リンカーン弁護士

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リンカーン弁護士 [DVD]/マシュー・マコノヒー,ライアン・フィリップ,マリサ・トメイ
¥3,990
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事務所を持たず、高級車リンカーン・コンチネンタルの後部座席をオフィスにL.A.中の法廷を駆けめぐるミック・ハラーは、金次第で麻薬密売や売春で逮捕された依頼人の"無罪"を勝ち取る敏腕弁護士。ある日、女性への暴行で殺人未遂容疑で告発された資産家の御曹司、ルイス・ルーレの弁護を担当することになります。ルーレから賠償金を得ることを目的に企まれた事件で自分は嵌められたのだと主張するルーレの話が正しいと思ったハラーは、簡単に高額な報酬を得られると踏みます。けれど、調べるうちに、過去にハラーが担当した別の殺人事件の真犯人がルーレかもしれないという疑惑が浮上します。ルーレの身辺を調べ始めたハラーの周辺にルーレの魔の手が迫り...。


相当に悪徳なところもある弁護士なのですが、弁護士として守るべき一線は意識している様子。彼が弁護士の何より優先すべき正義と考えていることは、"無実の人を刑務所に送らない"こと。本来、刑事裁判の原則は"疑わしきは罰せず"であることを考えると、ハラーの考え方はあながち間違ったものでないということになります。そして、依頼人の利益を考えることも弁護士としての責務なわけですから...。確かに、ハラーのやり方は、時としてかなり強引ですが、まぁ、ギリギリ、ルールを犯してはいない...ということになるのでしょうし...。


依頼されたルーレの事件から4年前の事件を連想した時、真実を追求したりせず、良心を抑え込み、一切にフタをして、ルーレの無罪を勝ち取って一攫千金...ということだってできたわけです。けれど、ハラーは、無実の罪で囚われているマルティネスを犠牲にしようとは考えませんでした。


弁護士としての職業倫理と正義感が対立する状況で、何を選び取っていくのか...。基本は地味な法廷劇でしたが、そこそこのドキドキがあり、適度にハードボイルドで、物語のテンポもよく、なかなか楽しめました。


ただ、ルーレは、秘匿特権で自分を守るためにハラーを雇ったということになるワケですが、これは、考えてみれば、かなり危ない橋です。ハラーが優秀な弁護士であるなら、ハラーが4年前の事件の真犯人を知ることになる可能性は低くないわけですし、ハラーが真相を知ってしまえば、秘匿特権を護りながら真実を世に明らかにする方法を考え出す可能性もあるわけですし、ハラーが根っからの悪徳な弁護士なら、その真相をネタにルーレを脅迫したかもしれないワケで...。


ルーレがハラーを雇わなければ、本作の物語そのものが成り立たなくなってしまうので、ルーレがハラーに依頼するための理由付けは必要なのですが、少々、無理をしている感じもしました。


正義と悪という明快な図式ではなく、正義の中に悪があったり、悪の中にも正義があったり。単純な勧善懲悪に陥らなかった点が本作の魅力になっていると思います。


ルーレや彼の母親が、ハラーの部屋に簡単に侵入できてしまったりするのはご愛嬌でしょうか。少なくとも、ルーレに入られた後は、簡単に部外者が侵入できないような措置を講ずるべきだったでしょうに...。というか、こんなに簡単に部外者に入られてしまったり、銃を奪われてしまうようでは、ハラーの守るべき秘密を守ることなど、到底できそうにありません。


まぁ、そもそも、相当量の資料を扱わなければならない弁護士の事務所が"リンカーン"というところ自体に無理があったとも思うのですが...。


それでも、お金持ちの不良息子の始末に負えない感じをライアン・フィリップが好演していましたし、主演のマシュー・マコノヒーも悪人だか善人だかよく分からない強かさと腹黒さと正義感を併せ持った人物を見事に存在させていて、最後まで楽しく観ることができました。シリーズ化される可能性も高い作品だと思いますが、本作で殺されてしまったフランクの登場がないのだとすると残念です。

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るろうに剣心

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るろうに剣心 通常版 [DVD]/佐藤健
¥2,980
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1994年から1999年に「週刊少年ジャンプ」で連載された和月和宏の同名漫画を映画化した作品。TVアニメにもなっていますが、原作、アニメ、どちらも未見です。


明治10年の東京。神谷活心流の人斬り抜刀斎を名乗る人斬りが現れ、多くの人を手にかけていました。抜刀斎とは、幕末に最強の人斬りとして名を馳せた人物でしたが、今回、現れたのは、偽者。その正体は、アヘンを使って日本を牛耳ろうと企む実業家、武田観柳に護衛として雇われていた鵜堂刃衛でした。父親から道場を継いだ神谷活心流の師範代、神谷薫は、抜刀斎を探す最中、緋村剣心という逆刃刀を持った人懐こい笑顔のるろうに(=流浪人)と出会い、彼を居候させることになります。実は剣心こそが、"人斬り抜刀斎"で...。


音がない漫画という表現手段と実際に人間が喋る実写の違い...ということになるのでしょうけれど、剣心の「ござる」がどうも、様になりません。多分、文字で読む分にはあまり気にならないのだと思います。けれど、実際に、超えに出されてしまうと、何だかとってつけたような感じというか、子どもがふざけている感じというか...どうも、間が抜けてしまいます。"最強の人斬り"という過去を気取られないようにするための隠れ蓑...ということなのでしょうか...。


全体に、無難に纏められている感じがあって、つまらなくはなかったのですが、では、面白かったのかと言われるとそうとも言えない...という微妙な感じです。134分という2時間越えの作品になっているのですが、物語の上っ面をサラッと撫でたようで深みが感じられませんでした。


いろいろな要素を詰め込み過ぎたのかもしれません。登場人物も多くて、整理できていないような...。もう少し、人物もエピソードも絞って、ひとつひとつを丁寧に描けば、かなり、面白くなったのではないかと思うのですが...。


物語の中心となるべきと思われる剣心と薫のロマンスにしても、描き方には不満が残ります。出会いも無茶苦茶。薫の決め付け方はあまりにあまり。2人の距離が縮まっていく過程についてもサラッとし過ぎて、唐突感がありました。


アクションシーンは、なかなか、頑張っていたと思いますが、漫画なら、あれこれ心の中で呟きながら剣を交えるので、心理戦的な面白さを味わえるのでしょうけれど、実写では戦いながら演説するわけにもいかず...といったところでしょうか。悪くはなかったのですが、全体に単調な印象を受けてしまいました。


香川照之の観柳は、器の小さくてあこぎな悪人で、いかにもそれっぽかったです。いつものことながら、さすがです。一番の見どころは観柳ですね。

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アジアの純情

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アジアの純真 [DVD]/韓英恵,笠井しげ,黒田耕平
¥3,990
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2002年秋、北朝鮮による拉致事件で反朝鮮感情が蔓延する中、チマチョゴリを着た在日朝鮮人の女子高生が、チンピラに殺害される事件が発生。チンピラに絡まれているところを彼女に助けられたことがある少年は、偶然、事件現場に居合わせたのですが、彼女を助けるための行動を一切起こすことができず、彼女を見殺しにしてしまいます。少年は、数日後、殺害された女子高生の妹に出会います。彼女は姉を殺された悲しみと、姉を見殺しにした人々への怒りで満たされていましたが、少年も、そんな彼女に共感を覚えます。やがて、第二次大戦から残された毒ガスの瓶を発見した2人は...。


右翼から批判されている映画だというのは聞いていましたが、成程ですね。いくつか人が殺される場面が登場しますが、在日朝鮮人女子高生が殺される場面は、殺される状況、葬式の様子など、細かく描写されますが、拉致被害者家族の集会に乗り込んだ2人が毒ガスを撒く場面では、人が死ぬ場面はスルーされます。さらに、殺された在日朝鮮人女子高生は、少年を救った英雄だし、拉致被害者の救出を訴える被害者家族の姿は醜悪な感じに描かれています。確かに"反日映画"と言われても仕方ないところでしょう。


実際、これまでにも、北朝鮮が何かやらかした時に、在日朝鮮人バッシングがあったり、朝鮮学校の生徒に対する嫌がらせがあったりしたわけで、そんな形で憂さ晴らしをしようなんて卑怯だし、醜悪なことだと思います。(とはいえ、尖閣諸島や魚釣島に関連した中国や韓国における反日の動きを見ると、そうした事件よりも、遥かに度を超えて酷い感じはして、つくづく、日本は平穏だと実感したりもします。もちろん、だから、日本で行われた程度のバッシングは許されるということにはなりませんが...。)


で、日本が過去の歴史に向き合わないことは許せないけれど、拉致問題に関しては"自分たちは関係ない"と言い切ってしまっている辺りも気になります。しかも、本作の空気感の中では、それが受け入れられている感じ。"拉致問題に在日朝鮮人は一切関係ない"なら、"過去の戦争責任は現在の日本人が追うべきではない"ということになるような...。


まぁ、それはさておき、何だか支離滅裂感の拭えない作品です。作中で、カラオケに行った主人公たちがPUFFYが歌った"アジアの純真"を歌いまくるシーンがありますが、そう、あの歌の歌詞のような脈絡のなさです。特に取ってつけたようなラスト約20分。全体に雑な感じがします。


何を考えているのかよく分からない少年。拉致事件についてのニュースを家族で見る場面でも、少女の怒りを受け止める場面でも、少年自身の感情は、ほとんど表出されません。ただ、少女に振り回されているだけな感じ。


自分なりの考えというものを持てずにいる少年と自分の中の怒りをどう処理して良いかわからない少女。自分の居場所も持てずにいるそんな2人が、"この国でもあの国でもないどこか"に行こうとしています。もちろん、そんな都合の良い"どこか"などあるはずもなく、通常、人は、子どもから大人になる過程で、自分が生きる制約のある現実の中に自分なりの居場所を創り出すものなのでしょうけれど、2人は、それを現実ではない、死や幻想の中に見出してしまった...ということなのでしょうか...。


政治的な面を持たせながら、途中からは、少年、少女が子どもから大人になる過程で挫折していく、いかにも青春な物語が前面に出され、何だか、中途半端な印象の作品になってしまっています。もっと、少年の自我のなさや少女の苛立ちをそこに絡めて丁寧に描いていれば、面白くなったのではないかと思うのですが...。


全編を白黒にした意味合いもよく分からない...というか、普通にカラーで全く問題なかったような...。まぁ、「頭でっかちで世間をしらない理論派の"ゲージツ家"が真面目に一生懸命作った、お金儲けを一切考えない自主映画的な作品」といったところでしょうか。好きな人は好きなんでしょうね。

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見えない雲

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みえない雲 [DVD]/パウラ・カレンベルク,フランツ・ディンダ,ハンス=ラウリン・バイヤーリンク
¥3,990
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ドイツでセンセーションを巻き起こしたベストセラアー小説を映画化した作品。原作は未読です。


幼い弟、ウリーと母親の3人で暮らしている女子高生、ハンナ。ある日、気になっていた転校生のエルマーに告白され、ぎこちない会話の後、キスされます。喜んだハンナでしたが、突然、サイレンが鳴り響きます。それは、近郊の原子力発電所が事故を起こしたために作動した警戒警報でした。生徒たちが一斉に家に向かう混乱の中、ハンナとエルマーは別行動せざるを得なくなります。必ず迎えに行くというエルマーの言葉を信じて、ハンナは弟と自宅で待ちますが...。


本作を観たのは、先日、送られてきた「カタログハウス」のカタログにDVDが同封されていたから。映画一本が丸々入ったDVDがオマケとは、なかなか、太っ腹です。


で、反原発とか、原発の危険性を訴える作品かと思ったのですが、危機的な状況下でのラブロマンスでした。何も、ここに原発をもってくる必要はなかったと思います。


ハンナの病気の進行やその回復具合についても何だか軽い感じでリアリティないですし、ハンナと一緒に入院していた人々の様子もどこか"被曝による病気"という感じは受けません。


髪の毛が抜け落ちた頭で、かつらを使うこともなく堂々としているハンナ。その背景には相当の決意や覚悟があったはずなのですが、その辺りの描き方が薄く、ハンナの凛々しさや強さがあまり身に染みて感じられなかったのはとても残念でし


事故後の被害状況についても、全体像が描かれず、ハンナや同病室の患者たちの病気以外にも生活の様々な面に及んだはずの深刻な被害の状況がいまひとつ伝わってきません。


チェルノブイリ後の作品ですし、もっと、放射能や被曝ということについて、しっかりリサーチすべきだったのではないかと...。


警報が鳴り響く中、パニック状態になる人々の様子。特に駅でのシーンは迫力たっぷりで恐ろしさが感じられました。...が、観るべきはそこだけ...だったような...。


本作で描かれている事故自体は、福島後の、そして、この期に及んでも原発の再稼働の流れが止まっていない、広島、長崎、第五福竜丸に次ぐ4度目の放射による被害を"教訓"にすることができなさそうな日本に住む私たちにとって、真剣に考えるべき内容であることは間違いありません。それだけに、本作の残念さは惜しまれます。

東京家族

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1953年に公開された小津安二郎の名作「東京物語」の家族を平成に移して作られた作品。


2012年5月、瀬戸内海の小島に暮らす平山周吉と妻のとみこは、子どもたちに会うために東京へやって来ます。郊外で開業する医師の長男、幸一の家に数日間滞在しますが、休みの日に皆で出かる予定をしていても、患者の容体が悪化し、急な往診を頼まれたため予定はキャンセル。周吉ととみこは、時間を持て余します。次は、長女の滋子の家に泊まりに行きますが、美容院を経営する滋子は忙しく、両親の相手ができません。滋子に頼まれ、次男の昌次は両親を東京の名所巡りの遊覧バスに乗せますが、自分は疲れて居眠り。鰻屋で昼食を取りながら、周吉は、舞台美術の仕事をしている昌次に将来の見通しはあるのかと問いただします。昌次は、昔から自分に厳しい周吉が苦手でした。その頃、滋子は幸一にお金を出し合って2人を横浜のホテルに泊めることを提案します。ホテルでいまひとつ落ち着けず、2泊の予定を1泊で切り上げ、滋子のところに戻ってきた夫妻でしたが、滋子に予定があって泊められないと言われてしまいます。周吉は同郷の友人、沼田を訪ね、とみこは昌次のアパートへ行くことにし...。


子どもたちの家を訪ねる夫妻。長男の幸一は開業医となり、長女の滋子は美容院を経営。それぞれ家族も持ち、それなりに自立した生活をしています。まぁ、そういう意味ではしっかりと大人になった2人ですが、日々の仕事の忙しさに、両親とゆっくり付き合うことができません。周吉もとみこも、子どもたちの家にいながら、どこか居心地の悪さを感じています。


でも、決して悪い家族ではありません。むしろ、作中で指摘されている通り、平山周吉、とみこ夫妻は、相当に幸せな方なのではないかと...。確かに、幸一の家でも、滋子の家でも、どこか、居心地の悪さを感じている様子ですし、幸一夫婦も滋子夫婦も、どこか、周吉ととみこを敬遠してはいます。けれど、それなりに気遣いをしているのも確か。昌次や紀子とは打ち解けますが、次男の家には最初から短時間の滞在の予定だったわけだし、紀子には別に帰る家がある。ギリギリのスペースしかない自分たちの生活空間に庄吉、とみこ夫妻を受け入れなければならなかった幸一一家や滋子夫妻とは置かれた状況が全く違います。幸一や滋子の家に普段使わない客間がるとか、夫妻を受け入れるてもそれまでの家族の日常のペースが乱されない状況にあるとかなら、幸一や滋子も、昌次や紀子のように夫妻に温かく接することができたのかもしれません。紀子は、東京では、別に帰る家があり、田舎では、周吉と別棟で生活できたのですから、幸一や滋子と比べ、かなり気持ちに余裕をもてたのではないでしょうか。


実際、東京でよりも、距離が近付いた島では、紀子の気持ちにも変化があったように見受けられますし...。


逆に、もし、周吉ととみこが、自分たちの生活に利用する以上にあまりスペースに余裕のない家に住んでいて、そこに、子ども夫婦が転がり込んできたとしたらどうだったか...。親世代と子ども世代では、生活のリズムも違うことでしょう。親たちが寝る時間は子どもたちにとってはまだまだ活動する時間だし、起きる時間、食事の内容なども違ってくることでしょう。ちょっとずつ日常のペースを崩されるというのは、特に高齢になり適応力が弱くなっている親世代にとってはキツイのではないでしょうか。


生活のパターンやリズムの違う者同士が共に生活するためには、それなりのスペースが必要なのではないかと...。


幸一夫婦も滋子夫婦も、それぞれ、それなりに頑張ってはいるのです。田舎から出てきた老いた両親をとまらせるなら、高級洋風ホテルよりは和風の旅館が良かったような気はしますし、ホテルにも和食の店は入っているのでしょうから、夕食は和食にしても良かったとは思います。その点では、配慮が足りなかったといえるのでしょう。幸一夫妻や滋子夫妻をもっと悪者にした方が、紀子の優しさが際立ち、紀子の存在に救われた周吉ととみこの嬉しさが前面に出たのだと思います。


そして、とみこはともかく、周吉を初め、結構、みなさん愚痴っぽいです。弁当持ちで塾へ行く孫が置かれている環境を危ぶみ、将来を諦めるような発言をする孫を憐み、ホテルの従業員は若い客より年配客は部屋を綺麗に使うと指摘し、周吉は二度と東京にはいかないと宣言し...。皆さん、世の中が悪くなっていることを嘆いています。でもねぇ、街を歩いていても、電車に乗っても、映画館でも、行儀の悪い高齢者が少なくないことを私たちは知っています。若者たちの方が、ずっとしっかりしている部分も少なくなく...。まぁ、本作でも、震災のボランティアをする若者たちや周吉やとみこを気に掛ける近所の女子中学生の存在はありますが...。


いずれにせよ、周吉のグチグチは、観る者の気持ちを周吉より子どもたちの側に傾かせているのではないかと...。なので、粗末に扱われて寂しい老親と冷たい子どもたちという「東京物語」の設定が、覆され、そのために物語のポイントがボケてしまっているような...。


取ってつけたような震災の扱いも気になりました。確かに、この震災ボランティアで知り合った昌次と紀子という設定はひとつのポイントなのかもしれませんが、震災関連は、そこだけに絞るべきではなかったかと...。


そして、時代設定は平成...になっているはずなのに、何故か、昭和の香りが...。セット(特に美容室のセット)とか、イマドキ、幸一が"往診する"という設定ゆえでしょうか。


まぁ、とはいえ、それなりに見応えのある作品で、2時間超の上映時間、そこそこ楽しめました。これもオリジナル作品の力の偉大さゆえなのでしょうか。


本作を捧げられた小津監督。天国でお困りなのではないでしょうか。



公式サイト

http://www.tokyo-kazoku.jp/

アベンジャーズ

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アベンジャーズ [DVD]/ロバート・ダウニーJr.,クリス・エヴァンス,マーク・ラファロ
¥3,360
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長官ニック・フューリー率いる国際平和維持組織、シールドの基地で、世界を破壊する力を持つ四次元キューブの極秘研究が行われていました。けれど、突然、制御不能に陥ったキューブが別世界への扉を開いてしまいます。そこから現れたのは、神々の国アスガルドを追放され、地球支配を目論むロキ。彼は、セルヴィグ博士やシールド最強のエージェント、クリント・バートンを操り、キューブを強奪して姿を消します。その野心を知ったフューリーは、最強ヒーローたちによる"アベンジャーズ"結成を決意し、女スパイのナターシャ・ロマノフやエージェントのフィル・コールソンとともに、ヒーローたちを招集します。70年の眠りから覚めたキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャース、インドのカルカッタに身を隠していたブルース・バナーなどが集結。ロジャース、ロマノフ、トニー・スタークたちは、キューブの力で異世界の軍隊を地球に呼び込もうとするロキを捉え、特殊監房に収容しますが、そこに、ロキの兄、ソーが現れます。一堂に会したアベンジャーズでしたが、なかなか協力し合うことができず...。


チームを組むことになるヒーローは以下の6人

戦う実業家、アイアンマン

神失格の男、ソー

超人ソルジャー、キャプテン・アメリカ

魔性のスパイ、ブラック・ウィドウ

苦悩の科学者、ハルク

地上最強の射手、ホークアイ


アメコミヒーローとしては、本作に登場する面々より有名な、スーパーマン、スパイダーマン、バットマン、ハンコックといった横綱級大御所が登場しないのは寂しい気もしますが、少し格落ちのメンバーでも束になれば地球を救えるということでしょうか。


とはいえ、やはり、それぞれが大物な面々。各々、プライドもあって最初は分裂。それぞれに苦悩も抱えて、豪華メンバーがそろってはいても本来の実力が出せません。けれど、危機を目の前にして一致団結し大逆転。というパターン自体は陳腐なものです。


けれど、ヒーローたちを統率する立場にいる司令官のニック・フューリーや生身の人間のままで、他のヒーローたち程の特別なスーツもなく、武器も地味めなのに、相当に頑張ったブラック・ウィドウの存在が、本作にいい味わいを加えていたと思います。


クライマックスの大暴れもなかなかのもの。人類を救うためなら、正義のためなら、街の一つや二つ壊れてしまっても仕方ないのです。何てったって、地球の危機。この星を護るためなら、ニューヨークの建物などに構ってはいられません。暴走するのは地球の運命を託されたヒーローたちだけではありません。司令官の更に上層部なんて、核爆弾を発射してしまいます。どうせ、敵により破壊されてしまうなら、禁じ手の武器を使っても、そのために自爆することになったとしても、最後まで戦うべき...ってことなのでしょうか。


クライマックスの戦闘場面は、まぁ、似たようなものを観たような気もしますが、それなりに迫力もあってよかったと思います。中盤位まで、やや、間延びする印象を受ける部分もありましたが、クライマックスでしっかりとそう快感を味わわせてくれています。


人類を救いはしたもののあちこち破壊したヒーローたちの責任を追及する報道がされる映像が入れられるなど、いかにもイマドキのテイストも加えられて、その辺りは、なかなか面白かったです。


欲を言えば、ヒーローたちの描写のバランスは、もう少し考えて欲しかったところ。本来、ロキと互角に渡り合えるはずのソーのロキに対する役割がやや弱い感じがするし、ハルクは大暴れするだけでガンマ線の専門家として呼ばれているにも拘らずその方面での見るべき場面はほとんどなし。キャプテン・アメリカは、最後の報であれこれ指示を出しますが、戦闘場面では今一つ活躍しきれず。アイアンマンが本作の主役といったところでしょうか。このバランスなら、アイアンマン主役の映画に他のヒーローたちがゲスト出演という位置づけの方が納得できそうな...。


予想通り、次回作の可能性を思わせるラストでしたが、折角の大暴れ映画なのですから、次回は、今回登場しなかった他の大物ヒーロたちにも、是非、登場してもらいたいところ。いろいろと大人の事情があるのかもしれませんが、これだけハチャメチャするのですから、大人の事情など小さなことは吹っ飛ばして欲しいものです。

映画 ホタルノヒカリ

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映画 ホタルノヒカリ DVD通常盤/綾瀬はるか,藤木直人
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ひうらさとるのコミックを原作に、2シーズンにわたって放映されたTVドラマを映画化した作品。コミックもTVドラマも未見です。


仕事はきっちり頑張るけれど、家ではジャージでグータラ三昧、「恋愛するより家で寝てたい」が口癖の"干物女"、雨宮蛍は、ある日突然イケメンと恋に落ちたり、なぜか突然イケメンにモテたり...。いろいろあったけど、最終的に同居人の高野部長とめでたくゴールイン。というのが、TVドラマのお話。


結婚しても、相変わらず自宅の縁側でゴロゴロと寝転がり"トド新妻"と化していた蛍でしたが、高野部長がイタリア出張に行くことになり、「旅行より家で寝ていたい」と延期していた新婚旅行を兼ねて、蛍もついて行くことになりました。義務的に観光名所を回りますが、何だか落ち着きません。宿に着き、ジャージでリラックスしていた蛍は、ローマで暮らしている日本人干物女、冴木莉央と出会います。蛍たちと同じ飛行機に乗り合わせた莉央の弟、優もローマにやって来ていて...。


蛍と高野部長が、ローマの休日に倣った観光名所巡りをするので、世界的に有名な名所旧跡の映像がいろいろと登場するのですが、そこで繰り広げられるドタバタがあまりにばかばかしく、無駄遣い感ばかりが感じられて、作品の世界に入り込めません。折角の名所旧跡の登場の仕方も、何だかおざなりで、あまり魅力的な映像にはなっていませんでしたし...。


設定的には、"仕事はできるけれど家にいる時は全く何もできない"という蛍も、その仕事ができる部分を作中では見せてくれないので、ただのおバカにしか思えないのも何とも残念。本作での蛍のすることなすこと、3歳か4歳の子どもならともかく、いい大人の行動ではないですよね。本作だけ観ていると、とても、この人にできる仕事があるなんて思えませんし、部長も蛍のどこをいいと思ったのか理解に苦しみます。職場に入る時に別人格に変身する人なのでしょうか...。あまりに場当たり的で騒がしいドタバタ振りには、部長への愛情も感じられませんし...。


莉央の物語もなんだかしっくりきません。もう少し、蛍たちの物語に巧く絡むような登場のさせ方がなかったものかどうか...。


コミックを読んでいるか、TVドラマを観ているかすれば、もっと楽しめたのかもしれませんが、少なくとも映画作品単体として面白い作品ではないと思います。

舞踏会の手帖

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舞踏会の手帖 [DVD]/マリー・ベル,フランソワーズ・ロゼー,ルイ・ジューヴェ
¥1,890
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晩秋のイタリア。景勝地としても有名なコモ湖畔の古城には、歳の離れた夫を亡くし、一人残されたクリスチーヌ。身寄りもなく、夫に他人との交流を許されなかったクリスチーヌは、夫の墓参り以外にすることもない日々を過ごしていました。亡き夫のブレモンに新しい人生をスタートさせることを勧められ、夫の形見を整理していた時に出てきた彼女の古い手帳に名前が記されていた、16歳で初めて舞踏会に出た時にワルツの相手をしてくれた10人の男性を訪ねることを思い立ちます。ブレモンに、彼らの居所を探してもらったところ、死亡した2人と行方の分からなかった1人を除く7人の住所が分かり...。


月日を重ねる中で埋もれていった若かりし頃の想い出。今ここにある日々のことが優先される中、次第に過去の輝きも気持ちの中から薄れていくのは致し方ないこと。けれど、そんな過去の幻が、ふとしたきっかけで蘇ってくることもあるものです。


亡夫は良い人ではあったようですし、クリスチーヌの結婚は、決して不幸なものではなかったのでしょう。けれど、穏やかで温かかったかもしれないけれど、愛の情熱とも恋の昂ぶりとも無縁の日々は、少なくとも、結婚当初の若かりしクリスチーヌにとって、輝かしいものとはいえなかったでしょう。


そんな彼女に蘇ってきた輝きに溢れた舞踏会デビューの夜。クリスチーヌは、その20年前の想い出を訪ね歩くころになるワケですが、20年というのは、場合によっては、相当の変化を人に与える可能性のある年月。16歳だった彼女も36歳。相手の男性もそれぞれ20年ずつ年齢を重ねているわけで、当時とは全く違った状況に生きる人も少なくないであろうことは予測できること。


それでも、新しい人生のスタートを切るためには、1度蘇ってきた想い出と決着をつけることが大切。相手にも都合があるでしょうに...という点については、横に置いておくとして、7人7様の人生が語られ、時の流れを実感させられます。


その年月の重みは、時として残酷に彼らの人生にのしかかり、時として優しく彼らの中に刻まれた傷を癒していきます。


クリスチーヌは、かつての関わりが男性たちに与えた影響を見せつけられ、同時に、彼女の心に浮かんできた想い出の舞踏会が、実際は、そこまで輝かしいものではなかったことに気付きます。彼女が訪ねた男性の1人に舞踏会に連れて行かれ、想い出の舞踏会と現実の舞踏会の差に愕然とするわけですが、そこで、その舞踏会に夢を重ねているかつての自分のような少女と出会います。


多分、現実を色褪せたものとして捉えることも、夢のように輝くものと捉えることもその人の気持ち次第なのかもしれません。


20年という時の流れの重さと人生の再スタートを前にしたクリスチーヌの自分探しの旅がしっとりと描かれます。彼女が会う男性たちを演じた俳優陣がそれぞれに良い味を出していて、物語の魅力がしっかりと伝わってくる作品に仕上がっています。


一度は観ておきたい作品だと思います。

紳士同盟

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紳士同盟 [DVD]/ジャック・ホーキンス,ナイジェル・パトリック,リチャード・アッテンボロー
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原作はイギリスの小説家、ジョン・ボーランドの「The League of Gentlmen」。原作は未読です。


人員過剰で軍を退役させられたハイド中佐は社会への復讐を決意します。軍の人事記録から7人の免官させられた軍人を選び5ポンド札の半分と銀行破りを描いたスリラー小説を送って仲間をよび集めます。闇事件で免官となって今は賭博師のピーター・レイス元少佐、ソ連に機密を売った前歴をもつ今はラジオ修理工のレクシー元中尉、わいせつ罪で免官のニセ牧師マイクロフト元経理大尉、殺人で免官された射撃の名手ポーチル元大尉、桃色事件で免官された毒ガス専門のルパート元少佐、元ファシスト党員で殺人罪の前歴をもつボディビル指導員スティヴンス元大尉、酔って部下を殺した過去をもつ爆薬専門のウィーヴァー元大尉。ハイドの説得により、一同は"金の羊毛作戦"に参加することになります。目的は銀行襲撃。ハイドが練った綿密な計画に従い、7人は、訓練を積み、周到に準備をし...。


イマドキのスレた頭で観ると、穴だらけの犯罪です。けれど、通信手段がアナログだった時代。練りに練られた計画の元に行われる犯罪も、今の私たちから観ると何だかのどかで、ほのぼのとした気分さえしてきます。


ちょっとしたハラハラドキドキ場面はありますが、それも、ほとんど穏やかといっていいレベルで、何事もなく過ぎ去ります。結構な量の武器を用意したりもしますが、どうやら多くの人が殺されたとか傷つけられたとかいう様子も見られず、ほとんどメルヘンな感じさえします。というより、それなりに大変な思いをして奪った武器は、そんなに使われなかったような...。


本作の制作は1960年ですから、第二次世界大戦後15年が経った頃。1958年からのベルリン危機があったとはいえ、大国同士が争い大勢の人と人が血を流して戦う大掛かりな戦争からは少し縁遠くなっていた頃。第二次世界大戦で、イギリスに勝利をもたらしたヒーローたちの活躍も色褪せてきたころだったのでしょうか。ハイド中佐がリストラされた背景には、徐々に多くの軍人を国家が抱える必要がなくなってきたことがあるのでしょうし、強盗団の面々が軍人ばかりというのも、当時の社会情勢が影響しているのかもしれません。で、軍をリストラされたり、様々な理由で追われたりしながら、最後のパーティーでは女王陛下万歳な曲を流したりする辺り、退役軍人の複雑な心境が反映されている...というのは、あまりに、穿った見方でしょうか...。


ラスト。犯罪は見事に警察の知るところとなり、みんなまとめて御用となるワケですが、何と言っても、1960年の作品。こんな犯罪者たちを野放しにする結末などあり得なかったのでしょうね。


このラストの処理は、伏線の練り方も甘く、あまり面白みが感じられず残念でしたが、名優たちの渋い演技が観る者を最初から最後まで惹きつけてくれます。犯罪者集団だし、かなり情けない生活をしているメンバーもいるのですが、どこか"ジェントルマン"な雰囲気を醸し出しているのは、さすが、イギリス...ということなのでしょうか。


ちなみに本作で"招待状"として使われた5ポンド札は、本物だそうです。当時は固定相場制で1ポンド=1008円。5ポンドだと5040円。当時の日本の男子大卒初任給が16115円だそうですから、その3分の1弱。今は20万円くらいでしょうから、その3分の1は7万円弱。結構なお値段の小道具です。撮影で使用後は、予め連絡してあった銀行で取り換えてもらったのだとか。本来、紙幣を故意に破いたりするのは犯罪だと思うのですが、映画撮影のために当局が許可したようですね。イギリス当局もなかなか粋なことをなさいます。

ゲーテの恋 ~君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」~ [DVD]/アレクサンダー・フェーリング,ミリアム・シュタイン,モーリッツ・ブライブトロイ
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23歳のゲーテは父の意向により、法律を学んでいましたが、作家になることを夢見ていました。父の命により、田舎の裁判所で実習生として働くことになります。そこで知り合った友人のイェルーザレムと出かけた舞踏会でシャルロッテ・ブッフに出会います。その後、恋に落ちた2人ですが、ロッテには、彼女の父親が決めた結婚話が進んでいました。大家族の生活を考え、裕福な相手との婚約を承諾するロッテ。真実を知り、打ちのめされるゲーテ。さらに人妻に失恋したイェルーザレムの自殺が、ゲーテを追いつめます。自殺も考えたゲーテですが、ペンをとり、一心不乱に、ウェルテルと名付けた自らの分身とロッテの恋の物語を書き始め...。


ゲーテが「若きウェルテルの悩み」の出版によりヨーロッパ中に有名になるところを描いていますが、史実からは離れ、かなり、自由に作られた物語となっています。


ゲーテの父:有名な法律家のように描かれていますが、実際は、大学卒業後、フランクフルト市の要職を志したもののうまくいかず、枢密顧問官の称号を買い取り、その後は職に就かず文物の蒐集に没頭していたようです。ゲーテたち子どもたちの教育には熱心だったとのこと。法律家として有名だったのは、母エリーザベトの実家テクストーア家だそうで...。

ゲーテがヴッツラーに行くことになる経緯:ゲーテが法律の勉強をしたのは父の意向で、ゲーテ自身の興味は文学にあったというのは事実。22歳で学業を終えたものの父の願うような役職の仕事には就けず、弁護士の資格を取り、弁護士事務所を開業。けれど、次第に文学活動の比重が高くなり、それを心配した父は、法学を再修得させるため、最高裁判所があったヴェッツラーへゲーテを送ります。

ケストナーとの関係:本作ではケストナーがゲーテの上司になっていますが、実際には友人。ゲーテがロッテと知り合った頃にはケストナーとロッテは婚約していたようです。

「若きウェルテルの悩み」出版まで:ゲーテはロッテに失恋し、故郷のフランクフルトに戻り、再び、弁護士となります。そこに、イェルーザレム自殺の報が届き、この友人の自殺とロッテへの恋という2つの体験を基に「若きウェルテルの悩み」を書き上げ、25歳の時に出版。


まぁ、事実と変更した部分については、製作者側にそれなりの意図があったのだろうとは思います。納得できそうな部分もないわけではないのですが、本当に必要な改変だったのかどうか、微妙な部分も多いような...。ゲーテの恋を生涯に一度の大悲恋のように描きたかったところなのかもしれませんが、これが、初めての"運命の恋"でもなく、この先も、何度か大恋愛をするゲーテです。"ゲーテの恋"と言われても、"どの恋?"という感じなワケですが...。72歳で、17歳の少女に恋して、結婚まで考えていますし...。


ロッテは、経済的な理由のためにゲーテとの恋を諦め、ケストナーとの結婚を承諾したように描かれていますが、実際には、ゲーテも裕福なお家のお坊ちゃまなのですから、彼女の家族に経済的な援助をすることくらいでしそうなものですし...。どちらかというと、ゲーテ自身、友人の婚約者を奪うまでのことは躊躇したということなのではないでしょうか...。


なので、ゲーテを名を出さず、普通のラブロマンスとして描くか、あるいは、「若きウェルテルの悩み」そのものを中心に据えた作りにした方が良かったのではないかと...。その方が、史実との違いを気にせず物語に集中することができたのではないかと...。せめて、史実とはかなり変えていることをテロップなどで説明しておくべきだったのではないかと...。


そして、ゲーテの恋として描くなら、ロッテとの関係はプラトニックを貫いてほしかったところ。実際、ゲーテがロッテと知り合った頃、すでにロッテはゲーテの友人であるケストナーと婚約していて、3人で仲良く遊んだりもしている関係のようです。ここは、互いに惹かれる部分があったとしてもプラトニックを貫かなきゃですよね...。ゲーテの気持ちに負けずにケストナーとの関係を貫いた思慮深さも彼女の魅力なのですし...。


物語自体は、それなりに楽しめましたし、何より、ゲーテを演じたアレクサンダー・フェーリングはいかにも繊細な文学青年で魅力的でしたし、ロッテを演じたミリアム・シュタインも田舎町の素朴な可愛らしさを身に纏っていて好感を持てました。


キャスティングが良く、興味深い物語を描けそうなテーマだけに、残念な感じがしました。