クロワッサンで朝食を

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エストニアの小さな町で暮らすアンヌは、2年間介護をしていた母親を亡くし放心状態でした。そんな折り、多少フランス語が話せる彼女にパリでの家政婦の仕事が舞い込んできます。意を決して憧れのパリに向かったアンヌを、しゃれたアパートで待っていたのは、気難しいエストニア出身の老婦人フリーダでした。実は、アンヌを雇ったのは、かつての恋人、ステファンで、フリーダ自身は、家政婦を求めてはいなかったのですが...。


少々、というか、結構、テンポがゆったりで、集中力が削がれる部分もありましたが、頼れる相手もあまりいない異国で生きることの厳しさ、寂しさとそれを支える誇り高さ。なかり頑固で我儘なところもありますが、アンヌとの交流の中で、徐々に現れてくる柔らかさ。その表情の変化が名優の技に支えられて、見事に表現され、心に沁みました。


エストニアからやってきて、けれど、その奔放な性格から、同郷の人々からも疎まれ、孤独に人生の幕引きを迎えようとしているフリーダ。時折、言動の端々に強烈な郷愁を感じさせつつも、朝食をクロワッサン、身に纏うものはシャネルな彼女には、フランス人としての矜持もあるフリーダの存在感が強烈でした。


一方のアンヌ。全体に寡黙で、彼女自身の物語も、特にパリに来てからは、あまり、語られず、少々、物足りない感じもしました。アンヌの側の物語がもう少し丁寧に語られていれば、フリーダとのバランスももっと良くなり、作品全体の味わいも深まったのではないかと思うのですが...。


ラストは、それぞれが孤独を恐れた妥協の結果のようにも受け取れますが、そんな妥協や打算を飲み込んで、生きる道を模索することこそが、現実の大人の生き方なのかもしれません。何かがしっかりと解決されたわけでもなく、画期的な展開があったわけでもない結末は、地味で、面白みに欠ける感じはしますが、それだからこそ、圧倒的なリアリティが感じられます。


フリーダの中に根本的な変化が起こったわけではありません。フリーダは、この先も我儘な言動を繰り返すかもしれません。アンヌや他の人々とも衝突することでしょう。けれど、いろいろあっても、結局、フリーダはアンヌと生活していくし、ステファンがフリーダを完全に見捨てることはないのでしょう。


ぶつかり合いながら、喧嘩しながら、その度に仲直りをしてともに人生を歩んでいく。そんな相手が一人でもいるのなら、一人で生きる老後も悪くないような気がします。


フリーダを演じるジャンヌ・モローの存在感が圧倒的。頑固で我儘だけれど、様々な苦労を乗り越えたであろう長い道のりを感じさせる佇まいは貫録たっぷり。老け込まずに年齢を重ねていく姿が凛として清々しく感じられました。



公式サイト

http://www.cetera.co.jp/croissant/

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ジャッキー・ブラウン

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ジャッキー・ブラウン [DVD]/パム・グリア,サミュエル・L・ジャクソン,ロバート・フォスター
¥1,500
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クエンティン・タランティーノ監督がエルモア・レナードの「」を基に製作した映画作品。原作は未読です。


武器密売人、オデールの金を運ぶバイトをしているスチュワーデス、ジャッキー・ブラウンは、ある日、空港の駐車場でFBIの捜査官、レイに声をかけられ、バッグの中にあった大金の出所を追及されます。前科があるため、良い条件の仕事に就けないでいるたジャッキーにとって、有罪にされることは絶対に避けたいところ。何としてもオデールを逮捕したいレイは、そんなジャッキーの事情を知り、取引を持ちかけます。オデールは、自分を裏切る可能性のあるジャッキーの口を封じようと保釈金融業者のマックスにジャッキーの保釈を依頼。ジャッキーは、そんなオデールの計画を見越し、自分の身を護るために一計を案じ...。


保釈金融業者なる職業が存在するのは、さすがに犯罪大国、アメリカ、ということなのでしょうか...。こういう業界があることを初めて知りました。


それはさておき...。


ジャッキー、オデール、レオ、メラニー、マックス、ルイス...。それぞれの登場人物たちの間に、裏切り、裏切られ、騙し、騙され、協力し合い...、様々な関係が生まれます。


この人間関係の描き方は面白かったです。最初の方で、オデールが、ルイスに対し、銃についての薀蓄を語り、その横にメラニーがいて...という場面が描かれるのですが、その中で、それぞれの関係や、個々の人物の強みと弱みが伝わってきました。なかなか練られた面白いシーンだったと思います。


変な髪形、髭のオデールを演じたのがサミュエル・L・ジャクソン、何を考えているのだか分からないようなお色気たっぷりのメラニー役がブリジット・フォンダ、そして、何とも情けないチンピラなルイスがロバート・デ・ニーロ。やたらと豪華な俳優陣が意外な役どころを演じています。特に、ロバート・デ・ニーロのカリスマ的な雰囲気の片鱗を一切感じさせない名演は見事。とことんしょ~~~もなく情けない感じをリアルに表現しています。


この有名処の濃い面々に囲まれ、パム・グリア演じるジャッキーの存在感が、やや、気圧され気味。それでも、最初は、生活苦からオデールの手下になって働かされている感じの強かったジャッキーが、徐々に、自分の人生を自分で動かそうとするようになり、その過程の中で、中年の草臥れたオバサンにしか見えなかった彼女が、輝きを見せるようになっていく辺り、なかなか、見せてくれています。


ジャッキーが奪おうとする金額も50万ドルというところがミソかもしれません。計算を楽にするため1ドル=100円で考えると5000万円。とかく、この手の犯罪ものだと億という金額になるのでしょうけれど、この微妙に控えめな感じも悪くありませんでした。もちろん、ジャッキーの13,000ドルという年収から考えれば、相当な大金であることは間違いありません。というか、それなりに仕事をさせられているにも拘らず、13,000ドルという年収は哀し過ぎますが...。だから、運び屋をやらざるを得ない...ということなのでしょうけれど...。


2時間半を超える長さですが、この内容なら、2時間弱で十分まとめ切れたような気もします。正直、少々、飽きも感じました。


ただ、ラストは秀逸。よくある2人でメデタシ、メデタシなエンディングかと思わせておいて、サラっと裏切る辺り、見事。30分は、気持ちを切り替えるための時間であって、その後は、地味な元の生活に戻るのでしょう。人生の機微を知る初老の男性だからこその選択。味わいのあるラストでした。

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ジャンゴ 繋がれざる者

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ジャンゴ 繋がれざる者 ブルーレイ&DVDコンボ(初回生産限定) (2枚組) [Blu-ray]/ジェイミー・フォックス,クリストフ・ヴァルツ,レオナルド・ディカプリオ
¥4,980
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奴隷制度を巡る対立が色濃くなる南北戦争勃発直前の1858年、アメリカ南部。奴隷ジャンゴ(ジェイミー・フォックス)は、賞金稼ぎのキング・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)は、奴隷商人、スペック兄弟が引き連れていた奴隷の中から、ブリトル3兄弟の顔を知るジャンゴを連れ出します。シュルツが、ジャンゴを必要としたのは、高額の賞金がかかるブリトル3兄弟を捕まえるため。2人は、賞金稼ぎをしながら、ブリトル3兄弟を追います。やがて、ブリトル3兄弟を射殺し、遺体を手に入れます。ジャンゴは、前の持ち主により離れ離れにさせられた妻、ブルームヒルダを取り戻すことにします。彼女がカルヴィン・キャンディの農園にいることを突き止め、農園に乗り込みますが...。


かなり残虐で、正視できないような映像もあります。けれど、そこに、アメリカの歴史の中で何があったのかということにしっかり目を向けようという姿勢が感じられ、好感も持てました。


KKKを彷彿とさせるような白い袋を頭に被り、2人を襲撃しようとする白人たちの袋を被るか否かを巡る遣り取りなど、いかにも間抜けで面白かったです。袋を被ったために前が見えなくなるけれど、被ることに意味がある...って、支配者の位置に安住している者たちならではの愚かさ、滑稽さなのかもしれません。


そして、こうした差別の構造が完成する背景には、単に、支配者層(=白人)VS被支配者層(=黒人)という明確な対立構造だけでなく、支配者に協力的な被支配者の存在があるといことも、しっかり描いています。支配者たちの価値観に合わせて高い評価を得られるよう行動する被支配者や、支配者におもねり、手先となる被支配者。で、得てして、そうした被支配層の人々は、支配者たちよりも激しく、被支配層に居る者たちを過酷に扱うもの。


娯楽映画という枠組みから逸脱することなく、馬が挨拶するなど、軽く笑える場面も取り入れられ、けれど、しっかりと多くの白人たちにとって、目を背けたくなるアメリカ史の暗部に光を当てたという点で、評価されるべき作品だと思います。


一方で、???な部分も...。ジャンゴが、あまりに超特急で早打ちの達人になってしまう辺り、どれだけ天才なんだ!!!という感じです。2時間を遥かに超える長さの作品で、この素早さは、やはり、バランスを欠いた感じは否めません。


そして、特に、シュルツがキャンディを射殺する辺りからの展開。ブルームヒルダを買い取ったところで、一番の目的を果たしたわけですから、何も、そこで、あんな行動に出る必要はなかったワケで...。それまでの冷静な行動を考えると、何故、あそこで突然?という疑問は残ります。確かに、腹に据えかねる気持ちは理解できますが、それまでの行動や、その後に起こると予測されることを考えれば、怒りを抑える方が自然なような...。まぁ、それがなければ、シュルツは死なず、ジャンゴ大活躍の場も失われてしまうので、必要だった...という"大人の事情"は理解できるのですが...。


まぁ、いろいろと穴はありますが、やはり、最後は、差別され、虐げられていた黒人が、支配者である白人たちを次々に撃ち殺すという爽快感...なのでしょう。そういえば、「イングロリアス・バスターズ 」でも、ユダヤ人がナチスを派手にやっつけていましたが...。そういう意味では、今回、ジャンゴを救い出したシュルツがドイツ人というのが面白かったりします。


さらに、「イングロリアス・バスターズ」とは、善玉と悪玉の演者が入れ代わっている辺りも...。まぁ、それを考えると、本作は、レオナルド・ディカプリオの悪役っぷりが評価されている作品でもありますが、「イングロリアス・バスターズ」でナチス将校を演じたクリストフ・ヴァルツの悪役振りを見ると、今一歩感はありますが...。


この"やられたらやり返せ"のあまりにアメリカンな結末には、それでも、それでは、本当の解決にはならない...というモヤモヤも残りますが、娯楽作品の中ではありなのでしょうね。


ところどころ、目を背けてしまいましたが、冷酷な農園主、キャンディ役のレオナルド・ディカプリオの狂気を帯びた演技、ジャンゴを演じるジェイミー・フォックスのカッコ良さ、農園の執事役のサミュエル・L・ジャクソンの狡猾さ...、実力派たちの演技も見ものです。一度は観ておきたい作品だと思います。

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サボテンの花

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サボテンの花 [DVD]/イングリッド・バーグマン,ウォルター・マッソー,ゴールディ・ホーン
¥1,480
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1965年初演のエイブ・バロウズの同名舞台劇を映画化した作品です。


中年の歯科医、ジュリアンは、妻子があると嘘をついて、いろいろな女性たちとの恋愛を楽しんできましたが、ある日、若い恋人、トニーが自殺を試みました。隣人のイゴールに助けられ、命を取り留め、ジュリアンは、本気でトニーと結婚したいと思うようになります。ジュリアンは、トニーに妻と離婚することを宣言。けれど、トニーは、彼の妻のことが気になるようで、妻に会って話をしたいとジュリアンに要求します。嘘をつくろうため、ジュリアンは、自分のところで働く看護師、ステファニーに、妻の役を演じて欲しいと頼み込み...。


嘘に嘘が重ねられ、事態は、どんどん複雑に、あらぬ方向に流れていきます。まぁ、あまりオリジナル感のない、どこかで観たような展開ではありますが、微妙に頬が緩むのほのかにコミカルな感じが程よく、最後まで気持ちの負担なく観ていられる安心感がありました。


ゴールディ・ホーンが演じるトニーが可愛らしいです。ちょっと抜けていて、でも、一生懸命で性格が良くて...。離婚するといっている恋人の妻に会いたいという気持ちも、彼女の純粋な正義感からくるもの。そして、その妻の恋人にまで会いたがる...というのも、"夫を奪う"ことへの後ろめたさと自分のせいで誰かが不幸にならないようにという健気な想いから。ただ、そうはいっても、"妻に会いたい"はヨシとしても、"妻の恋人に会いたい"はやり過ぎかと...。アメリカ人的にはOKなのかもしれませんが、ちょっと、違和感ありました。


で、"オールド・ミス"な看護師役のイングリッド・バーグマン。結構、イタイ役どころを往年の大女優に振るというのも、スゴイですが、その上に、あのダンスと歌!!!あの貫録のエレガントな美しさを見せながら、あんな風に踊ってしまう。そして、あれだけ崩れてみせても、壊れた感じにならないのは、やはり、本物の気品。この、何とも言えない微妙なダンスを見られるというだけでも、本作を観る価値があると思います。


ただ、ジュリアンを演じたウォルター・マッソーが、"モテモテの中年男"には見えなかったのが残念。アメリカ的には、彼が若くて可愛いトニーにモテても自然なのでしょうか...。


"サボテンの花"というと、チューリップのあのメロディを口遊んでしまう世代です。映画が1969年で、歌が1975年ですが、歌詞の内容的に、特に、映画を意識した風ではないのですが、どちらも"愛の物語"といったところでしょうか...。


多少、???な点もありましたが、40年以上前の映画であるにも拘らず、ほとんど、古びた感じがしないというのは、並大抵ではありません。

360

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360 [DVD]/アンソニー・ホプキンス,ジュード・ロウ,レイチェル・ワイズ
¥3,990
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戯曲「輪舞」を映画化した作品。この戯曲が映画化されたのは、1950年、1964年に続き、本作が3度目だそうです。


妹、アンナのため、一攫千金を夢見てコールガール、ブランカ(源氏名)になった女性、ミルカ。彼女は、手配師のロッコに、大金を持つ客に巡り合った娼婦の話を聞き、希望を抱きます。彼女を買おうとホテルのバーで待ち合わせた出張中のエリートサラリーマン、マイケル。彼の美しい妻、ローズは、力のある編集者で、ブラジル人の若手カメラマン、ルイと不倫中。ルイの彼女、ローラは、彼の不倫を知り、リオに帰るため飛行機に搭乗。そこで、音信不通になっている娘を探すアメリカ人男性、ジョンと隣り合わせになります。彼女は、ジョンと食事の約束をしますが、大雪で足止めを食らった空港で知り合った別の好みの男性、タイラーを見つけ、部屋に誘います。実は、タイラーは、性犯罪で服役していた刑務所からリハビリ施設に向かう途中でした。タイラーは、何とか誘惑を振り切ります。事情を知らないローラは、誰にも相手にされないと嘆きますが、翌朝、彼女を心配していたジョンに声をかけられます。ジョンは、アルコール依存症で、患者会に参加。そこには、夫がある身ながら、歯科医に好意を寄せているヴァレンティーナも参加していました。ヴァレンティーナの夫、セルゲイは、ロシアマフィアの運転手。セルゲイは、ボスのサーシャがブランカを呼んでいる間、そうとは知らず、ブランカの妹、アンナに声をかけ、2人でドライブ。ブランカは、サーシャが大金を持っていることを知り、手配師のロッコに連絡。ロッコは、ブランカたちの部屋に向かいますが、同じエレベーターには、ブランカの行動を不審に思ったサーシャから呼ばれたセルゲイも乗っていて...。


いろいろな人たちの人生が少しずつ重なり合い、そこに、ドラマが生まれる...のは、良いのですが、これはいくら何でもな展開が目立ち、少々、興ざめ。いくら何でも、コールガールデビューの彼女が、そう簡単に"売れっ子"になるのは違和感ありましたし、マイケル夫婦の寄りの戻し方にも唐突感ありましたし、ジョンが娘の写真をあんな風に置きっぱなしというのも変な感じがしましたし...。


タイラーは、実に、良く、我慢していて、リオに帰る女性に誘われた部屋の場面では、かなりドキドキさせられ、顛末が分かった時にほっと一安心でした。


で、最後は、タイトルの通り、360度回転して、最初の場面同様のコールガールのサイトに掲載する写真の撮影現場になるのですが、さて、この時のカメラマンが誰なのか?最初の場面と同じ人物でないことは確か。だとすると?中途半端に消えた感じがしたブラジル人が顔を見せてくれたりしていたら、面白かったような...。この"最初に戻る"という結末は良かったと思うのですが、折角なら、もうひと捻り欲しかったです。


ただ、全体には、薄味。盛り込み過ぎで、描き方も平板で、どこにも焦点が当たらないようなボケた感じになってしまっています。個々の人物の繋がり方は、ほどほどで、あまり濃くなり過ぎず、薄過ぎず、適度で、ほどほどに自然だったと思うのですが、ここも、みな同じような感じになってしまっています。もう少し、濃淡がつけられた方が、メリハリが効いて面白かったと思うのですが...。


出演陣は実に豪華で、ちょっと冷静になれば、何かと変な展開があまり気にならない程、自然に観ることができるのは、彼らの力量ゆえでしょう。これだけの豪華さが活かせていないのは、とても残念です。豪華なだけに、一部の人物に重点を置くことが、ためらわれた...ということなのでしょうか...。


まぁ、登場人物が多く、いろいろな物語が描かれる割には、左程の集中力を必要とせず、気楽に観られる作品なので、レンタルのDVDで観る分には、手頃な作品かもしれませんが...。

愛のあしあと

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愛のあしあと [DVD]/カトリーヌ・ド・ヌーヴ,キアラ・マストロヤンニ,リュディヴィーヌ・サニエ
¥4,935
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1960年代のパリ。高級靴屋で働く若き日のマドレーヌは、ひょんなことから副業で始めた娼婦の仕事でチェコの青年医師ヤロミルと恋に落ち、結婚。プラハへと渡り、一人娘ヴェラが誕生しますが、浮気なヤロミルに失望し、ヴェラを連れてパリへ戻ります。やがて、マドレーヌは再婚。2番目の夫は優しくて家庭的でしたが、相変わらず娼婦をやめられません。そんな時、チェコからヤロミルが訪れます。彼を愛するマドレーヌは想いを断ち切れず、ふたたびヤロミルと関係を持ってしまいます。2000年、マドレーヌは老いても魅力的で、相変わらずパリでヤロミルとの逢引を続けていました。一方、美しく成長したヴェラは、優しい恋人クレモンがいながらも、ロンドンで知り合ったドラマーのヘンダーソンに一目惚れ。けれど、彼はゲイでした。それでも、諦めきれないヴェラは...。


さすがにおフランスと言うことなのでしょうか。プラトニックな要素を感じさせない愛の物語です。付き合っている相手がいるとか、結婚していてるとか、そんなことは、誰かを愛する障害にはならないようで...。


軽いタッチで始まりますが、中盤で、ヘンダーソンがある告白をする辺りから、物語はシリアスな雰囲気を帯びていきます。けれど、どんなに重くなっても、愛を求める姿勢は変わらないのが、おフランスなところ...なのでしょう。欲しい愛は、命を懸けても手に入れる...のかと思っていたのですが...、"その後"のヴェラの行動には、疑問も感じました。まぁ、それでも、それも一つの愛の形...ということなのでしょうか...。


甘く幸せな愛にも、残酷で哀しい表情があることを実感させられるスウィートでビターで、おフランスな愛の物語。内容的に盛りだくさんで、焦点がぼけた感じもあって、長くて集中力が続きにくい面もありましたが、マドレーヌを演じるカトリーヌ・ド・ヌーヴ、ヴェラを演じるキアラ・マストロヤンニの魅力に支えられた作品です。若き日のマドレーヌを演じたリュディヴィーヌ・サニエも、その後のマドレーヌとはちょっと雰囲気が違ってしまってはいましたが、可愛らしくて良かったと思います。


ミュージカルっぽい雰囲気がところどころに取り入れられ、それが、本作に程よい軽さを加えているのですが、歌の入り方が、やや、中途半端で、歌になるところで唐突な印象を受ける部分が多く、気になりました。歌自体は良かったと思います。ストーリー的にも、"この母にして、この娘"な感じの親子でしたが、歌も"この母にして、この娘"(こちらは、良い意味で)な感じで、印象的だっただけに、勿体ない感じがしました。


マドレーヌ、ヤロミルのそれぞれの若い時と歳を経てからの演者が違うのですが、どちらも、今一つ似ていないのには違和感がありました。もっと似た感じにはできなかったのでしょうか...。


全体的に、少なくとも、レンタルのDVDで観る分には、悪くはないのですが、ところどころ、アレッというところが気になる作品でした。

塀の中のジュリアス・シーザー

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塀の中のジュリアス・シーザー [DVD]/コジモ・レーガ,サルヴァトーレ・ストリアーノ,ジョヴァンニ・アルクーリ
¥5,040
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ローマ郊外にあるレビッビア刑務所では、囚人たちによる演劇実習が定期的に行われ、毎年、様々な戯曲を所内の劇場で演じて、一般観客に披露していました。今年の演目はシェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」に決定し、俳優選出のオーディションが始まります。キャシアスやブルータスなど、主要キャストが次々と重装備棟の囚人に割り振られ、彼らは手探りの中、監房で、廊下で、遊戯場などで演技の練習に取り組みます。やがてそれぞれの過去や性格などが次第にオーバーラップしていき...。


ラスト。キャシアスを演じたコジモ・レーガ(終身刑)が「芸術を知った時から、この監房は牢獄と化した。」と言います。演劇に出会い、自分を表現する経験をしたことで、犯罪者として娑婆と刑務所を日常とする世界の外の空気を知ったのではないでしょうか。その時、初めて、娑婆で生きることの良さを知ったのではないでしょうか。


刑務所が、"衣食住と最低限の医療を保障してくれる場"である人たちにとって、収監され、自由を奪われることは、それ程、大きな罰とはなり得ないでしょう。服役することが"罰"になり、更生への道を開くためには、まず、刑務所の外で生活することの尊さを知る必要があるのかもしれません。


だとしたら、コジモの"罰"は、ここから始まったと言うことになるワケで、そのきっかけを作ったのが、本作で描かれる"演劇実習"ということになるのですが...。


一つの作品をメンバー全員で力を合わせて作り上げること。そのためには、周囲と心を一つにしていくことが大切で、時には、譲ることが必要で、時には、きちんと主張することも必要で...。


自由を奪われ収監されている刑務所の中で演じられるのが、「ジュリアス・シーザー」というのも、面白いところ。権力を持った者が殺され、"自由だ!"と叫ぶものの、終演後は、房に戻され、鍵を閉められ...。


全体に、ただ、刑務所内での出来事を淡々と追っただけという印象が強く、制作者側の想いとか、視点とか、そういったものが、今一つ伝わって来なくて、"映画作品"としては、物足りない感じがしました。もう少し、"作品"として練り上げて欲しかったと思います。80分にも満たない短い作品なのに、やけに、長い感じがしてしまいました。

砂漠でサーモン・フィッシング

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砂漠でサーモン・フィッシング [DVD]/ユアン・マクレガー,エミリー・ブラント,クリスティン・スコット・トーマス
¥3,465
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砂漠で鮭釣りがしたいというイエメンの大富豪、シャイフの夢の実現を依頼された、釣りだけが取り柄の水産学者、ジョーンズ博士。その彼のパートナーとなるのは、頭がよく美人だけれど恋は苦手という、どこか不器用なコンサルタントのハリエット。あまりに馬鹿げた話に、不可能!だと一蹴したジョーンズ博士でしたが、5000万ポンドの資金が支払われ、英国首相まで首をつっこみ、後戻りできない国家プロジェクトに発展してしまいます。最初は、引き摺られるように、嫌々、プロジェクトに参加したジョーンズでしたが、シャイフの人柄と真意に魅せられ、次第に本気になっていき...。


あまりに無茶苦茶な感じのタイトルに、ほとんど観る気持ちになれずにいたのですが...。期待値が低かったこともあるのかもしれませんが、意外に掘り出し物な感じがしました。


砂漠で鮭釣り。そんな大富豪の我儘のために、膨大な資金と労力が費やされるなんて、あまりに愚かなのではないかと思っていたのですが、徐々に、思いの外、真剣な想いが現れてきたり...。もっとも、その背後にあった想いを最初から前面に出していても、プロジェクト的には何も問題はなかった、というより、むしろ、プロジェクトとしては進めやすかったと思います。そうしなかったのは、プロジェクトの実現のためというより、映画を面白くすることを優先したからで、そんな、"話を面白くするためとしか思えない不自然な展開"が、少々、ハナについたりはしました。


いくら無茶な話でも、最初は嫌々だったとしても、何かを始めれば、成し遂げたくなるものなのかもしれません。ともに夢に向かう仲間に魅力を感じることができればなおさら。ジョーンズのモチベーションの変化が面白かったです。


折角なら、無茶で壮大な我儘に徹して欲しかったような気もします。どんなに、無謀に思えるようなプロジェクトでも、何かを成し遂げるということに、人は情熱を傾けることができ、達成感を味わうこともできるのでしょう。"成し遂げる喜び"を中心に据えながら、シャイフの人間的な魅力をもっと丁寧に描けば、もっと面白い作品になったのではないかとも思います。シャイフとジョーンズの会話など、印象的なやり取りが多く味わいがあったので、その辺り、もっと深めて欲しかったです。


そして、単なるバカバカしい夢物語ではなく、別な切なる願いを叶えるための"方便"として描くなら、真の目的を前面に出せなかった事情をきちんと説明して、納得させて欲しかったような...。


大金持ちなシャリフが無茶なことを言い出し、懐疑的だったジョーンズは、諸般の事情から仕方なくプロジェクトに参加。徐々に、シャリフの人柄に魅せられ、積極的に取り組むようになる。紆余曲折があり、ついに、プロジェクトが完成。その後、シャリフがプロジェクトを強行した真の目的が明らかになり、彼がその目的を最後まで明かせなかった事情も分かる。そのプロジェクトが成功したために、多くの人々が恩恵を受ける...なんて、どうかと...。


まぁ、それはさておき...。


プロジェクトに関わる物語の部分よりも、ラブストーリーの面が前面に出過ぎて、そのロマンスがあまりに陳腐で、興がそがれました。まぁ、ジョーンズが、ハリエットの恋人、ロバートに"本音"を語ってしまうシーンは、かな~~~り、ブラックで、笑うに笑えなかったりして、でも、単純にユーモアとは受け止められないブラックな感じは、本作の雰囲気を構成する大きな要素かもしれません。まぁ、ジョーンズがロバートに"暴言を吐く"場面は、ロバートがかなり大人の対応をしたことで救われていますが...。


広報官、マクスウェルの"有能さ"は、かなり醜悪で、ブラックでした。結構、リアルな感じがする部分もあり、バカバカしくて可笑しくもあり、恐ろしくもあり...。立ち位置的に、少々、目立ち過ぎた感じが気にはなりましたが...。


プロジェクトの予算が最低で5000万ポンドと算出されていましたが、日本円で何と約75億円(1ポンド150円で計算)。観終えた後に、計算してみてビックリです。ここは、字幕に日本円で換算した金額を入れて欲しかったような...。

ムーンライズ・キングダム

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ムーンライズ・キングダム [DVD]/ブルース・ウィリス,エドワード・ノートン,ビル・マーレイ
¥4,095
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1965年、ニューイングランド沖にある小さな島で、12歳のサムはボーイスカウトのキャンプから脱走します。1年前、彼は、島の教会で、同い歳のスージーと出会い、恋に落ち、手紙のやりとりを通して密かに駆け落ちの計画を練っていたのです。落ち合った2人は、手つかずの自然が残る入り江を目指します。一方、2人がいなくなった事に気づいた大人たちは大慌て!ボーイスカウトのウォード隊長、シャープ警部、そしてスージーの両親は、2人を追いかけますが...。


舞台となっている島の風景が、何だか、ジオラマのような、どことなく造り物っぽい感じがしました。建物や衣装や小道具も凝っていて、可愛らしくて、ファンタジックな雰囲気を出しています。


子どもたちに振り回されてアタフタする大人たち。この大人たちを演じる俳優陣が、無駄に(?)豪華な面々で、作品の中心にいる2人の子どもたちの未熟さを支えています。この大人たちの頼りなくて、冴えなくて、愚かで、滑稽な感じが、実に巧く表現されていたと思います。


12歳のサムとスージーは、それぞれに、周囲から疎外されています。彼らの周囲の大人たちも何かと問題ありで、2人を救い出せる力は持っていない様子。で、そんな大人たちに囲まれているせいもあるのか、やけに、大人っぽいことをしたがる2人。


子どもは、意外に、自分たちの幼さに気付かず、背伸びをし、大人は、自分たちの未熟さに思い及ばず、自分たちの正義で子どもたちに対し、教育という仮面を被った支配をしようとするものなのかもしれません。かつて生意気な子どもだった時代を振り返りながら、今の自分の滑稽さに気恥ずかしさを感じながら、大人が観ると心惹かれるものを感じたりするのではないでしょうか。


結構な"事件"が起こるのですが、その割には、平板な印象を受ける作品で、盛り上がりに欠ける感じは否めませんし、あちこち、細かいところまで凝り過ぎて、逆に安っぽい感じになってしまっているような部分も見受けられます。音楽にも凝っていて、それが少々、行き過ぎた感じで、映画というより、メロディーつき絵本を眺めているような気分にさせられたりもしました。けれど、それぞれが、その個性に"改良"を加えられることなく、そのままで生きられる場所を得たかに思われるラストはスッキリ感があり、全体として、それなりに楽しめる作品になっていると思います。

シェフ! ~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ~[初回版] [DVD]/ジャン・レノ,ミカエル・ユーン
¥3,990
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三ツ星レストランのカリスマシェフ、アレクサンドルはスランプで、新しいレシピが全く浮かんできません。今年の星取りでは、星を失う可能性させ出てきていました。そうなれば、彼を快く思っていない二代目オーナーに解雇されるのは必至という窮地に立たされます。そんな中、アレクサンドルは訪れた老人ホームでかつて自分が作ったスープに出会います。そのスープを作ったのは、老人ホームのペンキ塗りをしていたジャッキー。彼は神の舌を持つ天才シェフでありながら、その頑固さから数々のレストランを解雇され続け、アルバイト生活を余儀なくされていたのです。プライドが高いカリスマシェフととにかく頑固な天才シェフ。2人は、ぶつかり合いながらも、レストランの星を護るため、新しいレシピに挑戦することになりますが...。


料理が好きで、 料理に妥協を許せなくて、周囲と対立してしまうジャッキー。憧れだったはずのアレクサンドルにさえ、突っかからずにはいられません。誰よりも研究熱心で、料理のことばかり考えているジャッキー...なのに、窓から土足で調理台を通って調理場へ入って、ペンキで汚れた服のまま料理をしてしまう辺りには、違和感ありましたが、ともかく、天才的なジャッキーです。


アレクサンドルも、大いなる実績のある有名シェフ。それでも、三ツ星を維持し続けることは相当なプレッシャーがあるのでしょう。どうも、スランプ気味で、レシピもマンネリ化な様子。頑固でプライドの高い彼ですが、一方、ウマの合わないジャッキーの才能を認める柔軟さも持っています。


片方がもう片方に一方的に助けられる...というのではなく、双方が、助け、助けられる関係というのも良かったと思います。このジャッキーとアレクサンドルの掛け合いが、なかなか面白かったです。84分という、比較的、コンパクトな作品だと言うこともあるのでしょう。程よいテンポでサクサクと進んでいき、王道の展開で大団円を迎えるという安心感のあるストーリー。全体にコメディタッチで、カラッと笑わせてもらいました。


全体に軽めの作りで、逆に言えば、いろいろな意味で中途半端な感じもありましたが、軽めでさくっとした感じが本作の味わいかもしれません。


「エル・ブリ」に代表される"分子料理"への皮肉も効いています。(でも、今まで、迷いながら観ずにいた「エル・ブリ」を描いたドキュメンタリー「エル・ブリの秘密 世界一予約の取れないレストラン」を観てみようという気持ちになりました。)「エル・ブリ」の人気を考えると、分子料理というのは、相当に魅力のあるもではあるのでしょうけれど、"伝統を引きずる頑固な料理人"アレクサンドルでなくても、ここまで行き着くと違和感を感じる人々はいることには、納得です。


"ノグチ夫妻"の登場シーンは、やはり、日本人な私としては抵抗感ありました。その前に、部屋に飾られている着物が見えて、嫌な予感がしたのですが...。あれは、ドラえもんをやらされたジャン・レノの"復讐"だったりして...。


まぁ、特別に印象的とか、突出した面白さがあるという作品ではありませんが、レンタルのDVD鑑賞なら、軽く楽しめる作品だと思います。