ライク・サムワン・イン・ラブ

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元大学教授のタカシは、デートクラブを通して亡き妻に似た明子を自宅に呼びます。しかし、明子は、彼女に会いたくて東京に来た祖母のことや翌日のテストのことが気になって、今回の仕事には気が乗らない様子。タカシの家に来てもすぐ一人で眠ってしまいます。翌朝、タカシは、車で明子を大学に送りますが、明子の恋人、ノリアキは、タカシを明子の祖父だと思い込んでしまい...。


タカシは、亡き妻の面影を明子に見ます。タカシにとって、明子は亡き妻の代わりであり、あまり会えないらしい娘の代わりだったのでしょう。想い出の曲を流し、ワインを用意し、亡き妻の好きだったスープを作って、彼は妻や娘を取り戻したかったのでしょうか。


東京に彼女を訪ねてきた祖母を気にしながらも、会えない明子。田舎の家族には風俗のアルバイトのことは内緒なのでしょう。まさに"お仕事"に出かけようとしている状態で祖母に合うことなどできなかったのでしょうか。それとも、単に、強引な祖母のやり方に辟易していたのか...。それでも、気になるなら、日中のうちに会うべきだろうとか、あれこれ言い訳せずにさっさと会いに行けばよかっただろうとか、突っ込みたくもなりますが、やはり、その辺りは、彼女の中に逡巡があったと言うことなのでしょうか。ノリアキとの関係についても、どうしたいのだか...。恋人を疑ってしつこく問いただしたり、束縛しようとする傾向が目立つノリアキですが、明子を見ていると、それもやむを得ないかと思えてきます。


ノリアキも、タカシの車の故障に気付き修理する場面などを観る限り、基本的にはイイヤツなのでしょうけれど、明子のことも自分の枠の中に押し込めようとするところがあり、明子にすれば、正直、"重い"存在でしょう。ノリアキの明子への想いは嘘のない一途なものなのでしょうけれど、タカシの言う通り、2人は巧く行かないでしょう。ノリアキに明子の"ウソ"を受け入れる度量はないでしょうから。


タカシが車に乗り込んできたノリアキと話をする場面。明子の"ウソ"をどう受け止めるべきか、ノリアキに諭すタカシ。若くて真っ直ぐなノリアキと老練なタカシの対比が印象的です。


ほぼ全編、この3人を軸に物語が進んでいきます。3人とも、求めるものを得られずにいます。求めるものを得られず足掻きます。タカシは妻との想い出を呼び覚ましたかった、ノリアキは思い描くような関係を明子と築きたかった、明子は現状を良いとは思っていない様子ですが、かといって、周囲の要求を跳ね返すこともできず...。


祖母が明子に掛ける電話、ノリアキが明子に掛ける電話、弟がタカシに掛ける電話、明子がタカシに助けを求めて掛ける電話。一方的に自分の想いや都合だけを伝える電話が様々な形で登場します。


本作には、一方通行の想いが溢れています。突然明子を呼び出す祖母の想いは明子への一方通行。ノリアキの恋心も明子に向かう一方通行。タカシが明子を呼んだ背景にある想いも明子には届かない一方通行。そして、明子は様々な想いを受け止めきれずにいます。そもそも受け止める気がないのかもしれません。けれど、だからといって、それを跳ね返そうとするわけでもなく...。


そして、虚と実。誤解と嘘が基盤にあった時は平穏で安定していた3人の関係が、嘘がばれたことで、一転、混乱しトラブルが勃発。嘘の上に成り立つファンタジーの中では、巧く行っていた関係が、ファンタジーが崩れたことで、登場人物の関係も崩れていきます。本当のことが明らかになり生身の姿で向き合った時、新しい関係を築いていくことができるのか...。嘘だけれど安定した関係が、混乱期を乗り越えてリアルで美しい関係に変化することができるのか...。


突然、終わりを迎える本作の物語。唐突なエンディングに驚きましたが、本作は終わっても3人の人生はその先に続いていくことを感じさせるラストでした。


全体に寡黙で地味な作品ですが、個々の人物描写は巧妙に丁寧に行われ、印象的な映像も多く、味わい深い作品になっていると思います。一見の価値ありだと思います。



公式サイト

http://www.likesomeoneinlove.jp/

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青春群像

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青春群像【デジタル・リマスター版】 [DVD]/フランコ・ファブリーツィ,フランコ・インテルレンギ
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北イタリアの小さな港町、リミニ。女好きで友人のモラルドの妹、サンドラを妊娠させてしまったファウスト、劇作家になりたいと思いながらもなかなか作品を書けずレオポルド、姉から小遣いをせびり取っては憂さ晴らしに遊ぶアルベルト、歌だけが取り柄のリッカルド、現状に不満を感じているモラルドの5人の自立できない男たちの生活を描く作品。


ファウストはサンドラを妊娠させてしまい、彼女と結婚させられてしまいます。町一番の美人、サンドラと結婚しながらも、夫として、父親になるものとしての自覚などない様子で、仕事についても、店の主人の妻に手を出そうとしたり、妻と映画館に入っても隣席の美女に声をかけてたり...。当然、仕事をクビになりますが、腹いせにモラルドと2人で天使像を盗み出して僧院に売りつけようとして失敗します。カフェで何することもなく時を過ごしたり、海辺を歩き回ったり、自堕落な日々を過ごす彼らでしたが、そんな生活に疑問を感じたモラルドは...。


原題は、「のらくら者たち」という意味。青春といっても、ファウストは30歳。いい加減、大人になるべき年齢ですが、フラフラして過ごす毎日。それでも、さして生活に困っている風ではないのは、"労働者階級"ではないからなのか...。アルベルトが小遣いをせびる相手である姉は、労働者のようですが...。


まぁ、とにかく、遊んで暮らせる男性5人。現代日本社会においても、イイ歳をして、親の脛をかじるニートや親の庇護のもとで生きる引き籠りは少なくないワケですが...。


モラルドは町での生活に見切りをつけ汽車に乗ります。特に行先の当てがあるわけでも、今後の生活に向けての計画があるわけではありません。"ここではない何処か"を求めて新しい居場所を求めます。今の生活を続けても先は見えてきませんが、"ここではない何処か"で何か新しいものを掴めるかどうかは難しいところ。それでも、早朝というより深夜というべき午前3時から働き始める少年、グイドとの交流が彼の中の何かを変えたのかもしれないというところに、モラルドの成長を信じたくなったりします。


青春という言葉には、とかく、熱さとか一途さというイメージが伴いがちですが、リアルな青春は、こうした自堕落でフワフワしたあてどもないものなのかもしれません。本作で描かれるどこか余裕を感じさせるダメな感じこそが青春の本質なのかもしれません。見ていてイライラもしますが、どこか危機感の薄い若者たち。


かなりど~~~しようもないファウストは、サンドラの家出をきっかけに改心したのか、いずれ、元に戻るのか...。サンドラの行動に戸惑い必死にサンドラを探し回る姿...この辺りの変化は、少々、唐突な感じもしましたし、サンドラのファウストへの対応にも物足りなさを感じましたが、"のらくら者"たちの姿にいら立ちを感じながらも、何故か作品の世界に引き込まれました。


観ておいて損はない作品だと思います。

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アニマル・キングダム

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アニマル・キングダム [DVD]/ジェームズ・フレッシュヴィル,ジャッキー・ウィーヴァー,ベン・メンデルソーン
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オーストラリア、メルボルン。母ジュリアと2人暮らしをする17歳の高校生ジョシュアは、その母が麻薬の過剰摂取で死亡したことを機に、長く疎遠だった祖母ジャニーンのもとに引き取られます。祖母の家には、ジュリアの兄弟でジョシュアの叔父にあたるアンドリュー、クレイグ、ダレンの3人が同居していました。一見、家族思いで温厚な人物に見える彼らですが、実は全員が銀行強盗や麻薬の密売など、あらゆる凶悪犯罪で生計を立てており、ジャニーンもそんな息子たちの犯罪を裏で仕切っていました。アンドリューの親友バリーも、一家と家族ぐるみの付き合いをしながら多くの犯罪を計画していました。他に行くあてもないジョシュアは、やがてそこでの生活に馴染み、高校のガールフレンド、ニコールを家に連れてくるまでになりますが、いつまでも一家の犯罪に無関係でいることはできず...。


犯罪一家で、数々の大きな罪を犯しているらしいのですが、明確な証拠はなく、警察も正攻法では手が出せない...という設定のようですが、それにしては、この一家の主導権を握っているアンドリューが小物過ぎるのです。行動にあまりに計画性がなさ過ぎるのです。十分な準備もない復讐とか、キレて無用な殺人を犯してしまったりとか...。"証拠を残さない犯罪"で生活していくためには、相当の計画性と冷静さが必要なはず...なのですが...。


ジャニーンや弁護士が、兄弟の衝動的な犯罪の後始末をしてきたというなら、証拠隠滅のための動きなども必要だったでしょうし...。


一家の犯罪がどのように行われ、どのように処理されてきたのか、その辺りが見えてこないので、彼らの"悪さ"が感じられず、作品全体の味わいが薄くなってしまっている感じがします。一家の生活に嫌気がさして、連絡を絶っていた様子のジョシュアの母ですが、彼女もオーバードーズで死んでいるわけですし、ジョシュアもその母の横で無表情にゲームを続けているわけですから、ジョシュアだって、それなりに"壊れて"はいるわけですよね。


予告編等から犯罪一家に投げ込まれた無垢の青年の物語という印象を受けたのですが、そうとも言えないような...。一家も一家なら、ジョシュアもジョシュア...なんですよね、結局...。まぁ、彼がおかれた生育環境の問題は、彼自身の責任ではないのですが...。

で、アンドリュー以上に無茶苦茶なのが、ダレン。アンドリューよりもキレやすく、小心で、小者感たっぷりです。比較的、どっしりと構えているのが兄弟の母、ジャニーンですが、証拠を残さない犯罪を計画できる程の明晰な頭脳の持ち主のようにも思えません。この一家が、どうして、"犯罪を繰り返しながら起訴されることもなく安穏と生活"できるのか、分かりませんでした。


多少、警察内部にコネがあるとはいえ、それだけでどうにかなるほどのご立派なコネでもなさそうでしたし...。まぁ、警察の方も酷いものなので、犯罪者側にあれこれ不手際があっても見逃されていた...ってこともあるのかもしれませんが...。


実話ベースと言うことなので、この辺りの設定が実話通りなら、どうしようもないのですが...。それにしても、もっと説得力のある描き方をしてくれても良かったような...。


ジョシュアの最終的な決断については、いろいろ考えさせられます。そして、ラストへ至る展開は巧く描かれていたと思います。ジョシュアの証言の場面を見せず、どんな証言をしたのかが分かるような描写。そして、ジョシュアの決断と居場所を得たのか失ったのか、明確には判断しがたい結末。果たして、彼は、本当の居場所を見つけたのか。


犯罪一家に染まることもできず、かといって、警察の保護能力を信頼することもできず、一家からも警察からも離れて自立することもできず...。何と言っても広いオーストラリア。犯罪一家とは言え、全国的に力を持っているような大物ではありませんし、本作に登場するメルボルンの警察の能力を考えると、メルボルンから離れたところに行けば何とかなるような気はするのですが...。


成長の過程で自立するための力を育ててもらうことができずにきた青年の悲劇...ってことでしょうか。で、そんな彼の最後の決断。さて、これは、吉と出るか、凶と出るか...。ラスト、ジャニーンはジョシュアをハグしますが、少々、おざなりな感じもしたりして...。


ジャニーンは、一度は、アンドリューたちのためにジョシュアを切り捨てようとしたわけです。アンドリューの無茶苦茶に辟易していた面もあったとはいえ、ジョシュアを本当に受け入れるのかどうか...。


この余韻の残すラストは印象的でした。一家の面々のキャラクター設定がもっとそれらしくできていたら、ずっと面白い作品になったような気がして残念です。

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不惑のアダージョ

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不惑のアダージョ [DVD]/柴草玲,千葉ペイトン,渋谷拓生
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若き日に神に身を捧げることを決意し、シスターとして、規律に従って生きてきた真梨子。40歳を迎えた彼女は、誰にもいえない“からだ"の変化を抱えていました。そんななか、教会に通う女性からバレエ教室のピアニストを頼まれます。戸惑いながらも、引き受けた真梨子は、教室へ通ううちに、演奏する楽しさを感じるようになり...。


女性として生まれ育ちながら、女性的な部分を切り捨て、信仰に生きる修道女。そんな修道女の中の"女"に光を当てた作品です。特に40代後半以降の多くの女性たちには切実な問題であろう更年期の問題を、修道女として生きるために神に捧げた"女"の部分が、元々の目的のために使われることもないままに、身体の中から消えていく現実に直面した真梨子の姿を通して描いた点が印象的でした。


ただ、気になるところもいろいろ。真梨子の生活が現実のシスターの生活とあまりにかけ離れているところ。シスターは教会に付属する施設で共同生活するわけで、自分用の風呂を持っているってことは普通ないような...。あの教会には、シスターは一人で、部屋や風呂も一人で使っていると言うことでしょうか...。そして、毎日の日課はしっかり決められていて、自分の都合で行動する自由も、暇も、ほとんどないのではないかと...。真梨子自身、バレエの伴奏を頼まれた時、「神父様の許可がないと外出はできない」と言っていますしね...。産婦人科通院は、その外出のついでに行ったってこと?


40歳の真梨子が、「"切符"を使わないうちに、"切符"がなくなってしまった」と言っていますが、普通、もっと後ですよね。日本女性の場合、標準的には51歳ちょっととのことですから、ちょっと早過ぎるのではないかと...。普通の感覚では、40代に入って、少しずつ更年期を感じるようになるってところなのではないかと...。


暗転する回数が多く、しかも、1回の時間が長いのも集中力が削がれます。かなり短い作品なので、余計にめっだってしまったのでしょう。


そして、何よりも、残念だったのは、彼女の信仰や修道女としての生き方について、あまり、触れられていなかったこと。そこが薄いために、真梨子の"女としての悩み"が深まらなかったのだと思います。修道女になると言うことは、女性としての大事な部分も含め、すべてを神に捧げるということ。そして、一人前の修道女になるまでには結構な年月がかかるもので、その間、何度も、修道女として生きる決意の固さを確認されるもの。そうした過程を通った真梨子の中に何が起きたのか、肝心なところが霧に覆われた感じで消化不良でした。


真梨子がシスターであるという設定も、年齢の設定も、本作で大きな意味を持つ設定のはず。その部分には、もっとしっかりとこだわって欲しかったです。そこがあれば、彼女の中に湧き起こる戸惑いをもっと切実に感じられたのではないかと思います。


西島千博のバレエがさすがに魅力的だったり、ピアノ伴奏の役割を終えることになってから教室を訪ねた真梨子が一人踊っていた彼の伴奏をするシーンの映像が心に沁みる美しさだったり、初潮を迎えて戸惑う女の子に葉っぱを一枚一枚手渡しながら話をするシーンとか、真梨子の表情が豊かになっていく過程の描き方とか、脳裏に残る場面もところどころにあり、細部をもう少し丁寧に作り上げていれば、もっとずっと印象的な作品になったと思うのですが、それだけに残念です。

スーパー・チューズデー ~正義を売った日~ [DVD]/ジョージ・クルーニー,ライアン・ゴズリング,フィリップ・シーモア・ホフマン
¥3,465
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大統領を目指し民主党の予備選に出たモリスの広報を担当するスティーヴンは、モリスを当選させようと奔走しています。選挙戦最大の山場となるスーパー・チューズデーが1週間後に迫る中、スティーヴンの元に、ライバル陣営の選挙参謀ダフィから極秘の面会を求められます。一度は拒否しますが、何らかの情報提供をちらつかされ誘いに負けてしまいます。ちょうどその頃、スティーヴンは、インターンとして選挙スタッフに参加している女子大生、モリーと親密になります。ともに過ごした夜、彼女の携帯の着信音が鳴ります。自分の携帯と勘違いして電話に出てしまったスティーヴンに聞こえたのは、モリスの声。モリーを問い詰めると、彼女は、モリスの子どもを妊娠しているとのこと。選挙戦に影響を及ぼさないよう、事後処理に努めるスティーヴンでしたが、上司のポールに、ダフィとの面会の件で疑いを抱かれ...。


敵方に汚い手を使ってでも排除しようと思わせるほど、スティーヴンは有能なようですが、それにしては、意外に青いし、わきが甘いようで...。元々、モリス陣営で働こうと思った動機は、モリスの清廉潔白な人柄に心酔したからのようですが、世の中そんなもんじゃない...ってことくらい分かっていていいわけですよね。有能な広報官と評されるほどの人物なら。ダフィと他にも大勢の人がいるような場所で会うとか、モリーとの関係とか...。もっと用心してもいいですよね。有能な人なら。


なかなか野心家のモリー。まずは、大親分のモリス、そして、スティーヴン、さらに、スティーヴンの後釜。ある意味、手当たり次第、男たちを自分がのし上がるためのステップにしていこうとしたわけですよね。ラスト近く、彼女に続きそうな女子大生が登場しますが、彼女たちがモニカ・ルインスキー嬢の系統ということなのでしょう。


タイトルから、政権を取り巻く周囲の様々な思惑、特に、巨大な利権に絡む問題が渦巻き、それにより、選挙戦の動向が左右される...という金と欲にまみれた権力争いが描かれているのかと想像していたのですが、下半身問題に収束してしまっている辺り、なんだか、拍子抜けです。モリスが選挙戦を勝ち抜くためには妥協もやむを得ないという話をしますが、モリー関係のスキャンダルもみ消しのための妥協では、何とも...。


まぁ、それでも、モリスの人柄に信頼を寄せていたスティーヴンが、モリスに絶望し、理想の政治を具現させるためでなく、自己の評価を高めることを目的として勝負に出る過程での表情の変化は見事でした。若き理想家が、現実的で冷徹な選挙参謀になっていく過程が現実感を伴って伝わってきます。それだけに、ことここに至るまでが、もっと迫力のある内容になっていると、この演技が生きたと思うのですが...。


ドロドロした内幕に迫り過ぎると、何かと差し支えるってことなのかもしれませんが、それなら、ここまで大仕掛けな舞台を作る必要はなかったような...。


例え、いろいろなところで妥協をしなければならないとしても、それでも、大統領になりたかったのは、何をしたかったからなのか、その辺りを、もっとしっかり見せてくれると、深みが出たのかもしれません。モリスが大統領になりたがっていることも、周囲が彼を大統領にしようとしていることもよく分かるのですが、彼らの国への想いのようなものが今一つ伝わってきませんでした。そんな青いこといっていたら、勝てないってことなのかもしれませんが...。


ただ、その辺りがきちんと描かれていないと、大統領選という舞台が生きてこないような気がします。女性問題で嵌められて仕返しをしたという陳腐な権力争いの物語にしかならないですよね...。


スティーヴンを演じたライアン・ゴズリングも良かったですが、周囲を固めるフィリップ・シーモア・ホフマンをはじめとする名優たちの演技は楽しめます。


そして、全体にちんまりしてしまった点には不満が残るものの、その分、まとまりのある作品に仕上がっているのは確か。レンタルのDVDで観るなら、悪くない作品ではあるでしょう。

ルート・アイリッシュ

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ルート・アイリッシュ [DVD]/マーク・ウォーマック,アンドレア・ロウ,ジョン・ビショップ
¥4,935
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兄弟同然に育った親友同士、ファーガスとフランキー。ファーガスはフランキーを誘い、イラク戦争に兵士を派遣する民間企業と契約し、民間兵としてイラク戦争に参加します。ファーガスはひと足先に故郷リヴァプールに戻りますが、イラクに残ったフランキーは、戦場で帰らぬ人となります。彼が亡くなった場所はルート・アイリッシュ。イラクのバグダッド空港と市内の米軍管轄区域"グリーンゾーン"を結ぶ12キロに及ぶ道路で、2003年の米軍によるイラク侵攻後、テロ攻撃の第一目的とされる"世界一、危険な道路"。ファーガスは、フランキーから託された携帯電話に残されたイラクでの映像を手がかりに、フランキーの死の真相を探り始め...。


イラクへ行けば、007になれるってことでしょうか。まるで、殺しのライセンスがばらまかれているような,,,。自分の命を狙う敵を殺しても免責されるのは理解できますが、憂さ晴らしで無実の人間を殺しても罪を追及されることすらないなんて、あまりに酷い...。けれど、それは、厳然たる現実。その事実に圧倒されます。


友人の死に疑問を抱き真相を解明しようとするファーガス。彼は、確証を得るためネルソンを拷問しますが、ネルソンは無実。観る者にはファーガスの誤解であることが伝わりますが、冷静な判断ができなくなっているファーガスは自分の思い込みから脱することができません。ネルソンから、自分の"推理"に合った証言を引き出そうと必死です。その姿は、実在しない"大量破壊兵器"を求めて一つの国を破壊しつくしたアメリカの姿に重なります。


ラストでも、本来、責めを負わされるべきではない人物が巻き添えとなります。何の罪もないのに"運悪く"殺されていったイランの人々のように。


ファーガスを"蛮行"に駆り立てたのは、友人の死に対する復讐心。その根底に友情やフランキーをイラクへ誘ってしまった責任感があったことは確かなのでしょう。けれど、民間人を撃ったネルソンに対して怒りを露わにしたフランキーの想いに沿った行為であったとは言えないでしょう。そう、ファーガスも、決して"正義の人"ではありません。それどころか、彼のような存在こそ、戦争が維持されていく原動力だったのです。元々、彼自身、イラクに行くことで大金を得たわけですし。まぁ、"同じ穴のムジナ"同士の復讐劇ってところなのでしょう。そして、こうした構図こそがこの戦争の救われなさなのだと思います。


戦争を民営化することの悪い面が描かれている作品でもあるのでしょう。まぁ、もっとも、このイラク戦争が始まりには、アメリカの石油産業の利権問題が大きく関わっていたとも言われています。少なくとも、資本主義が発展してからの戦争を民間企業の利権抜きに語ることはできないでしょう。


互いの思い込みや利権のために繰り返されている戦争。その犠牲となるのは、多くの無辜の人々。そして、直接、"敵"を倒す兵士も本当の勝者になることはないのです。ファーガスの携帯電話に残されていた動画の分析を依頼されたイラク人ミュージシャンの言葉が心に残ります。「君は殺された英国人にしか興味がない。死んだイラク人のことは気にも留めていない」。そう、一番の犠牲者は、"Wrong time"に" wrong place"居合わせてしまったために殺されたイラクのフツ~の人々なのです。


すっきりしないことこの上ない作品ではありますが、一見の価値ありだと思います。

映画 けいおん!

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映画 けいおん! 通常版 (今だけプライス) [DVD]/出演者不明
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2009年のTVシリーズ開始以来、大ヒットした軽音部の女子部員たちの日常を描いた学園アニメ「けいおん」の映画化作品。


卒業を控えた軽音部3年生 唯、澪、律、紬の4人は、いつもどおり部室でお茶したり、バンドの方向性を話し合ったりとゆるやかな時間を送っていました。そんなある日、教室で同級生たちが「卒業旅行」を企画していることを知り、後輩の梓も加え、5人で卒業旅行に行こうということになります。クジ引きの結果、ロンドンに行くことになりますが...。


TVアニメを全く観ていないので、そのために理解しきれていないところもあるのだとは思います。けれど、だから楽しめなかったかというと、そんなこともなく。もちろん、アニメを観た上でなら、もっと楽しめたのかもしれませんが...。

いかにもイマドキな感じの女子高生たちなのですが、何だか昭和の香りが感じられるような純な青春がありました。


熱血でもなく、でも、ヤル気なくダラダラしているのでもなく、きちんと青春しながらも熱くなり過ぎない辺りが本作の魅力なのでしょう。当たり前のゆるっとした日常...を描く...ということになると、映画よりTVの方が相応しい感じもしますが、少なくともDVDで観るアニメとしてはかなりイイ線いっているのではないでしょうか。


そして、日常を描くということになると、単にダラダラと日々の当たり前の風景が羅列されるだけになりがちですが、ゆるゆるとした当たり前の空気感を維持しながらストーリー性を持たせている辺り、巧く作られている感じがします。


で、個々のキャラクターがしっかりして、それなりに真面目に音楽に取り組んでいるし、楽器の描写など、しっかりしているし、この辺りの細部の丁寧さが本作の世界をしっかり支えているのでしょう。


ロンドンがイギリスにあることも、イギリスがヨーロッパにあることも知らずに大学生になろうとしている女子高生がいることについては、不安も感じたりしてしまいますが、それはさておき、観て良かったと思える作品でした。


TVシリーズも観てみたくなりました。

おかえり、はやぶさ

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おかえり、はやぶさ [DVD]/藤原竜也,杏,森口瑤子
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燃料漏れや通信断絶など、幾多の困難にぶつかりながらも、小惑星イトカワのサンプル摂取というミッションを達成した小惑星探査機はやぶさの足跡と、はやぶさに携わったプロジェクトチームの挑戦と絆を描きます。はやぶさのエンジニア助手、大橋健人は、失敗に終わった火星探査機のぞみのプロジェクト責任者の父、伊佐夫への反発もあり、はやぶさの成功への想いが人一倍強い熱血漢。つい周りとも衝突しがちの健人でしたが、伊佐夫に憧れて宇宙研究を志した新米理学博士、野村奈緒子や、プロジェクトメンバーたちとともに、エンジンからの燃料漏れ、地球との通信途絶、4基のメインエンジンの全停止など様々な困難を乗り越える中で、チームの一員として成長していきます。


基になっている実話自体が、相当に感動的なお話なのですが、本作の出来栄えは何だか薄味な感じがしました。はやぶさに関するニュースがトリビアネタ的なものも含めて、かなり世に広まってからの公開だったこと、本作より前に「はやぶさ/HAYABUSA 」「はやぶさ 遥かなる帰還」のはやぶさ関連の2作が公開されていたことも影響していることは確かです。そして、3作目となる本作が基礎知識的な内容を中心に扱っていること。最後に基礎知識が出てきては、いまさら感が拭えないのも致し方ないでしょう。


実話を基にしているので、変えられない事実が中心となっているわけで、それぞれの作品の独自色が出しにくいので、どうしても、本筋に絡むサイド・ストーリーでオリジナリティを出そうと言うことになるのでしょう。3作とも、その部分でフィクションを絡ませているわけですが、本作は、その辺りも弱いというか、不自然というか...。


子どもたちにはやぶさを語らせることで、子どもたちに宇宙への興味や夢を持たせようという意図があるのかもしれませんが、何だか流暢すぎるその語りが作りものっぽさを強めているようで、違和感ありました。


サイドストーリーの絡ませ方も今一つ...。いや、今二つ、三つ...。母親の臓器移植問題は一切必要なかったかと思いますし、研究者の父と息子の物語は悪くありませんでしたが、和解する過程に唐突感が否めませんでした。息子の側も、同僚と確執が生じる原因となった他人の言葉を受け入れない性格が改善されないまま同僚とよりを戻していたり、頭の中に疑問符の湧く展開です。


そして、何より、はやぶさの偉業そのものにインパクトが残らなかった辺り。他の2作と比較して良かったと思ったのは、はやぶさの物語にのぞみの失敗談を絡ませたところなのですが、それなら、作中でも触れられている糸川博士から始まる日本の宇宙開発の歴史を中心の流れにして、その集大成としてのはやぶさの業績とその意味をしっかり描き、無駄なサイド・ストーリーを切り落とせば、面白い作品になったのではないかとも思うのですが...。


エンドロールのエピソードもあまりに蛇足で、最後の最後で脱力です。まぁ、"3匹目のドジョウ"の不利があったにしても、あまりに残念な作品でした。

死海殺人事件

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MGM HollyWood Classics 死海殺人事件 [DVD]/ピーター・ユスティノフ,ローレン・バコール,キャリー・フィッシャー
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アガサ・クリスティ作「死との約束」を映画化した作品。豪華客船での航海中。船が立ち寄った死海に面した聖地、エルサレムで起きた殺人事件に名探偵ポアロが挑みます。


1937年、アメリカ、ニュージャージー州の大富豪、エルマー・ボイントンが亡くなります。最後に書かれた遺書には、妻のエミリー、子どもたちに各々20万ドルずつを与えるとなっていました。ところが、その前に書かれた遺書では全財産を相続することになっていたエミリーは、弁護士を脅迫し、最後の遺書を握り潰させます。エミリーは、エルマーとの間に産んだ実子、ジネヴラと前妻が産んだ継子たち(長男のレノックスと嫁のナディーン、次男レイモンド、長女キャロル)と豪華客船の旅に出ます。子どもたちは、自分たちを思うように振り回すエミリーに反発を感じていながら、その横暴な姿勢に立ち向かえずにいました。船に乗り合わせていたポアロは、ふとした偶然から、一家の内情を知ることになります。そんな中、船が立ち寄ったエルサレムの街に滞在中、事件が起き...。


探偵が旅をするというのは、浅見光彦のオリジナルではないってことですね。ポアロが活躍する映画作品では、「オリエント急行殺人事件」(1974年)、「ナイル殺人事件」(1978年)、「地中海殺人事件」(1982年)があり、1988年の本作は4作目となります。


いずれも旅心をくすぐるような作品ばかりなのですが、何故か、本作では、"死海"は登場しません。小説と同じタイトルで何ら問題はなかったような気がするのですが、どうして、原題と違う邦題をつけてしまったのか...。


それはさておき...。タイトルからして、誰かが殺されることは明白なのですが、事件が起きるまでが、結構、長いです。で、多分、この人が殺される...と順当に予測できる人物が殺されます。正直、やっと...という感じもしますが、そこまでが長い分、人物描写が丁寧になされ、殺人の動機を持つ者が何人もいることが観る者に示されます。エミリーに弱みを握られているコープ弁護士の過去、長男の妻、ナディーンとコープ弁護士の関係、次男、レイモンドとキング医師のロマンス...。


で、ポアロが関係者全員を集めて...解決かと思いきや、事件の真相は、次の集まりに持ち越されてしまいます。この展開が原作通りなのなら、それはそれで仕方なところなのでしょうが、謎解きの場面を分散させたことで、種明かしの爽快感が薄れてしまった気がします。


ポアロのセリフ「偶然にでくわすのも名探偵の資質です!」には、思わず納得。確かに!!偶然なしで難事件解決なんてできるわけないって、名探偵自身が認めるワケですよね...。この"自分を客観的に見る視点"はお見事。これこそ、名探偵の資質なのかもしれません。


人が2人、殺されるのですが、全体的にゆるりとした雰囲気です。まぁ、推理小説にこんな評価も妙かもしれませんが、安心してゆったりと観ることができる、ハラハラドキドキもしないかわり、ストーリー展開に大きく裏切られることのない穏やかな作品です。


それにしても、ローレン・バコールの存在感は見事。この存在感がドキドキハラハラを薄めてしまったのかもしれません。あの存在感で、事件に絡まない役どころとは思えなかったりして...。


まぁ、突っ込みどころはありますが、全体として悪くはないと思います。80年近くも前の豪華客船の旅、成程、豪華な感じで良かったです。


ボイントン家の子どもたち(って、少なくとも3人は、しっかり大人なはずですが)は、エミリーの死により自由になります。その偶発的な死によりも前に、それぞれ自立への道を踏み出しかけてはいたのですが、事件のお蔭で自由が決定的になったことも確か。タナボタの自由をどう使いこなすか...見届けたいような、たくないような...。

DOG×POLICE 純白の絆

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DOG×POLICE 純白の絆 [DVD]/市原隼人,戸田恵梨香
¥3,675
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警視庁に実際に存在する「警備犬」を徹底取材し作られた映画。


若手警察官、早川勇作は、正義感に熱く仕事熱心ではありましたが、犯人を追うため、命令を無視することもしばしば。そんな彼が「警視庁警備部警備二課装備第四係」に配属され、偶然、その出生に立ち会った"シロ"とタッグを組むことになります。活躍の場がなかなか与えられなかった装備第四係でしたが、連続爆弾事件に出動することになり...。


著名人の講演会が開かれる会場に仕掛けられた爆弾を大捜索...となるのですが、この会場に集まる聴衆がスゴイ!犬を連れた警察官が何人も会場を歩き回っているのに、何事もないように平然と過ごしているのです。普通、そんな緊迫した状況を見れば、何か変だと思うでしょうし、相当な事件が起きているのだと気付くのではないかと...。


まぁ、お目当ての著名人が登場しても、周囲にあまり人が集まるわけでもなく、騒ぎ立てるでもない人々のようなので、基本的に周囲で起きていることに無関心で無反応な冷静な人々なのかもしれませんが...ってわけないですよね...。わざわざ時間使って、お金使って集まってきているのですから...。


で、装備第四係の面々も、それぞれ、その道のエキスパートが集められていると言うことなのに、その才能を活かせている場面が前面に出てきていないのは、何とももったいないです。そもそも、ほとんど存在感のない部署にエキスパートが集められているってこと自体、変ですが...。それこそ、税金の無駄遣いですよね...。


このなかなか個性的な装備第四係の面々の描き方が底が浅く、通り一遍で、これも勿体なかったです。彼らのちょっとした遣り取りなど面白い要素はそれなりにあったのですが...。


早川も、最初に避難された単独行動を最後まで繰り返す反省のなさ。本来なら、単独行動に走りがちだった早川が、仲間と信頼関係を築き、協力し合いながら行動できるようになる成長の過程を描いていく...というタイプの作品なのですが、何も成長しないのですよね。クライマックスでは、相変わらずの単独行動。"シロ"は一緒...でしたが、これは、早川が行動をともにしたというより、シロが健気についていったのですよね...。


全体に一つの場面と他の場面との位置関係や時間の経過があまりにもいい加減なために、観ていて次々に疑問符が湧いてきて、作品の世界に集中できません。


特にクライマックスの"事件"なんて、あまりに無理し過ぎ。ここまで過剰にする必要は全くないと思うのですが...。あの鉄骨の下敷きになって、鉄骨をどけられたからすぐ動けるようになるなんてあり得ないし、そもそも、あの時間で、シロが助けを呼んでこられるなんてあり得ないワケで...。大体、東京の地下鉄の駅の近くで火事が起きて、しばらく誰も気づかないなんてあり得ないし、線路に人が下りて大騒ぎにならないなんてあり得ません。あまりに、あり得ないことだらけで、もはや、笑うしかないような...。ギャグ映画ではないのですよね...。


確かに、犬たちは健気なのですが、犬が出ていればいいというものではありません。普通に作れば、それなりに観られる作品になったはずなのですが、ここまでになってしまうとは...。何とも残念な作品です。




で、警備犬とは...


犯人(テロリスト)の制圧や、爆発物捜索犬として爆発物の捜索、また、災害救助犬として被災者の捜索を実施するなど、ハーネスや鈴を付け替えることにより、1頭で複数の任務に当たる犬で、


日本の警察では、警視庁と千葉県警に設置されているとのこと。で、警備犬部隊は、

警視庁では「警備部警部第二課警備装備第三係」

千葉県警では「警備部成田国際空港警備隊警備室警備第二係」に所属。


新潟県中越地震の際には、警視庁の警備犬「レスター号」が埋没していた乗用車に閉じ込められていた当時2歳の幼児を発見し、生存を確認しています。

そして、成田国際空港では、爆発物の捜索などをしています。