人間の運命

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ロシア映画DVDコレクション 人間の運命/セルゲイ・ボンダルチュク,ジナイダ・キリエンコ,パーヴェル・ボリスキン
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ミハイル・ショーロホフの短編小説を映画化した作品。


大工のアンドレイは、1900年、ドン河の畔のヴォロネジに生まれます。1932年の大飢饉により、天涯孤独の身の上になりますが、美しい娘、イリーナと結婚し、長男のアナトリー、長女のオレンカ、次女のナステンカの3人の子どもに恵まれ、幸せな日々を過ごしていました。そんな時、第二次世界大戦が勃発。兵隊に取られたアンドレイはドイツ軍の捕虜となり、いつ死んでもおかしくないような過酷な2年間を過ごします。ドイツ軍の少佐を人質にとり、ロシア軍へと帰還した彼は、その手柄から、1カ月の休暇を与えられ、勇んで故郷に帰ります。けれど、彼を待っているはずだった家族は...。


本人も嘆くとおり、なかり酷い出来事に次々と見舞われます。ついには、最後の希望と思われていた存在までも...。


相当に過酷な状況の中を屈強な肉体と精神力で何とか生き抜いていくアンドレイ。自分が殺される可能性は考えていたでしょうけれど、前線にいるわけではない家族については、無事でいることを信じていた、あるいは、信じたかったのでしょう。


敵であるドイツ軍兵士の描き方に人間味を感じられたのは、意外な感じもしました。なかなかオトナなロシア人...なのでしょうか...。


戦争の悲惨さを描く作品ではありませすが、反戦というより、ソビエト人民の力強さが強調されているプロパガンダ作品としての色彩が強く感じられます。


徴兵され、捕虜となって酷い扱いを受けても、逞しく生き抜き、そんな中でも手柄を立て、家族が殺されても国のために尽くし、戦争孤児の面倒も見てしまう...。(まぁ、最後の部分は、そのためにアンドレイ自身が救われる...ということもありませうが...。)兎に角、ソ連にとって"都合の良い男"だったような...。


ラストのエピソードについても、戦争による孤児も、きちんと救われていることを描くことで、兵士が、家族のことに意識を引っ張られず、戦闘に集中できるように...と働きかけようとしたのではないかと、そんな意図を疑ってしまったりして...。

ラストは、希望が感じられるシーンではあるのですが、スターリンが支配する時代、捕虜になった将兵は帰国後、強制収容所に送り込まれたのだとか。ワーニャの可愛らしい笑顔に救いを見たくなるラストだけに、その後に予想される運命に気持ちが重くなります。


アンドレイが収容所長に呼び出されて命拾いする場面での酒のエピソードなど、いかにもロシア的で、むしろ、帰国後に強制収容所に収監されてから怒る場面のような気がしたりもしますが、まぁ、これは、原作の問題。疑問は浮かびますが、いかにもロシア的で印象的な場面であることも確か。


政治的な意図もいろいろと見え隠れしながらも、長く残る映画となり得たのは、どんなに過酷な運命も淡々と受け入れながらも、決して諦めようとしないアンドレイ粘り強さ故なのでしょう。


政治集を漂わせながらも、ノンポリな立場からも無理なく観ることができる映画作品に仕上げる辺り、ロシア侮るべし...といったところでしょうか。さすがに、なんだかんだ言いながらも、偉大な芸術家たちを輩出した国です。

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コーカサスの虜

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コーカサスの虜(とりこ) [DVD]/オレグ・メンシコフ,セルゲイ・ボドロフJr,トジュマール・シハルリジェ
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トルストイの短編小説「コーカサスの捕虜」を現代のチェチェン紛争に舞台を置き換えて映画化した作品。原作は未読です。


ごく普通の生活していた青年、ワーニャは、徴兵検査が受け、前線に配置されたばかりの新米兵士。武器の取り扱いにも慣れず、実際の戦闘にも参加したこともありませんでしたが、チェチェンの戦場に送り込まれます。仲間は次々に倒れ、ワーニャと准尉、サーシャとともに、捕虜としてコーカサスの小さな山村に連れてこられます。彼らを捕まえたアブドゥル・ムラットは、ロシア軍の捕虜となっている自分の息子と彼らを交換しようと考えていたのです。捕虜を見張るのはロシア軍に舌を切り取られ口のきけないハッサン。食事を運ぶのはアブドゥルの一人娘ジーナ。ワーニャはチェチェンの人々に対して、恨みや憎しみも抱いているわけではなく、チェチェンの人々も、二人の兵に恨みはありません。村人にとって、彼らは、捕虜を交換するという目的ための道具でした。けれど、徐々に、憎しみや恨み以外の感情が生まれていき...。


それぞれが属するグループは、反目し合い、殺し合っていたとしても、どんなかたちであれ、それぞれに属する個人と個人が時間を共にしていれば、人間的な交流や感情の遣り取りが生まれるもの。


本作では、チェチェン人とロシア人の対立を中心に描かれますが、チェチェン紛争は、単純にチェチェン人対ロシア人ではなく、ロシアからの独立を望むチェチェン人vsロシア人+ロシアへの残留を希望するチェチェン人という構造になっていて、ことを複雑にしています。


まぁ、これまでの歴史においても、国同士の戦いで、それぞれの国が一枚岩になっていることの方が珍しく、戦いを主張する側と戦いを避けるべきだとする側に分かれるもの。戦うことに大きなリスクが伴う以上、何かを得るため、あるいは避けるために戦うべきか、戦いのリスクを避けることに尽力するべきか、主張が分かれるのは無理もないこと。


戦いの最中であっても、今まさに殺し合いをしている敵同士であっても、友情をはぐくみ、恋をすることができるというところに、戦いが泥沼化する原因があり、平和への希望の小さな芽があるのかもしれません。


一人の人間にとっては、まさに人生の一大事である生死も、雄大な自然の中では、ごくごく小さな一瞬の出来事でしかありません。村の情景を俯瞰する映像における人間の小ささとその卑小さの中で繰り返される争いの酷さ。生死を左右される重大事に翻弄される人々の姿が淡々と静かに、そして、印象的に描かれ、心に沁みます。


決して、ガツンと殴られるような力づくな表現ではありませんが、観終えて暫くしてからジワジワとい沁み込んでくるような浸透力が感じられる作品です。


英雄も極悪人も登場しない、ある意味、ごく普通の姿勢の人ばかりが登場し、戦いのスペクタクルもなく、戦争物としてはかなり地味で穏やかな作品ですが、それだけに、戦争というものの醜悪さが伝わってくるような感じがしました。


この静けさゆえに、退屈な感じがして、集中力が削がれてしまう場面もありましたが、一度は観ておきたい作品だと思います。

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大人は判ってくれない

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大人は判ってくれない [DVD]/ジャン・ピエール・レオー,クレール・モーリエ,アルベール・レミー
¥3,990
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男子校に通う13歳の少年アントワーヌ・ドワネルは「女」に「悪戯」に「映画」に夢中。何かと目立つ彼は、常に大人の目の敵にされてしまいます。両親の夫婦仲も悪く、喧嘩ばかり。ある日、家出を決意した彼は、資金稼ぎに父親の会社に忍び込んでタイプライターを盗み出し...。


大人たちの描き方が見事です。徹底的にアントワーヌを否定します。継父は、ある程度、仕方ないにしても、教師も、実母も、容赦なく、彼を頭ごなしに否定するのです。年齢を考えれば、そして、彼の生い立ちを考えれば、多少の逸脱はやむを得ないでしょうし、本来ならば、周囲の大人がそんな彼の気持ちに寄り添い配慮すべき状況といえるでしょう。けれど、周囲の大人たちは、彼の言動の背景にあるものを思い遣ろうともしません。


ここまで容赦なく、大人の虚飾と身勝手を描いた作品というのもあまりないのではないかと思うくらい、徹底的で、ある意味、爽快ですらありました。


終盤で、アントワーヌと彼の母親との間にあったもの、彼の両親が彼に辛く当たる背景にあるものについて、アントワーヌの口から語られる場面があります。その淡々とした口振りに、アントワーヌの諦観が感じられます。その時が、大人への一歳の期待を止めた時だったのかもしれません。そして、それこそが、少年から大人への第一歩なのかもしれません。


アントワーヌは、この時、親を見限ったのかもしれません。アントワーヌの年齢を考えるととても哀しいのですが、絶対的な庇護者ですべてを受け入れてくれるはずだった親も、特別でないごく普通の不完全な人間だということを知ったこの時、アントワーヌは、子どもではいられなくなってしまったのではないかと思います。


子どもが子どもでいられなくなってしまうというのは、悲劇的でもありますが、けれど、この状況の下でアントワーヌが生き残るには大切なことだったのでしょう。


意外に、子どもも人生の理不尽さを味わっているものなのかもしれません。すべての大人には、子どもだったことがあったワケですが、大人には子どもが理解しにくいもの。このどうしようもなくすれ違ってしまう辺りの描写が切なかったです。


けれど、一方で、大人からの過剰だったり、方向性を間違った干渉が子どもにとっていかに有害かと言うことを考えると、アントワーヌを"捨てた"両親の行為はまだましなように思えてしまったりしますが...。

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ウィズ

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ウィズ [DVD]/ダイアナ・ロス,マイケル・ジャクソン,リチャード・プライヤー
¥1,500
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「オズの魔法使い」を元にしたブロードウェイミュージカルをオール黒人キャストで映画化した作品。


ハーレムに暮らす小学校の教師、ドロシーは、感謝祭の夜、愛犬のトートーと吹雪に巻き込まれ、オズの国に飛ばされてしまいます。その際、巨大なネオンサインの上に着地し、下にいた悪い魔女、エバーミーンを殺してしまいます。そのお蔭で、呪いを解かれたミュンヒキンの人々は彼女に感謝を捧げます。彼らの上に立つミス・ワンは、ドロシーにエバーミンの靴を履かせ、ドロシーを家に帰す力を持つのは、魔法使いウィズだけだと告げます。ドロシーは、黄色い道路の突き当りにあるエメラルド・シティに住むウィズを訪ねる旅に出ます。その途中で、脳みそがないことを嘆く案山子、心を持ちたいと願うブリキ男、勇気が欲しいライオンがドロシー一行に加わり...。


「オズの魔法使い」のドロシーは、少女だったわけですが、本作のドロシーはそれなりの仕事も持ったリッパな大人です。ダイアナ・ロスが演じる...ということで、年齢設定をギリギリまで下げた結果なのかもしれませんが、やはり、「オズの魔法使い」の主人公としては違和感がありました。まぁ、当時34歳のダイアナ・ロスが24歳を演じるということもかなり無理矢理感が漂いますが...。


歌もダンスも巧くて、流石の貫録を見せてくれているのですが、それだけに、この年齢からくる決定的な違和感は実に残念。設定を大きく変えるか、他の役をキャスティングしてもっと相応しいところでベテランの味を見せつけて欲しかったです。


で、ストーリー的には、どうということもないのですが、歌と踊りで魅せてくれます。


中でも、20歳のマイケル・ジャクソンの案山子は必見。後の「Thriller」でのダンスに比べると未熟な印象は受けますが、それでも、相当の才能を感じさせてくれるダンスでした。本作に登場するのは、まだ、晩年のような変に真っ白な顔になる前の若々しい姿。このままの姿でいてくれた方がどんなによかったか...と思うのですが、マイケル本人の心の中には周囲からは推し量れないものがあったのかもしれませんね...。


本作への出演で、マイケルはクインシー・ジョーンズに出会い、4年後の1982年にクインシーのプロデュースでアルバム「Thriller」を完成させるのですから、映画自体の面白さは別として、大きな意味を持つ作品であったことは確か。


大物な出演陣の力を活かしきれていないキャスティングや無理矢理感の強いストーリーの面での不満も残る作品ですが、歌と踊りでそこそこ楽しめます。ラストの案山子のセリフは、その後のマイケルの人生を考えても味わい深いものがありました。

ツナグ

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ツナグ(本編1枚+特典ディスクDVD1枚)/松坂桃李,樹木希林,佐藤隆太
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辻村深月の小説を映画化した作品。原作は未読です。


死者との再会を叶えてくれる人がいるらしいという噂を聞きつけ、半信半疑で依頼をしてくる人たちの前に現れる使者は、ごく普通の男子高校生、歩美(あゆむ松坂桃李)。死者との再会を仲介する"ツナグ"は、先祖代々、歩美の家に受け継がれてきたで、彼は、それを祖母のアイ子(樹木希林)から引き継ぐ途中の見習いでしたが...。


修行中の歩美は、3人に対して死者との再会を仲介することになります。


横柄な態度で、癌で亡くなった母、ツルに会うことを希望する中年男性、畠田。
喧嘩別れをしたまま自転車事故で死んでしまった親友、御園(大野いと)に聞きたいことがある女子高生、嵐。
プロポーズ直後に突然失踪した恋人、キラリのことを信じて待ち続けているサラリーマン、土谷。


"ツナグ"への依頼のルールなど、それなりに納得のできるもので、設定は巧くできていたと思います。身近な死者に対し、何かを取り戻したり、確認したりするチャンスが欲しいというのは、素直に納得できます。

人は様々な理由で擦れ違い、反目しあいます。時には、大切に想い、長年良い関係を築いてきた相手とですら。そんなタイミングで相手に死なれてしまったら、取り返しがつかないもの。できなかった謝罪、赦し、仲直り、言いたかったのに言えなかったいろいろなこと、聴きたかったのに聴けなかった様々なこと...。本作を観て、もし、自分がたった1人の死者に1度だけ会えるとしたら、誰に会いたいと思うだろう...と想いを巡らせる人も多いのではないでしょうか。


物語としては、心に沁みるものがありましたし、映画作品としても悪くはないのですが、登場人物の感情がやたらと説明されてしまうところは気になりました。見ればわかるだろうという場面が多く、うるさい感じがしました。また、少々、描写がくどく感じられる部分もアリ、全体にテンポの悪さは気になりました。


御園の人間的にでき過ぎた感も気になりました。彼女に関わるエピソードが描かれた部分では、何だかとんでもないことが出てきそうで、少しハラハラでしたが、特別なことは何もなく、ちょっとはぐらかされた感じ。御園の嵐に対する行動で、嵐を思い遣るようにも見えながら、彼女に対する復讐のように受け止めることもできそうな場面があるのですが、その辺りで、御園の心の闇のようなものが描かれていれば、このエピソードはもっと面白くなったような...。


それにしても、樹木希林の存在感が印象的。この人の登場だけで、映画作品の質が上がる、それくらいの力のある演者だと思います。もっとも、本作は畠田のエピソードで母親役の八千草薫、女子高生のエピソードで嵐を演じた橋本愛の演技がエピソードを味わい深くしていると思いますし、全般に演技の力に頼った作品といえるのかもしれません。

生者と死者が再会する場となるホテルが重厚な趣のある造りで素敵でした。どうやら、横浜、山下公園前の"HOTEL NEW GRAND"のようです。やはり、この造りから、様々な映画やTVの撮影に使われているそうで、「THE 有頂天ホテル 」もこのホテルで撮影されたのだとか。


樹木希林と"HOTEL NEW GRAND"。これだけでも、本作を観る理由になるのではないでしょうか。少なくともレンタルのDVDなら十分に。

「すや」の「栗納豆」

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栗きんとんで有名なすや。栗きんとん は季節限定のお菓子ですが、通年で販売されている栗のお菓子もいくつかあり、そのひとつが栗納豆です。


さすがに栗のお菓子で有名なお店だけあって、しっかりした粒の見事に美味しい栗です。


外側の少し固めの歯ごたえとホクッとした栗の感触。それに、表面にまぶされたザラッとしたザラメ。少々、甘目ではありますが、甘過ぎず、栗本来の味が十分に生かされていて、贅沢な味わいです。


同様のお菓子としては、京都の若菜屋の栗納豆もありますが、それぞれが、それぞれに魅力的。


袋入りで、一袋100gで、5~7個のお値段が税込840円。ということは、1個当り、120円~168円(税込)。まぁ、栗のお菓子ですから、決して法外な値段とは言えないでしょう。お味を思えば、リーズナブルと言えるのではないかとも思います。


以前から、栗きんとんの季節には、高島屋(日本橋、新宿、横浜)で販売されていて、1シーズンに3、4回は、新宿高島屋に買いに行っていました。最近は、栗納豆や栗ようかんも通年で販売されるようになっていて、時々、栗納豆を買いに行っています。


個装されていて、賞味期限が10日くらいあるので、一袋買って、職場の机の引き出しに忍ばせ、小腹の空いた時のオヤツなどにもしちゃっています。



すや 公式サイト

http://www.suya-honke.co.jp/index01.html

リック

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リック [DVD]/ブラッド・ピット
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種類を問わず光に当たることができない珍しい皮膚病に冒されているリックは、常に、全身を覆い尽くす黒い服を身につけていました。リックの父は、治療法を求め、世界中を旅し、2年前からアドリア海に面した村にいる祈祷師の元に通っていました。彼は、治療法を教わりますが、その効果は3日間しか持たないとのこと。けれど、彼は、たった3日間でも普通の生活をしたいと主張します。そんな頃、彼はアメリカから来た女優と出会い...。


1988年、ブラッド・ピットが23歳の夏にユーゴスラビアで撮影された作品で、本作がブラッド・ピットの初主演作。編集が完成する前に、ユーゴスラビアで内戦が勃発し、フィルムがバラバラになってしまったのをプロデューサー、アンジェロ・アランジェロヴィッチが、戦時下のバルカン諸国などを5年も捜索した末に、ようやく発見した幻の映画とのこと。


まだまだ初々しい若き日のブラッド・ピットがご登場です。多くの場面で、イケメンなお顔がマスクに覆われているのは残念ですが、その分、後半を中心に拝める白くて整った顔の印象が鮮明に感じられるのかもしれません。


たった3日間でも普通の生活をしてみたい...という気持ち自体は分かる気がします。例え、その3日間で人生が終わってしまうとしても、太陽の下で活動してみたい。本来なら、青春を謳歌しているハズの年齢なのですから、それができないでいることが相当の苦痛であったろうことは想像ができないでもありません。


けれど、全身を覆われた彼を受け入れ、愛する女性と出会った時、その考えが揺らがなかったのでしょうか。黒づくめの彼を愛した彼女との長い年月のために、残りの太陽の下での生活を犠牲にすることはできなかったのでしょうか。それができなかったのも、"若さ"ということなのでしょうか...。


生命を懸けて、彼女との未来を犠牲にしてまで、彼が求めた"3日間"というのは、何だったのか...。そこまで、3日間の普通の人生を求めた理由が弱かった気がします。


リックを見守る父親が素敵。彼らの生活振りを見れば、かなり経済力があったことは分かります。それだけ、余裕を持てる状態だったことも大きかったのでしょうけれど、特異な状況に囲まれながらも、病気の妻を支え、息子をしっかり育ててきた辺り、実に見事なお父さんです。


そんなお父さんの息子に生きていてもらいたいという気持ちと、息子の望みを受け入れてやりたいという気持ちとの葛藤が切なく、心に沁みました。本当なら、力尽くでも、息子を外には出したくなかったでしょう。全身を覆わせたかったことでしょう。けれど、息子と正面から向き合い、その決断が一時の気の迷いではないと理解した時、その想いを受け入れます。息子の病気の治療のために尽力してきた彼が、そこに至るまでの苦悩を想うと泣けてきます。


まぁ、作品としては、ブラッド・ピットを観るための...といった色彩が強いことは否めません。けれど、この父親を演じたガイ・ボイドの存在感が、本作の味わいを深めていたと思います。


ブラッド・ピットのファンなら必見の、そうでなければ、TSUTAYAで旧作無料のクーポンでもgetした時にレンタルするには適当な作品といったところでしょうか。

遥かな町へ

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遥かな町へ [DVD]/パスカル・グレゴリー,レオ・ルグラン,ジョナサン・ザッカイ
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谷口ジローの同名コミックをフランスに舞台を移して映画化した作品。原作は未読です。


パリ在住の漫画家トマ・ヴェルニアは、中年の男性。ある時、トマはふとした事から郷里の駅に降り立ちます。父の墓参りに行き、倒れてしまったトマは、気付いた時、14歳に戻っていました。彼が戻った時代は、1967年。父が疾走する数日前でした。トマは、2度目の14歳を過ごしながら父が姿を消した理由を探り、父の失踪を阻止しようとしますが...。


成長した後の心をもって人生をやり直す。そして、その中で、"現在"の自分よりも若い父と母に出会う。その時のトマの両親を見つめる眼は、両親の姿と同時に"現在"の自分と妻の姿を見たのではないでしょうか。すでに"父親"になっているトマであれば、14歳のトマには理解できなかった父の内面に寄り添うこともできたでしょう。想い出の中に見えたものは、幼き日の想い出であると同時にこの先の我が身であったことでしょう。この二重構造が本作の魅力なのだろうと思います。


14歳のトマであったら父を止めたかもしれません。けれど、既に大人になっているトマには、それはできませんでした。かつては理解できなかった父の気持ちを理解するようになったのは、トマの成長でもあるのでしょう。本当は、分からないで行動できた方が幸せだったのかもしれません。余計なことを気にせずにいられる方が幸福なのかもしれません。けれど、例え、そのために悩みを増やしてしまうとしても、相容れない相手の立場をも理解できるようになることが大人への歩みと言えるのでしょう。


純粋に子どもの立場でいられなくなった哀しみと大人の目線からかつての自分を見つめ直す機会を得られた幸運。"タイムスリップ"自体は、目新しい物語ではありませんが、トマがこれからの自分と若かりしの父を重ねて見る視線に、心に沁みるものがありました。


"現在"のトマとかなりイケメンな14歳のトマとのギャップが大きく、その点では、ほとんど唖然とさせられるくらいに違和感ありありで残念でした。全体には、メリハリがあまりなく、平凡な感じで、観ていて集中力が削がれがちでもありました。


けれど、映像が実に綺麗。細部まで、いかにも1960年代な雰囲気に仕上げられ、自然も街並みも美しく、ところどころ息を呑むような映像があり、印象的でした。

みんなで一緒に暮らしたら

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みんなで一緒に暮らしたら [DVD]/ジェーン・フォンダ,ジェラルディン・チャップリン,ダニエル・ブリュール
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昔から誕生日を夫のアルベール、友人のアニーとその夫のジャン、写真家のクロードの5人で一緒にお祝いしてきたジャンヌ。最近は、年々、悩みが増え、人生の最後をどう過ごすかを考えるようになっていました。そんなある日、友人のクロードが発作で倒れ、無理矢理、老人ホームへ入れられてしまいます。ジャンヌたちは彼を助け出し、みんなで一緒に暮らすことを決意。5人の男女と犬の散歩係として雇われている学生、ディルクが一軒家で共同生活を始めますが...。


孫が遊びに来るようにと、費用の心配をせずに庭にプールを造ってしまうレベルの所得があれば、こんな風に思うように人生の締めくくりの日々を過ごすことができる...ということなのでしょうか。


年を重ねれば、若い時には何でもなく自分たちでできたことができなくなっていく...ということ自体は、経済状況や社会的地位、出自に関わらず誰にでも起こること。けれど、それを補う手段を講じることができるかどうかということについては、経済力が大きく関わってきます。


独身のクロードが、若い女性たちと楽しめたのも、経済力あればこそ。フランスに、彼らのような老後を過ごす資金を持っている人がどの程度いるのか...。ちょっと興味を惹かれました。まぁ、クロードが入れられたような老人ホームが存在するわけですから、そういった施設がないと困る人もいるのでしょうし、そうした場に頼らざるを得ない人もいるってことなのでしょう。


共同生活を始めるシニアな皆様たちは、いずれも御年70歳以上...という設定。で、牛肉を一頭買いし、ワインをがぶ飲みし、恋にもエッチにも積極的。さすが、おフランス...ということなのかもしれませんが、"枯れる"という言葉とは無縁のようで...。生活を楽しむエネルギーとそれを支える経済力。そこに、あんな素敵な色の棺を用意するジャンヌの覚悟が加われば最強です。


それぞれが積み上げてきたものの重さが今一つ伝わってこないというか、ここに至るまでの人生の描き方がちょっと薄い辺りが物足りなかったですが、私にとっては、そう遠くない先にある"老後"の明るい面を見せてくれる作品で、考えさせられるものがありました。


映画作品としての完成度は必ずしも高いとは言えないような気がしますが、名優たちの演技に支えられ、味わいのある作品になっていました。

噂のギャンブラー

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噂のギャンブラー [DVD]/レベッカ・ホール,ブルース・ウィリス,キャサリン・ゼタ=ジョーンズ
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実在の女性ギャンブラー、ベス・レイマーの自伝を映画化した作品。


ベスは個人客専門のストリップダンサーをしていましたが、ひょんなことからスポーツブックを生業とする噂のギャンブラーのディンクのアシスタントをする事になります。元々、数字に強かった彼女は徐々に才能を発揮していきます。そしてベスは、仕事だけの関係では無くディンクに魅かれていきますが、ディンクには妻(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)がいて、2人の関係は発展しそうにありません。ある日、妻にベスの存在を疎まれたディンクはベスを解雇しますが、その後ディンクは負け続け、資金も上手く回らなくなります。一方、ディンク達の元を離れNYの違法スポーツブックに手を出してしまったベスは、ジャーナリストのボーイフレンド(ジョシュア・ジャクソン)を巻き込み逮捕されそうになって...。


実話...なのだそうですが、描き方の問題なのか、全くリアリティがありません。冒頭で"実話"だと謳っている作品で、普通、かなり都合の良い展開満載でも、実話ベースならではの説得力のようなものが感じられるのですが、本作にはそれがありません。


人間関係の築き方も行き当たりばったり。何故くっつき、何故離れるのか...全く説得力が感じられません。個々の登場人物の描き方も一様に浅く、その点でも、物語の面白みが感じられません。


実話なんだから、適当に描いても、OKだろう...ってことだったのでしょうか。


ベスが"才能を発揮"と言われても、ただ、運が良かっただけのようにしか見えません。ギャンブラーなのだから、運が何よりの才能でそれ以外は関係ないということなのでしょうか。もっとも、"伝説的なギャンブラー"であるはずのディンクにも、そんなに才能があるように思えないのですが...。


結構、ビッグ・ネームが出演している割には、荒っぽい作りの作品だったと思います。ひたすら残念な作品でした。