行きずりの街

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行きずりの街【DVD】/仲村トオル,小西真奈美
¥4,935
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1992年に「このミステリーがすごい!」第1位を獲得した志水辰夫の同名小説を映画化した作品。原作は未読です。


東京にある名門女子高の国語教師だった波多野は、生徒の手塚雅子との卒業直後の結婚をスキャンダル扱いされ、教職を追われます。雅子とも、結局、離婚。その12年後、郷里の丹波笹山で塾の講師をしていた波多野は、失踪した生徒、ゆかりを探して東京に戻り、雅子とも再会します。ゆかりを探すうち、彼女の失踪の背景にある陰謀が浮かび上がり...。


「このミステリーがすごい!」の1位なのですから、原作はミステリーなのですよね?でも、本作の方は、ミステリーと思わせておいて波多野の再生の物語...といったところでしょうか?


ただ、肝心の波多野の12年間の過去が描けていないために、何だか底の浅い物語になってしまっています。12年といえば、3歳児が中学を卒業するまでの年月。それだけの間、抱えてきたものにしては、やけにあっさりと癒されてしまったような...。限られた時間の中で構成される映画作品で、それだけの年月の重みを描き出すのは簡単なことではないとは思うのですが、波多野の再生で物語を終えるなら、そこにもっと焦点を当てて欲しかったです。そこが浅いから、再生の感動に欠けてしまっていて、消化不良な感じが残ってしまうのだと思います。


あるいは、ミステリーの部分を前面に出し、失踪事件の謎解きと解決に焦点を当てるか...。せっかく「このミステリーがすごい!」で1位になった作品が原作なのですから。


名門女子高とか、教師と生徒の恋愛だとか、学校経営の裏に隠された陰謀だとか...、使い古された題材ではありますが、中心にしっかりとミステリーを据えた上で、波多野が12年間抱えてきたものを重ねあわれることが出来ていれば、それなりに見応えのある作品になっていたと思うのですが...。


どっちも中途半端になってしまっていて、勿体ない感じがしました。ラストの"格闘"も何だか安っぽかったですし...。それに、あんなところにあんなものがあってはダメでしょう...。"名門"女子高なのに...。


雅子を演じた小西真奈美、時々、目を惹き付けられるような表情を見せてくれていましたが、アップの画面にいまひとつ迫力が感じられないのは、顔が小さすぎるせいでしょうか...。夜、バーを2時までやった挙句に、昼間の仕事をしているなんて、それもいくらなんでもあり得ないし...。


評判の良かったらしい原作。本作を観る限りでは、あまり面白そうに思えないのですが...。でも、面白いのですよね?映画化が上手くいかなかっただけで...。



行きずりの街@ぴあ映画生活

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メタルヘッド

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メタルヘッド [DVD]/ジョセフ・ゴードン=レヴィット,ナタリー・ポートマン,レイン・ウィルソン
¥3,990
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13歳の少年、TJは、交通事故で母を失い、心に大きな傷を負います。父親のポールも妻の死から立ち直れず無為に日々を過ごしています。そんなTJの祖母の家に住み着い長髪で上半身半裸のヘヴィメタ青年、ヘッシャーは、大音響でヘヴィメタを流し、下品な言葉と乱暴な言動で様々なトラブルを起こします。けれど、やがて、彼の存在が、TJとポール、スーパーのレジ係ニコールらの人生に変化をもたらしてい...。


メアリー・ポピンズとか、サウンド・オブ・ミュージックとか、その手の系列の物語と言えるでしょう。ある集団の中に異質な人物が乱入し、周囲を引っ掻き回しながら、やがて、その存在ゆえに癒され、立ち直っていく。そのかなり過激なパターンなのでしょう。


順法精神など全く感じられず、世間のルールもマナーも無視。でも、おばあちゃんに対する接し方とか、誰もいないところで割られた食器を片付けたりとか、"イイヤツ"な面を見せてくれたり...。


でも、正直、私にとっては、限度を超えて過激でした。ここまでいくとついていけない感じです。いくらなんでもダメでしょうなレベル。どんなに良い所を見せてくれても、そこまでやったらオシマイ。まぁ、要するにヘヴィメタがダメなのだと思います。


目的が間違っていなければ、方法は何でもOKと思えるかどうかの問題なのかもしれません。目的が正しかったりや行為の背景にあるモノが納得のできるものであっても、方法がどうでめも良いとは思えないのです。


亡くなったおばあちゃあんとの"散歩"など、なかなか涙モノのシーンなのですが、やり方がアレでは、感動も吹き飛んでしまいます。もっと穏やかな方法だってあったはずで、それ程、難しいことではなかったような...。


ヘッシャーだって"言葉"というものを持っているのだし、言葉をもって意思を伝えるということをもう少し大切にしても良かったような...。ヘヴィメタの音楽だって歌詞もあったりするのですよねぇ?


ヘヴィメタ好きなら受け入れられる世界なのでしょうかもしれませんが、ちょっと...、かなり、引いてしまいました。



メタルヘッド@ぴあ映画生活

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うん、何?

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うん、何? [DVD]/橋爪遼,柳沢なな,宮崎美子
¥3,990
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雲南高校3年生の須賀鉄郎は、神話の社を中心に見事な棚田が広がる高台の農家に住んでいます。毎朝、父の工場で作られる新鮮な牛乳を入院中の母に届けることを日課にしています。そして、目下の悩みは卒業後の進路と幼馴染の同級生、多賀子への想い。高校生最後の夏休み、郷土を愛する熱血教師、尾崎は、鉄郎たちを市内の名所、旧跡に連れて行きます。その中で、ヤマタノオロチ伝説伝承地の一つである「印瀬の壺神」に行きますが...。


棚田の風景が美しく、山に囲まれた地に広がる緑の映像が目に沁みます。その中で生きる人々の日々が丁寧に描かれ、伝統的な祭の様子やその地に伝わる伝説が織り込まれます。名所、旧跡も解説付きで紹介され、ある種、観光客誘致作品のようにもなっています。


ただ、本作の良いところは、その名所、旧跡の案内が、地元の人間、それも、これから故郷を離れていく者も出てくる卒業の時期を控えた高校生相手に行われているというところ。彼らをあちこち連れ歩く尾崎先生が言います。「これから故郷を離れていく者に故郷の良さを伝えたい」と。若者の流出というのは、田舎の町では起こりがちな問題。けれど、若い人たちを繋ぎとめて置けるだけの教育の場や職場がなければ、若い世代が故郷を離れることを止めるのは難しい。けれど、せめて故郷の素晴らしさを語れる人間になって欲しい。その切なる想いが伝わってきて胸が熱くなりました。


幼馴染との恋物語、友情物語、そして、家族の物語。日本全国、いえ、全世界のあちらこちらで起こる普遍的な問題でしょう。そんなどこにでもあるかもしれない日常と家族関係、人間関係を描きながら、「雲南市」という土地の魅力をたっぷりと描き出しています。


どこにでもある日常が美しい田園風景と日常を豊かに彩る伝統行事と伝承が彩っている。そんな土地の豊かさとそこで生きることの幸せを見せてくれます。


物語としては、全体に、やや、陳腐な感じも否めませんが、美しい映像が心に残る作品です。



うん、何?@ぴあ映画生活

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ワラライフ!!

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ワラライフ!! [DVD]/村上純(しずる),香椎由宇,田畑智子
¥3,990
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東京で一人暮らしをする修一は、まりとの結婚に向けて新居を探していました。ある日、入った不動産屋で応対したのは、小学校時代の同級生、小倉弘之。一方、修一の両親も引越すことになり、修一は手伝いに帰ります。子どもの頃のいろいろな想い出が呼び起こされ...。


結婚も、実家の引越しも人生の転機。それまでの人生を振り返りたくなる時でもあります。特に、実家が引っ越すということは、長い年月の思い出が詰まった場所に帰れなくなるということ。引越しで荷物を整理すれば、忘れていたモノに触れ、様々な想い出が甦ってくるもの。多くの人に、懐かしさを呼び起こすシーンです。


ただ、時代設定が不明確。プラッシーって1980年代には、売り上げが減少し、一度生産が中止されているはず。だとすれば、彼の子ども時代は、もっとプラッシーが日常的な飲み物だった1970年代とか?ネズミ捕りとか、ハラマキのお父さんとか、かなり古いですよねぇ?


ラストに宅配便の伝票が登場し、そこに修一の実家の住所があるのですが、郵便番号が神奈川県足柄上郡開成町牛島のもの、電話の市外局番が宇都宮市のもの。そんなに昔の話ではないけれど、田舎だったってことでしょうか?(失礼...)


子どもの頃のいろいろなエピソードが盛り込まれるのは良いのですが、もっとメリハリが欲しいところ。何だか、ダラダラとした感じで、90分という比較的コンパクトな作品にもかかわらず、長さを感じてしまいました。


まりに修一の母が言うセリフは良かったです。「あの子は愛情タップリに育てたから自信があるの」。こんな風に言える母になりたいし、こんな風に愛情を注がれた子どもは幸せになれるに違いありません。そして、そのセリフをしっかり受け止めたまりも良かったです。


確かに、修一は、愛情を受けて育ったという感じがしますし、彼の家庭は、暖かい雰囲気に溢れています。まりのきちんとした感じとか、いろいろな場面での言動とか、きちんと育っている感じがしますし、なかなかお似合いのホノボノとした組み合わせで、その後の幸せな人生も納得です。


そして、小倉くんとの関係。再会の時、小倉くんには、修一のことが分かっていなかったですよね。イジメられっ子だった小倉くんにとって、修一は数少ない良い想い出のある相手。小学校の時の同級生の顔を見ただけで相手が分からないというのはよくあることだと思うのですが、修一も住むことになる物件を探そうとしているわけで、名前を聞いたりしないものなのでしょうか?この場合は、聞かなかったっていうことなのですよね...。


ホノボノ感があって、共感できる部分もそこかしこにあったのですが、展開とか、構成とか、その辺りの問題なのでしょう。一つの映画作品として楽しめるものに仕上がっているかとなると疑問が残ります。



ワラライフ!!@ぴあ映画生活

タイタンズを忘れない

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タイタンズを忘れない 特別版 [DVD]/デンゼル・ワシントン,ウィル・パットン,ドナルド・フェゾン
¥1,500
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人種偏見が残っていた1970年代のアメリカで実際にあった話を映画化した作品。


1971年、バージニア州アレキサンドリアの保守的な田舎町。それまで別だった白人の高校と黒人の高校が統合され、アメフト・チーム、タイタンズそれまでチームを引っ張ってきた名ヘッドコーチ、ヨーストに替わって黒人のブーンがヘッドコーチが担当することになります。ところが、高校のアメフトが町中の関心を集めているということもあり、チーム内も町も大騒ぎになります。選手たちを合宿に連れ出したブーンは特訓を開始。最初は対立していた選手たちも、特訓の中で徐々に心を通わせるようになります。そして、開幕した大会で連戦連勝。町の雰囲気も徐々に変化し...。


実話を映画化した作品なだけに力のある作品になっていて、それをブーンコーチ役のデンゼル・ワシントンを始めとする出演陣の演技力が支えています。


公立学校における人種隔離が違憲とされたのが1954年、公民権法が制定されたのが1964年ですから、本作に描かれた1971年までには、法の面では、人種間の平等が保障されてかなりの年数が経っているわけです。そして、一方では、1965年3月5日、アラバマ州セルマで、白人警官により黒人を中心とする公民権運動家の虐殺事件(「血の日曜日事件」)が起きたり、1968年4月4日、キング牧師が暗殺されたりもしています。


アメフト選手である息子のロニーを"黒人も一緒のチームだから"と言う理由でタイタンズに入れるロニーの父親。彼は、軍人ですが、人種間の平等という点では、軍隊が一歩進んでいたようです。1965年からアメリカが本格参戦したベトナム戦争では、黒人の士官が配属され、白人の下級兵士を指揮したとのことですから。


長い間、アメリカ社会の常識ともなっていた人種差別、人種隔離。それが崩されていくことになれば、大きな抵抗があるのはある意味当然なのかもしれません。そこから抜け出すためには、相手を知ること、同じ体験を共有することが効果的。ブーンコーチは選手たちに互いを知り合うことを指示し、同じ過酷な環境を過ごさせます。そして、人種間で戦った歴史の愚かさを教えます。


ブーンによって変わっていく選手たち、周囲の人々。そして、やがて訪れるブーン自身の変化。少々、端折りすぎた感じがしなくもありませんが、映画作品として纏め上げるには致し方のないところだったのでしょう。徐々に人々の意識が変化していく様子が胸に沁みます。


タイタンズが準決勝に勝った夜、家に帰ったブーンを祝福する近所の人々。ブーン一家が引っ越してきた時、彼らのほとんどは不快感を隠そうともしていなかったのに。そして、ブーン家の窓にレンガを投げ入れる者さえいたのに。


そして、ブーンの中にも起きる変化。


立場上、仕方なく彼のヘッドコーチ就任を受け入れた白人たちも内心は面白くないわけで、ブーンが失敗するのを秘かに期待していたことでしょう。当然、ブーンもそれは知っていたわけで、相当のプレッシャーの中にいたはず。すべてを背負い、誰にも文句を言わせない完璧を目指し、完全に独裁者だったブーンですが、周囲に徐々に受け入れられる中で、彼も心を開いていきます。


周囲の意見を取り入れられるということは、周囲を信頼しているということ。ブーンの変化は、彼の中に周囲への信頼が生まれたからこそのものなのでしょう。


本当の意味で人種間のわだかまりが解けた決勝戦。アメフトについて全く詳しくないのですが、それでも感動できました。


プロリーグの選手が黒人ばかりになった今、こういった話を見聞きすると隔世の感がありますが、本作の"今"である1971年は、40年前のことにしか過ぎません。その頃、これだけ、拒絶されたことがごく当たり前のことになるくらい、人間は変わることができるのです。もちろん、まだまだ残っている問題があることは分かっています。それでも、私たちの中には、例え小さな一部であったとしても、長い年月の恩讐を超えていく力があるのだという希望を見せてくれる作品になっています。


悲劇もありますが、それでも、とても清々しい気持ちで観終えることができる作品です。あまりに直球勝負な感じもしますが、奇を衒わず素直に作られた作品で、すんなりと心に届くものがあります。一度は観ておきたい作品だと思います。



タイタンズを忘れない@ぴあ映画生活

医大生だった葉田甲太氏が学生時代にカンボジアに小学校を建設した実体験を書いた同名ノンフィクションを映画化した作品。原作はすでに読んでいます。


医学生のコウタは、人と違う面白いことをしたいと思いながらも平凡な毎日を送っていました。そんなある日、ふとしたことから、カンボジアに小学校を建てるための寄付を募るパンフレットを目にします。そのパンフレットが気になったコウタは、手当たり次第に知り合いに「カンボジアに小学校を建てよう」というメールを送ります。それに賛同した仲間と学校建設に必要な150万円を集める活動を始めますが...。


勢いで始めたことがあれよあれよという間に大きな動きになる。人が集まれば力にもなるけれど、食い違いも生じる。そんな中で戸惑うコウタたち。けれど、そんな迷いやぶつかり合いも含めて青春なのでしょう。そして、紆余曲折しながらも、減速することがありながらも、最初の目標へ向かっていく力。


そこには、世の中を知らない若者たちの無謀さと、若さゆえの真っ直ぐさ、そして、エネルギーが溢れていました。行き当たりばったりな危うさもありますが、あちこちにぶつかりながら学び成長するのも若者のあるべき姿なのでしょう。夢を追いかける彼らに突きつけられる現実の厳しさ。彼らが関わろうとしているカンボジアが抱える酷い歴史と現実。そこに素直に反応しながらも、何とか未来に向かおうともがく姿こそ、青春なのかもしれません。


モデルとなった葉田甲太氏自身のテレもあるのか、何だか、チャラチャラしていた学生が初めてボランティアに目覚めた感じで原作本も描かれています。でもその本の筆者紹介の欄を見ると、彼は「国境なき医師団」への憧れから新潟中越地震の時に1週間、スマトラ島沖地震の時に2週間、現地でのボランティアに参加しているのだとか。決して、ある日、突然、ボランティアに興味を持ったというワケではないのですよね。"カンボジアに小学校"は、行き当たりばったりの思い付きだったかもしれませんが、元々ボランタリーな精神の持ち主ではあったわけで、本当は、照れずにそこのところ、きちんと描いても良かったような...。


必要以上に「フツ~の遊んでいる大学生」というところを強調し過ぎて、その分、少々、フワフワした地に足つかない感じが出すぎてしまったような気がします。まぁ、このテレの部分が、作品に程よい笑いとホノボノ感を出しているので、それはそれで良いのかもしれませんが...。


実話がベースになっているだけに力のある物語でしたし、カンボジアの現状と歴史が分かりやすく纏められていたことも、貧しくて大変なだけでないカンボジアの姿も描かれているところも良かったと思います。


ご本人の出演だったようですが、ガイドのブッティーさんの存在感も良かったです。



公式サイト

http://www.boku-seka.com/



僕たちは世界を変えることができない。But, we wanna build a school in Cambodia.@ぴあ映画生活

リメンバー・ミー

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6年前、22歳だった兄、マイケルが自殺し、その痛手から立ち直れないタイラーは、本屋でアルバイトをしながら大学の聴講をして何となく日々を過ごしていました。そんなある日、ふとしたことから警官と言い争いになり、一緒にいた大学生の友人、エイダンとともに留置場に入れられてしまいます。エイダンが、弁護士事務所を開いているタイラーの父親に連絡をし、すぐに釈放されますが、タイラーは兄の自殺の原因が父にあると考えており、11歳の妹に対する父の態度への反感もあり、父を嫌っていました。エイダンが、彼らを逮捕した警官の娘、アリーが同じ大学にいることを知り、腹いせに、タイラーにアリーをナンパするようけしかけます。嫌々ながらもアリーに声をかけたタイラーでしたが...。


目の前で母が殺され、その痛手から何とか立ち上がり、傷を抱えながらもしっかりと生きているアリー。妻の死後、男手ひとつで娘を育ててきたものの過干渉になりがちなアリーの父。兄の自殺から立ち直れなず、なかなか意欲的になれないタイラー。息子の死の痛手など感じていないかのようなマイケルの父。


様々な形で、いろいろな立場で家族を失った者たちが喪失を抱えながら生きる姿が描かれます。家族を失うことには大きな哀しみや喪失感が付きまとうもの。けれど、どんなに失ったものが大きくとも、遺された者たちの人生は続いていくものです。どんなに愛した者を喪ったとしても、そこで人生が終わるわけではありません。


そして、同じ喪失体験を共有しあえない家族。本来、家族として、互いの傷を癒し合えれば良いのでしょうけれど、同じ体験をくぐった者同士だから分かり合うことができ、慰めあえるというほどことは単純ではありません。互いへの想いが強いからこそ生まれるすれ違いもあるのです。


愛情がありながらもすれ違い、傷つけ合ってしまう感じが丁寧に描かれ心に沁みます。家族を突然、理不尽に奪われた者たちの傷ついた姿。そして、その傷を受けたことにより、さらに、互いを傷つけ合ってしまう家族の姿。けれど、それでも、彼らはいつか立ち直るのです。傷つけ合うのも家族なら、赦し合い、癒し合うのも、また、家族だから。


タイラーはなかなか気付けなかったけれど、マイケルの死により傷ついた彼らの父。タイラーが赦せなかった妹への態度も、自分がその人生に手を出したことが自殺の原因だったかもしれないと感じた彼の怖れが原因だったのかもしれません。


タイラーの妹を演じたルビー・ジェリンズが秀逸。決して、特別に可愛らしい容姿をしているという感じではありませんが、父の自分に対する態度に寂しさを感じながらもタイラーや母の愛情を受け、学校の友人たちに受け入れられない自分を受け入れながら日々を過ごす強さが印象的でした。


ラスト直前の映像でラストが明らかになります。まぁ、マイケルの葬式が1991年のことで、本作の"今"がその10年後であることが示されているので、そこから十分に予測できるものではあるのですが...。このラストは、賛否が分かれることでしょう。タイラーの運命自体はそれで良いとしても、あの事件をここに持ってきたことには疑問が残りました。このラストでなければ、家族関係や恋愛を描いた普遍的な作品になり得たと思いますが、このラストになったことで、本作はアメリカ人のための作品になってしまったのではないかと...。


ラストの直前の黒板に書かれた文字が映された映像で、ちょっとガックリきてしまいました。人が死ぬ原因は、他にいくらでもあるのですから...。



公式サイト

http://www.rememberme-movie.jp/



リメンバー・ミー@ぴあ映画生活

アンチクライスト

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アンチクライスト [DVD]/ウィレム・デフォー、シャルロット・ゲンズブール
¥3,990
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2009年のカンヌ映画祭で正式上映され、スタンディングオベーションとブーイングと真っ二つに評価が別れ物議を醸し出した作品。


セックスをしている間に幼い息子がベッドから抜け出し、窓から転落死したことで、大きな喪失感を抱えるとともに自責の念に駆られた妻は、次第に、心を病んでいきます。セラピストの夫は、そんな妻を何とか回復させようとしますが...。


成る程、物議を醸す内容です。


冒頭のあまりに美しいモノクロームの映像とバックに流れるヘンデル作曲のアリア「Lascia chio pianga(泣かせたまえ) ]」。ここで一気に惹き込まれ、その後の展開に期待が膨らんだのですが...。どうもそのあとが...。私はブーイング派です。


悲しみに沈んでいたはずの妻、彼女は、何故、こんなにエネルギッシュなのか?鬱の反動の躁状態って、雰囲気でもなかったような...。


聖書の"エデン"は、神が創った楽園だけれど、本作のエデンは、楽園というニュアンスは感じられず、暗く思い雰囲気を漂わせ、悪魔の存在が感じられる世界になっています。そして、エデンに来た2人も、悪魔に絡め取られていくように変調をきたしていきます。


かなり痛いシーンもあります。彼女の罪悪感が性器を痛めつける行為に繋がっているのでしょうか?だとすれば、それは、むしろ、キリスト教的価値観から下された罰なのではないかとも思いますが...。


いずれにしても、タイトルから予測されるとおり、キリスト教を意識させられる場面が散りばめられています。クライマックスで夫の脚に穴を開けるシーン。磔刑にされるイエスを連想させます。だとしたら、妻は魔女?けれど、冒頭のシーンで流れたヘンデルのアリアは、愛する男性への愛を貫くために自分を犠牲にすることを決意した女性の歌なんですよね...。そして、その愛する男は、十字軍の勇士。


この2人の悲劇は、キリストがどうこうというより、妻にとって、同じ罪を背負うべき相手である夫がセラピストとして自分の前に登場したことなのだと思います。


でも、妻(=女)の側の悪を強く意識させられる作りになっていますね。まぁ、魔女をしたてたのも、大規模な魔女狩りをして多くの無辜の命を奪ったのもキリスト教ですで、そもそも、人間がエデンの園を追い出された責任もイブにありとしている宗教ですから、基本的に女嫌いなのでしょうけれど...。


夫(=男)の側も、かなり傲慢に見えましたが...。妻は神に従うように夫に従うべきというのも伝統的なキリスト教の考え方なので、これは、夫の傲慢さというより、妻への責任感と捉えるべきなのかもしれませんが...。


キリスト教的な常識に楔を打ち込んでみたということなのでしょうか。先祖代々、長きに亘ってキリスト教に支配されてきた欧米の人々にとって、キリスト教に異議を申し立てるには、この程度の激しさと異常性が必須だということなのかもしれませんね。


決して、お勧めしたくなるような作品ではありません。観るなら覚悟が必要な作品です。



アンチクライスト@ぴあ映画生活

漫才ギャング

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漫才ギャング スタンダード・エディション [DVD]/佐藤隆太,上地雄輔,石原さとみ
¥3,990
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品川ヒロシが自身の小説を映画化した作品。


売れない漫才師の飛夫は、借金で追い詰められた相方に解散を宣言されてしまいます。ヤケなった飛夫は、相方のところに来た取り立て屋とトラブルになり、留置場に放り込まれてしまいます。そこで、同じ房になった鬼塚龍平にツッコミの才能を感じた飛夫がコンビを組もうと持ちかけると鬼塚はあっさりOK。新コンビ"ドラゴンフライ"は人気を集めるようになりますが...。


いつまでも芽が出ない中、挫折してその道から離れる者、踏み止まろうともがく者。ひょんなことから新しい出会いがあり、新しい展開が生まれる。挫折から成功への紆余曲折とその過程での悩みと成長。若者たちの成長を支える大人たち、そして、健気な彼女。


どこかで観たことのあるような、これまで、様々な作品の中で繰り返し使われてきた素材が寄せ集められ、かな~り、ベタな物語になっています。基本的に青春モノの王道といったところ。登場人物たちも、典型的なパターンをなぞっている感じで目新しさはありません。それぞれの人物の動き、ストーリーの展開、きっちりと読めます。それはもう、面白いほどに予想通りに進んでいきます。


けれど、退屈はしませんでした。きちんと作られていて、演技陣も、それぞれがそれなりの力を発揮しているためなのでしょう。製作者側の視点よりも、観る側の視点に寄り添った作品だからなのかもしれませんが、2時間を超える作品でありながら、ほとんど負荷を感じずにラクな気持ちでラクに楽しむことができました。


前作「ドロップ 」と比較すると、相変わらず、結構、暴力シーンがあり、正直、こうした痛い場面が苦手な私としては、目を瞑りたくなるところもあったのですが、それでも、前作よりは、バイオレンス度は低くなり、その点でも、観やすくなっていると思います。


後々まで長く残る名作という雰囲気ではありませんが、軽く楽しめる作品で、清々しく観終えることができると思います。漫才のネタが、もう少し面白かったら、もっと良かったかも...。



漫才ギャング@ぴあ映画生活

シャンハイ

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1941年、日米開戦前の上海が舞台。親友の死の真相を探ろうと、諜報部員のポールは上海にやってきます。日本軍の妨害にあいながら、真相究明のカギを握っていると思われる裏社会のドンとの接触に成功しますが...。


アメリカ、中国、日本、それぞれの国の大物俳優を起用した結果、どの国も徹底的な悪者にはしないという大人の気遣いに溢れた作品になっています。そのせいか、全体に歯切れの悪い中途半端な感じが漂います。


ポールの上司は、ポールに「日米は戦争にならない」と言っていますが、少なくとも、当時のアメリカ政府の上層部は、日本と戦うことを自国民に納得させる理由を欲していたのではなかったかと...。仮にも諜報関係の人物が部下にこんなことを言うのでしょうか?


それぞれの登場人物が、理想のため、国のため、正義のために動いているようで、実は、個人的な色恋や友情のために頑張ったってことになっているようですが、軍人であったり、諜報部員であったり、徹底的に国家のために尽くすことを使命とされている人々がこれでいいのか、という疑問が残ります。せめて、もう少し、自分の行為に対して葛藤があってよかったと思うのですが、その辺りが感じられず、違和感がありました。


ところどころに日本語のセリフも出てくるのですが、英訳がいい加減。洋画の日本語字幕の質の問題が話題になることはありますが、英語の字幕も相当なもの。映画の字幕には、いろいろと制限も大きいのは分かりますが、もう少し何とかして欲しいものですね。


豪華な演技陣を揃えていて、そういう意味では見応えあるのですが、内容がついていっていません。もったいないですね。


タナカ大尉の描き方も何だか中途半端。残虐非道な日本兵かと思いきや、突然、イイ人になってしまったり。彼は一体、何をしたかったのか、今ひとつ伝わってきませんでした。あの時代の日本人でしっかりと英語をしゃべれて軍隊の中でそれなりに出世して、なかなかの人物だったはずなのですが、あまり有能な人間らしい行動をしておらずバランスの悪さも目立ちます。クライマックスで重傷を負いながら、あっという間にきれいな軍服に着替えてポールとアンナをお迎えするというのもかなり違和感ありました。ポールの親友を殺したけれどスパイとは知らなかったとか、真珠湾攻撃とは関係ないとか、あり得ないでしょう?だったら、彼は上海で何をしていたのか...。スリルもサスペンスも、ここで、一気に崩れ去りました。


レジスタンスのアンナも動きがあからさま過ぎて、あれでよく生き残れたものだと...。


上海の街の暗く重い雰囲気は味わいありましたが、"東洋のパリ"と形容される都市というイメージとは随分違います。アレでよかったのでしょうか?


混沌と陰謀渦巻く上海だから何でもアリなのかもしれませんが、もう少し、一本筋を通した作品に仕上げて欲しかった気がします。豪華キャストとそれなりにかかっているであろう制作費がもったいない!



公式サイト

http://shanghai.gaga.ne.jp/



シャンハイ@ぴあ映画生活