターの指示により、メキシコに転勤することになります。2人は互いの気持ちを確かめ合い、再会を誓いますが、ザイツの帰国予定日が近づく頃、第一次世界大戦が始まり...。

ある意味、ベタな遠距離、長期間のラブロマンスです。繊細で丁寧な描写が登場人物たちの心情を美しく焙り出していて印象的でした。貧しい中から勉学で成り上がってきたザイツとお嬢様育ちの奥様であるロット。初めてロットとお茶をしながら、汚れた靴を引っ込める様子。オットーとダンスをするロットの姿を眺めながら、自分がダンスの相手をする場面を想像する姿。ロットのピアノに触れ、ロットの残り香を求める姿。観ていて、ドキドキするような登場人物たちの想いが濃密に感じられる場面です。

ロットが身に纏っているというゲランの香水が匂ってくるような艶めかしさが全面に漂います。練られたセリフと雄弁な視線。静かで美しく妖艶な作品でした。

で、本作の登場人物の中でも、際立っているのがホフマイスター。自分の死期を悟っていたであろうホフマイスターは、遺していくロットとオットーの行く末を託せる相手が欲しかった。そして、ザイツは、その相手として適任だった。だから、わざわざ、ロットにザイツを引き合わせたけれど、2人が想いを寄せるようになれば、嫉妬してしまう。ホフマイスターがザイツのメキシコ赴任の期間を2年と設定したのは、そうすれば、ホフマイスターの死後にザイツが帰国し、何の障害もなくロットと結ばれることになり、自分はその場面を目にしなくても済む...ということだったのでしょう。完全に2人を引き離したいのであれば、2年という設定にはしなかったのではないかと...。この"2年"という設定に、ホフマイスターの心情が現れているようにも受け取れました。

このホフマイスターのロットへの複雑な愛情が本作の味わいを深めています。そこに至るまでに、ホフマイスターがザイツを一人の人間として認めている様子が見られ、彼とロットを近付けようとする場面があり、ロットとザイツの関係性を確認しながら複雑な感情を露わにする場面があるので、徐々に、ホフマイスターの真意が見えてきます。そのため、それを告白する場面も、その内容自体に意外性は感じられないのですが、彼が、ヒゲをそってもらいながら心の内を吐露する場面は、ゾクゾクしました。

ただ、この折角の"告白"のロットとザイツの関係性への影響について、あまり言及されていない点は残念。ロットとザイツの恋というより、ホフマイスターを主人公に屈折した愛の物語として描いた方が味わい深い物語になったのではないかと思いますが...。そして、ザイツの帰国後の2人の遣り取りがややもたついた感じがしたところは残念。

とはいえ、古典的な"秘められた恋"の魅力を再発見させてくれるような作品ではあったと思います。時代が変わり、人々の価値観や考え方が変わっても、ラブロマンスは永遠...なのかもしれません。


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